ファイトケミカルとは
●基本情報
ファイトケミカル(フィトケミカル)とは、植物が紫外線、有害物質、害虫、外敵などから自身を守るためにつくりだす物質であり、植物に含まれる化学物質の総称です。
ギリシャ語で「ファイト(phyto)」は「植物」、「ケミカル(chemical)」は「化学物質」という意味なので、「ファイトケミカル(phytochemical)」は「植物由来の化学物質」ということになります。
ファイトケミカルは、野菜、果物、穀類、豆類などの植物に、色、香り、苦味、辛味などの成分として存在しており、全部で数千種類存在するともいわれています。
ファイトケミカルは人間が摂取した場合においても、抗酸化作用などの効果を発揮します。
ファイトケミカルは、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)、ビタミン、ミネラルなどの栄養素とは異なり、通常の身体機能維持には必須とされていないため、欠乏症の心配はない栄養素ですが、様々な病気を予防する効果を持つため、その機能性が注目されています。
しかし、ファイトケミカルは植物しか作り出せない物質であり、ヒトの体内で生成することができないため、食品やサプリメントなどから補う必要があります。
●主なファイトケミカルの種類
■ポリフェノール類のファイトケミカル
<アントシアニン>
アントシアニンとは、ポリフェノールの一種である青紫色の天然色素で、世界中に1000種類以上存在するといわれています。
アントシアニンは主にブルーベリー、ビルベリー、カシスなどの、黒色や紫色の野菜や果物に多く含まれており、その種類により性質や働く場所は異なりますが、そのほとんどが強力な抗酸化作用[※1]を持っています。
<レスベラトロール>
レスベラトロールとはポリフェノールの一種で、サンタベリーやブドウに多く含まれており、強力な抗酸化作用を持っています。
レスベラトロールは、長寿遺伝子と呼ばれているサーチュイン遺伝子[※2]を活性化させる作用を持ち、遺伝子レベルから細胞の生まれ変わりをサポートする働きが期待されています。
アンチエイジング効果、美肌に対する効果などが期待できます。
< エクサージ >
エクサージは、チャノキの葉から抽出されるカテキン類と、チャノキの葉を発酵熟成させたテアラフラビン類を主要とする成分です。 強い抗酸化作用と抗炎症作用があるため、エクサージは、運動をすることで発生する活性酸素を除去することが分かっています。 また、筋肉が傷つくことで起きる炎症をエクサージが抑制することも分かっています。
<イソフラボン、リグナン>
イソフラボンとは、大豆や大豆加工食品などに多く含まれており、ポリフェノールのフラボノイド系に属する色素成分です。
また、リグナンとは、ポリフェノールの一種で、ごまに含まれるゴマリグナンや、亜麻仁と呼ばれる亜麻種子に含まれている亜麻リグナンなどが広く知られています。
イソフラボンとリグナンは、女性ホルモン様物質[※3]として作用するため、更年期障害[※4]など女性特有の悩みに対する効果が期待されている栄養素です。
<ヘスペリジン>
ヘスペリジンとは、ポリフェノールの一種で、柑橘類の皮やすじに特に多く含まれている成分です。
ビタミンPとも呼ばれており、末梢血管の血流を促進する作用を持っているため、血流の改善に効果的であるといわれています。
<クルクミン>
クルクミンとは、ポリフェノールの一種で、特に秋ウコンに多く含まれている黄色の色素成分です。
クルクミンはアルコールの分解をサポートしたり、胆汁[※5]の分泌を促進するなど肝機能を向上させる働きが広く知られており、その他にも胃腸の健康を維持する作用や、強力な抗酸化作用を持っています。
<カテキン>
カテキンとは、ポリフェノールの一種で、緑茶や紅茶などに渋味成分として多く含まれており、強力な抗酸化作用を持っています。
脂肪の吸収を抑制する作用、抗菌作用、抗アレルギー作用など多くの働きを持つ栄養素であり、生活習慣病[※6]を予防する効果や血糖値の上昇を抑制する効果が期待されています。
<タンニン(タンニン酸)>
タンニン(タンニン酸)とは、木の幹、葉、樹脂に含まれているポリフェノールの一種です。お茶の渋みのもととなります。
強力な抗酸化作用の他にも収れん作用[※7]を持つことから、毛穴を引き締める効果があるとされ、洗顔料などに用いられています。
■カロテノイド類のファイトケミカル
<ルテイン>
ルテインとは、カロテノイドの一種であり、マリーゴールドの花弁や緑黄色野菜に多く含まれる、黄色の色素成分です。
ルテインは人間の体内にもともと存在しており、目の水晶体[※8]や黄斑部[※9]、皮膚、大腸などに存在しています。
ルテインは、特に目の水晶体や黄斑部で強力な抗酸化作用を発揮し、活性酸素を抑えるとともに、紫外線や有害な青色の光を吸収する働きも持っているため、目の健康維持に深く関与している栄養素です。
<ゼアキサンチン>
ゼアキサンチンとは、カロテノイドの一種であり、パプリカや卵黄、ほうれん草などに多く含まれている色素成分です。
人間の体内では、主に水晶体や網膜の中心部である黄斑部にルテインとともに存在しています。
ゼアキサンチンもルテインと同様に、強力な抗酸化作用を持ったカロテノイドであり、ルテインとともに光のダメージから目を守っています。
<アスタキサンチン>
アスタキサンチンとは、カロテノイドの一種で、鮭、いくら、えびなどに多く含まれている赤色の天然色素です。
別名「海のカロテノイド」とも呼ばれるアスタキサンチンは、強力な抗酸化力を持った栄養素で、その抗酸化力はビタミンEの約1000倍ともいわれています。
また、アスタキサンチンは網膜や脳などの栄養が行き届きにくい細部にまで働きかけ、抗酸化力を発揮することができる成分です。
<リコピン>
リコピンとは、カロテノイドの一種であり、トマトやすいかなどに多く含まれている赤色のカロテノイドです。
リコピンは抗酸化作用が強く、その抗酸化力はβ-カロテンの2倍以上、ビタミンEの約100倍ともいわれています。
リコピンには血管内の血栓を除去し、血流を改善させる効果があるといわれています。
■香辛成分のファイトケミカル
<ラズベリーケトン>
ラズベリーケトンとは、ラズベリーに含まれている香気成分の一種です。
ラズベリーケトンは、赤とうがらしの辛味成分であるカプサイシンと似た構造を持つ栄養素であり、カプサイシン同様に脂肪を燃焼する作用があることで知られています。
また、ラズベリーケトンは毛母細胞[※10]を増やす作用を持つため、育毛効果も期待されています。
<スルフォラファン>
スルフォラファンは、ブロッコリーの新芽の部分であるブロッコリースプラウト(ブロッコリーの新芽)に多く含まれています。
スルフォラファンには強力な抗酸化作用だけでなく、シミやくすみの原因となる物質の働きを抑制する作用を持ち、シミやくすみを改善する効果や、肝機能を高める効果などが期待されています。
<カプサイシン>
カプサイシンとは、とうがらしなどに多く含まれている辛味成分の一種です。
カプサイシンを摂取することにより体温を上昇させる作用、エネルギーの代謝[※11]を向上させる作用、脳からアドレナリン[※12]を分泌させる作用などが知られており、脂肪を燃焼させる効果が期待されています。
<アリイン・アリシン>
アリインとアリシンは、硫黄化合物の一種で、主ににんにくやねぎなどのユリ科の野菜に多く含まれています。
にんにくなどの食材が、切る、すり潰すなどの衝撃によって細胞が壊されると、食材中に含まれるアリシンは酵素の一種であるアリイナーゼ[※13]と反応し、アリインへと変化します。
アリインとアリシンは強力な抗酸化作用、糖の代謝を促す作用、疲労を回復する成分であるビタミンB1の効果を持続させる作用を持ちます。
<ジンゲロール(ショウガオール)>
ジンゲロールとは、しょうがに含まれている辛味成分であり、加熱によってショウガオールへと変化します。
ジンゲロールはしょうがの中でも、特に金時しょうがに多く含まれているといわれ、抗酸化作用や血管拡張作用が知られています。
■その他のファイトケミカル
<ギンコライド>
ギンコライドとは、イチョウ葉エキス特有の成分であり、強力な抗酸化作用を持っています。
ギンコライドは、その抗酸化作用によって血流を改善する効果が認められており、特に脳細胞の健康を維持する効果が期待できます。
<サポニン>
サポニンとは、植物に含まれている配糖体[※14]の一種で、高麗人参、田七人参、大豆などマメ科の植物に多く含まれています。
渋味や苦味の成分であるサポニンは、コレステロールを低下させる作用、血管に生じた血栓を溶かす作用、自然治癒力を向上させる作用などを持っているため、生活習慣病の予防や血流の改善に効果的です。
<ナットウキナーゼ>
ナットウキナーゼとは、酵素の一種で、納豆に含まれている特有の成分です。
ナットウキナーゼには、血流を妨げる原因となる血栓を溶かす作用があるため、血流を改善する効果が期待されており、脳梗塞や動脈硬化などの血栓症の予防に効果的です。
<GABA(ギャバ)>
GABAとは、玄米や味噌などに含まれているアミノ酸の一種で、人間の体内では主に脳に存在しています。
GABAには脳内の興奮状態を抑制する働きや、リラックスした時に脳から発せられるα(アルファ)波を増加させる働きがあるといわれており、ストレスを緩和させる効果が期待されています。
<テアニン>
テアニンとは、紅茶や緑茶などに多く含まれるアミノ酸の一種です。
テアニンは、α(アルファ)波を増加させる作用を持つため、テアニンを摂取することで、リラックス効果が期待できます。
<β-グルカン>
β-グルカンとは、アガリクスなどのきのこ類に多く含まれている食物繊維の一種です。免疫力を高める作用が注目を集めています。
β-グルカンを含むきのこは鹿角霊芝や冬虫夏草など、漢方医学で生薬として使用されている薬用きのこも存在し、サプリメントなどにも活用されています。
<フコイダン>
フコイダンとは、めかぶ、もずく、こんぶなどの海藻類に多く含まれている多糖類の一種です。
海藻の表面を覆っているフコイダンは、潮の激流や外的刺激から海藻が身を守る成分であり、免疫力を向上させる作用を持っています。
<葉緑素(クロロフィル)>
葉緑素とは、地上に育つ木々や花草などの陸上植物、わかめなどの海藻類、クロレラやスピルリナなどの藻類に含まれている緑色の天然色素で、クロロフィルとも呼ばれています。
強い抗酸化力を持っている葉緑素は、DNAの酸化を防いだり、コレステロールを抑える働きが知られています。
[※1:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]
[※4:サーチュイン遺伝子とは、遺伝子の一種で、長寿遺伝子とも呼ばれています。サーチュイン遺伝子が活性化することで、サーチュインという酵素が活発化し、細胞寿命の調節を行うことができます。]
[※3:女性ホルモン様物質とは、女性ホルモンと似た働きを行う物質です。]
[※4:更年期障害とは、40歳代から60歳代の女性に起こりやすい症状です。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、動悸、ほてり、イライラなどの症状が現れます。]
[※5:胆汁とは、肝臓でつくられるアルカリ性の液体です。胆汁酸などを含み、脂肪酸の吸収を助ける作用があります。]
[※6:生活習慣病とは、病気の発症に、日頃の生活習慣が深く関わっているとされる病気の総称です。糖尿病、脳卒中、脂質異常症、心臓病、高血圧、肥満などが挙げられます。]
[※7:収れん作用とは、縮こませたり、引き締めたりする働きを指します。]
[※8:水晶体とは、人間の目においてレンズの役割を担っている部位です。直径が1cmほどのレンズで、毛様体筋という筋肉によって厚さを変えることができます。遠くのものを見るときは厚さを薄く、近くのものを見るときは厚くすることで、ピント調節の働きも行っています。]
[※9:黄斑部とは、人間の目において、フィルムの役割を担っている部位です。眼球の内壁である網膜の中心部に存在し、直径2mm、厚さ0.2mmほどの非常に小さな部分であり、視力を支えています。]
[※10:毛母細胞とは、毛乳頭周辺の組織細胞です。毛乳頭から栄養素や酸素を受け取り、細胞分裂を繰り返すことで髪の毛を生成しています。]
[※11:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※12:アドレナリンとは、副腎髄質から分泌され、血糖を上昇させるホルモンです。]
[※13:アリイナーゼとは、にんにくやたまねぎなどに含まれている酵素の一種です。アリシンを分解する働きを持っています。]
[※14:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
ファイトケミカルの効果
ファイトケミカルは各々で特徴的な働きが存在するため、その効果にも違いが生じます。
■ポリフェノール類のファイトケミカルが持つ効果
<アントシアニン>
●視機能を改善する効果
アントシアニンには、視機能を改善する効果があります。
視覚とは、対象物を光の情報として捕えて信号化し、その信号を脳に伝えて像として判断・認識するというプロセスを指します。
アントシアニンは、光の情報を信号化する役目を担うロドプシン[※15]の再合成を促進する作用があり、目を酷使することによって生じる、ショボつき、ぼやけ、疲れ目などを予防する効果が期待されています。
<レスベラトロール>
●老化を防ぐ効果
レスベラトロールは、人間の体を構成している細胞の生まれ変わりを助けることで、細胞を若々しく保ち、老化を防ぐ効果があるとされています。
また、細胞を若々しく保つことができるレスベラトロールの働きは、肌細胞にも良い影響を与えるため、美肌の維持にも効果的です。
<エクサージ>
●疲労回復の効果 エクサージは、疲労の原因となる活性酸素を除去するはたらきがあります。 また、活性酸素が発生することを抑制するはたらきもあります。 活性酸素が体に蓄積することを回避し、運動した翌日の「疲れ」や「だるさ」を軽減させる効果が期待できます。
<イソフラボン、リグナン>
●更年期障害の症状を改善する効果
イソフラボンやリグナンには、更年期障害の症状を改善する効果が期待されています。
更年期障害は、年齢とともに卵巣の機能が衰え、エストロゲン[※16]の分泌が減少することによって起こります。
リグナンは、女性ホルモン様作用を持ち、体内でエストロゲンと似た働きを行うため、ホルモンバランスの乱れから引き起こる、顔のほてり、発汗、イライラなど、女性特有の悩みを改善することができます。
<ヘスペリジン>
●血流を改善する効果
ヘスペリジンは、血流の悪くなりやすい末梢血管を強化させることで、末端の血流を改善する効果が期待されています。
また、血中コレステロールを低下させる効果なども期待されています。
<クルクミン>
●肝機能を高める効果
クルクミンの働きによって、肝機能を高めることができると考えられています。
クルクミンは、胆汁の分泌を促進する作用や、肝機能の解毒作用をサポートする作用を持つため、肝機能を高める効果があるといわれています。
<カテキン>
●生活習慣病の予防・改善効果
カテキンは、生活習慣病の予防や改善に効果があるといわれています。
生活習慣病は、血中のコレステロールや中性脂肪が増加することが、原因のひとつであるといわれています。
カテキンは、肝臓でつくられる胆汁酸[※17]の分泌を促し、血中コレステロールの増加を抑制する働きがあるため、生活習慣病の予防や改善に効果的であると考えられています。
<タンニン酸>
●美肌効果
タンニン酸には、肌を引き締める効果があります。
タンニン酸は収れん作用を持っており、開いた毛穴や皮脂腺などを縮み込ませることができるため、毛穴を目立たなくすることができるといわれています。
■カロテノイド類のファイトケミカルが持つ効果
<ルテイン、ゼアキサンチン>
●眼病を予防する効果
ルテインやゼアキサンチンには、白内障や黄斑変性症を予防する効果が期待されています。
白内障や黄斑変性症などの加齢によって発症する眼病の大きな原因のひとつに、活性酸素が挙げられます。
目は外気にさらされているため、他の臓器よりもダメージを受けやすいという特徴があります。
そのため、目は活性酸素が発生しやすい状況にさらされており、白内障などの酸化による疾病が発症しやすい部位であるといわれています。
水晶体や黄斑部に存在するルテインとゼアキサンチンは、有害な光を吸収し、また抗酸化作用を発揮することで、光のダメージによる酸化を抑制し、白内障や黄斑変性症を予防する効果を持ちます。
<アスタキサンチン>
●眼精疲労を改善する効果
眼精疲労は集中してものを見続けたり、目を長時間酷使し続けることによって起こる症状で、目の疲れが慢性化した状態を指します。
アスタキサンチンは、特定の栄養素しか入り込むことのできない網膜にも行き届き、その抗酸化力を発揮します。
アスタキサンチンの持つ強力な抗酸化作用は、目の疲れを軽減し、眼精疲労の予防や改善に効果的です。
<リコピン>
●血流を改善する効果
リコピンは活性酸素を除去することによって、血液の流れを改善する効果があるといわれています。
活性酸素は、コレステロールを酸化させ、動脈硬化や血栓の原因となり、血液の流れを悪化させます。
リコピンが持つ抗酸化作用は、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぐことで、血流を改善することができます。
■香辛成分のファイトケミカルが持つ効果
<ラズベリーケトン>
●ダイエット効果
ラズベリーケトンは、カプサイシンと似た構造を持っており、脂肪を分解・燃焼する働きがあるため、ダイエット効果が期待されています。
<スルフォラファン>
●美白効果
スルフォラファンには、シミやくすみを予防することによる美白効果があるといわれています。
シミやくすみは、体の中のチロシナーゼ[※18]という酵素によってつくられており、スルフォラファンはチロシナーゼの働きを抑制する作用を持つため、シミやくすみを予防し、美白効果を発揮します。
<カプサイシン>
●ダイエット効果
カプサイシンには、脂肪を燃焼させることによるダイエット効果があるといわれています。
カプサイシンはエネルギー代謝を促進する作用や、アドレナリンの分泌を促進させる作用があるため、脂肪を燃焼・分解し、ダイエットへの効果が期待されています。
<アリイン・アリシン>
●疲労回復効果
アリインやアリシンは、疲労回復を行う成分であるビタミンB1と結びつくことで、その効果を持続させることができるため、疲労を回復するのに効果的であるといえます。
<ジンゲロール(ショウガロール)>
●冷えを改善する効果
ジンゲロールには、体温を上昇させる効果があります。
ジンゲロールは末梢血管を拡張させる作用を持つため、血流を改善し、体温を上昇させることができると考えられています。
また、ジンゲロールには炎症をやわらげる効果も期待されているため、関節痛への効果も期待されます。
■その他のファイトケミカルが持つ効果
<ギンコライド>
●血流を改善する効果
ギンコライドが持つ抗酸化作用は、血流の改善に効果的であるといわれています。
血流を悪化させる要因となる悪玉(LDL)コレステロールの酸化を防ぎ、血流の改善を行うことができます。
<サポニン>
●生活習慣病の予防・改善効果
サポニンの持つ血流を改善する作用は、生活習慣病の予防に効果的です。
血流の悪化は生活習慣病の原因になるといわれており、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こす場合もあります。
サポニンには、血中コレステロールを低減させる作用や、血栓を溶かす作用を持つため、良い血流を促し、生活習慣病の予防に効果的であると考えられています。
<ナットウキナーゼ>
●血栓症を予防する効果
ナットウキナーゼは、血栓症の予防に効果的であると考えられています。
血栓症とは、血栓の形成とその合併症である塞栓症[※19]をあわせた症状です。血栓が生成されると血流が悪くなり、それによって酸素や栄養の供給が滞り、臓器や組織に障害が引き起こります。
ナットウキナーゼには血栓を溶かす作用があるため、血栓症の予防に効果的であるといわれています。
<GABA(ギャバ)・テアニン>
●リラックス効果
GABAやテアニンを摂取することで、α(アルファ)波を増加させ、リラックス効果が得られると考えられています。
α波とは、人間がリラックスしている状態の時に脳から発せられる脳波のことです。
GABAとテアニンは脳内のα波を増加させる作用を持つことから、人間の脳をリラックスした状態へと導くことができるのです。
<β-グルカン、フコイダン>
●免疫力を高める効果
β-グルカンやフコイダンには免疫力を向上させ、ウイルスや細菌に対する抵抗力を高める効果が期待されています。
β-グルカンやフコイダンは、免疫機能を司る免疫細胞を活性化させることで、侵入してきたウイルスや細菌に対抗する力を強めることができます。
<葉緑素(クロロフィル)>
●血流を改善する効果
葉緑素は、血液を浄化する効果が期待されています。
血液が汚れる原因のひとつが、血中コレステロールの増加です。
葉緑素にはコレステロールを吸着させて体外へ排出させる作用があるため、血中のコレステロール量を低減させることができ、ドロドロの血液を浄化することができるといわれています。
[※15:ロドプシンとは、網膜に存在している色素であり、視紅とも呼ばれている物質です。とらえた光の情報を、脳に電気信号として送る役割を担っています。]
[※16:エストロゲンとは、女性ホルモンの一種で、卵胞や黄体から分泌される女性らしい体つきを促進するホルモンのことです。]
[※17:胆汁酸とは、胆汁に含まれている物質です。消化管内で食物の脂肪や脂溶性ビタミンをより吸収しやすくする働きをします。]
[※18:チロシナーゼとは、アミノ酸であるチロシンを酸化して、メラニンを作る酵素のことです。この酵素を阻害することにより、メラニンの生成をくいとめ美白効果が働きます。]
[※19:塞栓症とは、血液が血管内で詰まることによって生じる、脳梗塞や心筋梗塞などの病気を指します。]
ファイトケミカルは食事やサプリメントで摂取できます
ファイトケミカルを含む食品
○ビルベリー、ブルーベリーなど<アントシアニン>
○サンタベリー、ぶどうなど<レスベラトロール>
○大豆、大豆加工食品<イソフラボン>
○ごま、亜麻仁など<リグナン>
○青みかんなどの柑橘類<ヘスペリジン>
○ウコン(秋ウコン) <クルクミン>
○緑茶<カテキン>
○サケ、イクラなど<アスタキサンチン>
○緑黄色野菜など<ルテイン、ゼアキサンチン>
○トマト、すいかなど<リコピン>
○ラズベリー<ラズベリーケトン>
○ブロッコリー、カリフラワー、菜の花など<スルフォラファン>
○赤とうがらしなど<カプサイシン>
○にんにく、ねぎなど<アリイン、アリシン>
○しょうが(特に金時しょうが) <ジンゲロール(ショウガロール)>
○緑茶、紅茶<テアニン、タンニン酸>
○イチョウ葉エキス<ギンコライド>
○高麗人参、田七人参、大豆など<サポニン>
○納豆<ナットウキナーゼ>
○玄米、味噌、キムチなど<GABA>
○きのこ類<β-グルカン>
○こんぶ、わかめなどの海藻類<フコイダン>
○ほうれん草などの濃い緑色の野菜、わかめ、クロレラ、スピルリナなど<葉緑素(クロロフィル)>
こんな方におすすめ
○目の健康を維持したい方<アントシアニン>
○いつまでも若々しくいたい方<レスベラトロール>
○更年期障害でお悩みの方<イソフラボン、リグナン>
○血流を改善したい方<ヘスペリジン、リコピン、ギンコライド>
○肝臓を健康に保ちたい方<クルクミン>
○生活習慣病を予防したい方<カテキン、サポニン>
○目の疲れが気になる方<アスタキサンチン>
○白内障・黄斑変性症を予防したい方<ルテイン、ゼアキサンチン>
○肥満を防ぎたい方<ラズベリーケトン、カプサイシン>
○シミやくすみを予防したい方<スルフォラファン>
○疲れやすい方<エクサージ、アリイン、アリシン>
○冷え性の方<ジンゲロール(ショウガオール)>
○胃の健康を保ちたい方<サンショオール>
○肌を引き締めたい方<タンニン(タンニン酸)>
○血栓症を予防したい方<ナットウキナーゼ>
○ストレスをやわらげたい方<GABA(ギャバ)、テアニン>
○免疫力を向上させたい方<β-グルカン、フコイダン>
○コレステロール値が気になる方<葉緑素(クロロフィル)>
参考文献
・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社
・中嶋洋子 栄養の教科書 新星出版社
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・吉田企世子 安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 高橋書店
・井上正子監修 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社
・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社
・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社