山芋(とろろ)

Chinese yam
ヤマノイモ

山芋には、でんぷん分解酵素であるアミラーゼやジアスターゼをはじめ、ムチンやコリン、サポニン、食物繊維などの多くの健康成分が含まれています。
山芋は非常に栄養価が高く、滋養強壮や疲労回復に効果があるといわれています。

山芋とは?

●基本情報
山芋は特有の粘りを持つヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草[※1]です。
唯一生で食べることができる非常に栄養価の高い芋です。もともとは山に自生していたことから山芋と名付けられました。山芋の歴史は古く、日本では縄文時代から食されており、鎌倉から室町時代頃に栽培が始まったといわれています。昔から滋養強壮に効果・効能があるとされ、日本では「山うなぎ」とも呼ばれていました。

●山芋の種類
現在、日本で採れる山芋は大きくジネンジョ、ダイジョ、ヤマノイモの3種類に分けられます。山芋の出荷時期は品種によって多少異なりますが、多くは9月~12月頃に出荷されます。

・ジネンジョ(自然薯)
ジネンジョは日本が原産の天然種で、主に山野に自生しています。細長く、長さは60cmから1mにもなります。他の種類に比べ、強い粘りと耐寒性を持っていることが特徴です。収穫まで3年~4年かかることや、掘り出すのが困難であることから天然物はほとんど市場に出回っていません。現在市場に出回っているものの多くは栽培品です。すりおろし、とろろにして食べられることが多い種類です。

・ダイジョ
ダイジョは東南アジアを原産とし、アフリカや熱帯アジア、ラテンアメリカなどの広い地域で主食として栽培されている種類です。日本でも沖縄や南九州など一部の地域でわずかに栽培されています。ダイジョは寒さに弱く、12℃以下になるとタネイモが腐るため、寒冷地での栽培が難しいとされています。白色や赤紫色があり、調理用の着色料としても利用できます。

・ヤマイモ
ヤマイモは中国が原産の、温帯地域に適した種類です。日本には平安時代に伝来したとの説もありますが、記録が残されている文献によると江戸時代以降に伝えられたといわれています。ヤマノイモは芋の形によりさらに、長形種、偏形種、塊形種の3種に分けられます。
長形種は一般的にナガイモと呼ばれており、全国的に栽培されている生産量の最も多い種類です。形は棒状で長いものでは1mにもなります。1年で生育するため一年薯(いちねんいも)とも呼ばれています。水気が多く粘りが少ないため、細切りにしてサラダや酢の物、また大きめに切って煮物にするなど食感を楽しめる料理に向いています。
偏形種はイチョウイモやブッショウイモと呼ばれている種類です。手のひらやイチョウの葉、扇状など様々な形をしており、淡褐色の外皮を持ちます。短根で土層の浅いところでも栽培が可能です。栽培量が多い関東では大和芋と呼ばれることもあります。あくが少なく、粘りも強いので、すりおろして食べるのに適しています。
塊形種には伊勢芋、丹波芋、大和芋などが含まれます。形は球形から塊形まで様々あり、皮の色も白から黒まで多様です。比較的高温な地域での栽培に適しているため、近畿・中国・四国地方で多く栽培されています。水分が少なく、粘りが強いため、とろろ汁ややまかけなどすりおろして食べられることが多い種類です。大和芋は、そのねばねばを活かし、和菓子の原料やかまぼこなどの練り物のつなぎにも使われています。ヤマノイモの中では最も粘りが強く、形がきれいなため贈答品としても人気があります。

●山芋の選び方
ジネンジョは重く、ひげ根が密集しているものが良品です。
ナガイモは形が良く、太さが均一なものを選びましょう。あまり細すぎるものよりも、ずんぐりと程良い太さがある方が味が良いとされています。不自然に白いものは、漂白している可能性があるので避けたほうが良いでしょう。伊勢芋、丹波芋、大和芋は凹凸がなく、なるべく重いものを選びます。

●山芋の保存方法
包丁を入れていない皮付きの山芋は乾燥しないように新聞紙で包み、日の当らない風通しの良い場所で保存します。切った後の使いきれなかった山芋は、切り口をラップでピッタリと包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。切り口から水分が失われ変色していくので、切り口をしっかりと覆うことが大切です。

●山芋に含まれる成分と性質
山芋には、でんぷん分解酵素であるアミラーゼやジアスターゼが豊富に含まれているため、消化を助け、栄養の吸収効率を高める効果があるといわれています。新陳代謝を活発にし、疲労回復や滋養強壮に効果的です。
山芋の特性でもあるヌメリは、ムチンと呼ばれる成分によって生まれます。ムチンは胃腸の粘膜を潤し、保護する働きがあるため消化酵素とともに滋養強壮に効果的に働きかけます。
アミラーゼやジアスターゼ、ムチンはともに熱に弱く、加熱により分解酵素の働きが失われます。そのため、山芋をとろろや千切りなど生のまま食べることは分解酵素の働きを維持するとても効果的な食べ方です。
山芋には他にも、ビタミンB₁パントテン酸カリウム食物繊維が多く含まれています。これらには腸内環境の正常化,肝臓や脾臓の負担を軽減させるなどの働きがあります。
食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2つに分類されます。
不溶性食物繊維とは水に溶けない食物繊維で、腸のぜん動を刺激し、腸内に溜まった有害物質の排出を促す作用があります。肥満や便秘の解消、腸の病気予防などに効果があります。
水溶性食物繊維とは水に溶ける食物繊維で、腸内で水分を含みヌルヌルとしたゲル状となり、有害な成分を吸着して排出させます。糖尿病や動脈硬化、高血圧の予防に効果があります。
また、山芋にはヒアルロン酸同様の保水効果があり、肌につやとハリを与える効果もあると期待されています。

<豆知識①>山芋の合理的な食べ方
でんぷんを多く含む芋類は加熱せずに食べると、消化や吸収が悪く下痢をしてしまうことが多いので、通常の芋類は生ではなく、加熱調理をして食べます。しかし、山芋はでんぷんを分解する酵素を豊富に含んでいるため、生で食べても問題はありません。さらに、山芋に含まれる分解酵素は、加熱しない方がその効果をより強く発揮します。また、すりおろして山芋の細胞を壊すことで分解酵素の働きが強まることもわかっています。とろろは、山芋の分解酵素の働きを最大限に発揮させる、非常に合理的な食べ方なのです。

<豆知識②>山芋を触るとかゆくなる仕組み
山芋の皮をむいたり、すりおろしたりする時に手がかゆくなる場合があります。これは山芋の皮付近に存在する針状のシュウ酸カルシウムが皮膚を刺激するためです。シュウ酸カルシウムは酸に非常に弱いという性質を持っているため、レモン汁をかゆくなっている部分につけたり、食を薄めたもので軽く洗い流すとかゆみがおさまります。

<豆知識③>山芋のすりおろし方
山芋をすりおろす時はおろし金を使わずに、すり鉢を使う方が良いといわれています。山芋をすり鉢の周りに軽く当て、回しながらすりおろします。そして最後にすりこぎで仕上げます。おろし金を使うよりも一段と口当たりの良い、ふわっとしたとろろができます。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]

山芋の働き

山芋にはでんぷん分解酵素のアミラーゼやジアスターゼをはじめ、ムチン、コリン、サポニン、食物繊維などの有効成分が含まれるため、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●消化や吸収を助ける効果
山芋に豊富に含まれるでんぷん分解酵素であるアミラーゼやジアスターゼが消化を促進し、栄養の吸収率を高めます。そのため山芋には新陳代謝を活発にし、疲れた胃を助け、疲労回復や滋養強壮への効果が期待されています。
また山芋のヌメリのもとであるムチンには胃の粘膜を潤し、保護する働きがあります。

●コレステロール値や血糖値を低下させる効果
山芋に含まれるムチンには、血糖値の上昇を抑えて糖尿病を予防したり、血中のコレステロールを抑え、高脂血症[※2]を予防する働きがあります。
また山芋にはサポニンという成分が含まれます。サポニンはラテン語のせっけんを意味する「サポ」が名前の由来であるように、水に溶けるとせっけんのように泡をつくる発泡作用があります。この泡には脂質を溶かす働きがあるため、余分な脂質の吸収を抑える働きが期待できます。
サポニンには血栓の生成を抑制する働きや、過酸化脂質[※3]の蓄積を抑制する強い抗酸化作用[※4]があることも報告されています。【3】

●高血圧や動脈硬化を予防する効果
山芋に含まれるコリンは高血圧や動脈硬化の予防に効果的です。
コリンは血管を拡張させて血圧を下げるアセチルコリンと呼ばれる物質や、細胞膜を構成するレシチンの材料になっています。レシチンは血管壁へのコレステロールの沈着を防いだり、肝臓に脂肪が溜らないようにする働きがあるため、肝硬変[※5]や動脈硬化の予防になります。

●便秘を解消する効果
山芋には食物繊維が豊富に含まれているため、腸内環境の正常化や便秘の解消に効果的です。

[※2:高脂血症とは、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪値が必要量よりも異常に多い状態のことです。コレステロールは過剰になると体に障害をもたらします。糖尿病と同様に自覚症状に乏しく、動脈硬化によって重篤な病気を引き起こすのが特徴です。]
[※3:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※4:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※5:肝硬変とは、肝臓が固くなり、本来の機能がきわめて減衰した状態のことです。]

山芋は食事やサプリメントで摂取できます

○消化を促進したい方
○疲れやすい方
○血圧が高い方
○コレステロール値が気になる方
○血糖値が気になる方
○便秘でお悩みの方

山芋の研究情報

【1】神経芽種細胞PC12にヤマイモの抽出物を投与したところ、神経栄養因子(NGF)と同様の働きを示したことから、山芋は脳神経に有益であることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21651968

【2】マウスに、ヤマイモ抽出物投与したところ、免疫細胞T細胞、B細胞、リンパ球が増殖したことから、山芋が免疫力向上効果を持つことがあることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19378946

【3】マウスに、山芋抽出物を21日間摂取させたところ、小腸のルチルアミノペプチダーゼの活性が上昇し、消化酵素スクラーゼの活性が低下しました。また血中および肝臓中のコレステロール値に改善が見られたことから、山芋に腸保護作用と肝臓保護作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12831952

【4】アルツハイマー病マウスに、山芋の有効成分ジオスゲニンを1日当たり0.12mg の量で20日間摂取させたところ、認知機能に改善が見られました。またアルツハイマー病に特有のタンパク質アミロイドβの生成が抑止され、神経軸索が正常に戻ったことから、山芋に認知症予防効果とアルツハイマー予防効果があることが示唆されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3405293/

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参考文献

・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版

・中村丁次 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・野間佐和子 旬の食材 秋‐冬の野菜 講談社

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・成瀬宇平 食材図典 小学館

・Kim N, Kim SH, Kim YJ, Kim JK, Nam MK, Rhim H, Yoon SK, Choi SZ, Son M, Kim SY, Kuh HJ. (2011) “Neurotrophic activity of DA-9801, a mixture extract of Dioscorea japonica Thunb. and Dioscorea nipponica Makino, in vitro.”

・Lin PL, Lin KW, Weng CF, Lin KC. (2009) “Yam storage protein dioscorins from Dioscorea alata and Dioscorea japonica exhibit distinct immunomodulatory activities in mice.” J Agric Food Chem. 2009 Jun 10;57(11):4606-13.

・Chen H, Wang C, Chang CT, Wang T. (2003) “Effects of Taiwanese yam (Dioscorea japonica Thunb var. pseudojaponica Yamamoto) on upper gut function and lipid metabolism in Balb/c mice.” Nutrition. 2003 Jul-Aug;19(7-8):646-51.

・Chihiro Tohda,a, Takuya Urano, Masahito Umezaki, Ilka Nemere, and Tomoharu Kuboyama (2012) “Diosgenin is an exogenous activator of 1,25D3-MARRS/Pdia3/ERp57 and improves Alzheimer’s disease pathologies in 5XFAD mice” Sci Rep. 2012; 2: 535.

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