ゲンノショウコ

geranium thunbergii

古くから「医者いらず」と呼ばれる下痢止めに有効な多年草です。日本の民間薬の代表格であり、江戸時代から用いられています。ゲンノショウコを服用すると下痢の症状がたちまち治ることから「現之証拠(ゲンノショウコ)」という名がついたといわれています。

ゲンノショウコとは?

●基本情報
ゲンノショウコは、フウロソウ科の多年草です。昔から下痢止めの薬草として有名で、煎じて飲めばたちまち実感することから「現之証拠」と薬効の表現から名付けられたとされています。
日本では、北海道の草地や本州~九州の山野、また朝鮮半島や中国大陸などに自生しています。
茎は約30~40cmに伸び、葉はてのひら状に分かれます。紅紫色または白紫色の花が夏になると咲き、花びらは5枚に分かれます。
秋に種子を飛散させた後で果柄を立てた様子が、みこしのように見えることからミコシグサとも呼ばれます。

●ゲンノショウコの歴史
昔から下痢止めの薬草として使われており、救荒本草という古い中国の書物にも飢饉のときに食べられる植物一覧に現在のゲンノショウコと良く似た植物が掲載されており、飢饉の際に食べたところ下痢が治ったことが記されていることから、古くより薬草として認められてきたことがわかります。
また平安時代に書かれた日本最古の百科事典といわれる「和名抄(わみょうしょう)」にも登場しており、日本でも昔は牛の病気を治す薬草として用いられていました。

●ゲンノショウコの特徴
ゲンノショウコなどのフウロソウ属植物の果実は炸果と呼ばれ、乾燥すると下部から裂け、種子を散布します。ゲンノショウコの果実もこのタイプで裂開して反り返り、種子を投げ飛ばします。種子を飛ばしたあとの形がお神輿の屋根を連想させるかたちのため、ミコシグサの異名がついたとされています。
またゲンノショウコをフウロソウ(風露草)と呼ぶ地方もあります。

●ゲンノショウコの生育
ゲンノショウコは、主に日当たりの良い畑や山野、道ばたなどで見られ、茎は横に広がりながら伸びていき、茎が地面につくとその節から根を張り出して伸びていきます。
草丈は30cm~50cmほどの長さで枝分かれをして上部に向かって立とうとし、茎と葉には直角の繊毛が多数あります。
また葉は柄があって対生しており、葉の形はこぶしのようなかたちで、裂片上部にはとげがあります。
ゲンノショウコの花は枝先や葉から細い花柄を出して淡紅色か白色の5つの花弁を2~3個ずつ開花することが特徴で、花期は7月~10月です。
葉は対生し、茎の下部についているものは5裂し、上部に付くものは3裂する傾向があります。両面有毛であり、裏面は脈上に毛が多く、葉柄や花柄、茎には下向きの毛が多く、毛がまざります。
そしてゲンノショウコは、日本各地の草原や路傍に生育し、高さ数十cmになります。茎は細く、他の植物にもたれるか、地表を這います。花は紅色と白色があり、紅色は西日本に多く、白色は東日本に多く存在します。

このような特徴をもつゲンノショウコは、ドクダミなどのように古くから日本でも用いられてきた薬草です。一般的には花期に地上部を採取し、乾燥させたものを用います。
明治・大正・昭和の歌人もゲンノショウコを題材に歌を詠んでいるほどです。
日本は古来より日本独特の薬草文化がありました。その薬草文化を「和薬」といい、日本民間の間で秘伝開発してきた薬草で、漢方薬に含まれている日本産生薬を含めてさすこともあります。

<豆知識>ゲンノコショウの採取時期
ゲンノショウコの採取時期ですが、昔から土曜の丑の日に採取するといいといわれています。
その理由として
①土用の丑の日の頃にゲンノショウコが充分に育っている。
②土用の丑の日のころは、葉が最も多く茂り、収穫量と全草(特に葉)に含まれる有効成分量が多い。
③土用の丑の日のころは、梅雨が明けて天気が良く、温度も高いので十分に乾燥ができている。
④ゲンノショウコの若葉は、よく似た葉がほかにもあるが、花は全く異なるので、花の咲く時期に採取すれば、間違うことなく採取できる。
以上の点があげられます。
ゲンノショウコは根づきの良い植物で、秋に種子を採取して日当たりの良い場所に植えると春先に目を出して採取できます。

ゲンノショウコの効果

●下痢を予防する効果
ゲンノショウコの乾燥した茎、葉を煎じて飲むと、下痢止めに効き、古くから下痢止めの薬草として用いられています。主成分のタンニンの強力な働きにより、下痢改善や整腸作用に優れた働きをします。このゲンノショウコに含まれるタンニンとは、植物界に広く存在するポリフェノールの一種です。収れん作用[※1]を持ち、口に入れると強い渋みを感じることが特徴です。体内で収れん作用を持ち、下痢を予防します。これは体内に入ったタンニンが、腸の活動を整えるからだと言われています。【1】【2】
●便秘を解消する効果
ゲンノショウコに含まれるフラボノイドの働きにより、便秘が解消するといわれています。ゲンノショウコは飲みすぎても便秘を引き起こしたりせず、優秀な健胃整腸薬です。最近では、フラボノイドの一種であるケルセチンに抗アレルギー作用や免疫力強化作用があるとされ、花粉症やアレルギー症状改善、便秘解消に効果的だとわかっています。

●胃腸の機能を高める効果ゲンノショウコは、ドクダミセンブリなどのように、日本の民間薬の代表格です。胃腸の機能を高め、江戸時代から民間薬として用いられるようになり、当時の書物にも取り上げられました。根・茎・花などを干し煎じて下痢止めや胃薬として、また茶としても飲用されます。

[※1:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]

ゲンノショウコはこんな方におすすめ

○下痢になりやすい方
○便秘でお悩みの方
○胃の健康を保ちたい方

ゲンノショウコの研究情報

【1】下痢などに処方する整腸剤として古くから用いられているゲンノショウコについて色彩計を用いて評価した。ゲンノショウコが持つ止瀉作用はポリフェノールの一種であるタンニン類によるものとされている。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006273629

【2】ゲンノショウコにはゲラニインと呼ばれるタンニンが含まれており、健康機能が期待されています。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008732003

参考文献

・健康茶入門 藤田紘一郎 幻冬舎

・食べ物栄養事典 中嶋洋子、蒲原聖可、阿部芳子 主婦の友社

・薬用植物・生薬・薬草・健康茶 げんのしょうこ ゲンノショウコについて

・ゲンノショウコ 現の証拠 民間薬 フウロソウ科フウロソウ属

・Anjiki Naoko, Togashi Mutsuko, Yoshimitu Michiyo, Kawahara Nobuo, Mikage Masayuki. (2007) “Evaluation of the crude drugs by means of colorimeter. Part 6. : Correlation between the color and total polyphenol content of Geranium Herb.” 和漢医薬学雑誌. 2007 24(2): 67-71.

・Okuda Takuo. (2011) “Geranium thunbergii, a Notable Japanese Folk Medicine, Led to Recent Tannin Research Development.” 生薬學雜誌. 1999 53(Supplement_2): 52-54.

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