ミネラル類とは?
●基本情報
ミネラル類とは、人間にとって必要不可欠な五大栄養素のひとつで、体の組織をつくる原料となり、体の働きを維持・調節する働きを持つ微量栄養素です。
人間の体の約96%は、炭素、水素、酸素、窒素で構成される炭水化物 (糖質)やたんぱく質、脂質、ビタミン類などの有機物と水分からできています。残りの約4%を構成しているのがミネラル類 (無機質)です。
しかし、体内でミネラル類をつくることはできないため、食品やサプリメントで摂取する必要があります。多すぎても少なすぎても健康の維持増進には良くないため、バランス良く摂取することが大切です。
ミネラル類は、地球上に存在する118種類の元素のうち114種類が該当します。それらのミネラルの中で、人間の体内に存在し、不足すると健康に害を及ぼすなど栄養素として欠かせないことが明らかになっているものを必須ミネラルといい、現在13種類が必須ミネラルとされています。
ミネラル (mineral)という名前は、mine (鉱山・鉱石など)や金属を意味するmetalという言葉に由来しています。ミネラルは金属元素で、それぞれの名前は発見された場所の地名やギリシャ神話、その金属を含んだ物質の色など様々な由来から名付けられています。
<豆知識>必須ミネラル以外にも、体に必要なミネラルがある
日本人の食事摂取基準 [※1]では、必須ミネラルである13種類のミネラルが示されています。しかし、必須ミネラル以外にも体に必要だと明らかになっているミネラルが4種類あります。以下の4種類のミネラルが食事摂取基準に定められていない理由は、たんぱく質やビタミンなど他の栄養素に含まれているため、それらの基準を示すことでミネラルも同時に摂取できるからです。その他、スズやニッケル、金などの多くの元素が体内に含まれていますが、その必要性については未知のことが多く、現在研究が進められています。
<硫黄>たんぱく質に含まれるミネラルです。皮膚、髪、爪の形成に働きます。また、糖質や脂質の代謝をサポートする役割もあります。
<コバルト>赤血球の色素生成など造血に働きます。
<フッ素>虫歯の予防などに効果があるとされていて、海外では摂取基準が示されることもありますが、日本では示されていません。
<塩素>食塩から摂取できるため不足することはほとんどありません。塩素は胃酸の成分として消化の過程で働くなど、殺菌作用があります。
●ミネラル類の種類
必須ミネラルは大きく2つに分類され、体内の量が多いものを多量ミネラル、少ないものを微量ミネラルと呼びます。多量ミネラルは、体内のミネラル類の99%以上を占めています。微量ミネラルは1日の必要量が100 mg以下と極めて少なく、中には1 mgに満たないものもありますが、人間にとって必要不可欠なため、それぞれ適切な量をバランス良く摂取することが大切です。
多量ミネラル
<ナトリウム>
ナトリウムは食塩の成分でもあるため、調味料や加工食品などに多く含まれます。人間の体内には成人で約100g存在し、骨や体内の水分中に存在しています。食塩の摂取過剰が問題にされがちですが、人間にとっては必要不可欠なミネラルです。
ナトリウムは多くの食品に含まれているため、不足の心配はありません。一方で、ナトリウムを過剰に摂取し続けると、体内に蓄積しやすくなりむくみや高血圧の原因となります。また、ナトリウムを摂りすぎると胃ガンや脳卒中の危険性も高まります。
<カリウム>
カリウムは、特に野菜、芋、果物などの植物性食品に多く含まれ、水に溶けやすい性質を持っています。
カリウムは人間の体内に約100~150gあり、そのほとんどが細胞中に存在しています。カリウムはナトリウムと深く関わり、体内のナトリウムを排泄しやすくする働きがあります。そのためカリウムは高血圧を予防する働きが期待できます。
<カルシウム>
カルシウムは、骨や歯を構成し、乳製品や小魚などに多く含まれます。人間の体に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%の比率を占めています。そのうち99%が骨や歯に存在しており、残りの1%は血液などの体液や筋肉、細胞に分布し、体の様々な機能を調整しています。不足すると、骨粗しょう症やイライラの原因のひとつとなります。
<マグネシウム>
マグネシウムは、ナッツ類や魚介類、精製していない穀物に多く含まれます。カルシウムと密接な関わりがあり、骨や歯の形成に必要な栄養素です。また、体内で約300種類以上もの酵素の働きを助ける役割を担い、エネルギー産生を助けるとともに、血液循環を正常に保つために働いています。不足すると、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞や筋肉の痙攣、神経過敏症などの症状が現れます。また、骨粗しょう症や糖尿病などの生活習慣病の危険性も高まります。
<リン>
リンは幅広く様々な食品に含まれ、加工食品をつくる時に食品添加物としても使用されています。カルシウムの次に人間の体内に多く存在するミネラルで、体重の約1%にもなります。リンは吸収されやすいため、血液中の濃度にすぐに影響を及ぼします。しかし、体内のホルモンが過剰にならないように調整し、過剰なリンを尿中に排泄します。
通常リンが不足する心配はありません。しかし、リンを摂りすぎるとリンの濃度を調節するホルモンを分泌する器官に異常が起こることがあります。
微量ミネラル
<鉄>
鉄はレバーや赤身の肉や魚、ヒジキや一部の野菜などに多く含まれます。人間の体内には約3~4gあり、そのうち約70%は血液に、約4%は筋肉に存在しており、体が酸素を利用して生命活動を維持するために働くことから機能鉄と呼ばれています。残りは肝臓や骨髄で機能鉄の不足に備えて蓄えているため、貯蔵鉄と呼ばれています。
鉄は吸収率が低い栄養素で、体内から排泄される量の何倍もの摂取が必要です。また、月経のある女性や妊婦の場合は特に不足しがちで、鉄が不足すると貧血になります。成長期の子どもや女性は積極的に摂取する必要があります。
<銅>
銅は、甲殻類やイカ、タコ、レバーなどに多く含まれます。人間の体内には約80mg存在し、その約50%が骨や筋肉に、10%が肝臓に、そのほかは血液などに存在します。
銅が不足すると、貧血になるほか、骨がもろくなったり毛髪の色素が抜けたり、脂質や糖の代謝に異常が起きることがあります。一方で、銅はミネラルの中で毒性が低く、過剰に摂った分は排泄されるため過剰摂取によって健康を害する心配はありません。しかし、遺伝的に銅が体内に蓄積するウィルソン病という病気があり、重度の肝臓障害、腎不全、脳神経障害などが起こります。
<亜鉛>
亜鉛は魚介類や肉類など動物性食品に多く含まれます。人間の体内では血液や皮膚に多く、約2g存在しています。そのほか骨、腎臓、肝臓、脳、男性の場合前立腺に多く存在します。
亜鉛は体内での様々な代謝 [※2]に関わっているため、亜鉛が不足すると細胞やたんぱく質の合成がうまくいかず、子どもの場合は発育が遅れます。また、舌の表面にある味を感じ取る細胞が生まれ変わる機能が落ちるため、味覚障害が起こります。皮膚炎や、免疫力の低下もみられます。
<ヨウ素>
ヨウ素は、海藻や魚介類に多く含まれます。海産物を多く摂取する習慣がある日本人の場合、ヨウ素が不足する心配はありませんが、世界的には不足しがちな栄養素です。ヨウ素は人間の体内に約10~20 mgあり、そのほとんどがのどの辺りにある甲状腺に存在しています。甲状腺は、代謝の維持に必要な様々なホルモンを分泌する器官で、ヨウ素は甲状腺から分泌されるホルモンの構成成分となり働いています。
ヨウ素の吸収率は高く、日本では不足による欠乏症が見られることはありませんが、ヨウ素が不足すると甲状腺が腫れる甲状腺肥大や、甲状腺腫が起こります。成長期に不足した場合には、成長障害や脳の未発達などが見られます。ヨウ素を摂りすぎた場合にも、甲状腺ホルモンがうまくつくれなくなるため、ヨウ素が不足した時と同じ症状が見られます。
<セレン>
セレンは、わかさぎやかつおなど魚介類に多く含まれます。活性酸素を打ち消す過程で働く酵素やたんぱく質を構成し、体内の抗酸化作用 [※3]において重要な役割を担っています。
セレンの吸収や働きは、はっきりとは明らかになっていませんがセレンが不足すると、克山病という病気が起こります。克山病は心筋症の一種で、うっ血性心不全、心臓突然死、不整脈などの症状がみられます。小児や妊娠期の女性に多く、セレン剤を飲むことによって発生率・死亡率を激減させることが明らかとなっています。
<クロム>
クロムは様々な食品に微量ずつ含まれる、代謝に関わるミネラルです。血糖値、血圧、コレステロール値を下げる働きに関わり、特に血糖値を調節するインスリンというホルモンの働きを助けます。人間の体内には約2mg存在し、現在必須と考えられているミネラルの中では最も微量です。必要量も微量なため、通常クロムが不足することはありませんが、入院などでクロムが欠乏した場合には、糖の代謝異常、成長障害、脂質やたんぱく質の代謝異常、角膜の異常、動脈硬化、脂質異常症などが起こります。
<マンガン>
マンガンは、穀類や野菜類、豆類に多く含まれ、人間の体内には約12~20 mg存在しています。マンガン自体は銀白色の金属ですが、空気中では酸化し、表面が黒くなります。体内では代謝に関わる酵素の構成成分となったり、酵素を活性化する成分として様々な働きをしています。
マンガンは植物性食品に広く含まれているため、不足する心配はなく、過剰摂取によって健康を害する心配もありません。しかし、鉱山労働者に粉じんによる中毒症が起こったことが報告され、中毒症状としては肺炎や中枢神経の障害が起こります。
<モリブデン>
モリブデンは、豆類に多く含まれます。働きなどの詳細は明らかになっていませんが、肝臓に比較的多く存在し、酵素の構成成分として働いたり、尿酸の代謝に関わっています。
モリブデンの吸収率は高く、過剰な分は排泄されて体内の濃度が一定に保たれています。通常は、モリブデンの不足や摂取過剰によって健康に害を及ぼす心配はありません。しかし、モリブデンが構成成分となっている酵素が遺伝的に欠損している場合、脳の委縮や痙攣、精神異常、目の水晶体異常などがみられます。
[※1:日本人の食事摂取基準とは、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的に、エネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示したものです。]
[※2:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※3:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
ミネラル類の効果
ミネラル類の役割は主に次の4つに分けられます。
①骨・血液などからだの構成成分となる作用
②酵素の働きをサポートする作用
③体液の浸透圧・pHを調整する作用
④神経・筋肉機能を正常に保つ作用
種類によって働きが異なりますが、それぞれ体の機能維持や調節に必要不可欠な栄養素です。
多量ミネラル
●細胞の機能を維持する効果<ナトリウム、カリウム>
人間は約60兆個もの細胞からできており、生きていくためには細胞の機能を維持することが必要です。細胞は、細胞壁で隔たれており、細胞の内外には水分が必要です。ナトリウムは細胞外の水分に、カリウムは細胞内の水分に多く存在し、これらの濃度は、細胞の水分量や働きに大きく影響するため、常に適切な濃度を保つように調節されています。細胞の内外で水分やナトリウム・カリウム濃度のバランスが崩れると細胞が正常に働くことができなくなるため、ナトリウムやカリウムはともに細胞の機能を維持し、生命活動そのものを維持する効果があるといえます。
●丈夫な骨や歯をつくる効果<カルシウム、マグネシウム、リン>
カルシウムは骨や歯の主要な構成成分で、リンやマグネシウムなどとともに、丈夫な体の土台となっています。私たちにとって骨は、体を支えたり、内臓を守ったりと重要な働きをしています。
骨はカルシウムの貯蔵庫としての役割もあり、体内でカルシウムが不足した時に、骨に貯蔵しておいたカルシウムが血液中に溶け出て不足分を補います。そのため、骨にあるカルシウムは「貯蔵カルシウム」と呼ばれています。
骨をつくる主な成分はリン酸カルシウムで、体内のリンの約80%が骨や歯に利用されています。骨の中でもカルシウムの次に多く含まれており、カルシウムと結びついて骨の硬さを保つ役割を担っています。
マグネシウムはリン酸カルシウムの結晶の中に存在して結晶に弾力性を与え、しなやかな骨の維持、形成に役立っています。丈夫な骨や歯をつくるために、体内のカルシウム、マグネシウム、リンをバランス良く摂取することが大切です。【1】【2】
微量ミネラル
●貧血を予防する効果<鉄、銅>
鉄は血液中の赤血球をつくる、ヘモグロビンを構成する重要なミネラルです。ヘモグロビンは、酸素を全身の細胞に運ぶ重要な役割を担っています。細胞は常に酸素が必要ですが、鉄が不足するとヘモグロビンの合成ができなくなり貧血となって、酸素が不足してしまいます。
また、鉄は血液中の酸素を筋肉に取り込む働きもあり、体が酸素を利用するために働いています。
銅は、たんぱく質と結びついた形で血液中に存在し、主にセルロプラスミンという酵素たんぱく質 [※4]を構成する成分となっています。セルロプラスミンは鉄の代謝に必要な物質で、鉄を体内で利用できる形に変える働きをしています。鉄は、全身に酸素を運搬するヘモグロビンという物質の合成に必要ですが、ヘモグロビンに鉄が組み込まれるためには、セルロプラスミンの働きによって鉄を利用できる形にする必要があります。
銅が不足すると鉄を利用できないため、両方をバランス良く摂取することで貧血を予防する効果があります。【3】【4】
●成長を促進する効果<亜鉛、ヨウ素>
亜鉛は、体内で行われている代謝の過程で必要な200種類以上もの酵素の構成成分として働きます。
代謝の過程では、細胞分裂を正常に行って新しい細胞をつくったり、たんぱく質の合成を行います。亜鉛はこれらの働きに関わるため、体の成長や皮膚の炎症、傷の回復を助ける効果があります。【5】
ヨウ素は、代謝の維持に重要な、チロキシンやトリヨードチロニンといった甲状腺ホルモンをつくるときの材料となって働きます。甲状腺ホルモンは、たんぱく質の合成に関わり、基礎代謝を促す、酸素消費量を増加させるなど細胞の新陳代謝で大切な役割を担っています。このため、ヨウ素は成長期では発育を促進し、成人では基礎代謝を促進する効果があります。【6】
●老化や動脈硬化を予防する効果<セレン>
セレンは、活性酸素と戦う抗酸化酵素の合成に必要で、酸化 [※5]を防ぎ、老化や動脈硬化を予防する効果があります。
体を構成する細胞の膜などに含まれる不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすく、酸化されると体の組織を老化させたり、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化は、多くの生活習慣病にもつながるため、セレンなどを摂り、体の内側から抗酸化力を高め、酸化を防ぐことが大切です。【7】
●糖尿病を予防する効果<クロム>
クロムは、インスリンという糖質をエネルギーに変えて血糖値 [※6]を下げるホルモンが働くために必要なミネラルです。
食事から摂った糖質は、分解され血液中に吸収されるとインスリンの働きによって筋肉や肝臓など全身の細胞に取り込まれます。筋肉に取り込まれるとエネルギーとして使われるほか、肝臓や筋肉でエネルギー源として貯えられます。しかし、過剰なクロムは脂肪細胞に蓄積されます。
クロムはインスリンの作用を高めるための材料となってインスリンの働きを助け、血糖値を下げる方向に働きます。そのため、必要なクロムが不足すると、インスリンがうまく働かずエネルギー源であるブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込むことができなくなり、高血糖の状態が続くとそのまま糖尿病になる恐れもあることから、糖尿病を予防する効果があるといえます。【8】
●骨の健康を保つ効果<マンガン>
マンガンは代謝の過程で働く酵素の構成成分となり、骨の代謝に関わっています。骨の代謝は、骨をつくる働きと骨を壊す働きのことで、これらがバランス良く行われることによって骨は常に新しく生まれ変わっています。マンガンは骨をつくる働きにも、壊す働きにも必要ですが、特に骨をつくる働きには重要で、マンガンが不足することによって成長障害がみられたという動物実験の結果が報告されています。
●代謝を助ける効果<モリブデン>
モリブデンは、キサンチンオキシダーゼやアルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼという三種類の酸化酵素の働きを助ける補酵素です。これらは体内で様々な代謝に関わり、特に尿酸が合成されるために必要不可欠です。尿酸は代謝の過程で発生した様々な物質が排泄される、最終老廃物です。
モリブデンの働きの詳細は明らかになっていませんが、ほかにも銅や鉄の代謝などに関わっていることが分かっています。【9】
[※4:酵素たんぱく質とは、たんぱく質の一種で、代謝を助ける酵素の働きをするものです。]
[※5:酸化とは、物質が酸素と化合し、電子を失うことをいいます。サビつきともいわれています。]
[※6:血糖値とは、血液中にブドウ糖がどれくらいあるのかを示すものです。ブドウ糖が血液中にあふれてしまうと血糖値が高くなります。]
ミネラル類は食事やサプリメントで摂取できます
ミネラル類の研究情報
【1】610名の慢性腎疾患女性に2年間、カルシウム1200mg とビタミンD3 800IUを摂取させたところ、腎障害の程度に限らず、すべての腎疾患患者で骨密度ミネラルが上昇したことがわかった。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22551881
【2】8~14歳の女性120名にマグネシウムを1日当たり300mg 、12ヶ月間摂取させたところ、股関節の骨密度が増加したことから、マグネシウムが骨の健康に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17018656
【3】鉄の摂取と貧血に関する研究(7件:7000名)において、鉄を1日あたり4.9~20.0mg/kg 、3~24ヶ月間摂取させたところ、ヘモグロビンや血清フェリチンの増加が確認されたことから、鉄の摂取が貧血の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18554425
【4】銅は多くの酵素を構成するミネラルで、抗酸化酵素SOD、ヘモグロビン合成酵素セルロプラスミン、コラーゲン関連酵素リジルオキシダーゼ、メラニン合成酵素チロシナーゼなどの構成ミネラルで、はたらきに重要な役割を果たします。特にチロシナーゼはメラニン産生に関わるため、機能不全に陥ると、毛髪や光彩の色素障害につながります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16112186
【5】新生児から小児にかけての成長の度合いと亜鉛の関係を調査した研究(33件、2,945名)において、亜鉛を1日あたり 1~50 mg 、8週間以上摂取させた研究で調査したところ、発育不良予防のための、亜鉛の摂取では生後6か月という時期において顕著に効果が見られました。亜鉛が新生児の発育不良抑制に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12036814
【6】ヨウ素は成長と発育に重要な役割を果たす甲状腺ホルモン「チロキシン」の構成要素であり、チロキシンの約65% をヨウ素が占めることから、ヨウ素は甲状腺機能の維持と甲状腺ホルモンの産生に欠かせないミネラルであることがわかりました。
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2009.1214
【7】10名の健常体重(BMI22.8±0.41)被験者と10名の肥満(BMI28.00±0.81)被験者を対象に3週間、プラセボ群およびセレン摂取群による酸化ストレスの影響について調べました。セレン200μg/mlの3週間摂取群は、プラセボ群と比較して肥満被験者のみを脂質ヒドロペルオキシドを減少させました。肥満でのセレンの摂取は、脂質酸化を抑制すると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21593809
【8】Ⅱ型糖尿病患者にクロムシステイン化合物を摂取させると、インスリンや酸化ストレスを低減させ、インスリン抵抗性を改善するとされています。そのためクロムには、Ⅱ型糖尿病に対する予防作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22674882
【9】モリブデン欠乏症の新生児では先天性難治性疾患を持つことが知られており、脳の大幅な委縮に見られる脳神経に対する障害と、尿酸生成不能が知られています。尿酸生成不能に関しては、モリブデンが構成要素である尿酸合成酵素キサンチンオキシダーゼの欠如によるものです。モリブデンには脳機能維持や尿酸合成機能に対して極めて重要な役割をはたすと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11720800
参考文献
・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社
・井上正子監修 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社
・吉田企世子 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店
・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社
・上西一弘 栄養素の通になる第2版 女子栄養大学出版部
・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社
・Bosworth C, de Boer IH, Targher G, Kendrick J, Smits G, Chonchol M. 2012 “The effect of combined calcium and cholecalciferol supplementation on bone mineral density in elderly women with moderate chronic kidney disease.” Clin Nephrol. 2012 May;77(5):358-65.
・Carpenter TO, DeLucia MC, Zhang JH, Bejnerowicz G, Tartamella L, Dziura J, Petersen KF, Befroy D, Cohen D. 2006 “A randomized controlled study of effects of dietary magnesium oxide supplementation on bone mineral content in healthy girls.” J Clin Endocrinol Metab. 2006 Dec;91(12):4866-72.
・Wang B, Zhan S, Xia Y, Lee L. 2008 “Effect of sodium iron ethylenediaminetetra-acetate (NaFeEDTA) on haemoglobin and serum ferritin in iron-deficient populations: a systematic review and meta-analysis of randomised and quasi-randomised controlled trials.” Br J Nutr. 2008 Dec;100(6):1169-78.
・Arredondo M, Núñez MT. 2005 “Iron and copper metabolism.” Mol Aspects Med. 2005 Aug-Oct;26(4-5):313-27
・Brown KH, Peerson JM, Rivera J, Allen LH. 2002 “Effect of supplemental zinc on the growth and serum zinc concentrations of prepubertal children: a meta-analysis of randomized controlled trials.” Am J Clin Nutr. 2002 Jun;75(6):1062-71.
・European Food Safety Authority (EFSA) 2009 “Scientific Opinion on the substantiation of health claims related to iodine and thyroid function and production of thyroid hormones” EFSA Journal. 2009; 7(9): 1214.
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