レッドクローバー

red clover
アカツメクサ ムラサキツメクサ

レッドクローバーは、古くから薬用のために利用されてきたヨーロッパ原産のハーブの一種です。女性ホルモンと似た働きを持つ成分が含まれており、更年期障害の症状の緩和や肌トラブルの改善など、女性の美容と健康に役立つ効果があることで知られています。

レッドクローバーとは?

●基本情報
レッドクローバーは、ヨーロッパ、西アジア及び北西アフリカを原産とするハーブの一種です。
マメ科シャジクソウ属の植物であり、ムラサキツメクサやアカツメクサという和名でも知られています。
レッドクローバーの茎の高さは約30~60cmであり、茎の先に約30~100個の小さな花を咲かせます。花の色が濃い赤紫色をしていることから、「レッドクローバー」と名付けられました。
レッドクローバーの葉は3片に分かれており、表面には白い斑状の模様がみられます。中世のイギリスでは、レッドクローバーの3片の葉はそれぞれ「神」「キリスト」「精霊」の三位一体と関連付けられていました。
レッドクローバーは低温でも発芽するという性質があり、早春に種まきを行い、初夏~夏にかけて開花し、収穫が行われます。

●レッドクローバーの歴史
レッドクローバーの歴史は古く、古代ローマ時代にさかのぼるといわれています。
元来、レッドクローバーは牧草として扱われていた植物であり、種小名(しゅしょうめい)[※1]であるpratense(プラテンス)には、「牧草の」という意味があります。
レッドクローバーの花を葉が付いたまま摘み取った後に洗浄し、乾燥させたものがハーブティーとして利用されており、咳止めや湿疹の改善に役立てられてきました。
現在では、レッドクローバーの持つ女性ホルモンと似た作用にも注目が集まっています。

●レッドクローバーの働き
レッドクローバーに含まれるイソフラボンは、女性ホルモンの一種であるエストロゲン[※2]と似た働きを持ちます。
エストロゲンは、美しい肌やふくよかな体つきをつくる上で欠かせない女性ホルモンです。
しかし、加齢によってエストロゲンの分泌量は減少します。特に更年期[※3]の女性はエストロゲンの分泌量が低下することによって、様々な不快症状が現れやすいといわれています。
レッドクローバーに含まれるイソフラボンは、不足しているエストロゲンを補うだけではなく、エストロゲンが過剰に分泌された時にはその分泌量を抑える抗エストロゲン作用という働きも併せ持っているため、エストロゲンの過不足を調整することができます。

また、レッドクローバーには抗炎症作用や鎮静作用があるといわれており、この働きを利用して、風邪の予防のためのハーブティーや咳止めの改善などに用いられています。

●レッドクローバーを摂取する上での注意点
レッドクローバーは女性ホルモンと似た作用を持つため、女性ホルモンのバランスが崩れやすい妊娠中や授乳中には過剰摂取に注意が必要です。
また、ホルモン剤や抗ガン剤など、婦人科系疾患の医薬品を服用している場合、レッドクローバーを摂取する際には医師への相談が推奨されています。

[※1:種小名(しゅしょうめい)とは、学名を表記する際に、属名のあとに付ける名称のことです。その種の特徴を表し、ラテン語化した形容詞が用いられます。]
[※2:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※3:更年期とは、閉経年齢の前後約10年間を表します。平均的な閉経年齢は50歳前後といわれているため、40~60歳前後の期間が更年期にあたります。]

レッドクローバーの効果

●更年期障害の症状を改善する効果
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、女性ホルモンに似た作用があり、更年期障害の症状を改善する効果があります。
女性は、年齢とともに卵巣の機能が衰え、エストロゲンの分泌量が減少することによって、様々な不快症状が現れます。これらの症状は更年期障害と呼ばれています。
更年期障害の主な症状としては、顔のほてりやのぼせ、発汗、肩こり、頭痛などの身体的なものに加えて、イライラ、不安、憂鬱など精神的な症状もみられます。
また、エストロゲンの分泌量は、年齢だけではなく無理なダイエットやストレス、喫煙、睡眠不足などの生活習慣が原因でも減少します。その結果、更年期障害に似た症状が現れるほか、月経前症候群(PMS)[※4]や生理不順などが引き起こされます。
このような症状は若年性更年期障害と呼ばれており、不規則な生活習慣を送る若い女性の間で増加しているといわれています。
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、エストロゲンの分泌を促進し、更年期障害の症状を改善する効果があります。【2】【5】【6】

●美肌効果
レッドクローバーには、肌の老化現象やトラブルを防ぎ、肌を美しく保つ効果があります。
女性らしい体をつくる上で、エストロゲンは重要な役割を果たしています。
年齢や生活習慣によりエストロゲンの分泌量が減少することによって、皮膚の真皮[※5]に存在するコラーゲンやヒアルロン酸をつくり出す力が低下します。
コラーゲンには肌のハリや弾力を保つ働きがあり、ヒアルロン酸には肌に潤いを与える働きがあるため、これらの成分が減少することによって、しわやたるみなどの肌の老化現象が引き起こされます。
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、エストロゲンの分泌を促進することによって、肌のハリや弾力を保ち、潤いを与える効果があります。

また、レッドクローバーには湿疹や乾癬(かんせん)[※6]といった皮膚疾患を改善する効果もあるといわれています。

●骨粗しょう症を予防する効果
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、骨からカルシウムが溶け出さないよう調節することで、骨粗しょう症を予防する効果があります。
カルシウムは、骨や歯だけではなく血液や筋肉、脳にも含まれています。カルシウムが不足すると、骨からカルシウムを取り出し、血液中のカルシウムの量を一定に保つという仕組みがあります。
しかし、エストロゲンの分泌量が減少すると、骨にカルシウムを蓄えておく力が低下してしまいます。
その結果、骨密度[※7]が低下し、骨がもろくなり、折れやすくなる骨粗しょう症が引き起こされやすくなります。
骨粗しょう症はエストロゲンの分泌量が低下する更年期の女性に多くみられますが、若年性更年期障害と同様に、若い世代の女性であっても、不規則な生活習慣が原因でエストロゲンの分泌量が減少し、骨粗しょう症が引き起こされる可能性があります。
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、エストロゲンの分泌を促し、骨の中にカルシウムを蓄えることで、骨粗しょう症を予防する効果があります。
また、レッドクローバーに含まれるイソフラボンには骨量を増やす働きがあるため、イソフラボンの摂取量が多い人は骨密度が高いという研究結果も報告されています。【6】

●コレステロール値を下げる効果
レッドクローバーに含まれるイソフラボンには、生活習慣病の原因とされるコレステロールの増加を予防する効果があります。
脂質の一種であるコレステロールは、細胞をつくるために必要となる成分です。しかし、現代人はバターをはじめとする動物性脂肪を多く含む食品を摂りすぎている傾向があり、血液中の悪玉(LDL)コレステロール[※8]が増加しやすいといわれています。
コレステロールが増加すると、生活習慣病が引き起こされ、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
また、更年期の女性は加齢によってエネルギーの代謝[※9]が悪くなるため、コレステロールが増加しやすいといわれています。
レッドクローバーに含まれるイソフラボンは、血液中に増えすぎたコレステロールを減少させる効果があり、生活習慣病や動脈硬化の予防に役立ちます。【1】【5】

●呼吸器の感染症を予防する効果
レッドクローバーには抗炎症作用があり、咳を伴う風邪や喘息、気管支炎などの予防に役立ちます。

[※4:月経前症候群(PMS)とは、月経の約1、2週間前から発生し、月経開始とともに消失する一連の身体的、または精神的症状の総称です。]
[※5:真皮とは、表皮の下にあり、肌の弾力を保っている部分です。コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などが存在しています。]
[※6:乾癬とは、皮膚病のひとつであり、赤い発疹を伴うほか、皮膚の細胞が生まれ変わる周期であるターンオーバーが短縮し、皮がむけやすくなるという症状がみられます。]
[※7:骨密度とは、骨の密度をいいます。一定の面積あたりの骨に存在するカルシウムなどのミネラルがどの程度あるかを示し、骨の強度を表します。]
[※8:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]
[※9:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

レッドクローバーは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○更年期障害でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○のどの炎症を予防したい方

レッドクローバーの研究情報

【1】リポタンパクやコレステロールに対するレッドクローバーの作用について調べました。平均56歳の閉経後の女性に対し、コントロール(18名)またはレッドクローバー(22名)を与えました。その結果、コントロール群に比べ、レッドクローバー摂取群は血中のLDLコレステロールとトリセリグリドが有意に減少し、また、HDLコレステロールは有意に上昇しました。このことから、レッドクローバーの摂取は血中の脂質濃度を調整することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20144173

【2】閉経後の女性(平均40歳)に対しMF11RCE(80mgのレッドクローバー含有:A群)またはプラセボ(B群)を90日間与えました。その後、HADSおよびSDS(双方とも不安・鬱に対する質問調査)を行った結果、レッドクローバーを飲用した患者のHADSの減少(不安76%減少、うつ78.3%減少)およびSDSの80.6%の減少が認められました。これらの結果からレッドクローバー含有のイソフラボン(MF11RCE)の飲用は閉経後女性の不安およびうつ症状を減少させる働きがあると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19948385

【3】レッドクローバーのイソフラボンがグルタミン酸誘発脳神経細胞(HCN1-A細胞)のダメージに対してどのような作用があるのか調べました。レッドクローバー0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/mlの添加によりグルタミン酸による脳神経細胞の死が減少し、また毒性を示すLDHの減少も認められました。これらの結果から、レッドクローバーイソフラボンは脳神経細胞の保護作用を有することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18539019

【4】レッドクローバー抽出物(MF11RCE)の、閉経期の女性の性ホルモンと子宮内膜症に対する作用について検討しました。閉経後40歳以上の女性109名に対し、プラセボまたは、MF11RCE(80mgイソフラボン)を90日間与え、7日間のウォッシュアウト期間を経て、クロスオーバーで別の被検食品を90日間与えました。その結果、プラセボに比べMF11RCE投与群は、有意にテストステロンが増加し、子宮内膜症が低下しました。これらのことから、MF11RCEの投与は、閉経後の女性のホルモンを整え、子宮内膜症などの病気を減少させる働きがある可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16513301

【5】40歳以上の閉経兆候の女性に対し、レッドクローバーイソフラボン(80mg/日)を90日間摂取させました。7日間のウォッシュアウト期間を経て、クロスオーバーで90日間与えました。その結果、プラセボに比べ、レッドクローバー投与群では、有意に閉経後の兆候が減少し、また膣内の細胞の核濃縮指数の改善が認められました。LDLコレステロールおよびトリグリセリドも減少しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16373244

【6】近年の研究から、レッドクローバーは閉経後ホルモンバランスが崩れた女性の、骨密度の低い骨を守る働きについて着目されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15107200

【7】閉経後のⅡ型糖尿病を患った女性に対し、レッドクローバー(50mg/日)を4週間投与しました。その結果プラセボと比較して、収縮期血圧(-8mmHg)および拡張期血圧(-4.3mmHg)が有意に減少していました。また、血管の機能が回復していました。これらの結果から、Ⅱ型糖尿病に対してレッドクーバーの投与は、有効である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12940870

もっと見る 閉じる

参考文献

・佐々木薫 ハーブティー事典 池田書店

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・ヴィクトリア ザック、 林 真一郎、 Victoria Zak、大橋 マキ ハーブティーバイブル 東京堂出版

・田部井満男 ハーブ・スパイス館 小学館

・板倉弘重 からだに効くハーブティー図鑑―厳選98種のハーブティーカタログ― 主婦の友社

・リエコ 大島 バークレー、 白浜美千代  英国流メディカルハーブ  説話社

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・Terzic MM, Dotlic J, Maricic S, Mihailovic T, Tosic-Race B. (2009) “Influence of red clover-derived isoflavones on serum lipid profile in postmenopausal women.” J Obstet Gynaecol Res. 2009 Dec;35(6):1091-5.

・Lipovac M, Chedraui P, Gruenhut C, Gocan A, Stammler M, Imhof M (2010) “Improvement of postmenopausal depressive and anxiety symptoms after treatment with isoflavones derived from red clover extracts.” Maturitas. 2010 Mar;65(3):258-61. Epub 2009 Nov 30.

・Occhiuto F, Zangla G, Samperi S, Palumbo DR, Pino A, De Pasquale R, Circosta C. (2008) “The phytoestrogenic isoflavones from Trifolium pratense L. (Red clover) protects human cortical neurons from glutamate toxicity.” Phytomedicine. 2008 Sep;15(9):676-82. Epub 2008 Jun 6.

・Imhof M, Gocan A, Reithmayr F, Lipovac M, Schimitzek C, Chedraui P, Huber J. (2005) “The effect of red clover isoflavones on menopausal symptoms, lipids and vaginal cytology in menopausal women: a randomized, double-blind, placebo-controlled study.” Gynecol Endocrinol. 2005 Nov;21(5):257-64.

・Pitkin J. (2004) “Red clover isoflavones in practice: a clinician’s view.” J Br Menopause Soc. 2004 Mar;10 Suppl 1:7-12.

・Howes JB, Tran D, Brillante D, Howes LG. (2003) “Effects of dietary supplementation with isoflavones from red clover on ambulatory blood pressure and endothelial function in postmenopausal type 2 diabetes.” Diabetes Obes Metab. 2003 Sep;5(5):325-32.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ