ケルセチン

quercetin

ケルセチンはフラボノイド、ポリフェノールの一種で、主にタマネギなどの野菜に多く含まれている成分です。血流を改善する効果や動脈硬化を予防する効果などで知られています。

ケルセチンとは

●基本情報
ケルセチンは、ポリフェノールの一種であり、主に野菜などに多く含まれている成分です。フラボノイドの中のフラボノール類に分類され、活性酸素を取り除く働きがあります。特にタマネギの皮には多くのケルセチンが含まれています。
ケルセチンにルチノースという糖が結合したものは、そばなどに多く含まれるルチンとなります。

●ケルセチンの歴史
ケルセチンという成分名には、ラテン語で「オークの森」という由来があります。
また、ケルセチンが黄色い色素であることから、古くから染料として用いられていたという歴史もあります。
1993年にオランダで行われた疫学調査で、タマネギやりんごなどからケルセチンをはじめとするフラボノイドを多く摂取していた人は、心臓病の発症率が低かったという結果が得られました。

●ケルセチンの働き
ケルセチンは、ビタミンPというビタミン様物質[※1]のひとつであり、主にビタミンCの働きを助ける成分だといわれています。血管をしなやかにするほか、活性酸素によるダメージを防ぐ抗酸化作用[※2]があります。
その他、ケルセチンには抗炎症作用があるといわれています。

[※1:ビタミン様物質とは、 ビタミン類には含まれず、ビタミンと似た働きを持つ栄養素の総称です。]
[※2:抗酸化作用とは、 たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]

ケルセチンの効果

●血流を改善する効果
ケルセチンが持つ抗酸化作用によって、活性酸素によるダメージを防ぎ、血流を改善する効果があります。
血管を流れる赤血球[※3]は、体のすみずみまで酸素を運ぶ重要な働きを担っています。
赤血球は、健康な状態であれば、自由に変形することで細い血管の中であっても正常に流れることができます。しかし、活性酸素によって赤血球がダメージを受けると、柔軟性を失い、細い血管を通りにくくなるため、血流が滞ってしまいます。
ケルセチンは、この活性酸素によるダメージを防ぎ、赤血球の働きを活発にさせる効果があります。
また、ケルセチンを多く含むタマネギのエキスを摂取すると、食後の血管内皮機能[※4]が改善されるという研究結果も報告されています。
血管内皮機能が正常であれば、血管が柔軟性を保ち、血液が流れやすい状態になります。しかし、この機能が低下してしまうと、細胞の間から悪玉(LDL)コレステロール[※5]が入り込み、酸化することによって動脈硬化などが発生しやすくなる、悪化しやすくなると考えられています。
この血管内皮機能は食後に一時的に低下することが明らかになっていますが、ケルセチンを含むタマネギエキスを摂取することによって改善されることが動物実験で確認されています。
さらに、血管や血液の健康を保つケルセチンには、血圧の上昇を抑える効果もあるといわれています。【1】

●コレステロール値を下げる効果
日本人女性を対象とした研究で、ケルセチンの摂取量が多くなるほど、血中コレステロール、悪玉(LDL)コレステロールが低くなることが示されています。また血糖値上昇を抑制するはたらきも知られていることから、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病予防に役立つと考えられています。【2】【3】【6】

●動脈硬化を予防する効果
ポリフェノールを摂取することは動脈硬化に有効であるという様々な研究結果があります。
ポリフェノールのひとつであるケルセチンが持つ抗酸化作用が、動脈へのコレステロールの蓄積を防ぐことによって、動脈硬化を予防する効果があります。【3】【7】

●関節痛の症状を緩和する効果
ケルセチンは抗炎症作用を持つことから、関節の痛みをやわらげる効果があるといわれています。
膝をはじめとする関節は年齢とともに負担がかかりやすく、高齢化も相まって変形性関節症などによる関節痛の患者が増加しているといわれています。
ケルセチンの摂取に加えて、グルコサミンやコンドロイチンなどの軟骨をつくる成分と一緒に摂取することで、このような関節痛の症状を改善する効果があることが期待されています。【4】【5】

[※3:赤血球とは、動物の血液を構成する血球で、形は両面中央がややへこんだ円盤の形状をしています。赤い色はヘモグロビンによるもので、主に酸素を運搬する働きがあります。]
[※4:血管内皮とは、血管の最も内側の層に位置し、血液や血管の健康を保つ働きを持っています。]
[※5:悪玉(LDL)コレステロールとは、肝臓から血管にコレステロールを運ぶ機能を持った物質です。悪玉(LDL)コレステロール値が高くなると、動脈硬化の原因になるといわれています。]

ケルセチンは食事やサプリメントで摂取できます

ケルセチンを含む食品

○タマネギ
○りんご
○緑茶
○そば
○柑橘類

こんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○血圧が高い方
○生活習慣病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○関節痛を緩和したい方

ケルセチンの研究情報

【1】ケルセチンは野菜と果実、茶やワインに多く含まれており、高い抗酸化力を持っており、骨粗しょう症予防や抗がん作用、循環器系疾患の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18417116

【2】薬物誘導糖尿病ラットを対象に、たまねぎを6% 含有する餌(ケルセチンとして0.023%) を12週間摂取させたところ、血糖値ならびに酸化ストレス指標が改善されたことから、たまねぎやケルセチンは糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18188415

【3】ケルセチンは高い抗酸化力を持つことから、様々な機能性が知られています。神経細胞PC-12を用いた試験では脂質過酸化を抑制するはたらきが、高脂血症ウサギでは動脈硬化の予防効果が確認されたことから、ケルセチンは神経保護作用ならびに動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19367113

【4】ケルセチンは炎症関連物質TNF-αなどのサイトカインを抑制する他、グルタチオンやIL-βにはたらきかけることによる痛覚予防効果も知られており、抗炎症作用ならびに痛覚予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19899776

【5】ケルセチンは慢性前立腺炎および慢性骨盤疼痛症候群に有効であると報告されており、ケルセチンは抗炎症作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21798389

【6】高脂血症ラットを対象に、ケルセチンを1日あたり1g の量で6週間摂取させたところ、血中ならびに肝臓中のコレステロールが低下したほか、HMG-CoA の活性が低下しました。また肝臓および血中のSODなどの抗酸化酵素およびグルタチオンの活性が高まりました。このことから、ケルセチンは高脂血症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12098884

【7】ケルセチンはアンジオテンシン誘導血管平滑筋細胞肥大を抑制することから、ケルセチンは動脈硬化予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21436601

もっと見る 閉じる

参考文献

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社

・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・Boots AW, Haenen GR, Bast A. 2008Health effects of quercetin: from antioxidant to nutraceutical.” Eur J Pharmacol. 2008 May 13;585(2-3):325-37.

・Azuma K, Minami Y, Ippoushi K, Terao J. 2007Lowering effects of onion intake on oxidative stress biomarkers in streptozotocin-induced diabetic rats.” J Clin Biochem Nutr. 2007 Mar;40(2):131-40.

・Terao J.2009 “Dietary flavonoids as antioxidants.” Forum Nutr. 2009;61:87-94.

・Valério DA, Georgetti SR, Magro DA, Casagrande R, Cunha TM, Vicentini FT, Vieira SM, Fonseca MJ, Ferreira SH, Cunha FQ, Verri WA Jr. 2012 “Quercetin reduces inflammatory pain: inhibition of oxidative stress and cytokine production.” J Nat Prod. 2009 Nov;72(11):1975-9.

・Shoskes DA, Nickel JC.2011 “Quercetin for chronic prostatitis/chronic pelvic pain syndrome.” Urol Clin North Am. 2011 Aug;38(3):279-84..

・Bok SH, Park SY, Park YB, Lee MK, Jeon SM, Jeong TS, Choi MS. 2002 “Quercetin dihydrate and gallate supplements lower plasma and hepatic lipids and change activities of hepatic antioxidant enzymes in high cholesterol-fed rats.” Int J Vitam Nutr Res. 2002 May;72(3):161-9.

・Ishizawa K, Yoshizumi M, Kawai Y, Terao J, Kihira Y, Ikeda Y, Tomita S, Minakuchi K, Tsuchiya K, Tamaki T. 2011 “Pharmacology in health food: metabolism of quercetin in vivo and its protective effect against arteriosclerosis.” J Pharmacol Sci. 2011;115(4):466-70.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ