タヒボ

taheebo
イペー
Tabebuia avellanedae

タヒボは南米原産の薬木で、靭皮部を煎じたものが古くから健康保持のために利用されてきました。ビタミンやミネラルをはじめとする様々な有用成分が含まれており、ブラジルでは民間薬として用いられる他、タヒボ茶としても飲用されています。中でもタヒボ特有のNQ801はガンに効果があるとして注目されています。

タヒボとは?

●基本情報
タヒボは南米ブラジルのアマゾン川流域が原産で、樹高30m、幹の直径が1.5mに達するノウゼンカズラ科タベブイア属の樹木で、学名をタベブイア・アベラネダエといいます。ノウゼンカズラ科の植物は世界に700種類以上あるといわれており、タベブイア属は全米地域に100種類以上が存在しています。タヒボはブラジルではイペーと呼ばれており、咲かせる花の色によって、白色のイペー・ブランコ、黄色のイペー・アマレーロ、紫色のイペー・ロショの大きく3つに分けられます。黄色い花を咲かせるイペー・アマレーロはブラジルの国花になっており、観賞用や街路樹として国民から親しまれている花木です。3種類とも有効成分をもっており薬用効果がありますが、中でも紫色のイペー・ロショの薬効が高いといわれています。また、イペー・ロショには50種類以上の種類があり、そのひとつが赤紫色の花をつけるタベブイア・アベラネダエです。ジャングルの北部特定地域にのみ自生するものは特に高い薬効を持つことがわかっています。

●タヒボの歴史
タヒボは1500年以上前から飲用されており、古代インカ帝国時代にはインディオたちがタヒボの内部樹皮を煎じで、病気からの回復や健康保持のためにタヒボ茶などとして利用してきたといわれています。タヒボとは、古代先住民の古語で「神の恵み」や「神の光」という意味で、タベブイア・アベラネダエは「神からの恵みの木」と呼ばれていたとの言い伝えがあります。ときには金と交換するほど貴重な宝物として扱われていました。
有効成分については1960年代から欧米を中心に研究が進められ、タヒボの樹皮や幹から発見されたラパコールという抗生物質がガンに有効として報告がされました。その後もタヒボのさまざまな働きについて研究が行われています。日本では1980年代からタヒボの研究が始まっており、特定地域の樹齢30年以上のタベブイア・アベラネダエの内部樹皮にのみ含まれる、最も抗ガン活性の強い成分NQ801[※1]が発見されました。

●タヒボの生産地
タヒボは、主にブラジルのアマゾン川流域に生育しており、その他アルゼンチンやパラグアイの一部地域にも生育しています。タヒボの木で薬用として使用される部位は、木質部と外皮に挟まれた靭皮部のみと限られています。事実上、人口栽培は不可能のため、ブラジル政府により樹齢30年以上のものに限り伐採許可が下されています。

●タヒボに含まれる成分と性質
タヒボにはビタミンミネラル類をはじめ、たんぱく質食物繊維糖質などの様々な成分がバランスよく含まれており、ひとつの植物でこれほど多くの成分が含まれているものはほとんどないといわれています。また特有の成分であるNQ801は強い抗酸化力[※2]を持ち、ガン治療に有効として、現在では化学合成の研究が進められています。
これらのさまざまな有効成分の働きにより、ガンを抑制する効果や貧血予防、糖尿病や肝機能を高める効果がある他、腎機能を高める効果やタヒボの持つ利尿作用からむくみを解消する効果なども知られています。

[※1:NQ801とは、正式な化学名称を2-(1-ヒドロキシエチル)-5-ヒドロキシナフト[2,3-b]フラン-4,9-ディオンという化合物です。]
[※2:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]

タヒボの効果

●ガンを予防および抑制する効果​
タヒボには強い抗酸化力を持つキノンという色素成分が含まれており、これまでの研究からその中のひとつであるNQ801に21種類ものガン細胞に対して増殖を阻害する働きがあることがわかっています。また、タヒボにはガン細胞に対しアポトーシス[※3]を誘導させる作用があります。このアポトーシスは正常な細胞に対しては作用せず、ガン細胞のみを直接攻撃することがわかっています。さらにタヒボには、ガンの転移抑制や浸潤抑制作用、ガン細胞に栄養を送る血管新生を阻害する作用もあります。【1】【2】【3】

●貧血を予防する効果
体内には体重の13分の1の量の血液が流れており、毛細血管を通って体のすみずみに栄養や酸素などを運んでいます。血液の細胞成分のほとんどは赤血球で、その中に酸素を運ぶヘモグロビン[※4]が含まれています。貧血は多くの場合、ヘモグロビンの構成成分であるの不足、赤血球の数の減少により引き起こされます。タヒボには血液を作るのに必要なビタミンB12葉酸が含まれているのに加え、鉄も含まれているため、貧血の予防に効果を発揮します。また、胃潰瘍をはじめとする消化器系の出血に対して止血作用を持つことから、出血性の貧血にも有効であることがわかっています。

●糖尿病の進行を抑制する効果
糖尿病は、血液中の糖の量が異常に増えた状態をいいます。通常は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが血液中の糖の量を調節していますが、インスリンが分泌されなくなったり、インスリンは分泌されていてもインスリンを受け入れる細胞、すなわちインスリン受容体に異常が起き、糖の調節機能が働かなくなった場合に糖尿病になります。タヒボにはホルモン調節機能がありインスリン分泌能を高める働きがあるほか、インスリン受容体の働きを活性化させる作用もあるため糖尿病に対して効果を発揮します。

●肝機能を高める効果
タヒボには血液を浄化して毒素を排除する働きがあり、肝臓が働きやすい環境を整えます。体内に入ってきたアルコールやニコチンなど体に良くない物質や、食べ物を消化するときに出る毒素などを分解して無毒化してくれるのが肝臓です。タヒボには弱った肝臓を刺激することで肝臓の代謝を盛んにし、物質を分解する働きをサポートする成分が含まれています。

[※3:アポトーシスとは、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、プログラムされた体内の細胞死のことです。]
[※4:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。]

タヒボの研究情報

【1】タヒボの皮のエタノール抽出物を調べたところ、炎症や痛み、変形性関節症などの症状に効果があることがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22825254

【2】エストロゲン陽性乳がん株(MCF-7)にタヒボを処方したところ細胞増殖阻害効果が見られたことから、タヒボには抗腫瘍作用が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19578798

【3】肺がん細胞株であるA549にタヒボの抽出物を添加し培養を行ったところ、テロメラーゼ活性を阻害しアポトーシスを起こさせたため、タヒボには抗ガン作用が期待できます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15753997

参考文献

・松田秀秋 神からの恵みの木・タヒボ  高い抗ガン作用が臨床で証明 ヘルス研究所

・大山武司 タベブイア・アベラネダエの薬効 ヘルス研究所

・大山武司 タベブイア・アベラネダエの臨床 ヘルス研究所

・藤田紘一郎 知識ゼロからの健康茶入門 幻冬舎

・Lee MH, Choi HM, Hahm DH, Her E, Yang HI, Yoo MC, Kim KS. (2012) “Analgesic and anti-inflammatory effects in animal models of an ethanolic extract of Taheebo, the inner bark of Tabebuia avellanedae.” Mol Med Rep. 2012 Oct;6(4):791-6.

・Mukherjee B, Telang N, Wong GY. (2009) “Growth inhibition of estrogen receptor positive human breast cancer cells by Taheebo from the inner bark of Tabebuia avellandae tree.” Int J Mol Med. 2009 Aug;24(2):253-60.

・Woo HJ, Choi YH. (2005) “Growth inhibition of A549 human lung carcinoma cells by beta-lapachone through induction of apoptosis and inhibition of telomerase activity.” Int J Oncol. 2005 Apr;26(4):1017-23.

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