ボイセンベリー

boysenberry
Rubus sp. Hybrid Boysen

ボイセンベリーは深紫色の甘酸っぱい果実を付けるベリーです。ビタミン、ミネラル、ポリフェノールをはじめ、様々な栄養成分を豊富に含むことから「ベリーの宝石」とも呼ばれています。ジュースやジャムの材料として用いられる他、抗酸化作用や美肌効果から近年では健康食品の原材料としても注目されています。

ボイセンベリーとは

●基本情報
ボイセンベリーはバラ科キイチゴ属の植物で、アメリカを原産とするつる性の多年性植物[※1]であり、ローガンベリー、ラズベリーブラックベリーの交配種といわれています。ボイセンベリーは発芽から結実までには約1年半かかり、2月~3月の早春には白い花を咲かせ、4月~6月の初夏に実を付けます。最初は小さくてうすい黄緑色をしている果実ですが、完熟すると深紫色の3~4cmの少し大きめの果実になります。
ボイセンベリーの生の果実は傷みやすいため多くの場合ジュースやジャムなどに加工されたものが流通していますが、欧米やニュージーランドでは日常的に食卓に並ぶほど親しみのある果実です。

●ボイセンベリーの歴史
1920年代末期にアメリカ農務省のジョージ・ダロー氏とカリフォルニアのベリーフルーツの農園主ウォルター・ノッツ氏がルドルフ・ボイセン氏の農場跡地を訪れた際に、発見したのがボイセンベリーです。その後、カリフォルニアにあるノッツ氏のノッツ・ベリー農園で栽培に成功し、そこで最初にボイセンベリーの販売を開始しました。
1937年にニュージーランドに紹介されて以来、ボイセンベリーの産業は勢いよく成長し、1987年には生産者・輸出業者・農産物加工業者の代表者からなるニュージーランド・ボイセンベリー協議会ニュージーランド政府条例に認定されました。その後1990年、ボイセンベリーはニュージーランド政府の許可産業となりました。
ボイセンベリーの名は、最初に栽培していたボイセン氏の名前に由来しています。

●ボイセンベリーの生産地
ボイセンベリーは欧米やニュージーランドで広く親しまれている果実ですが、世界の生産量の約60%がニュージーランドで栽培されています。日本では香川県などで盛んに栽培されています。

●ボイセンベリーに含まれる成分と性質
ボイセンベリーには葉酸ビタミンCビタミンAなどのビタミン亜鉛カルシウムなどのミネラルアントシアニンやエラグ酸などのポリフェノールをはじめ、様々な栄養成分が豊富に含まれています。中でも赤血球を作るのに必要な葉酸や美白効果のあるエラグ酸など、ボイセンベリーには特に女性に必要な栄養成分が多く含まれています。
エラグ酸は美白効果が知られていますが、エラグ酸同士が結合しやすく分子量の大きい重合体になることから、吸収が良くないといわれています。しかし、ボイセンベリーに含まれるエラグ酸の多くは結合しにくいフリー体であるため、吸収されやすいという特徴があります。

[※1:多年性植物とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する植物のことです。]

ボイセンベリーの効果

●美肌・美白効果
ボイセンベリーに含まれるエラグ酸には美白効果があります。人間の皮膚は紫外線の刺激を受けると、アミノ酸のひとつであるチロシンを原料に色素細胞であるメラノサイトがメラニンという黒い色素をつくり出し、それがシミやそばかすの原因となります。メラノサイトがメラニンをつくり出す際に働くのがチロシナーゼという酵素です。エラグ酸にはチロシナーゼの働きを抑制する作用があることから、薬用化粧品の美白成分として用いられています。また、ボイセンベリーにはコラーゲンの合成を助ける働きがあるビタミンCが含まれることから、シワにも効果を発揮します。●貧血を予防する効果
ボイセンベリーには葉酸が豊富に含まれています。葉酸はビタミンB12と協力して新しい赤血球を生成するのに必要な成分のため「造血のビタミン」ともいわれています。さらに、ボイセンベリーには血液中で酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビン[※2]の構成成分である鉄が含まれることから、貧血の予防に役立ちます。●老化を防ぐ効果
老化の発生要因のひとつに活性酸素[※3]がありますが、ボイセンベリーには抗酸化力[※4]を持つビタミンCやポリフェノールが含まれています。中でもポリフェノールの一種エラグ酸は抗酸化作用が高く、またボイセンベリーに含まれているエラグ酸も吸収にすぐれたフリー体であることも魅力のひとつです。
また、最近ではボイセンベリーを与えたラットで、アスベストが原因のガン「中皮腫」の発症例が少ないことがわかっており、ボイセンベリーのポリフェノールに発症を抑制する作用があるのではないかとして、研究が進められています。【1】【2】●視機能を改善する効果
ものを見るとき、人は対象物を光の情報として捉えて信号化し、その信号を脳に伝えることで判断・認識しています。この信号を脳に伝える働きをしているのが目の網膜に存在するロドプシン[※5]というたんぱく質で、光を受けるとロドプシンが分解されることで電気信号が生じます。その後新たな光の情報を得るためにロドプシンは再合成されますが、目を酷使することでロドプシンの再合成が遅れてしまい、その結果ショボつく・ぼやけるなどの目の疲れが現れます。ボイセンベリーに含まれるアントシアニンには、ロドプシンの再合成を促し目の健康を維持する働きがあります。【3】
また、ボイセンベリーにはロドプシンのもととなるビタミンAも含まれています。

[※2:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質たんぱく質DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※4:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※5:ロドプシンとは、網膜に存在している色素であり、視紅とも呼ばれている物質です。とらえた光の情報を、脳に電気信号として送る役割を担っています。]

ボイセンベリーはこんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○貧血でお悩みの方
○老化を防ぎたい方
○生活習慣病を予防したい方
○目の健康を維持したい方
○目の疲れが気になる方

ボイセンベリーの研究情報

【1】野菜や果物の抽出物を摂取することは年齢に関連した学習、記憶、神経系のシグナルなどに対して良いとされている。今回、ラットを使用し様々なベリーが抗炎症や酸化ストレスに対して影響があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23598603

【2】様々なベリーの抗酸化作用(ORAC)について調べたところ、ボイセンベリーは抗酸化作用に優れ、含まれているポリフェノール成分エラグ酸も吸収にすぐれたフリー体であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12033817

【3】ボイセンベリーの成分が示す機能性について調査したところ、アントシアニンを豊富に含むほか、様々な抗酸化作用を持つことが確認されました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/10016464968

参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・中村丁次 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版

・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・Shukitt-Hale B, Galli RL, Meterko V, Carey A, Bielinski DF, McGhie T, Joseph JA. (2005) “Dietary supplementation with fruit polyphenolics ameliorates age-related deficits in behavior and neuronal markers of inflammation and oxidative stress.” Age (Dordr). 2005 Mar;27(1):49-57.

・Wada L, Ou B. (2002) “Antioxidant activity and phenolic content of Oregon caneberries.” J Agric Food Chem. 2002 Jun 5;50(12):3495-500.

・KUBOMURA Kiyoko (2005) “Boysenberry as a functional food ingredient” Journal for the integrated study of dietary habits 2005 16(1), 44-49

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