山査子(さんざし)

hawthorn

山査子は、バラ科サンザシ属の赤い実の植物です。生食のほか糖果、蜜煮はとくに好まれ、乾果はとろ火で煮詰めて飲むと消化を助けます。生薬としても用いられ健胃薬として胃の調子を整えてくれます。きれいな花や実をつけるため、日本では植物園や庭園にも植えられ、誰しも一度は見たことのある植物です。

山査子(さんざし)とは

●基本情報
山査子は中国・ヨーロッパに原生する植物です。北半球に広く分布し、その種類はおよそ1000種類ともいわれます。多くが食べることが可能で、生食や蜜煮、乾果が好まれ、ドライフルーツなどとしても食卓に並びます。
中国では漢方として珍重され、副作用のない上薬として認められています。
甘酸っぱくて美味しいので、山査子の産地では貴重なビタミンミネラルの供給源として日常的に食べられています。日本にも古くから持ち込まれ、庭園に植えられるほか、盆栽の素材として好まれてきました。

●山査子の種類
中国原産で主に胃の調子を整える生薬として使われてきたオオミサンザシ、ヨーロッパで血液の健康を保つハーブとして注目されているセイヨウサンザシなどがあります。アメリカではハウソーンと呼ばれるなど、世界中で愛用されてきた様々な歴史と伝統を持ちます。

●山査子の歴史
中国ではさかのぼること約2000年前から書物にも登場し、命を養う不老長寿の薬として分類されています。中国北・南部を原産とする低木植物として有名で、現在では広い土地に植えられています。
またヨーロッパではバラ科の植物として名高く、サクランボよりも少し大きな実をつけます。
ヨーロッパではメイフラワーと呼び、アメリカではハウソーンと呼ばれます。
古代ギリシャより神聖なる木として崇拝されていた山査子はお祝い時の縁起物として、小枝を花嫁のかんむりに飾ったり、屋内に飾れば厄除けになるともいわれてきました。
日本では漢方薬として古くから用いられてきました。鑑賞用としても重宝され日本庭園によく植えられています。北原白秋の歌「この道」でも山査子が歌詞に登場し昔から身近な存在であったことがうかがえる植物です。

●山査子の特徴
山査子は落葉性の低木です。枝は分枝が非常に多く小枝が変形したとげもあります。
落葉樹、常緑樹などの種類があり、花は春開き、白い5枚の花弁、20本余りの雄しべ、3~5本の雌しべをもちます。果実は小さく、秋に熟すことが特徴です。収穫3~4日で肉質が軟化し芳香が出ます。鮮やかな深紅色が魅力で姫りんごのような果実を結ぶことが特徴です。

●山査子の用途
日本には江戸時代に伝わったとされ、薬用としての利用が多くありました。
現在は生薬としての使用だけでなく、お酒やお菓子、ドライフルーツなどに用いられており、食品としても文化の長い植物です。
ドライフルーツは果実をつぶして、砂糖や寒天などと混ぜ、棒状に成形してからスライスしたものが一般的です。中国では薄くスライスした後に、丸めて酢豚のような料理に入れることもあります。
また菓子にも利用され、蜜煮したものを竹串などに刺してりんご飴のような駄菓子として街角でも売られています。
日本ではきれいな花や実をつけるため、植物園や庭園でも植えられ盆栽の素材としても親しまれています。

●山査子を摂取する際の注意点
胃酸の分泌を促進する働きがあるため、胃酸過多や胃潰瘍を持っている方は使用しないようにしましょう。

山査子(さんざし)の効果

●胃の健康を保つ効果
山査子は生薬として健胃、消化薬など消化不良や食欲不振防止に使われています。つまり山査子の働きとして、胃酸の分泌促進によって消化不良を改善し、胃の負担を軽くします。
また抗菌作用や血管を広げる働きも認められており、トータルで胃の健康をサポートします。【1】

●老化を防ぐ効果
山査子は活性酸素を除去するポリフェノールを含みます。
ポリフェノールは植物の外皮に含まれ、強力な抗酸化作用を発揮します。肉やバターを多く摂っているフランスの人々が赤ワインのポリフェノールのおかげで虚血性心疾患にかかる人が極端に少なくなっている、という「フレンチパラドックス」はあまりにも有名な話です。同じ働きをするビタミン類よりもパワーは強力といわれ、細胞の老化を遅らせ、老化防止に働きます。
山査子に含まれるポリフェノールの抗酸化作用により、若々しい細胞を保ちます。【1】

●血流を改善する効果
山査子は血中コレステロールを抑え、高脂血症・動脈硬化に効果を発揮します。血液がサラサラでないとコレステロールや中性脂肪が血管の内側に溜まったり次第にひび割れて、血管がもろくなってしまいます。
そこで山査子はスムーズな血液の循環をサポートし健康維持に役立ちます。【2】

●心を落ち着かせ、リラックスさせる効果
山査子は中枢神経にはたらきかけ、不安を和らげ睡眠を改善するはたらきを持つことが知られています。また同じ作用により、鎮痛鎮静作用を持つと考えられています。
山査子は心を落ち着かせ、リラックスさせるはたらきにより心の健康をサポートします。【3】【10】

●認知症を予防する効果
認知症の原因の一つとして低血圧が知られています。
山査子は交感神経に働きかけ血圧を一時的に上昇させることにより、認知症を予防するはたらきがあるという研究も報告されており、山査子の機能性が注目されています。【6】【7】

山査子(さんざし)はこんな方におすすめ

○胃の健康を保ちたい方
○消化を促進したい方

山査子(さんざし)の研究情報

【1】ラットを対象に、山査子抽出物を50, 100, 200mg/kg の量で投与したところ、消炎鎮痛作用ならびに浮腫予防作用が見られたほか、エタノールによる胃潰瘍が緩和されました。また抗酸化作用を持つほか、黄色ブドウ球菌や枯草菌などに対する殺菌作用も持つことから、山査子は健胃効果、消炎鎮痛作用、抗酸化作用ならびに殺菌効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18698794

【2】山査子の葉抽出物を100mg/kg の量で4週間摂取させたところ、L-NAME誘発高血圧が緩和されたことから、山査子が高血圧予防ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16397846

【3】高血圧患者36名を対象に、山査子抽出物を1日当たり500mg またはマグネシウム 1日あたり600mg の量で10週間摂取させたところ、山査子摂取患者で安静時拡張期が改善し、また不安が軽減したことから、山査子は高血圧予防効果ならびに抗不安作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11807965

【4】山査子は高血圧、高脂血症ならびにうっ血性心疾患の予防に役立つと考えられており、現在NYHAクラスⅡ,Ⅲ心不全患者に対する治験検討が進行中であるほど、有効性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15844828

【5】山査子は消化器性疾患や呼吸困難、腎臓結石ならびに心血管障害治療に使用されてきました。山査子は血管壁を強化し、冠状動脈血流を改善するはたらきが知られています。現在、NYHA(ニューヨーク心臓協会)により、クラスⅡうっ血性心不全の治療に有望であるといわれており、山査子抽出物として160~900mg (エピカテキンとして30~169mg, フラボノイドとして3.5~19.8mg)の量が摂取目安として、心臓疾患予防に期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11887407

【6】50-80歳の女性80名を対象に、山査子を投与したところ、短期的な血圧の上昇とともに認知機能が改善したことから、山査子は認知症予防効果が期待されており、そのはたらきは交感神経を介したものと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19560327

【7】慢性低血圧女性患者80名を対象に、山査子抽出物を摂取させたところ、短期的な血圧上昇と認知機能の改善が見られました。認知障害には低血圧が関与していると考えられていることから、山査子は血圧上昇による認知症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18929475

【8】心不全手術ラットを対象に、山査子抽出物を1.3, 13, 130mg/kg の量で投与したところ、血圧依存心肥大による心機能不全が緩和されたことから、山査子は心臓保護作用を持つと考えられています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18210194

【9】45~73歳のクラスⅡ心不全患者78名を対象に、山査子抽出物を1日当たり600mg の量で8週間摂取させたところ、運動負荷時の収縮期血圧の上昇が緩和されたことから、山査子は心臓保護効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23195811

【10】マウスを対象に、山査子の果肉(100-1000mg/kg) または種子抽出物(10-1000mg/kg) を摂取させたところ、鎮痛効果が見られました。山査子は、中枢神経を介した、鎮痛作用ならびに鎮静効果また睡眠障害改善効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20673180

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参考文献

・食材図典 小学館

・工藤秀機 蒲池桂子 栄養を知る事典 日本文芸社

・Tadić VM, Dobrić S, Marković GM, Dordević SM, Arsić IA, Menković NR, Stević T. 2008 ” Anti-inflammatory, gastroprotective, free-radical-scavenging, and antimicrobial activities of hawthorn berries ethanol extract. ” J Agric Food Chem. 2008 Sep 10;56(17):7700-9.

・Koçyildiz ZC, Birman H, Olgaç V, Akgün-Dar K, Melikoğlu G, Meriçli AH. 2006 “Crataegus tanacetifolia leaf extract prevents L-NAME-induced hypertension in rats: a morphological study.” Phytother Res. 2006 Jan;20(1):66-70.

・Walker AF, Marakis G, Morris AP, Robinson PA. 2002 “Promising hypotensive effect of hawthorn extract: a randomized double-blind pilot study of mild, essential hypertension.” Phytother Res. 2002 Feb;16(1):48-54.

・Chang WT, Dao J, Shao ZH. 2005 ” Hawthorn: potential roles in cardiovascular disease.” Am J Chin Med. 2005;33(1):1-10.

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・Werner NS, Duschek S, Schandry R. 2009 ” D-camphor-crataegus berry extract combination increases blood pressure and cognitive functioning in the elderly – a randomized, placebo controlled double blind study. ” Phytomedicine. 2009 Dec;16(12):1077-82.

・Schandry R, Duschek S. 2008 “The effect of Camphor-Crataegus berry extract combination on blood pressure and mental functions in chronic hypotension – A randomized placebo controlled double blind design.” Phytomedicine. 2008 Nov;15(11):914-22.

・Hwang HS, Bleske BE, Ghannam MM, Converso K, Russell MW, Hunter JC, Boluyt MO. 2008 ” Effects of hawthorn on cardiac remodeling and left ventricular dysfunction after 1 month of pressure overload-induced cardiac hypertrophy in rats. ” Cardiovasc Drugs Ther. 2008 Feb;22(1):19-28.

・Schmidt U, Kuhn U, Ploch M, Hübner WD. 1994 “Efficacy of the Hawthorn (Crataegus) preparation LI 132 in 78 patients with chronic congestive heart failure defined as NYHA functional class II.” Phytomedicine. 1994 Jun;1(1):17-24.

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