ポリフェノール

polyphenol

ポリフェノールとは、植物の苦味、渋味、色素の成分となっている化合物の総称で、自然界に5000種類以上存在しているといわれている栄養素です。
すべてのポリフェノールが強力な抗酸化作用を持つため、生活習慣病の予防に効果的であるといわれています。

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ポリフェノールとは?

●基本情報
ポリフェノールとは、植物の苦みや渋み、色素の成分となる化合物の総称で、自然界に5,000種類以上存在します。
ポリフェノールは植物の葉や茎、実などに含まれており、ビルベリーや緑茶など色が濃い、または渋味が強いものに豊富です。

「ポリフェノール」の「ポリ」は「たくさんの」という意味で、「フェノール」はベンゼン環[※1]に水酸基(OH)が結合した化合物です。
水酸基には活性酸素を捕えて除去する能力(抗酸化力)があるため、ポリフェノールは抗酸化作用を持った成分であるといえます。
活性酸素とは、人間の体内に存在している物質であり、外界から侵入してきた細菌やウイルスを撃退する役目を担った物質です。
しかし、活性酸素はストレス、喫煙、紫外線などの様々な要因によって必要以上に体内で増加してしまうと、体内のたんぱく質、脂質、DNAなどを傷つけ、老化や生活習慣病の原因になるといわれています。
ポリフェノールが持つ抗酸化作用は、活性酸素を除去する作用を持つため、様々な病気に対抗する力やアンチエイジング効果が期待されています。
動物よりも植物のほうが長寿であることが多いのは、ポリフェノールの抗酸化作用による影響が大きいと考えられています。

ポリフェノールは水に溶けやすい成分であるため、摂取してから比較的短時間で抗酸化作用を発揮するとされていますが、その効果は長期間持続できないため、毎日継続的に摂取することが効果的です。

●ポリフェノールの歴史
ポリフェノールの存在が注目されるようになったのは、「フレンチパラドックス」に関する研究発表がきっかけです。
「フレンチパラドックス」とは、フランス人は肉、チーズ、バターなどの高カロリーな食生活を送っているにも関わらず、他の欧州諸国に比べて心臓病による死亡率が低いという矛盾(パラドックス)のことです。
1992年、この現象に注目したフランスの科学者セルジュ・ルノー博士は、フレンチパラドックスの要因が、フランス人が日常的に赤ワインを飲んでいることによるという考察を発表しました。この発表により、研究者の赤ワインに対する注目が高まり、世界中で赤ワインブームが起こりました。
赤ワインにはポリフェノールが豊富に含まれており、ポリフェノールが持つ抗酸化作用は心臓病をはじめとする循環器[※2]疾患の予防に効果を発揮すると考えられています。

●主なポリフェノールの種類
アントシアニン
アントシアニンは、主にブルーベリー、ビルベリー、カシスなどに含まれている青紫色の天然色素で、黒色や紫色の野菜や果物に多く含まれているポリフェノールです。
アントシアニンは世界中に400種類以上存在するといわれており、その種類によって性質や作用する場所が異なりますが、特に目に対する効果が注目されています。

レスベラトロール
レスベラトロールとは、サンタベリーやブドウに多く含まれているポリフェノールです。
レスベラトロールは、長寿遺伝子と呼ばれているサーチュイン遺伝子[※3]を活性化させる作用を持つとされ、細胞の生まれ変わりをサポートし、若々しい細胞へ生まれ変わらせる効果が期待でき、アンチエイジング効果、抗老化作用、美肌に対する効果などが期待されています。

イソフラボンリグナン
イソフラボンとは、大豆や大豆加工食品などに多く含まれている色素成分で、ポリフェノールのフラボノイド系に属する栄養素です。
また、リグナンはポリフェノールの一種であり、ごまに含まれるゴマリグナンや、亜麻種子に含まれている亜麻リグナンなどが有名です。
イソフラボンとリグナンは、女性ホルモン様物質[※4]であるため、閉経後の女性に多く発症する更年期障害[※5]など、女性特有の悩みに対して効果が期待されている栄養素です。

ヘスペリジン
ヘスペリジンは、青みかんなどの柑橘類の皮やすじに特に多く含まれている成分で、ビタミンPとも呼ばれています。
ヘスペリジンには、末梢血管の血流を促進する作用があるため、血流を改善する効果があるといわれています。
また、ヘスペリジンはビタミンCの働きをサポートする作用も持っているため、両者を一緒に摂取することでより高い効果が得られます。

クルクミン
クルクミンとは、ウコンに多く含まれている黄色の色素成分で、特に秋ウコンに多く含まれています。
クルクミンは肝機能を高める働きを持っており、アルコールの分解を促進したり、胆汁[※6]の分泌を活発化させるなどの効果が期待され、飲酒の前後に摂取すると良いとされています。

カテキン
カテキンとは、緑茶や紅茶などに多く含まれている渋味成分です。
抗菌・殺菌作用、脂肪の吸収を抑制する作用、アレルギー反応による炎症を抑える作用など様々な働きを持つ成分であり、生活習慣病[※7]を予防する効果や血糖値を低下させる効果が期待されています。

タンニン(タンニン酸)
タンニンはタンニン酸とも呼ばれ、木の幹、葉、樹脂に含まれているポリフェノールで、食品では緑茶や紅茶に多く含まれています。
タンニンは、強力な抗酸化作用以外にも収れん作用[※8]を持つことから、毛穴を引き締める効果があるといわれており、洗顔料などに配合されています。

[※1:ベンゼン環とは、炭素原子が6つで構成される平面六角形の構造のことです。]
[※2:循環器とは、動物が持つ器官の分類のひとつで、全身に血液やリンパを流通させる器官です。]
[※3:サーチュイン遺伝子とは、遺伝子の一種で、長寿遺伝子とも呼ばれています。サーチュイン遺伝子が活性化することで、サーチュインという酵素が活発化し、細胞寿命の調節を行うことができます。]
[※4:女性ホルモン様物質とは、女性ホルモンと似た働きを行う物質です。]
[※5:更年期障害とは、40歳代から60歳代の女性に起こりやすい症状です。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、動悸、ほてり、イライラなどの症状が現れます。]
[※6:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。]
[※7:生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。]
[※8:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]

ポリフェノールの効果

アントシアニン
●視機能を改善する効果
アントシアニンには、視機能を改善する効果があります。
視覚とは、対象物を光の情報として捕えて信号化し、その信号を脳に伝えて像として判断・認識するというプロセスを指します。
アントシアニンは、光の情報を信号化する役目を担うロドプシン[※10]というたんぱく質をサポートする作用があり、目を酷使することによって生じるぼやけ、疲れ目、ショボつきなどを予防・改善する効果があるとされ、目の疲労感の予防や改善に効果的であるといわれています。【1】

レスベラトロール
●細胞(肌や唇)を若々しく保つ効果
レスベラトロールは、人間の体を構成している細胞を若々しく保つ効果があるとされています。
細胞を若々しく保つレスベラトロールの働きは、長寿効果や若返りの効果が期待されており、肌細胞にも良い影響を与えるとして、美肌維持効果も期待されています。【2】

イソフラボンリグナン
●更年期障害の症状を改善する効果
イソフラボンやリグナンは、更年期障害の症状を改善することが期待されています。
更年期障害は、加齢や閉経などの要因でエストロゲン[※11]の分泌が減少することによって起こる症状です。
イソフラボンやリグナンは、女性ホルモン様物質であるため、体内でエストロゲンと似た働きを行うといわれており、ホルモンバランスの乱れから引き起こる発汗、倦怠感、顔のほてりなど、女性特有の悩みを改善することができます。【3】

ヘスペリジン
●血流を改善する効果
ヘスペリジンは、末梢血管を強化させる作用を持ち、血流を改善する効果があるといわれています。末梢血管は体内でも特に血流が悪くなりやすい血管であるため、ヘスペリジンの働きによって血流が改善されると、冷え症などの症状にも効果が発揮されます。
また、ヘスペリジンは抗酸化作用も持つことから、血中コレステロールを低下させる効果なども期待されています。【4】

クルクミン
●肝機能を高める効果
クルクミンは、胆汁の分泌を活発化する働きや、肝機能の解毒作用をサポートする作用を持つため、肝機能を高める効果があるといわれています。
飲酒の前後にウコンを摂取すると良いとされるのは、ウコンに含まれているクルクミンを摂ることで、肝機能を高め、アルコールの分解などを促進し、二日酔いを予防できるためです。【5】

カテキン
●生活習慣病の予防・改善効果
カテキンには、生活習慣病を予防・改善する効果があるといわれています。
生活習慣病が発症する原因のひとつは、血中のコレステロールや中性脂肪が増加することであるとされています。
カテキンは、肝臓でつくられる胆汁酸[※12]の排出を促したり、血液中のコレステロールの増加を抑える作用を持つため、生活習慣病の予防や改善に効果的です。【6】

タンニン(タンニン酸)
●肌を引き締める効果
タンニン酸が持つ収れん作用は、皮脂腺や開いた毛穴などを縮ませることができるため、肌の毛穴を目立たなくすることができるといわれています。

[※10:ロドプシンとは、網膜に存在している色素であり、視紅とも呼ばれている物質です。とらえた光の情報を、脳に電気信号として送る役割を担っています。]
[※11:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※12:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]

食事やサプリメントで摂取できます

ポリフェノールを含む食材
<アントシアニン>
○ビルベリー、ブルーベリー、カシスなど
<レスベラトロール>
○サンタベリー、ぶどう、赤ワインなど
<イソフラボン>
○大豆、大豆加工食品
<リグナン>
○ごま、亜麻種子など
<ヘスペリジン>
○柑橘類の皮やすじ
<クルクミン>
○ウコン(特に秋ウコンに多く含まれています)
<カテキン>
○緑茶
<タンニン(タンニン酸)>
○緑茶、紅茶

こんな方におすすめ

○目の健康を維持したい方<アントシアニン>
○老化を防ぎたい方<レスベラトロール>
○更年期障害でお悩みの方<イソフラボン、リグナン>
○血流を改善したい方<ヘスペリジン>
○肝臓の健康を保ちたい方<クルクミン>
○生活習慣病を予防したい方<カテキン>
○毛穴の開きでお悩みの方<タンニン(タンニン酸)>

ポリフェノールの研究情報

【1】カエルの網膜の光を感じる細胞桿体外節(ROS)に、カシス中の4種のアントシアニンを投与したところ、シアニジン-3-グルコシドとシアニジン-3-ルチノシドはロドプシンの再合成を促進することが確認され、またロドプシン再合成の中間体の生成にはシアニジン-3-ルチノシドが重要な役割を果たすことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12769524

【2】酵母由来のサーチュイン遺伝子での研究で、レスベラトロールが寿命に関連のあるサーチュイン遺伝子の活性を13倍に増強したことから、レスベラトロールに寿命延長効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12939617

【3】更年期の日本人女性58名に、大豆イソフラボンを1日40mg 、4週間摂取させたところ、更年期症状であるほてりが緩和され、高血圧患者での収縮期及び拡張期血圧は有意に低下したことから、大豆イソフラボンに更年期症状緩和効果があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11870016

【4】ヘスペリジンは血漿中のHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロール、トリグリセリドを低下させることがわかりました。このことからヘスペリジンの摂取は、血中の脂質濃度を改善させる働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7495469

【5】消化不良を抱えた患者116名を対象とした多施設無作為化二重盲検試験において、クルクミンが含有されたウコン (Curcuma domestica Val.) 製剤4カプセル/日を7日間摂取させたところ症状の改善が見られました。このことからウコンに含まれているクルクミンが消化・代謝を促進したと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15683851

【6】健常男性23名(27歳~47歳)において、緑茶カテキンを低用量(1日483mg) または高用量(1日118.5mg) で12週間摂取させたところ、低用量摂取群では体重、BMI、インスリン値のみに影響があったことに対し、高用量摂取群では、体重、BMI、ウエスト周囲径、内臓脂肪、総コレステロール、血糖値、インスリン、プラスミノーゲンの減少が見られました。とくにBMIが25を越える人により有益でした。これらの結果より、カテキンには肥満予防効果があることが示唆されました
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos/50/7/50_7_599/_article/-char/ja/

【7】ヘーゼルナッツには、タンニンが豊富に含まれています。ヘーゼルナッツの抽出物で、ABTS、DPPH、HNTTMなどの抗酸化試験を行いました。この結果から、ヘーゼルナッツに含まれているタンニンには、抗酸化作用があることがわかりました。また、皮膚のメラノーマ細胞の抑制作用がタンニンの抗酸化作用による可能性も示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18311930

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参考文献

・本多京子 食の医学館 小学館

・津田孝範 アントシアニンの科学-生理機能・製品開発への新展開- 建帛社

・植物栄養素DBフィトス レスベラトロールの秘密 株式会社カンゼン

・Matsumoto H, Nakamura Y, Tachibanaki S, Kawamura S, Hirayama M. (2003) “Stimulatory effect of cyanidin 3-glycosides on the regeneration of rhodopsin.” J Agric Food Chem. 2003 Jun 4;51(12):3560-3.

・Howitz KT, Bitterman KJ, Cohen HY, Lamming DW, Lavu S, Wood JG, Zipkin RE, Chung P, Kisielewski A, Zhang LL, Scherer B, Sinclair DA. (2003) “Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan.” Nature. 2003 Sep 11;425(6954):191-6.

・Uesugi S, Watanabe S, Ishiwata N, Uehara M, Ouchi K. (2004) “Effects of isoflavone supplements on bone metabolic markers and climacteric symptoms in Japanese women.” Biofactors. 2004;22(1-4):221-8.

・Monforte MT, Trovato A, Kirjavainen S, Forestieri AM, Galati EM, Lo Curto RB. (1995) “Biological effects of hesperidin, a Citrus flavonoid. (note II): hypolipidemic activity on experimental hypercholesterolemia in rat.” Farmaco. 1995 Sep;50(9):595-9.

・Park SD, Jung JH, Lee HW, Kwon YM, Chung KH, Kim MG, Kim CH. (2005) “Randomized double blind study of Curcuma domestica Val. for dyspepsia.” Int Immunopharmacol. 2005 Mar;5(3):555-69.

・Tadashi HASE, Yumiko KOMINE, Shinichi MEGURO, Yoko TAKEDA, Hidekazu TAKAHASHI, Yuji MATSUI, Setsujiro INAOKA, Yoshihisa KATSURAGI, Ichiro TOKIMITSU, Hiroyuki SHIMASAKI, Hiroshige ITAKURA  (2001) “Anti-obesity Effects of Tea Catechins in Humans” Journal of Oleo Science Vol. 50 (2001) No. 7 P 599-605

・Touriño S, Lizárraga D, Carreras A, Lorenzo S, Ugartondo V, Mitjans M, Vinardell MP, Juliá L, Cascante M, Torres JL. (2008) “Highly galloylated tannin fractions from witch hazel (Hamamelis virginiana) bark: electron transfer capacity, in vitro antioxidant activity, and effects on skin-related cells.” Chem Res Toxicol. 2008 Mar;21(3):696-704. Epub 2008 Mar 1.

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

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