かぼちゃとは?
●基本情報
かぼちゃは、ウリ科カボチャ属に属している野菜で、原産地は、南北アメリカ大陸です。
かぼちゃには大きく分けて、日本かぼちゃ(東洋種)、西洋かぼちゃ(西洋種)、ペポかぼちゃの3つの品種があります。
・日本かぼちゃ(東洋種)
日本かぼちゃは、メキシコ及び中央アメリカ北西部付近が原産の品種です。関東では唐茄子(とうなす)とも呼ばれています。
日本かぼちゃには、皮がごつごつと硬い「黒皮かぼちゃ」、福島・会津地方で改良された小型の「会津かぼちゃ」、煮崩れしにくく、煮物や蒸し物など日本料理に向く「菊座かぼちゃ」、京都の農家が伝統野菜として保存に努めている日本古来のかぼちゃで、ひょうたんのような形をした「鹿ケ谷かぼちゃ」などがあります。
・西洋かぼちゃ(西洋種)
西洋かぼちゃは、アンデス山脈の冷涼な土地が原産の品種です。
西洋かぼちゃは、一般的に「栗かぼちゃ」という品種が親しまれています。「栗かぼちゃ」は、糖質が多くて甘みが強く、果肉がホクホクとしているのが特徴的です。果皮色は、黒皮系、青皮系、赤皮系、白皮系と様々です。
・ペポかぼちゃ
ペポかぼちゃは、北米南部の乾燥地帯で栽培されている品種です。
果皮色は、黄色やオレンジ色、緑色など様々で、形は細長いものや手の平サイズのものが多くあります。観賞用としても人気が高く、ハロウィンで使用されるオレンジ色のかぼちゃはペポかぼちゃです。「金糸瓜」や「テーブルクイーン」などがあり、「ズッキーニ」もこの仲間に入ります。
・東洋種と西洋種の種間雑種
種間雑種には、「鉄かぶと」があります。現在では、自家菜園用がほとんどを占めています。
かぼちゃの英名は、pumpkin(パンプキン)であると一般的に知られていますが、実際に北米では、果皮がオレンジ色の種類のみがpumpkinであり、その他のかぼちゃ類は全てsquash(スクウォッシュ)と総称されています。したがって、北米で日本のかぼちゃはkabocha squash(かぼちゃ・スクウォッシュ)などと呼ばれています。
●かぼちゃの歴史
日本かぼちゃは16世紀にポルトガル船によって九州に伝えられました。当時の人々に「カンボジア産の野菜」と伝えられ、それが転じて「かぼちゃ」になったといわれています。日本の気候に適していた日本かぼちゃは、急速に日本各地に広がりました。
一方、西洋かぼちゃは19世紀頃日本に渡来しました。アメリカから伝えられ、北海道を中心に分布しました。日本に伝わった時代が日本かぼちゃより遅かったにもかかわらず、今では日本かぼちゃよりも、西洋かぼちゃの方が流通しています。これは、食生活の洋風化や嗜好の変化によるものです。今では西洋かぼちゃが市場の9割を占めています。その中でも、最も一般的なかぼちゃは「栗かぼちゃ」です。
●かぼちゃの生産地
かぼちゃの主要生産地は、中国、インド、ウクライナ、アフリカです。日本では、主に北海道で多く生産されています。
かぼちゃの旬は、国産のかぼちゃであれば5~9月、輸入のかぼちゃであれば1~5月です。
●かぼちゃの選び方
かぼちゃを選ぶ際は、大きく3つに分けてヘタ、皮、果肉に着目して選びます。
ヘタを見るときには、ヘタ自体がよく乾燥しており、ヘタの周りがややへこんでいるものが完熟している証です。皮は硬く、ずっしりと重いものが良品です。また、西洋かぼちゃであれば、皮の緑色が濃いものが良いとされています。果肉は厚く、黄色が濃いものがβ-カロテンが多く含まれていることを表しています。また果肉についている種は厚みがあり、ふっくらしているものが良いとされています。
●かぼちゃの調理方法
かぼちゃは完全に熟してから食します。皮は硬いですが、長く煮ることでやわらかくなり食べることができます。
かぼちゃを煮物にする場合は、ホクホク感を大切にするために煮すぎないようにすることがポイントです。また、ところどころ皮をむき、面取りをすることで味が染み込みやすく、煮崩れしにくくなります。
日本かぼちゃは繊維が多く、粘り気が強いため、型崩れしにくいという特徴を持ちます。そのため天ぷらや、味噌汁の具、煮物に適しています。
西洋かぼちゃはホクホクとした粉質のため、お菓子やポタージュに適しています。
●かぼちゃの保存方法
かぼちゃを丸ごと保存する場合は、新聞紙に包み風通しの良い涼しい場所で保存します。
よく育ったかぼちゃは、厚く硬い外側の外皮で覆われているおかげで、夏に採れたものを冬まで保存しておいてもビタミン類は失われません。
切ったかぼちゃを保存する場合は、種とわたを取り除き、ラップを密着させて包み冷蔵庫の野菜室で保存します。硬くて包丁が入りにくいかぼちゃは、種を取り、ラップで包んで電子レンジで加熱するとやわらかくなって包丁が入りやすくなります。数日以内に食べきれないときは、加熱してつぶしてから冷凍する方法もとられています。
●かぼちゃに含まれる成分と性質
かぼちゃには、β-カロテンが多く含まれるほか、抗酸化作用があるビタミンEやビタミンCをはじめ、食物繊維、ビタミンB群、カリウムなどがバランスよく含まれています。
かぼちゃの果肉の黄色い色の元となっているのはβ-カロテンです。β-カロテンはカロテノイドといわれる天然色素のひとつで、体内で必要に応じてビタミンAに変換されます。
また、かぼちゃは野菜の中でも比較的多くのビタミンEを含みます。成人でかぼちゃを200g程度食べれば、1日に必要なビタミンEを摂れるほどです。
β-カロテンとビタミンEは、油と一緒に摂取すると体内での吸収率が高まるという性質を持っているため、油を使用して調理することで、効率的に栄養が摂取できます。
西洋かぼちゃと日本かぼちゃを比較すると、栄養的には西洋かぼちゃの方が優れています。茹でたものを比べると、日本かぼちゃ100g中に含まれるβ-カロテンは830μg(マイクログラム)なのに対し、西洋かぼちゃは4000μg、またビタミンCは日本かぼちゃの約2倍も多く含まれています。
かぼちゃ100gで、1日に必要なビタミンC、ビタミンEの約半分の量が摂れるといわれているほどです。
また、ミネラルも豊富で、カリウム、カルシウム、ナトリウム、亜鉛、鉄を多く含みます。
●かぼちゃの種子に含まれる成分と性質
かぼちゃの果肉は食材として一般的ですが、実はかぼちゃの種にも栄養分が豊富に含まれています。かぼちゃの種子には、必須脂肪酸のリノール酸のほか、骨の発育を助けるマンガン、味覚を正常に保つ亜鉛なども含まれ、血中コレステロール値の上昇を抑制する効果を持つほか、高血圧の予防、更年期症状の緩和にも役立ちます。
また、漢方ではかぼちゃの種子を「南瓜仁(なんかにん)」といい、低血圧の改善などに用いられています。
<豆知識>かぼちゃの食べ頃
かぼちゃは、でんぷんを糖に変える酵素を含んでおり、貯蔵することによって徐々に甘みが増します。
そのため、かぼちゃは収穫直後よりも収穫後約1ヵ月で甘みがピークとなり食べ頃を迎えます。また、低温でゆっくりと加熱することでも甘みが増す野菜です。
日本では昔から「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」といわれており、現在でも冬至にかぼちゃを食べる風習が残っています。
この風習は、かぼちゃの甘みが出るには時間がかかり、晩秋以降が食べ頃になることに起因しています。また、年末まで日持ちする数少ない野菜であることも理由のひとつといわれています。
かぼちゃの効果
かぼちゃには、様々な栄養素がバランスよく含まれており、以下のような健康に対する働きが期待できます。
●免疫力を高める効果
かぼちゃに含まれているβ-カロテンは、体内でビタミンAとして働き、皮膚・粘膜を丈夫にすることで体の免疫力を高めてくれます。皮膚や粘膜は、ウイルスから体を守ってくれる大切な役割を果たしています。
また、かぼちゃにはビタミンCも豊富に含まれています。ビタミンCは、白血球[※1]の働きを強化し、自らもウイルスに攻撃する役割も果たしているため、β-カロテンとの相乗効果が期待できます。
免疫力が高まることで、風邪を引きにくく、回復力の高い丈夫な体をつくることができます。
●便秘を改善する効果
かぼちゃには、腸内環境を整える働きを持つ食物繊維が豊富に含まれています。
便秘とは、便の水分が減り、硬くなることで、なかなか排泄ができない状態をいいます。食物繊維は、腸のぜん動運動[※2]を高め、便の排泄を促進します。
●貧血を予防する効果
かぼちゃは鉄分を多く含みます。
鉄の補給源としてかぼちゃを摂ることで、貧血の予防にも役立ちます。【4】【5】
●冷え性や肩こりを予防する効果
冷え性や肩こりは、血流が悪くなることが原因で起こりやすくなります。
かぼちゃに含まれているビタミンEが、体のすみずみの血管にまで血液が流れるように赤血球を変形させたり、血管を広げる役割を果たすことで、血行の改善が期待されます。
したがって、ビタミンEの含有量が野菜の中でもトップクラスであるかぼちゃには、冷え性や肩こりを効果的に軽減させる作用があると考えられています。【3】
●美肌効果
かぼちゃには非常に多くのビタミンCとビタミンEが含まれています。
どちらのビタミンも、体内の細胞の酸化を防いでくれる大切な栄養素です。
ビタミンCは「美容のビタミン」と呼ばれ、コラーゲン生成に不可欠な栄養素です。コラーゲンは、細胞の結合を強くすることで、皮膚などを丈夫にして肌のハリを保ちます。さらに、シミの元であるメラニン色素の生成を防ぐ働きがあるため、美肌効果が期待できます。
ビタミンEは「若返りのビタミン」といわれており、老化の原因である過酸化脂質[※3]を生成しないように活性酸素[※4]から細胞を守ります。
●老化を防ぐ効果
かぼちゃは老化防止作用のあるビタミンEをたっぷりと含んでいます。
老化や病気の原因となる過酸化脂質の生成を防ぎ、細胞の老化を防ぐ働きをしています。
[※1:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※2:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※3:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増したことで強い酸化力を持った酸素です。紫外線やストレスなどにより体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
かぼちゃは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○免疫力を向上させたい方
○風邪をひきやすい方
○便秘でお悩みの方
○貧血でお悩みの方
○冷え性や肩こりでお悩みの方
○美肌を目指したい方
○老化を防ぎたい方
かぼちゃの研究情報
【1】かぼちゃに含まれる有効成分リグナン成分ジハイドロコニフィルアルコールは脂肪細胞に働きかけ、肝臓での脂肪合成と脂肪蓄積を抑制する働きを持つため、かぼちゃが抗肥満作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22262865
【2】かぼちゃ種子油は一酸化窒素合成系にはたらきかけることで、高血圧予防作用を有します。また、心電図でのRR間隔[※6]、P波[※7]持続およびST上昇[※8]を正常化することで、心疾患保護作用も有します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22082068
【3】閉経後女性を対象に、かぼちゃ種子抽出物を摂取させたところ、閉経による血圧上昇と善玉(HDL)コレステロールの低下が抑制されたほか、ほてりや頭痛、関節の痛みといった更年期症状も緩和されたことから、かぼちゃ種子が更年期障害予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21545273
【4】鉄分豊かな強化穀類やかぼちゃをとることにより、貧血女性の鉄分や鉄輸送タンパク質であるトランスフェリンが増加しました。特にその効果は、強化穀類のみを取るよりも、かぼちゃを摂って鉄分供給源を複数にすることでより効果的になりました。 【5】西洋かぼちゃ種子の栄養成分として炭水化物が24.30%、脂質51.49%、タンパク質16.80%でした。またミネラルも豊富でカリウム(39.00ppm)、ナトリウム(11.50ppm) およびカルシウム(15.00ppm)、亜鉛(0.084ppm)、鉄(0.032ppm)を含んでおり、かぼちゃが栄養豊富であることが示唆されました。 【6】かぼちゃ葉部にはポリフェノールが含まれており、肝臓障害による血清アルカリホスファターゼ(ALP)、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)およびグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT) の上昇を抑制することから、かぼちゃ葉が肝臓保護作用を持つと考えられています。 ・荻野善元 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社 ・八巻孝夫 食の医学館 小学館 ・高橋秀雄 あたらしい栄養学 高橋書店 ・田中平三.門脇考.篠塚和正.清水俊雄.山田和彦. 監修 健康食品のすべて-ナチュラルメディシン・データベース- 同文書院 ・永岡修一 目で見る食材便利ノート 永岡書店 ・江口克彦 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所 ・白澤照司 花図鑑 野菜 星雲社 ・Lee J, Kim D, Choi J, Choi H, Ryu JH, Jeong J, Park EJ, Kim SH, Kim S. 2012 “Dehydrodiconiferyl alcohol isolated from Cucurbita moschata shows anti-adipogenic and anti-lipogenic effects in 3T3-L1 cells and primary mouse embryonic fibroblasts.” J Biol Chem. 2012 Mar 16;287(12):8839-51. ・El-Mosallamy AE, Sleem AA, Abdel-Salam OM, Shaffie N, Kenawy SA. 2012 “Antihypertensive and cardioprotective effects of pumpkin seed oil.” J Med Food. 2012 Feb;15(2):180-9. ・Gossell-Williams M, Hyde C, Hunter T, Simms-Stewart D, Fletcher H, McGrowder D, Walters CA. 2011 “Improvement in HDL cholesterol in postmenopausal women supplemented with pumpkin seed oil: pilot study.” Climacteric. 2011 Oct;14(5):558-64. ・Naghii MR, Mofid M. 2007 “Impact of daily consumption of iron fortified ready-to-eat cereal and pumpkin seed kernels (Cucurbita pepo) on serum iron in adult women.” Biofactors. 2007;30(1):19-26. ・Ojiako OA, Igwe CU. 2007 “Nutritional and anti-nutritional compositions of Cleome rutidosperma, Lagenaria siceraria, and Cucurbita maxima seeds from Nigeria.” J Med Food. 2007 Dec;10(4):735-8. ・Nwanna EE, Oboh G. 2007 “Antioxidant and hepatoprotective properties of polyphenol extracts from Telfairia occidentalis (fluted pumpkin) leaves on acetaminophen induced liver damage.” Pak J Biol Sci. 2007 Aug 15;10(16):2682-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18198398
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19070082参考文献