オリーブ油

olive oil
salad oil  sweet oil

オリーブ油は悪玉(LDL)コレステロールを減らし、動脈硬化や心疾患を予防するといわれるオレイン酸を多く含んでいます。植物性スクワランやビタミンEなどの有効成分も含んでおり、直接肌に塗ることで美肌効果も期待できます。

オリーブ油とは?

●基本情報
オリーブ油とは、モクセイ科オリーブ属の常緑樹であるオリーブの木に実る果実から採れる油のことです。
オリーブの木は世界各地で栽培されており、500種類を超える品種があるといわれています。
オリーブはトルコ南部、地中海に面した地域が原産地とされており、その地域では今でも野生のオリーブが自生しています。油を搾るオリーブの品種によって、味や香りの異なる様々なオリーブ油が存在しています。

●オリーブ油の歴史
オリーブの起源は今から約6000年前、現在の地中海地方シリア周辺とされています。キプロス島を経てトルコ方面へ、またクレタ島を経てエジプト方面へと広がったとされています。オリーブ油の歴史は古く、果実そのものを搾るだけで出来ることから、紀元前4000年頃にはオリーブ油が利用されていたことが、古代の遺跡からもわかっています。

日本へは1580年頃の安土・桃山時代に、フランシスコ派の宣教師によって初めて持ち込まれたといわれています。その後、江戸時代に将軍の侍医である林洞海が新しい薬をつくるため、フランスからオリーブの苗木を輸入し横須賀に植栽しました。しかし、その苗木はうまく育たなかったといわれています。
1908年、当時の農商務省は魚介類の缶詰に使用するオリーブ油の自給を目的として、香川県、三重県、鹿児島県の3県でオリーブの栽培を開始しました。このうち、香川県の小豆島でのみ栽培に成功し、現在では小豆島は「オリーブの島」と呼ばれています。

●オリーブの研究の歴史
1950年代に、ギリシャやイタリアなどの7ヵ国で行われた食生活と疾病に関する調査では、地中海沿岸に住む人々は心疾患の発症率が低いことが判明しました。それによって、オリーブ油を中心とした地中海型食生活には心疾患を予防する効果があるのではないかと注目が集まりました。その後研究を続け、オリーブ油に多く含まれているオレイン酸には、コレステロール値を改善する働きがあると発表され、最近ではオリーブ油を中心とした地中海型食生活の健康効果が世界的に注目されています。

●オリーブ油の生産地
オリーブの主な生産国はスペイン、イタリア、ギリシャなどの地中海沿岸の国と地域です。
地中海地域では10月下旬から2月上旬に果実が収穫されます。果実には、甘みが強いものや、アーモンドのような独特な香りを持つものなど、品種、気候、土壌、収穫時期、摘み方によって特徴が異なり、得られるオリーブ油の風味も様々です。日本ではオリーブの生産量の約95%のシェアを小豆島が占めています。他の生産地としては、オリーブ生産に適した瀬戸内地域である岡山県牛窓もよく知られています。

●オリーブ油の製法と種類
オリーブの果実から熱を加えずに搾り出した果汁を放置し、表面に浮かび上がってきたオイルだけを採ったものがオリーブ油です。
最近では、果実をすり潰して搾った果汁を遠心分離機にかけることで素早く、そして効率よく採油されています。

オリーブ油は製法、等級によって名称が違います。日本では一般的に、バージンオリーブ油とピュアオリーブ油が販売されています。

・バージンオリーブ油
オリーブの果実を搾って、ろ過しただけの化学的処理を一切行わないオイルです。
熱を加えないように作られる1番搾りの油で、酸度[※1]は1%未満です。香り高く風味も良いため、ドレッシングとして使用したり直接パンにつけるなど、生での使用が適しています。

・オリーブ油(ピュアオリーブ油)
バージンオリーブ油と、2番搾りの精製したオリーブ油をブレンドしたオイルです。
以前は、ピュアオリーブ油と呼ばれていましたが、現在では単にオリーブ油と表示されています。劣化しにくい特徴があり、加熱調理に適しています。

●1日の目安摂取量
一般的に、大さじ杯から2杯程度が適量といわれています。
大量の摂取には注意が必要です。

●オリーブ油の利用法
オリーブ油は食用の他、軟膏剤などの外用薬にも利用されています。
また、オリーブ油はクレンジング剤としても機能します。特にエキストラバージンオリーブ油は、界面活性剤[※2]や他の添加物を一切含んでおらず、人間の肌にとても優しい天然のクレンジング剤として使用できます。

●オリーブ油に含まれる成分と性質
オリーブ油は、一価不飽和脂肪酸に分類され、紅花油や菜種油などにも含まれる有効成分であるオレイン酸の含有量が70%を超えています。
一価不飽和脂肪酸とは、他の脂肪酸に比べて老化や様々な疾病を引き起こす原因となる過酸化脂質を生じさせにくく、加熱による酸化もしにくい脂肪酸です。そのため、オレイン酸が豊富なオリーブ油は酸化されにくく長期保存が可能です。

オレイン酸には、他にも悪玉(LDL)コレステロールを減らす効果や胃酸の分泌を促進する効果、腸の調子を整える効果があります。

また、オリーブ油に含まれる、抗酸化力[※3]を持つポリフェノールビタミンAが、体内の活性酸素を除去することで動脈硬化や心疾患、高血圧などの生活習慣病を予防、改善する効果が期待されています。

オリーブ油は光の当たる場所で保管すると緑色から黄色に変色する性質があります。これは、オリーブ油に含まれる緑色の色素であるクロロフィルが光に当たることで分解されて緑色が薄くなり、黄色味が強くなるからです。他にも、オリーブ油は温度が下がると白く固まる性質があります。

[※1:酸度とは、オイルの酸化の度合いのことです。オリーブオイルにおいては脂肪酸が何%遊離しているかの度合いです。酸度1%とは100gのオリーブオイルのうち1gの脂肪酸が遊離しているということです。]
[※2:界面活性剤とは、界面張力を著しく低下させる物質のことです。水に対しては、石けん・油・アルコールなどが挙げられます。]
[※3:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]

オリーブ油の効果

オリーブ油には心疾患を予防するオレイン酸ビタミンAビタミンEポリフェノールなどの有効成分が含まれているため、以下のような健康に対する働きが期待できます。

●コレステロール値を下げる効果
オリーブ油に多く含まれるオレイン酸には、悪玉(LDL)コレステロールを減らす効果があることが明らかになっています。悪玉(LDL)コレステロールは過剰なコレステロールを血管内を運んで必要なところに置いてくるという働きをしますが、オレイン酸には悪玉(LDL)コレステロールによって血管内に置かれた過剰なコレステロールを回収する役割を持つ善玉(HDL)コレステロールを増やす働きがあることも確認されています。

動物性脂肪や乳製品には飽和脂肪酸やコレステロールが多く含まれます。こうした食品を摂りすぎると、血中の悪玉(LDL)コレステロールが増えてしまいます。悪玉(LDL)コレステロールが増えて酸化するとコレステロールが血管内壁に付着して血管を塞ぎ、動脈硬化や高血圧、糖尿病などの生活習慣病を引き起こしてしまいます。

また、オリーブ油に含まれるβ-フィトステロールには、腸からのコレステロールの吸収を防ぐ効果があることが確認されています。

最近では、オリーブ油が悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きを持つことから、アメリカのFDA(食品医薬品局)[※4]は、悪玉コレステロールが多い人に対して、1日あたりスプーン2杯(25g)のオリーブ油の摂取が有効であると報告しています。【2】【3】

●動脈硬化、心疾患を予防する効果
オリーブ油に多く含まれているオレイン酸は動脈硬化や心疾患に効果的だといわれています。

1950年代にアンセル・キース博士らによって、アメリカ、オランダ、フィンランド、ギリシャ、イタリア、旧ユーゴスラビア、日本の7ヵ国において食生活と疾病に関する調査が行われました。

調査の結果、ギリシャにおける心疾患の死亡者の占める割合は、すでに肥満や生活習慣病の増加が目立っていたアメリカの10%以下であることがわかりました。
その要因をつかむべく、さらに調査が進められました。このとき、調査対象となったのは、ギリシャのクレタ島です。
この島は、世界でも有数の長寿地域として知られており、オリーブの産地としても有名です。この島の国民1人当たりのオリーブ油の年間消費量もとても多いことが分かっています。
このことから、この島のオリーブ油を中心とする食生活が長寿と深く関わっているのではないかと考えられました。
この島の人々の食生活は他の地域に比べてオリーブ油の摂取が多く、野菜や豆類、果物などの食物繊維を含む食品や、ヨーグルトなどの新鮮な乳製品を食べる一方、肉やバターなど動物性脂肪の摂取が少ない「地中海型食生活」です。

地中海型食生活と心疾患の発症率の関係を明らかにするために、心筋梗塞になったことがある人々を2つのグループに分け、オリーブ油を中心とした地中海型食生活と動物性脂肪の摂取が多いフランスの一般的な食生活とで、心筋梗塞の再発率を調査しました。その結果、地中海型食生活のグループでは心筋梗塞の再発率が圧倒的に低いということがわかりました。これは1999年に発表されたリヨンスタディと呼ばれる研究です。この研究によりオリーブ油を中心とする地中海型食生活と心疾患発症率の関係性が明らかにされました。【1】【2】【7】

●血圧を下げる効果
オリーブ油には、高血圧の症状に対して血圧を下げる効果があります。通常の高血圧の治療と並行してオリーブ油を加えた食事療法を行うと、血圧の改善が6ヵ月以上持続することも明らかとなっており、オリーブ油は高血圧に効果的だと考えられます。

●腸内環境を整える効果
オリーブ油が腸の調子を整える効果を持つことは紀元前から知られています。地中海地域では子供にオリーブ油をそのまま飲ませる習慣があります。オリーブ油に含まれるオレイン酸には、腸を刺激してスムーズな排便を促してくれる効果が期待できます。【2】【4】

●美肌効果
オリーブ油は、肌に塗ることによって美肌効果があるといわれています。地中海地域の女性はエキストラバージンオリーブ油を使って乳液などをつくり肌に塗っているといわれています。
オリーブ油にはオレイン酸の他、肌に潤いをもたらす植物性スクワランやビタミンA、ビタミンE、ポリフェノールなどの有効成分がたくさん含まれています。オリーブ油を直接肌に塗ることで、肌が保護されるとともに、新陳代謝が活発になります。
また、オリーブ油の成分は母乳や人間の皮脂に近いため、アレルギーを起こしにくいことがわかっています。肌を保湿する働きに加え、炎症を抑える効果もあり、デリケートな肌にも有効だといわれています。

他にも石けんやクレンジングとして、また頭皮につけてマッサージすることでヘアケアとして利用されるなど、幅広く親しまれています。

[※4:FDA(食品医薬品局)とは、Food and Drug Administrationの略で食品や医薬品、さらに化粧品、医療機器、動物薬、玩具など、消費者が通常の生活を行うに当たって接する機会のある製品について、その許可や違反品の取締りなどを専門的に行うアメリカの政府機関のことです。]

オリーブ油は食事やサプリメントで摂取できます

オリーブ油を含む食品

オリーブ

こんな方におすすめ

○コレステロール値が気になる方
○動脈硬化を予防したい方
○血圧が高い方
○腸の健康を保ちたい方
○美肌を目指したい方

オリーブ油の研究情報

【1】アポリポタンパクE欠損マウスに、オリーブ油を摂取させたところ、動脈硬化が予防されました。オリーブ油の機能性成分として、uvaol acid、erythrodiol acid、oleanolic acid、maslinic acid、及び、フィトステロールが含まれており、ポリフェノール成分として、フラボノイド、リグナンが、トリテルペノイドとしてセコイリドイドが含まれています。オリーブ油に様々な健康機能を有すると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22760979

【2】オリーブ油には、biophenols 及びスクワレンが含まれています。オリーブ油は高い抗酸化力を持ち、心血管障害、癌、骨粗鬆症、アルツハイマー病および月経前症候群の予防効果が確認されています。オリーブ油に含まれる特徴的な成分オレイン酸は、結腸癌および乳癌の予防に役立ち、biophenolsは悪玉(LDL)コレステロールを抑制することで、動脈硬化や心血管疾患を予防します。他に、気道や腸での感染症を予防するはたらきもあり、継続的に摂取することで、気管支や腸の健康を維持するはたらきも示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22634935

【3】ラットに、オリーブ油を10% 含有する餌を8週間摂取させたところ、血中のトリグリセリド濃度が低下し、遊離脂肪酸が増加したことから、オリーブ油が高脂血症予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22308940

【4】マウスに、オリーブ油ならびにヒドロキシチロソールを強化したオリーブ油を投与したところ、炎症性関連物質サイトカインや免疫細胞T細胞、一酸化窒素合成酵素の増加が抑制され、潰瘍性大腸炎が緩和されました。オリーブ油が、大腸炎予防効果および腸保護作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21874330

【5】脳疾患ラットに、オリーブ油(標準摂取カロリーの10%相当)とヒドロキシチロソール体重当たり 2.5 mg/kg を14日間摂取させたところ、過酸化脂質の増加および抗酸化酵素グルタチオンの減少が抑制されたことから、オリーブ油が脳保護作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21756531

【6】13ヵ月~166ヵ月の男女92名を対象に、食生活と皮下脂肪など肥満の関係を調査したところ、運動とともにオリーブ油を摂取した子供はBMIの増加が緩和されたことから、オリーブ油に抗肥満作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21715417

【7】老化しやすいマウスにおいて、ポリフェノール含有オリーブ油を4.5ヵ月間摂取させたところ、心臓内のミトコンドリアにおける核呼吸因子Nrf2、及び抗酸化酵素であるグルタチオン-S-トランスフェラーゼが活性化されました。同様に、サーチュイン遺伝子 mRNAも活性化したことから、オリーブ油が心臓保護作用ならびに心臓病疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22236145

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参考文献

・松生 恒夫 新オリーブオイル健康法 講談社プラスアルファ新書

・Haro-Mora JJ, García-Escobar E, Porras N, Alcázar D, Gaztambide J, Ruíz-Órpez A, García-Serrano S, Rubio-Martín E, García-Fuentes E, López-Siguero JP, Soriguer F, Rojo-Martínez G. 2011 “Children whose diet contained olive oil had a lower likelihood of increasing their body mass index Z-score over 1 year.” Eur J Endocrinol. 2011 Sep;165(3): 435-9.

・Bayram B, Ozcelik B, Grimm S, Roeder T, Schrader C, Ernst IM, Wagner AE, Grune T, Frank J, Rimbach G. (2010) “A diet rich in olive oil phenolics reduces oxidative stress in the heart of SAMP8 mice by induction of Nrf2-dependent gene expression.” Rejuvenation Res. 2012 Feb;15(1): 71-81.

・Lou-Bonafonte JM, Arnal C, Navarro MA, Osada J. 2012 “Efficacy of bioactive compounds from extra virgin olive oil to modulate atherosclerosis development.” Mol Nutr Food Res. 2012 Jul;56(7): 1043-57.

・Fistonić I, Situm M, Bulat V, Harapin M, Fistonić N, Verbanac D. 2012 “Olive oil biophenols and women’s health.” Med Glas Ljek komore Zenicko-doboj kantona. 2012 Feb;9(1): 1-9.

・Isabel Giacopini M, Guerrero O, Moya M, Bosch V. 2011 “Comparative study of the consumption of virgin olive oil or seje on lipid profile and oxidation resistance of high density lipoprotein (HDL) of rat plasma” Arch Latinoam Nutr. 2011 Jun;61(2): 143-8.

・Sánchez-Fidalgo S, Sánchez de Ibargüen L, Cárdeno A, Alarcón de la Lastra C. 2012 “Influence of extra virgin olive oil diet enriched with hydroxytyrosol in a chronic DSS colitis model.” Eur J Nutr. 2012 Jun;51(4): 497-506.

・Tasset I, Pontes AJ, Hinojosa AJ, de la Torre R, Túnez I. 2011 “Olive oil reduces oxidative damage in a 3-nitropropionic acid-induced Huntington’s disease-like rat model.” Nutr Neurosci. 2011 May;14(3): 106-11.

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