GABA(ギャバ)

gamma-aminobutyric acid
γ(ガンマ)-アミノ酪酸

GABA(ギャバ)とはアミノ酸の一種で、ストレスを軽減させる効果やリラックス効果があることで近年注目されている成分です。
脳内の興奮を鎮め、平常心を保つ手助けをしてくれる癒しの存在です。
また、血圧降下作用もあることから、高血圧から引き起こされる脳卒中などの予防にも働きかけます。

GABAとは?

●基本情報
GABAとはアミノ酸の一種で、リラックス効果や血圧を下げる効果、ストレスを軽減させる効果などがあるとして注目されている成分です。
正式名称はγ(ガンマ)-アミノ酪酸(gamma aminobutyric acid)です。

●GABAの歴史
GABAの歴史は1950年に哺乳動物の脳から発見されたところから始まります。
そこから注目され、研究の末、GABAは中枢神経で働く神経伝達物質[※1]であるということが判明しました。
これにより、1961年にはGABAを主成分とした医療用医薬品が承認されました。
1979年には消化管においても神経伝達物質として働いていることが判明し、その後人間の体の様々な部位で発見されています。
​このことから、GABAは人間の体において必要不可欠な存在であるということがわかりました。

●GABAが含まれる食品
GABAはもともと人間の体内に存在している成分ですが、漬物や味噌などの発酵食品にも含まれています。
​特にGABAは発芽玄米に多く含まれており、その含有量は、白米や玄米の数倍といわれています。
​GABAは、お麩などのもととなるグルテン[※2]に含まれる神経伝達物質グルタミン酸や、イチョウ葉エキスからも合成されます。

●GABAの代表的な働き
GABAの代表的な働きであるリラックス効果については、メディアでも多く取り上げられています。
​GABAは神経の高ぶりを抑える働きを持ち、ストレスや運動時に高まる興奮状態を抑えます。
​興奮状態では脳内のアドレナリン[※3]が活発に分泌されますが、GABAはアドレナリンの分泌を抑制します。
​GABAを多く摂ることで興奮状態を抑え、体が休まりやすい「リラックス状態」へと導きます。

GABAはアドレナリンの分泌を抑えることで血圧を正常にし、酸素の供給を助ける働きもあります。
​この血圧降下作用により、GABAは特定保健用食品(トクホ)[※4]に認定されています。

●効率良く生成するために必要な栄養素
GABAの生成に欠かせない栄養素には、カツオやマグロに多く含まれるビタミンB6が挙げられます。
​ビタミンB6たんぱく質をアミノ酸に分解するサポートをし、GABAをはじめとする神経伝達物質の合成に働きます。
​ビタミンB6の不足によって、GABAがつくられないと、イライラや情緒不安定、不眠が引き起こされます。

[※1:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※2:グルテンとは、小麦などから生成されるたんぱく質の一種です。]
[※3:アドレナリンとは、副腎髄質から分泌され、血糖を上昇させるホルモンです。]
[※4:特定保健用食品(トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]

GABAの効果

●リラックス効果
人間はリラックスしているときにα波[※5]という脳波を出します。
GABAを摂取することでこのα波が増加するため、GABAにはリラックス効果があることがわかっています。
脳がストレスを感じる仕組みには、活動、緊張などの状態をつかさどる交感神経と、休息、リラックスなどの状態をつかさどる副交感神経が大きく関わっています。
ストレスを感じると脳が緊張状態になるため、交感神経が活発に働き、神経が高ぶります。
自律神経[※6]のバランスが崩れてしまい、胃潰瘍[※7]や不眠、高血圧など、体に支障をきたしかねません。
特に胃はストレスに対して非常に敏感な器官であるため、慢性的にストレスを感じると過剰な胃酸を分泌し、胃や十二指腸の粘膜を攻撃してしまいます。
GABAは副交感神経を活発にして心と体を落ち着かせることで、このようなストレスからくる症状や悪影響を防ぐことができます。また、GABAは神経を抑制するリラックス効果から、更年期障害[※8]にみられる不定愁訴(ふていしゅうそ)[※9]を改善するということもわかっています。

GABAによって、ストレス状態がどのように変化するのかを調べた実験では、高所恐怖症の男女に吊り橋を渡らせるときに、GABAを摂取することによって、精神的なストレスが緩和されていたことがわかりました。これは吊り橋を渡る前と中間地点、渡った後に唾液を採取し、精神的なストレス状態によって唾液中に放出されるクロモグラニンAという物質を調べた結果です。
また、吊り橋を渡る前後に心理テストを行ったところ、GABAを摂取することで、緊張や不安を抑えられる効果も明らかになりました。

さらにGABAは睡眠にも関係します。
強いストレスがかかり興奮状態になると、体が睡眠に入りにくくなります。
​GABAは興奮状態を抑え、睡眠に入りやすい環境を整えてくれます。
​​また、GABAは睡眠中に生成されるため、悪循環に陥らないためにも、不足している場合は食事やサプリメントによって摂取することが大切です。【6】

●血圧を下げる効果
血圧が高い状態が続くと、動脈硬化や心臓病、脳卒中を引き起こす危険性があります。
​高血圧の原因として、塩分の過剰摂取や遺伝、ストレスなどが考えられます。

GABAは腎臓の働きを高め、血圧の上昇の原因となる塩分(ナトリウム)を排出する効果があるといわれています。
​さらに、GABAは正常血圧には影響せず、高血圧に対してのみ血圧降下作用を発揮するということもわかっています。
​動物実験はもとより、人間においても臨床試験で血圧を降下させる作用が明らかになっています。

またGABAは動脈硬化を引き起こすコレステロールと、中性脂肪の増加を抑制します。
​そのため、動脈硬化や糖尿病の予防にも期待されています。【3】【7】

[※5:α波とは、リラックス時に多く発生する脳波です。]
[※6:自律神経とは、無意識下で体全体を調整する神経です。]
[※7:胃潰瘍とは、胃の保護をする粘膜が胃液によって溶かされ、吐き気や腹痛を引き起こすことです。]
[※8:更年期障害とは、40歳代から60歳代の女性に起こりやすい症状です。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、動悸、ほてり、イライラなどの症状が現れます。]
[※9:不定愁訴とは、体調が優れないにも関わらず、主な原因となる病気が見つからない状態のことです。]

GABAは食事やサプリメントで摂取できます

GABAを含む食品

○発芽玄米
○漬物
○醤油
○味噌
○キムチ
なす
かぼちゃ

こんな方におすすめ

○ストレスを解消したい方
○寝つきが悪い方
○血圧が高い方

GABA(ギャバ)の研究情報

【1】パーキンソン病ラットの骨髄にGABAを投与したところ、パーキンソン病症状の改善が見られたことから、GABAがパーキンソン病予防に有益であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21235809

【2】ラットにGABA 50, 100mg/100g を摂取させたところ、成長ホルモン濃度およびタンパク質合成速度が高まったことから、GABAは成長促進効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16755368

【3】高血圧自然発症ラットにGABA を0.15% 含む餌を8週間摂取させたところ、血圧が低下したことから、GABAが高血圧予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15630275

【4】皮質性小脳萎縮(CCA) 患者10名を対象に、GABA含有薬「ガバペンチン」400mgの単回治療および治療後900-1600mg を4週間摂取させたところ、運動失調が改善されたことから、GABAが脳神経疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15218338

【5】グレリンは、食欲を司る物質です。グレリンを脳室内投与すると食欲を減少させることが知られています。この食欲の減少のメカニズムは、グレリンがGABAの合成および放出を抑制することによると考えられており、GABAと食欲との関連性が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22549983

【6】健常人63名を対象に、GABA 100mg を摂取させたところ、EEG(脳波)活性(α波およびβ波:精神ストレスに依存する)が低下したことから、GABAがストレス緩和効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22203366

【7】高血圧患者80名を対象に、GABA 20mg 含有するクロレラ食品を12週間摂取させたところ、収縮期ならびに拡張期血圧が低下したことから、GABAが高血圧予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19811362

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参考文献

・日経ヘルス 編 日経ヘルス サプリメント事典2008年版 日経BP社

・井上正子 監修 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・嶋尾通 編 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・Nandhu MS, Paul J, Kuruvilla KP, Malat A, Romeo C, Paulose CS. 2011 “Enhanced glutamate, IP3 and cAMP activity in the cerebral cortex of unilateral 6-hydroxydopamine induced Parkinson’s rats:effect of 5-HT, GABA and bone marrow cell supplementation.” J Biomed Sci.2011Jan 15;18:5.

・Tujioka K, Okuyama S, Yokogoshi H, Fukaya Y, Hayase K, Horie K, Kim M. 2007 “Dietary gamma-aminobutyric acid affects the brain protein synthesis rate in young rats.” Amino Acids.2007 Feb;32(2):255-60.

・Shizuka F, Kido Y, Nakazawa T, Kitajima H, Aizawa C, Kayamura H, Ichijo N. 2004 “Antihypertensive effect of gamma-amino butyric acid enriched soy products in spontaneously hypertensive rats.” Biofactors.2004;22(1-4):165-7.

・Gazulla J, Errea JM, Benavente I, Tordesillas CJ. 2004 “Treatment of ataxia in cortical cerebellar atrophy with the GABAergic drug gabapentin.” Eur Neurol.2004;52(1):7-11.

・Jonaidi H, Abbassi L, Yaghoobi MM, Kaiya H, Denbow DM, Kamali Y, Shojaei B. 2012 “The role of GABAergic system on the inhibitory effect of ghrelin on food intake in neonatal chicks.” Neurosci Lett.2012Jun 27;520(1):82-6.

・Yoto A, Murao S, Motoki M, Yokoyama Y, Horie N, Takeshima K, Masuda K, Kim M, Yokogoshi H. 2011 “Oral intake of γ-aminobutyric acid affects mood and activities of central nervous system during stressed condition induced by mental tasks.” Amino Acids.2011Dec 28.

・Shimada M, Hasegawa T, Nishimura C, Kan H, Kanno T, Nakamura T, Matsubayashi T. 2009 “Anti-hypertensive effect of gamma-aminobutyric acid (GABA)-rich Chlorella on high-normal blood pressure and borderline hypertension in placebo-controlled double blind study.” Clin Exp Hypertens.2009Jun;31(4):342-54.

・中屋豊 著 図解入門よくわかる栄養学の基本としくみ 秀和システム

・NPO日本サプリメント協会 著 サプリメント健康バイブル 小学館

・中村丁次 監修 栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版

・吉川敏一 編 医療従事者のための【完全版】機能性食品ガイド 講談社

・則岡孝子 監修 栄養成分の事典 新星出版社

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