タマゴとは?
●基本情報
一般的にタマゴといわれるものは鶏のタマゴで、その他食用とされるものとしては味が濃く卵黄の割合の多い烏骨鶏(うこっけい)卵や鶉(うずら)卵、アヒル卵などがあります。アヒルのタマゴは中華料理のピータンとして食べられています。
タマゴは鶏の種類によって殻の色に違いがあり、白いもの以外を有色卵といいます。また最近ではヨードやDHAなど、エサによって栄養を強化したタマゴなども出回っています。鶏卵を販売する際には農林水産省により定められたパック詰めの規格基準があり、重量別にSS~LLサイズに分けられます。
●タマゴの歴史
紀元前1500年頃には鶏が毎日産卵していたという記録がエジプトの古文書に残っており、ローマでも2500年前には品種改良が始まっていたという記録があることから、紀元前にはすでに鶏が採卵用に品種改良されていたのではないかと考えられています。日本へは中国から朝鮮半島を経由して、約2500年前に鶏が伝えられ、「古事記」[※1]には「長鳴鳥」として記載されています。
商業用に採卵用の養鶏が始まったのは1850年代のイギリスといわれており、日本でも江戸時代に入りようやく一般的にタマゴが食べられるようになりました。タマゴの料理が文献に登場するのも江戸時代に入ってからで、「本朝食鑑」[※2]ではゆで卵、卵焼き、卵酒などが紹介されています。当時は滋養強壮や病人が食べる健康食材であったため、庶民には手の届かないものでしたが、昭和30年代以降、品種改良や配合飼育などにより大規模飼育が可能になったことで、タマゴは一般家庭でも日常的に食卓に上るようになりました。
●タマゴの種類
・白玉
最も消費量が多く一般的で、世界中で飼育されている羽毛の白い白色レグホン種のタマゴです。
・赤玉
殻の色が茶褐色のもので、ボリスブラウンなど羽毛が茶色の鶏が産卵するタマゴです。栄養価は白色と差はなく、血色素と同じ色素が殻形成の最後に分泌されて付着するため茶褐色になります。
・青玉
チリ原産の野鶏アロカーナと羽毛が白色の鶏の交配種のタマゴで、殻が薄青色を帯びているため装飾品としても用いられます。殻は青色ですが、中身の色や栄養成分は白玉や赤玉と大差はありません。
・薄赤玉(ピンク卵)
白玉鶏と赤玉鶏を交配した品種で、薄茶色の殻をしています。白玉鶏の多産性と赤玉鶏の強健性を目的に改良された種です。
●タマゴの生産地
日本では約1億8000羽の産卵鶏が飼育されています。産卵鶏は全国的に飼育されていますが、中でも茨城県、千葉県、愛知県で多く飼育されています。
●タマゴの選び方、保存方法
2~3週間は持ちますが、殻がざらついて光沢のないものが新鮮なものといわれています。しかし、最近ではざらつきをなくした状態で出荷されているため、賞味期限の残り日数で判断をします。
保存をする際は温度変化が多くなる扉部を避け、パックのまま冷蔵庫の中へ入れて保管します。また、とがったほうを下にすると栄養成分を長持ちさせることができます。
●タマゴに含まれる成分と性質
タマゴはたんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンなど、ビタミンC以外の栄養成分がほとんど含まれています。中でもたんぱく質の消化吸収率が非常に高いため、細胞を若々しく保ちます。また必須アミノ酸を理想的なバランスで含み、アミノ酸スコア[※3]は100です。
卵黄にはビタミンA、ビタミンE、ビタミンB群が豊富で脂質の一種であるレシチンが含まれる他、抗酸化力[※4]を持つカロテノイドも含まれています。卵白には脂質は含まれておらず、ビタミンB2が豊富に含まれます。
[※1:古事記とは、現存する日本最古の歴史書のことです。上・中・下の3巻から成ります。]
[※2:本朝食鑑とは、江戸時代前期に記された食物書です。]
[※3:アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸の構成のバランスを数値化し、評価する指標のことです。]
[※4:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
タマゴの効果
●記憶力や学習能力を高める効果
卵黄にはリン脂質であるレシチンが豊富に含まれています。レシチンは細胞膜の形成に不可欠な成分であり、レシチンの主成分であるコリンは、脳で記憶や学習に深く関わる神経伝達物質アセチルコリンをつくる材料となります。タマゴは食品の中で豊富にコリンが含まれており、その量は大豆の3倍近くになります。また、タマゴにはアセチルコリンの合成を促すビタミンB12も含まれています。【3】
さらに、栄養を脳に届けるためには血液脳関門[※5]を通り抜けなければなりませんが、タマゴのコリンは吸収やすいという特徴があります。
これらの働きから、近年ではタマゴのアルツハイマー病の予防効果についても注目されています。
●生活習慣病の予防・改善効果
タマゴにはコレステロールが多く含まれることから、動脈硬化の原因のひとつである考えられていましたが、卵黄に含まれるレシチンや卵白に含まれるアミノ酸の一種シスチンにコレステロール値を下げる働きがあることから、現在では動脈硬化を予防する働きがあることがわかっています。さらにレシチンの主成分であるコリンに血管を拡張させて血圧を低下させる働きがあるため、高血圧の予防にも効果を発揮します。【1】
また、タマゴには中性脂肪を増やす原因となる炭水化物がほとんど含まれないため、内臓脂肪を増やす恐れがなく、メタボリックシンドロームの予防にも最適です。その他、タマゴに含まれるメチオニンや抗酸化作用を持つビタミンE、カロテンなどの働きで発ガンを抑制できるなど、タマゴは様々な生活習慣病に対して効果を発揮します。【2】
●その他の効果
タマゴには肝臓でアルコールが分解されるときに必要なアミノ酸であるメチオニンが豊富に含まれることから、肝機能を高める効果があります。
また、骨や血液を作るもととなる鉄やカルシウム、リンをはじめとするミネラルの働きにより丈夫な体づくりに役立つ他、パントテン酸がストレスに対する抵抗を高めてくれるなど、タマゴには様々な健康効果があります。【4】
[※5:血液脳関門とは、血液中の有害な物質が自由に脳まで到達しないように働いている機構のことです。]
タマゴは食事やサプリメントで摂取できます
こんな方におすすめ
○脳を活性化したい方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○脳の健康を維持したい方
○免疫力を向上させたい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○丈夫な体をつくりたい方
○ストレスをやわらげたい方
○コレステロール値が気になる方
○生活習慣病を予防したい方
タマゴの研究情報
【1】380人の被験者に卵を食べてもらい血液検査を行ったところ、卵の摂取と心臓のリスクには相関は見られませんでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23848114
【2】近年、黄身を除いて卵を食べるより、全卵を食べることでHDL値の改善があったことが報告されています。卵を毎日食べることで、メタボリックシンドロームの改善につながることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23494579
【3】ラットに卵や大豆由来のレシチンを3週間摂取させたところ血液中と脳中のコリン量と脳のアセチルコリン量の上昇がみられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7192727
【4】ビタミンDは様々な病気の予防に有効で、卵にはビタミンDが多く含まれています。学校に通っている子供たちに毎日卵を半分食べてもらったところ血中のビタミンDの濃度が上昇したという報告があります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23848105
参考文献
・食材図典 小学館
・中嶋洋子 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社
・池上保子 おいしくてクスリになる食べ物栄養事典 日本文芸社
・Soriano-Maldonado A, Cuenca-García M, Moreno LA, González-Gross M, Leclercq C, Androutsos O, Guerra-Hernández EJ, Castillo MJ, Ruiz JR. (2013) “EGG INTAKE AND CARDIOVASCULAR RISK FACTORS IN ADOLESCENTS; ROLE OF PHYSICAL ACTIVITY. THE HELENA STUDY.” Nutr Hosp. 2013 Mayo-Junio;28(3):868-877.
・Andersen CJ, Blesso CN, Lee J, Barona J, Shah D, Thomas MJ, Fernandez ML. (2013) “Egg consumption modulates HDL lipid composition and increases the cholesterol-accepting capacity of serum in metabolic syndrome.” Lipids. 2013 Jun;48(6):557-67.
・Magil SG, Zeisel SH, Wurtman RJ. (1981) “Effects of ingesting soy or egg lecithins on serum choline, brain choline and brain acetylcholine.” J Nutr. 1981 Jan;111(1):166-70.
・Rodríguez-Rodríguez E, G González-Rodríguez L, Ortega Anta RM, López-Sobaler AM. (2011) “CONSUMPTION OF EGGS MAY PREVENT VITAMIN D DEFICIENCY IN SCHOOLCHILDREN.” Nutr Hosp. 2013 Mayo-Junio;28(3):794-801.