香酢

Aromatic vinegar

中国の伝統的なお酢で、香り高くまろやかな酸味を持っています。
アミノ酸を豊富に、かつバランスよく含んでおり、様々な健康効果が期待できます。
中国では、多くの人が健康と美容のために香酢を愛飲しています。

香酢とは

●基本情報
香酢は中国の伝統的なお酢です。
もち米からつくったお酒にもみ殻を混ぜ合わせ発酵させる特殊な製法で、その名の通り「香りある」として独特の味と香りを醸し出します。もち米の他にもコーリャン[※1]、小麦、麹[※2]などを主原料とし、他にも緑豆、小豆、米糠、砂糖、漢方などを用いてつくられます。一般的なお酢は1~3ヵ月程度、熟成・発酵させますが、香酢は半年~数年という長い期間、熟成・発酵を行うため、濃厚で黒褐色・紅褐色のものが多くなります。またお酢独特の刺激臭が少なく、まろやかな香りを醸し出します。香酢は旨みが強いため、調味料として料理に使われるほか、ドリンクとしても飲まれています。
中国では古くから調味料として使用されてきました。最近の研究で、香酢には日本の一般的な食酢よりもアミノ酸や有機酸[※3]が豊富に含まれていることがわかりました。

●香酢の原産地、生産地
香酢は中国の各地でつくられています。代表的な生産地として400年以上の歴史と伝統を持つ中国雲南省、多くの生産量を誇る中国山西省、他にも中国江蘇省などが有名です。

●香酢の特徴
香酢には、アルギニンセリングリシンアラニンといった人間が必要とするアミノ酸が豊富に含まれています。中でも、必須アミノ酸[※4]は特に豊富に含まれています。
他にもクエン酸や酢酸などの健康と美容に良い健康成分がバランス良く含まれています。

<豆知識>香酢と黒酢の違い
熟成させてつくるお酢として親しまれているものには、香酢と黒酢があります。香酢も黒酢も、健康や美容に広く効果があることに変わりはありませんが、原料や製造方法には大きな違いが見られます。黒酢は玄米や大麦を原料につくられますが、香酢はつくられる地域や醸造元によって様々な種類の原料がブレンドされます。製造方法に関しては、黒酢は原料を1つの壷に入れて、液体の状態で熟成・発酵させますが、香酢は固形発酵と呼ばれる水分をほとんど含まないまま、熟成・発酵させる方法で製造されます。そのため長い発酵期間が必要となります。

[※1:コーリャンとは、中国北部で栽培されるモロコシの一種のことです。]
[※2:麹とは、米・麦・大豆などの穀類に、コウジカビ(コウジ菌)を混ぜて繁殖させたものを指します。日本酒や味噌、醤油、みりん、食酢、焼酎をつくる時や、甘酒、漬物にも使用されます。]
[※3:有機酸とは、酸の性質を持つ有機化合物のことです。]
[※4:必須アミノ酸とは、動物の成長や生命維持に必要であるにも関わらず体内で合成されないため、食物から摂取しなければならないアミノ酸のことです。バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンの9種類が存在します。]

香酢の効果

香酢にはアミノ酸やクエン酸などの有機酸が豊富に含まれており、以下のような健康効果が期待できます。

●血流を改善する効果
血中コレステロール値や中性脂肪値、血糖値が高い人の血液はドロドロであるといわれています。血液がドロドロになると、血液の流れが悪く、血流が滞った状態になります。これが悪化すると高脂血症[※5]になります。高脂血症をそのままにすると、血栓が発生し、動脈硬化を引き起こしてしまう可能性が高まります。動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞といった生活習慣病の発症リスクを高める、という指摘もあり注意が必要な症状です。
香酢の飲用によって血中の善玉コレステロール値と中性脂肪値が改善されたとの報告もあり、生活習慣病の予防や血圧低下に効果的です。

●疲労回復効果
人が疲れを感じるのは、乳酸と呼ばれる疲労物質が体内に蓄積しているためです。通常であれば、乳酸は代謝によって自然と消費されますが、代謝機能が衰えると筋肉中に溜まってしまい、疲労を感じるようになります。香酢に含まれるクエン酸は、クエン酸回路[※6]の働きをサポートし、乳酸を分解してエネルギーに変えることで疲労を回復させます。
また、クエン酸にはグリコーゲン[※7]の分解を抑え、失われたグリコーゲンの回復を促す働きもあります。同様の働きが酢酸にもあり、ダブルのパワーで疲労を回復させます。
さらに、クエン酸には殺菌作用や胃腸の働きを活発にし、疲労で低下した食欲を回復させる働きもあります。
お酢が夏バテに良いといわれたり、体調を整える働きがあると期待されていたりする理由はここにあります。

●美肌効果
香酢には肌荒れの原因となる過酸化脂質[※8]の増加を防ぎ、肌を健康な状態に保つ働きがあります。ビタミンCを破壊する酵素の働きを抑えたり、ハリやツヤのもととなるコラーゲンの生成を促進したりするため、弾力のある肌をつくる効果が期待できます。
また美肌を保つためには天然保湿因子(NMF)[※9]という成分が重要です。天然保湿因子とは、皮膚の角質層で水分が蒸発しないように保湿を行う重要な成分で、香酢にも含まれているセリンやグリシン、アラニンといったアミノ酸で構成されています。香酢には豊富にアミノ酸が含まれているので、香酢を摂取することでアミノ酸や天然保湿因子がたくさん生成されて美肌効果が得られます。また、香酢の飲用によって肌の水分量が改善したとの報告もあります。

●冷え症を改善する効果
香酢に含まれるアミノ酸のひとつであるアルギニンには、一酸化窒素をつくり出す効果があります。一酸化窒素は体内の血管を拡張する作用があり、血管をつまりにくくし、血流を改善してくれます。また、香酢に含まれるアミノ酸やクエン酸などの有機酸は、血液の循環を正常にし、サラサラの血液にしてくれます。
体の隅々にまで血液が届けられることで冷え性が改善される効果があります。

●栄養の吸収を促進する効果
香酢は他の食事と一緒に取ることで、他の栄養素の体内への吸収を高めてくれる働きがあります。カルシウムをはじめ、ビタミンミネラルなどの吸収を助けるので、料理に混ぜるなどして色々な食材と一緒に香酢を摂ることで栄養素を無駄なく、効率よく摂ることができます。

●便秘を解消する効果
香酢に多く含まれる酢酸やクエン酸といった有機酸は、腸のぜん動運動を促し便秘を解消させる効果があるといわれています。

●免疫力を高める効果
免疫力が弱まると病気にかかりやすくなったり、また病気が治りにくくなります。
香酢に含まれるアミノ酸がエネルギー源となり、病気に抵抗する免疫細胞が増えるため免疫力が高まります。

●肝機能を高める効果
香酢に含まれる必須アミノ酸には、肝機能を高めてくれる働きがあります。またお酒を飲んだ時に、体内に入ったアルコールの代謝を速めて分解を促進してくれるため、肝臓への負担を減らすと期待されています。アルコールを摂取する前に香酢を飲んでおけば、二日酔いの予防にもなります。

[※5:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態のことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]
[※6:クエン酸回路とは、体内に入った食物を燃焼させエネルギーをつくり出す、一連の流れのことです。]
[※7:グリコーゲンとは、糖がたくさんつながり、多糖類となった状態で肝臓や筋肉に貯蔵されている物質のことです。グリコーゲンはエネルギーが足りなくなった際にブドウ糖に変化するため、エネルギー源として大切な役割を持っています。]
[※8:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※9:天然保湿因子(NMF)とは、ヒトがもともと持っている保湿成分で、皮膚の一番外側にある角質層、角質細胞の中にあり、水になじみやすく水分を保持する力を持つ物質のことです。NMFはNatural Moisturizing Factorの略です。]

こんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○生活習慣病を予防したい方
○血圧が高い方
○疲労を回復したい方
○美肌を目指したい方
○風邪をひきやすい方
○冷え症の方
○便秘でお悩みの方
○お酒をよく飲む方

香酢の研究情報

【1】血中グルコースおよび血中脂質の過剰な上昇は、酸化ストレスを増大させます。高コレステロール血症ウサギのアテローム硬化症に対する酢の影響について調べました。酢の低濃度食と高濃度食を与えた場合で比較した結果、LDLコレステロール、アポリポタンパク質B-100、および総コレステロールで有意な差が認められました。このことから、酢は、アテローム動脈硬化因子を低下させる働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20109192

【2】酢の摂取が体脂肪減少に及ぼす影響について日本における結果を研究しました。12週間、500mlの酢を飲用した被験者では、プラセボ群よりも有意に体重、BMI、内臓脂肪面積、ウエスト周囲径が有意に減少していました。酢の毎日の摂取量は、肥満を減らすことによるメタボリックシンドロームの予防に有用である可能性があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19661687

参考文献

・Setorki M, Asgary S, Eidi A, Rohani AH, Khazaei M. 2010 “Acute effects of vinegar intake on some biochemical risk factors of atherosclerosis in hypercholesterolemic rabbits.” Lipids Health Dis. 2010 Jan 28;9:10.

・Lipids Health Dis. 2010 Jan 28;9:10. 2009 “Vinegar intake reduces body weight, body fat mass, and serum triglyceride levels in obese Japanese subjects.” Biosci Biotechnol Biochem. 2009 Aug;73(8):1837-43.

・Xu W, Xu Q, Chen J, Lu Z, Xia R, Li G, Xu Z, Ma Y. 2011 “Ligustrazine formation in Zhenjiang aromatic vinegar: changes during fermentation and storing process.
” J Sci Food Agric. 2011 Jul;91(9):1612-7.

ページの先頭へ