クルクミン

curcumin

クルクミンとは、ポリフェノールの一種で、ウコンなどに含まれている黄色の色素成分です。
クルクミンは、肝臓の解毒機能を強化する作用や胆汁の分泌を促進する作用を持っており、肝機能を向上させる効果や、コレステロール値を低下させる効果が期待されています。

クルクミンとは

●基本情報
クルクミンとは、ウコンに含まれているポリフェノールの一種で、クルクミノイド[※1]に分類される黄色の天然色素です。
「クルクミン(Curcumin)」という名称は、アラビア語で「黄色」を意味する「クルクム(kurkum)」に由来しており、クルクミンを多く含むウコンの学名である「クルクマ(Curcuma)」の由来も同様です。
クルクミンは、ウコンの中でも特に秋ウコンに多く含まれており、鮮やかな黄色であるため、植物性の天然色素としてたくあんなどの漬物、水産のねり製品、りんごのシロップ漬けなどに色素として用いられています。

●クルクミンの歴史
クルクミンを多く含むウコンは、インドや中国などにおいて古くから黄疸[※2]などに効く生薬として重宝されていました。
日本では、琉球から江戸に伝わった後にクルクミンが鮮やかな黄色の色素であることから、ウコンを布や紙を染色するためにも用いており、江戸時代中期には肝臓や胃腸の薬、強心薬としても使われてきました。
これは、ウコンの主成分であるクルクミンが持つ、肝臓の解毒機能を高める作用と胆汁の分泌を著しく促進する作用によるものと考えられています。

●クルクミンの働き
クルクミンの働きで特に注目されているのは、肝臓に対する働きかけです。
肝臓とは、人間の体内で最大の臓器であり、酵素などの体内で作用する物質を3000種類もつくり出す働きを担っているだけではなく、代謝と解毒という重要な機能を持っています。
代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることを指し、それに伴ってエネルギーが出入りすることです。中性脂肪は肝臓によって脂肪酸に変えられ、エネルギー源として利用されますが、これも代謝の一例として挙げられます。
解毒とは、体内に入ったアルコールなどの有害物質を無害化する作用を指します。
古代では、肝臓は人体の中で最も重要な器官であったと考えられており、東洋でも「肝心」や「肝要」のように、重要な意味として肝臓の「肝」の字が用いられてきました。
クルクミンには、胆汁の分泌を促し、肝臓の機能を向上させる作用や、胃の健康を維持する作用があります。
また、クルクミンはポリフェノールに共通している強力な抗酸化作用[※4]を持っているため、免疫機能の向上や、生活習慣病の予防などにも効果的です。

●クルクミンの効果的な摂取方法
クルクミンは脂溶性の成分であるため、に溶けにくく、そのまま摂取しても体内への吸収率はあまり高くないといわれています。
また、クルクミンは光に当たると褪色しやすいことや、独特の味・臭いがあるため、食品や飲料などへの利用は難しいとされてきました。
しかし、現在ではクルクミンを使用したサプリメントやドリンクが多く販売されており、サプリメントにおいては高吸収型のクルクミンを配合しているものも存在するため、より効果的にクルクミンを摂取することが可能です。

[※1:クルクミノイドとは、ポリフェノールの一種です。主にクルクミン、ジメトキシクルクミン、ビスジメトキシクルクミンの3種類がクルクミノイドに分類されています。]
[※2:黄疸とは、胆汁の色素が血液中に増加し、皮膚や粘膜などが黄色くなった状態を指します。]
[※3:抗酸化作用とは、活性酸素を抑制する作用のことです。]

クルクミンの働き

●肝機能を高める効果
クルクミンには、肝臓の解毒機能を高める作用と胆汁の分泌を促す作用があり、それによって肝臓の機能を高めることができると考えられています。
胆汁とは、肝臓から分泌される消化液を指し、水と油の両方になじむ性質を持っており、通常の消化液には溶けにくい脂質を自身に溶かし込んで、十二指腸へと送りこみます。
胆汁は消化酵素を含んでいませんが、十二指腸で膵液[※4]と一緒になることで、膵液に含まれる消化酵素の作用を活発にし、たんぱく質と脂質の消化をサポートします。

クルクミンの肝機能に対する効果を調べた実験ではマウスに対して強い毒性を持つ、ダイオキシン[※5]による肝機能の障害をクルクミンがどの程度抑えるかを調べる試験を行っています。
その結果、ダイオキシンを投与すると、肝機能の検査の指標となる血清値が低下するのに対し、クルクミンを投与すると、その値が正常に近づくことが確認できています。
また、同実験において、用いたマウスにダイオキシンを投与し続けると、肝機能の障害によって死にいたりますが、クルクミンを投与したマウスにおいては、その生存率が上がることが明らかとなっています。
クルクミンを与えない対照群は7週目ですべてのマウスが死亡しましたが、クルクミンを投与し続けた対照群は7週目で80%が生存し、10週目くらいまで生存したという結果が報告されています。
尚、この実験では肝臓に良いとされる漢方薬である小柴胡湯(しょうさいことう)[※6]を飲ませた群も加えましたが、その対照群よりもクルクミンを投与した対照群が長生きするという結果が得られており、クルクミンの肝機能を向上させる効果には、大きな期待が寄せられています。【2】【6】【7】

●二日酔いを予防する効果
また、このような効果によって、クルクミンを摂取すると悪酔いや二日酔いを防ぐことができます。
胆汁には、悪酔いなどの原因物質であるアセトアルデヒドの代謝を促進する作用があります。
大量の飲酒によりアルコールを摂取すると、そのアルコールを分解する過程でアセトアルデヒドが生じ、それが血液中に長時間滞留することで、中毒症状である二日酔いなどが翌日に生じます。
クルクミンを摂取することで胆汁の分泌が促進されると、アセトアルデヒドの代謝が促進されるため、悪酔いや二日酔いの予防を行うことができるのです。
よって、飲酒の前後にはクルクミンを豊富に含んだウコンを摂取することが効果的であるといわれています。

<豆知識>「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓
肝臓は、調子が悪くなっても自覚症状が出にくい臓器であることから「沈黙の臓器」とも呼ばれており、ある程度の障害を受けても再生することができる性質を持ちます。
例えば、肝臓は3分の1を切除すると、生き残っている肝臓の細胞が増殖し、1~2ヵ月後には元の状態に修復されます。
肝臓の予備能は、ダメージが限度内であれば再生を繰り返しますが、ダメージが一定の限度を超えると、肝不全[※7]という症状に陥り、一切回復することができなくなります。
不調を感じたときには非常に悪化し、手遅れになっている場合が多いとされています。
よって、肝臓の健康維持は日頃から継続的に行うことが必要であり、過度の飲酒などは肝臓に負担をかけるため、注意が必要です。

コレステロール値を下げる効果
クルクミンの持つ胆汁の分泌を促進する作用は、コレステロールを低減させることができると考えられています。
胆汁は、肝臓で毎日約500mℓ以上も産生される消化液です。胆汁に含まれている胆汁酸はコレステロールから産生されているため、クルクミンによって胆汁の分泌が促進されることで、多くのコレステロールが必要となり、コレステロール値を下げる効果が得られるのです。【1】【5】

●美肌効果
クルクミンが持つ抗酸化作用には、美肌を維持する効果が期待できます。
抗酸化作用によって除去される活性酸素は、老化や生活習慣病の原因物質であるといわれています。
肌は、表皮[※8]、真皮[※9]、皮下組織[※10]の3層で構成されており、この3層が正常な状態を維持することで、ハリや透明感を保つことができています。
活性酸素が体内で増加すると、肌を構成している肌細胞にも悪影響を及ぼし、肌のシミ、しわ、くすみなどを生成すると考えられています。
シミやくすみは、メラニン色素が生成されることで現れますが、活性酸素はメラニン色素を生成する原因物質にもなる存在です。
また、しわは真皮で肌のハリを構成している、ヒアルロン酸コラーゲンエラスチンなどの減少が原因となって発生します。増加した活性酸素は、ヒアルロン酸、エラスチン、コラーゲンが体内で生成される量を減少させる作用を持つため、しわの原因となるのです。
さらに、増加した活性酸素はコラーゲンの弾力性を低下させる作用を持つため、肌のハリや弾力を失わせることにつながります。
クルクミンの持つ強力な抗酸化作用は、活性酸素を抑制することで肌の構成成分を保持し、美肌を維持する効果が得られると考えられています。
インドではクルクミンを含むウコンを、皮膚に塗る化粧品として利用しており、ヒンドゥー教の儀式には欠かせないものとなっています。【4】【5】

●脳機能を活性化させる効果
クルクミンには脳を健康に保つ効果があります。
クルクミンはウコンに多く含まれるポリフェノールの一種です。ウコンをスパイスとして利用する料理のひとつに「カレー」があります。最近の研究成果として、カレーを食べることで脳の一部が活性化され、IQが「7」あがったという結果があります。被験者にカレーとコントロール食をそれぞれ摂取させ、作業記憶と視覚探査を必要とするテストを行った結果、脳が活性化され、試験で使った課題をたくさん解くことができるようになったとのことです。
また、その他のクルクミン研究では、近年、病気の原因となるたんぱく質の蓄積を予防することで、アルツハイマー病予防に役立つこともわかっています。アルツハイマー病や認知症の患者様は世界で2013年現在4400万人、2050年には1億3500万人に及ぶといわれており、今後病気の予防が重要になってきます。

[※4:膵液とは、膵臓から分泌され、十二指腸に排出される消化液です。]
[※5:ダイオキシンとは、空気中に僅かに存在している物質で、少量でも強い毒性を持つと考えられています。]
[※6:小柴胡湯とは、漢方薬のひとつです。柴胡という生薬を中心に、他の生薬と組み合わせた処方の薬剤を指します。]
[※7:肝不全とは、肝臓の合成機能や代謝機能が低下した状態です。]
[※8:表皮とは、表皮とは、肌を構成している層のひとつです。厚さ0.3mmほどの肌表面部分を指します。]
[※9:真皮とは、肌を構成している層のひとつです。厚さ2mmほどの繊維性結合組織で、表皮を支えています。]
[※10:皮下組織とは、真皮の下部に位置する層を指します。毛細血管が張りめぐらされており、肌の透明感などに影響を与える部分です。]

クルクミンを多く含む食べ物

クルクミンを含む食品

○ウコン(特に秋ウコン)
○カレー
○たくあん

こんな方におすすめ

○肝臓の健康を保ちたい方
○お酒をよく飲む方
○コレステロール値が気になる方
○美肌を目指したい方

クルクミンの研究情報

【1】クルクミンがアテローム性動脈硬化および血漿における肝臓脂質代謝に及ぼす作用を調べました。高コレステロールな食事を18週間供給されたLDLR(-/-)マウスに、クルクミン、ロバスタチンまたは対照を投与しました。大動脈弓部を調べると、クルクミンが早期アテローム性硬化病変を緩和したことを明らかになりました。クルクミンは、血漿中のHDLコレステロールおよびアポAタンパクを上昇させ、LDLコレステロール、アポ Bタンパク質を減少させました。これらのことから、クルクミンの効果は、血漿および肝臓中のコレステロールを低下させ、ロバスタチンの保護作用に相当する早期アテローム性硬化病変を抑制することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22058071

【2】TCCDで誘発される肝酸化ストレスをもったラットにクルクミン100mg/kg/日を与えたところ、TCCDによって減少した還元グルタチオン、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼはプラセボに比べ増加しており、またTBARS(チオバルビツール産生物)は低下しました。このことからクルクミンは、体内の抗酸化能力を高め、酸化ストレスを抑える働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21245202

【3】アルコール性炎症、LPS(リポポリサッカライド)誘発炎症に対するクルクミンの作用について調べました。その結果、クルクミンは炎症を抑える働きを有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17887948

【4】96名のイラン人男性(満37-59歳年)に、4週間クルクミン(1 g/日)またはプラセボを投与し、SM -誘発された慢性かゆみ性の疾患について調べました。クルクミンの補給は、掻痒スコア、視覚的アナログ尺度、アトピー性皮膚炎のスコアを大幅に減少させました。このことから、クルクミンはSM誘発性慢性掻痒の改善作用があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22099425

【5】ウコンの有効成分であるクルクミンには、マクロファージにおける酸化LDL(悪玉コレステロール)の取り込みを阻害するとともに、大動脈のコレステロールを排出する組織ABCA1及びABCG1のはたらきを促進することによる、動脈硬化抑制作用が確認されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22648616

【6】炎症性大腸炎マウスにおいて、クルクミンとアミノグアニジンを摂取させると、
活性酸素の発生および、白血球細胞好中球の活性化が抑制され、肝臓や直腸での抗炎症作用が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22036766

【7】Ⅱ型糖尿病患者では、糖尿病によってAGE(最終糖化産物)受容体が活性化することで、肝臓線維化が進むが、ウコンに含まれるクルクミンはAGE受容体の働きを抑制し、また抗酸化酵素のグルタチオンやペルオキシソームの働きを活性化させることで、Ⅱ型糖尿病患者での肝臓への保護作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22452372

もっと見る 閉じる

参考文献

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・中村丁次 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・則岡孝子 ひと目でわかる あなたに必要な栄養成分と食べ物 河出書房新社

・Shin SK, Ha TY, McGregor RA, Choi MS. (2011) “Long-term curcumin administration protects against atherosclerosis via hepatic regulation of lipoprotein cholesterol metabolism.” Mol Nutr Food Res. 2011 Dec;55(12):1829-40. doi: 10.1002/mnfr.201100440. Epub 2011 Nov 7.

・Ciftci O, Ozdemir I, Tanyildizi S, Yildiz S, Oguzturk H. (2011) “Antioxidative effects of curcumin, β-myrcene and 1,8-cineole against 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin-induced oxidative stress in rats liver.” Mol Nutr Food Res. 2011 Dec;55(12):1829-40. doi: 10.1002/mnfr.201100440. Epub 2011 Nov 7.

・Singh AK, Jiang Y, Benlhabib E, Gupta S. (2007) “Herbal mixtures consisting of puerarin and either polyenylphosphatidylcholine or curcumin provide comprehensive protection against alcohol-related disorders in P rats receiving free choice water and 15% ethanol in pure water.” J Med Food. 2007 Sep;10(3):526-42.

・Panahi Y, Sahebkar A, Amiri M, Davoudi SM, Beiraghdar F, Hoseininejad SL, Kolivand M. (2011) “Improvement of sulphur mustard-induced chronic pruritus, quality of life and antioxidant status by curcumin: results of a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.” Br J Nutr. 2011 Nov 18:1-8. [Epub ahead of print]

・Phan TT, See P, Lee ST, Chan SY. (2001) “Protective effects of curcumin against oxidative damage on skin cells in vitro:its implication for wound healing.” J Trauma. 2001 Nov;51(5):927-31.

・Zhao JF, Ching LC, Huang YC, Chen CY, Chiang AN, Kou YR, Shyue SK, Lee TS. (2012) “Molecular mechanism of curcumin on the suppression of cholesterol accumulation in macrophage foam cells and atherosclerosis.” Mol Nutr Food Res. 2012 May;56(5):691-701. doi: 10.1002/mnfr.201100735.

・Mouzaoui S, Rahim I, Djerdjouri B. (2012) “Aminoguanidine and curcumin attenuated tumor necrosis factor (TNF)-α-induced oxidative stress, colitis and hepatotoxicity in mice.” Int Immunopharmacol. 2012 Jan;12(1):302-11. Epub 2011 Oct 29.

・Stefanska B. (2012) “Curcumin ameliorates hepatic fibrosis in type 2 diabetes mellitus-insights into its mechanisms of action.” Br J Pharmacol. 2012 Mar 27. doi: 10.1111/j.1476-5381.2012.01959.x. [Epub ahead of print]

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ