ナットウキナーゼ

nattokinase

ナットウキナーゼとは、納豆のネバネバのもととなる納豆菌に含まれる酵素です。
ナットウキナーゼには、血管につくられる血栓を溶かしやすくする働きがあり、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を予防する効果があります。

ナットウキナーゼとは?

●基本情報
ナットウキナーゼとは、納豆菌がつくり出すたんぱく質を分解する酵素のひとつです。
納豆は、納豆菌が大豆を発酵させることによってつくられます。この時、納豆特有のネバネバのもととなるポリグルタミン酸をはじめ、たんぱく質やビタミンなどがつくられます。
また、納豆菌によってつくられる酵素は、ナットウキナーゼの他にもアミラーゼ[※1]やプロテアーゼ[※2]などがあります。

●ナットウキナーゼの歴史
1980年代に、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授は、アメリカのマイケルリース血液研究所において、血栓を溶かす酵素についての研究を行っていました。
その中で、人工的につくった血栓[※3]を溶かすために納豆のネバネバ成分に含まれている酵素を使用したところ、強い血栓溶解作用を持つことを発見し、この酵素を「ナットウキナーゼ」と名付けました。

●ナットウキナーゼの働き
ナットウキナーゼには、血栓を溶かしやすくする働きがあります。
ケガをした時など、血管が損傷して出血すると、損傷した部分を修復するために血小板[※4]が集まり血栓を形成します。これにより、出血が止まります。
健康で血液がサラサラの状態では、止血のために形成された血栓は、血液中の酵素により時間が経つと溶かされ消失します。
しかし、食事や生活習慣などによって、血液中でコレステロールや中性脂肪が増加し、血液がドロドロの状態になると、血栓を溶かす酵素が働きにくくなり、血栓は消失することなく、ますます大きくなってしまいます。これにより、血管が詰まりやすくなってしまい、脳梗塞や心筋梗塞などの病気の原因になるのです。
現代人は血液がドロドロになりやすく、このような病気が引き起こされる可能性が高いといわれています。
ナットウキナーゼの血栓を溶かしやすくする働きによって、血管を詰まらせる原因を未然に防ぐことができます。
納豆30gを健康な人に食べさせたところ、血栓分解産物(FDP)という血栓が溶けた時にできる物質が血液中に増加したという研究結果が報告されています。

●ナットウキナーゼを摂取する上での注意
ナットウキナーゼは熱に弱いという性質を持つため、納豆からナットウキナーゼを摂取する際は、加熱せずに食べることがすすめられています。
納豆には、ナットウキナーゼの他にビタミンK2が含まれています。ビタミンK2は骨を強く保ち、骨粗しょう症[※5]の予防に役立つビタミンですが、血栓の凝固を促進する働きもあります。
また、血栓は深夜から早朝にかけてつくられやすいため、ナットウキナーゼを夕食後や寝る前に摂取すると効果的であるといわれています。

[※1:アミラーゼとは、膵液や唾液に含まれる消化酵素の一種です。糖質を分解し吸収されやすくします。]
[※2:プロテアーゼとは、たんぱく質を分解する酵素の総称です。]
[※3:血栓とは、血液中の血小板などが固まってできる塊のことです。動脈硬化や脳梗塞の原因にも成り得るといわれています。]
[※4:血小板とは、血液に含まれる細胞の一種です。血管が傷ついた時に集合体になり、止血する役割を持ちます。]
[※5:骨粗しょう症とは、骨からカルシウムが極度に減少することで、骨の内部がスカスカになった症状であり、非常に骨折しやすくなることで知られています。高齢者に多い症状で、日本では約1000万人の患者がいるといわれており、高齢者が寝たきりになる原因のひとつです。]

ナットウキナーゼの効果

●血栓症を予防する効果
ナットウキナーゼが血栓を溶かしやすくする働きは、脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立ちます。
脳梗塞や心筋梗塞は血栓症といわれており、血液中にできた血栓が血管を詰まらせることによって引き起こされる病気です。
これらの血栓症は、自覚症状がないまま突然発症することがあるため、日々予防することが重要となります。
血栓は本来、血管の損傷を修復するために必要となるものです。しかし、血液がドロドロになると、できた血栓がスムーズに溶かされず、蓄積されたままになってしまいます。
その結果、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞が引き起こされます。
また、脳梗塞や心筋梗塞などの血管疾患により日本人の3割が死亡していることが報告されています。(平成21年 厚生労働省 人口動態統計より)
ナットウキナーゼには血液中の血栓を直接溶かす働きと、血栓を溶かすために働くウロキナーゼ[※6]という酵素を活性化させる働きがあります。
ウロキナーゼは消化管の表面に存在しており、刺激されることで活性化します。ナットウキナーゼは、このウロキナーゼを活性化させる働きがあり、もともと体に備わっている血栓を溶かす酵素をつくり出すことができます。
また、ナットウキナーゼが血栓を溶かしやすくする働きは、血栓症のひとつである旅行者血栓症(エコノミー症候群)[※7]の予防にもつながります。【1】【3】【5】

●高血圧を予防する効果
ナットウキナーゼには、血栓を溶かしやすくすることによって、高血圧を予防する効果があります。
心臓は、毎分4~5ℓの血液を全身に送り出しています。この時に血液が動脈の壁にかける圧力のことを血圧といいます。
血圧が高い状態が続くと、頭痛やめまい、動悸、息切れ、耳鳴り、手足のしびれといった症状が現れるほか、血管に無理な力がかかることで血管壁がもろくなり、動脈硬化の原因となります。
さらに、もろくなった血管に圧力がかかると、血管が破れやすくなるため、脳出血を引き起こす可能性が高くなります。
高血圧には、原因が明確ではない「本態性高血圧」と、腎臓障害などの病気が引き起こす「二次性高血圧症」があります。成人の高血圧患者のほとんどが本態性高血圧といわれており、この原因には遺伝に加えて、肥満や加齢、塩分の摂り過ぎ、ストレス、喫煙、運動不足などが挙げられます。
ナットウキナーゼが高血圧を予防することで、高血圧によって引き起こされる病気の予防にもつながります。【1】【2】

●コレステロール値を下げる効果
ナットウキナーゼが血液中のコレステロール値を下げ、脂質異常症を改善するという効果が明らかになっています。
脂質の一種であるコレステロールは、細胞をつくる上で重要となる成分です。しかし、バターなどの動物性脂肪を多く含む食品の摂りすぎは、血液中のコレステロール増加につながります。
コレステロールの増加は、脂質異常症・動脈硬化・脳梗塞・心筋梗塞などの病気を引き起こす要因にもなります。
また、消費エネルギーの60~70%を占める基礎代謝[※8]は、年齢とともに低下するため、コレステロールが増加しやすくなるといわれています。
ナットウキナーゼには、脂質異常症を引き起こすコレステロールの増加を予防する効果があります。【4】

[※6:ウロキナーゼとは、たんぱく質を分解する酵素の一種です。]
[※7:旅行者血栓症(エコノミー症候群)とは、飛行機や列車旅行など、長時間同じ姿勢でいることによって起こる血栓症です。血液が足に溜まり、鈍い痛みやむくみを感じるほか、足でつくられた血栓が血流にのって肺にたどり着くと、肺の血管を詰まらせ、呼吸困難などの症状が現れます。]
[※8:基礎代謝とは、人間が生きていくために最低限必要な機能を維持するためのエネルギーです。]

食事やサプリメントで摂取できます

ナットウキナーゼを含む食材

○納豆

こんな方におすすめ

○血栓症を予防したい方
○血圧が高い方
○血流を改善したい方
○コレステロール値が気になる方

ナットウキナーゼの研究情報

【1】高血圧自然発症ラットにナットウキナーゼを1日当たり2600mg 摂取させたところ、収縮期血圧と拡張期血圧、血栓促進物質であるフィブリノーゲンが減少しました。ナットウキナーゼには血圧低下効果と抗血栓作用による血流改善作用が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22040882

【2】高血圧患者86名において、ナットウキナーゼを1日当たり2000FU 、8週間摂取させたところ、収縮期血圧と拡張期血圧が低下し、血圧上昇物質レニンの活性も低下しました。ナットウキナーゼに高血圧予防効果が確認できました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18971533

【3】健康な成人男女7名において、ナットウキナーゼを1日当たり3900mg 、8日間摂取させたところ、血栓成分フィブリンの分解物、ならびに血栓溶解酵素プラスミノーゲンが増加したことから、ナットウキナーゼには血栓溶解作用ならびに血流改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2123064

【4】高脂血症患者30名に低コレステロール食事療法とともに、ナットウキナーゼを1日当たり400mg (4000FU)を8週間摂取させたところ、血中総コレステロールが減少し、またHDLコレステロールとLDLコレステロールにも減少傾向が見られました。この結果より、ナットウキナーゼには高コレステロール血症予防効果が期待されています。

【5】ヒト血液サンプルにナットウキナーゼを投与し、30分間撹拌したところ、ナットウキナーゼにより赤血球の凝集が抑制し血液粘度が維持されたことから、ナットウキナーゼには赤血球凝集抑制による血流改善効果が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16899918

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参考文献

・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・井上正子監修 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・Fujita M, Ohnishi K, Takaoka S, Ogasawara K, Fukuyama R, Nakamuta H. 2011 “Antihypertensive effects of continuous oral administration of nattokinase and its fragments in spontaneously hypertensive rats.” Biol Pharm Bull. 2011;34(11):1696-701.

・Kim JY, Gum SN, Paik JK, Lim HH, Kim KC, Ogasawara K, Inoue K, Park S, Jang Y, Lee JH. 2008 “Effects of nattokinase on blood pressure: a randomized, controlled trial.” Hypertens Res. 2008 Aug;31(8):1583-8.

・Yang NC, Chou CW, Chen CY, Hwang KL, Yang YC. 2009 “Combined nattokinase with red yeast rice but not nattokinase alone has potent effects on blood lipids in human subjects with hyperlipidemia.” Asia Pac J Clin Nutr. 2009;18(3):310-7.

・Sumi H, Hamada H, Nakanishi K, Hiratani H. 1990 “Enhancement of the fibrinolytic activity in plasma by oral administration of nattokinase.” Acta Haematol. 1990;84(3):139-43.

・Der JinnWu, Cheng ShengLin and Ming YungLee 2009 “Lipid-Lowering Effect of Nattokinase in Patients with Primary Hypercholesterolemia” ActaCardiolSin 2009;25:26E30

・Pais E, Alexy T, Holsworth RE Jr, Meiselman HJ. 2006 “Effects of nattokinase, a pro-fibrinolytic enzyme, on red blood cell aggregation and whole blood viscosity.” Clin Hemorheol Microcirc. 2006;35(1-2):139-42.

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