イソフラボン

isoffflavones

イソフラボンは、主に大豆の胚芽部分に多く含まれているポリフェノールの一種で、女性ホルモンとよく似た働きを持つ成分です。
女性らしい体をつくる役割を持ち、女性ホルモンの減少によって引き起こされる更年期障害の症状を改善する効果や、骨粗しょう症を予防する効果があります。

イソフラボンとは?

●基本情報
イソフラボンとは、大豆葛(くず)などマメ科の植物に多く含まれるポリフェノールの一種です。
ポリフェノールは、強い抗酸化力[※1]があることで知られており、生活習慣やストレスによって増えすぎた活性酸素[※2]を抑え、生活習慣病の予防や改善に役立つといわれている成分です。
ポリフェノールには、大豆などのマメ科植物に含まれるイソフラボンのほか、ブルーベリーぶどうなどの青紫色の植物色素であるアントシアニン緑茶や紅茶の苦み成分であるカテキンなどがあります。
また、イソフラボンにも様々な分類や種類があり、大豆に含まれるイソフラボンは「ダイゼイン」「ゲニステイン」と呼ばれています。
大豆や大豆食品中に含まれる大豆イソフラボンは、主に配糖体[※3]として存在しています。その中でも糖部分が分離したものはアグリコン型といい、伝統的な大豆発酵食品中に含まれます。

●イソフラボンと女性ホルモン
イソフラボンは、女性ホルモンのひとつであるエストロゲン[※4]と似た働きを持ちます。エストロゲンは、美しい肌やふくよかな体つきをつくる上で欠かせない女性ホルモンです。
しかし、更年期[※5]にさしかかった女性はエストロゲンの分泌量が減少するため、意識してイソフラボンを摂取することが重要となります。
また、イソフラボンは不足しているエストロゲンを補うだけではなく、エストロゲンが過剰に分泌されたときにはその分泌量を抑える抗エストロゲン作用という働きがあります。
つまり、イソフラボンはエストロゲンの過不足を調整する効果があるのです。

●イソフラボンを摂取する上での注意
イソフラボンの1日あたりの目安摂取量は、40~50mgとされています。
食品で補う場合は、豆腐なら150g(半丁)、納豆なら60g(1パック)が目安となります。
サプリメントでイソフラボンを補う場合は、一日の上限値がアグリコン型として30mgと定められています。
イソフラボンは女性ホルモンと似た働きを持つため、ホルモン剤や抗ガン剤を服用している場合、摂取する際には医師への相談が必要です。
また、大豆アレルギーを持つ方の場合、大豆由来のイソフラボンを摂取するとアレルギーを起こす可能性があることや、妊娠中や授乳中の方がイソフラボンを摂取すると、ホルモンバランスに影響を与える可能性があるため、こういった方々はイソフラボンが配合されているサプリメントの摂取に注意が必要です。

<豆知識①>最も多くイソフラボンを含む大豆食品とは
イソフラボンは、大豆や葛(くず)の根、ハーブの一種であるレッドクローバーなどに含まれていますが、普段の食生活で最もイソフラボンを取り入れやすい食材は、大豆です。
大豆そのものを食べることはもちろんですが、大豆の加工食品からイソフラボンを摂取することもできます。
大豆の加工食品には、豆腐・しょうゆ・みそなど多くの種類がありますが、大豆を加工する間にイソフラボンが流出・分解するため、食品によってイソフラボンの量に差があります。
その中で、最もイソフラボンの含有量が多いのは、きな粉だといわれています。
きな粉は、大豆を炒ってから皮をむき、ひいた状態のものです。製造工程の中でイソフラボンの流出が少なく、イソフラボンを効率良く摂取することができる食品です。

[※1:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※2:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力をもった酸素のことです。紫外線やストレスなどにより体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※3:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※4:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※5:更年期とは、閉経年齢の前後約10年間を表します。平均的な閉経年齢は50歳前後といわれているため、40~60歳前後の期間が更年期にあたります。]

イソフラボンの効果

●更年期障害の症状を改善する効果
女性は、年齢とともに卵巣の機能が衰え、エストロゲンの分泌が減少することによって、様々な不快症状が現れます。
主な症状として、顔のほてりやのぼせ、発汗、肩こり、頭痛などの身体的なものに加えて、イライラ、不安、憂鬱など、精神的な症状も見られます。
これらの症状は、更年期障害と呼ばれています。
また、年齢だけではなく、無理なダイエットやストレス、喫煙、睡眠不足などの生活習慣が原因でエストロゲンの分泌が減少し、更年期障害に似た症状が現れ、月経周期が乱れてしまいます。
このような症状が、不規則な生活習慣を送る女性の間で増加しているといわれています。
イソフラボンは、エストロゲンの分泌を促し、更年期障害の症状を改善する効果があります。

また、イソフラボンがもつ、エストロゲンの過不足を整える作用は、エストロゲンの過剰分泌が原因で引き起こされる乳ガンの予防につながると考えられます。
欧米に比べて大豆の消費量が多いアジア諸国の女性は、乳ガンの発症率が低いという調査結果も報告されており、この理由としてイソフラボンの摂取量が多いことが考えられています。【1】

●骨粗しょう症を予防する効果
イソフラボンには、骨の中のカルシウムを溶け出さないようにする働きがあります。
しかし、エストロゲンの分泌が減少すると、骨にカルシウムを蓄えておく力が低下してしまいます。その結果、骨密度[※6]が低下し、骨がもろくなるため、ちょっとしたはずみで骨が折れやすくなってしまいます。これが、骨粗しょう症です。
更年期障害と同様、若い世代の女性でも、不規則な生活習慣が原因でエストロゲンの分泌が減少すると骨粗しょう症が引き起こされる可能性があります。
イソフラボンは、エストロゲンの分泌を促し、骨の中にカルシウムを蓄えることで、骨粗しょう症を予防します。
また、イソフラボンには骨量を増やす働きがあるため、イソフラボンの摂取量が多い人は骨密度が高いという研究結果も報告されています。【2】【4】

●美肌効果
女性らしい体をつくる上で、エストロゲンと似た働きを持つイソフラボンは重要な役割を果たしています。
年齢や生活習慣によってエストロゲンの分泌が減少すると、肌の弾力を保つコラーゲンや、肌に潤いを与えるヒアルロン酸をつくる力が低下し、しわやたるみなどの肌の老化現象が引き起こされます。
イソフラボンには、肌の弾力性を保ち、しわを改善する効果があります。
このようなイソフラボンの美肌効果は、化粧品や美容のサプリメントにも応用されています。【7】【8】

●生活習慣病の予防・改善効果
脂質の一種であるコレステロールは、細胞をつくる重要な成分です。しかし、ラード(豚の脂)やバターなどの動物性脂肪を多く含む食品を摂りすぎることによって、血液中のコレステロールが増加してしまいます。
コレステロールが増加すると、動脈硬化[※7]が進行し、心筋梗塞[※8]や脳梗塞[※9]といった命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
特に、更年期の女性は年齢とともにエネルギーの代謝が悪くなるため、コレステロールが増加しやすいといわれています。
イソフラボンは、血液中に増えすぎたコレステロールを減少させる効果があり、生活習慣病や動脈硬化の予防に役立ちます。
実際の調査結果で、イソフラボンを多く摂取している地域ほど心筋梗塞の患者数が少ないというデータが得られています。【3】【5】【6】

<豆知識②>男性にも必要なイソフラボン
イソフラボンは、更年期障害の改善や美肌効果があるため、女性に必要な成分というイメージがありますが、高齢の男性に起こりやすい前立腺ガンの予防にも役立ちます。
前立腺ガンは、男性ホルモンの過剰な分泌が原因で引き起こされます。女性ホルモンであるエストロゲンの働きに近いイソフラボンを摂取することで男性ホルモンを抑え、前立腺ガンの予防効果が期待できます。

[※6:骨密度とは、骨の密度をいいます。一定の面積あたり骨に存在するカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを示し、骨の強度を表します。]
[※7:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]
[※8:心筋梗塞とは、心臓を養っている動脈に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]
[※9:脳梗塞とは、脳の血管に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]

食事やサプリメントから摂取できます

イソフラボンを含む食品

○納豆・きなこ・豆腐・油揚げ・みそなどの大豆食品
○葛の根
○レッドクローバー

こんな方におすすめ

○更年期障害でお悩みの方
○骨粗しょう症を予防したい方
○生活習慣病を予防したい方

イソフラボンの研究情報

【1】更年期の日本人女性58名に、大豆イソフラボンを1日40mg 、4週間摂取させたところ、更年期症状であるほてりが緩和され、高血圧患者での収縮期及び拡張期血圧は有意に低下したことから、大豆イソフラボンに更年期症状緩和効果があると示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11870016

【2】閉経後女性203名が、大豆イソフラボンを1日80mg とカルシウムを1日500mg を1年間摂取したところ、股関節などの骨ミネラル量の減少が緩和されたことから、大豆イソフラボンに骨粗しょう症予防効果が示唆されました。閉経後4年以上経過した、やせ型の女性、及びカルシウム摂取量が少ない方で、大豆イソフラボンの骨粗しょう症予防効果に有益であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15630287

【3】卵巣摘出更年期障害ラットにおいて、大豆イソフラボンを28日間摂取させたところ、更年期障害症状の1つ、血中総コレステロール、トリグリセリド値の上昇を抑制した。また日本人女性40名(20-60歳) において、大豆イソフラボンを1日40mg 、6ヵ月間摂取させたところ、内臓脂肪、血中脂質の改善が見られたことから、大豆イソフラボンの更年期障害予防効果が示唆されています。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902286277174432

【4】大豆を食べる習慣のないブラジル移民の閉経後の日本人女性を対象に、大豆イソフラボン1日50mg を摂取させたところ、尿中の大豆イソフラボンの量が増加し、骨粗しょう症の指標である尿中ピリジノリンの量が、日本人女性と同等まで回復しました。このことから、大豆イソフラボンには閉経後の骨粗しょう症予防効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12480802

【5】高血圧、高コレステロール血症のスコットランド人61名(年齢45歳~59歳) が、大豆タンパク質20g 以上及び大豆イソフラボン80mg を配合した食事を5週間したところ、収縮期及び拡張期血圧及び総コレステロール、HDL以外のコレステロール(LDLコレステロールなど悪玉コレステロール)が減少しました。摂取24時間後には尿中イソフラボン量が増加したことから、これらの健康機能にはイソフラボンが関係していると考えられています。従って、大豆イソフラボン及び大豆タンパク質は、生活習慣病並びに心血管疾患の予防効果が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14963058

【6】世界各国の食習慣を調査し、尿中イソフラボン量と男性の虚血性心疾患死亡率を調査した結果、尿中イソフラボンが多い国の男性ほど、虚血性心疾患死亡率が低いことがわかりました。この結果より、尿中イソフラボンが多いほど虚血性心疾患の危険が低いことから、大豆イソフラボンを摂取することの必要性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11710355

【7】年齢肌に悩む30歳代後半~40歳代前半の女性26名が、大豆イソフラボンを1日40mg (アグリコンとして)12週間摂取したところ、摂取8週間後では頬の肌の弾力が、次いで12週間後では小じわの改善が見られました。この結果より、大豆イソフラボンは年齢肌に悩む40歳前後の女性の肌の改善に役立つことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17484381

【8】イソフラボンを顔面皮膚に局所投与し、24週間後に皮膚の状態を調査したところ、表皮の厚み及び皮膚血管の増加が確認されました。このことから、イソフラボンには皮膚の健康維持効果があることが示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19450919

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イソフラボンの研究情報

・原山建朗 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・中屋豊 よくわかる栄養学の基本としくみ 秀和システム

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・厚生労働省 大豆および大豆イソフラボンに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・Uesugi S, Watanabe S, Ishiwata N, Uehara M, Ouchi K. 2004 “Effects of isoflavone supplements on bone metabolic markers and climacteric symptoms in Japanese women.” Biofactors. 2004;22(1-4):221-8.

・Chen YM, Ho SC, Lam SS, Ho SS, Woo JL. 2004 “Beneficial effect of soy isoflavones on bone mineral content was modified by years since menopause, body weight, and calcium intake: a double-blind, randomized, controlled trial.” Menopause. 2004 May-Jun;11(3):
246-54.

・Nagakura T, Matsuda S, Shichijyo K, Sugimoto H, Hata K.2003 “Studies on the Effects of Soybean Isoflavone Aglycon on Obesity and Blood Lipid Profile.” Eastern Medicine. 2003; 19: 39-50

・Yamori Y, Moriguchi EH, Teramoto T, Miura A, Fukui Y, Honda KI, Fukui M, Nara Y, Taira K, Moriguchi Y. 2002 “Soybean isoflavones reduce postmenopausal bone resorption in female Japanese immigrants in Brazil: a ten-week study.” J Am Coll Nutr. 2002 Dec;21(6):560-3.

・Sagara M, Kanda T, NJelekera M, Teramoto T, Armitage L, Birt N, Birt C, Yamori Y. 2004 “Effects of dietary intake of soy protein and isoflavones on cardiovascular disease risk factors in high risk, middle-aged men in Scotland.” J Am Coll Nutr. 2004 Feb;23(1):85-91.

・Yamori Y, Miura A, Taira K. 2001 “Implications from and for food cultures for cardiovascular diseases: Japanese food, particularly Okinawan diets.” Asia Pac J Clin Nutr. 2001;10(2):144-5.

・Izumi T, Saito M, Obata A, Arii M, Yamaguchi H, Matsuyama A. 2007 “Oral intake of soy isoflavone aglycone improves the aged skin of adult women.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2007 Feb;53(1):57-62.

・Moraes AB, Haidar MA, Soares Júnior JM, Simões MJ, Baracat EC, Patriarca MT. 2009 “The effects of topical isoflavones on postmenopausal skin: double-blind and randomized clinical trial of efficacy.” Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2009 Oct;146(2):188-92.

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