核酸

nucleic acid

核酸とは、体をつくるもととなる細胞に存在する、新しい細胞をつくり出すために必要不可欠な成分です。
核酸には、細胞をつくり出す情報をもつDNAと、情報をもとに細胞の材料となるたんぱく質を合成するRNAがあります。
また、老化を予防し、体を若々しく保つ効果があることで知られています。

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核酸とは

●基本情報
核酸は、細胞核の中に存在し、生物生存のための遺伝情報を持っているDNAと、生物の細胞にとって重要な材料であるたんぱく質をつくり出す働きを持つRNAによって構成されています。
人間の体には約60兆個もの細胞が存在しており、数カ月でほとんどすべての細胞が生まれ変わるといわれています。
様々な生命活動のもとになる細胞の材料は、細胞を構成する主要成分である「たんぱく質」と「核酸」です。
たんぱく質を摂取するとすぐに体の血や肉となるのではなく、体に吸収する働きを持つ酵素によって消化・代謝[※1]され、アミノ酸へと分解されます。分解されたアミノ酸は、皮膚や爪、髪など様々な場所に必要に応じてたんぱく質に組み立て直されます。
核酸は、この分解されたアミノ酸をたんぱく質に組み立てる作業を行う役割を担っているのです。

●核酸の歴史
【1869年】スイスの生化学者ミーシェルが、患者の包帯から膿を集め、白血球[※2]の中に含まれる高分子物質を細胞核の中から取り出す。
【1889年】サケの白子、ビール酵母、仔牛の胸腺からも同様の物質が発見され、細胞核内の酸性物質であることから「核酸」と名付けられる。

当時は栄養素としてではなく、核酸の持つ遺伝情報に関する研究が中心でした。
また、核酸は他の栄養素から必要な分だけつくることができるので、食べ物から摂る必要はないと考えられていました。
しかし、腸間膜血栓症で腸管を切除した患者に核酸を含む栄養素を与えたところ、免疫力が低下しにくくなったという研究結果が発表されて以来、核酸が注目されるようになりました。

●核酸の働き
核酸はDNAとRNAの2つに大別され、その働きはそれぞれ異なっています。
DNA:細胞ひとつひとつに存在する細胞核といわれる細胞の遺伝子情報の保存と伝達を行う部分に存在し、たんぱく質を作り出すためのアミノ酸の組み合わせ情報をもっています。
RNA:主に細胞質の中に存在し、DNAの情報に基づいてアミノ酸からたんぱく質をつくり出しています。
つまり、DNAは遺伝子情報をもつ設計士であり、RNAはその情報に従って必要なたんぱく質をつくり出す大工の役割なのです。
​しかし、この核酸が不足すると、細胞の生まれ変わりである新陳代謝がうまく行われず、老化が促進されたり疲れやすくなってしまったりすることがあります。​そのため核酸は、新しい細胞をつくり、健康で若々しい体を保つために重要な成分だといえます。

●核酸を補う方法
核酸の合成には、「デノボ合成」と「サルベージ合成」の2種類の方法があります。
デノボ合成:主に肝臓でアミノ酸などから核酸を合成する方法。
​サルベージ合成:食べ物から摂取した核酸を使って合成する方法です。
肝臓の機能は年齢とともに衰えてしまうため、デノボ合成によって核酸が盛んにつくられるのは20歳位までだとされています。
肝機能が衰え核酸がつくられる力が弱くなってしまうと、回復力の低下や肌の衰えが起こり細胞の生まれ変わる周期が徐々に狂ってしまうため、核酸を補うことは非常に重要とされています。

成人における核酸の1日あたりの必要量は、約1,5gと推定されています。
核酸は魚介類・肉類・野菜などの食品から摂取することができますが、十分な量を補うことは難しいといわれています。
また、現代人の食事にはインスタント食品や加工食品が多いことや、食生活のバランスが乱れていることもあり、核酸が含まれる食品を取り入れる機会が減っているという現状があります。
そのため、核酸はサプリメントなどの補助食品から補うことが効率的と考えられます。
特に鮭の白子(魚の精巣)は、いわしの74倍の核酸を含んでいるといわれているため、鮭の白子から抽出されたエキスが多くの核酸食品の原料として用いられています。

[※1:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※2:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]

核酸の効果

●美肌効果
皮膚は絶えず外気にさらされており、紫外線などの影響を受けることによって老化が目立ちやすい部分といえます。
また、特に皮膚は細胞の生まれ変わりが活発であるため、他の部分より多くの核酸が必要となります。
「肌の曲がり角」といわれる20歳前後を過ぎると、肝機能が衰え、核酸が体内でつくられる量が徐々に減っていきます。
核酸が不足してしまうと、ターンオーバー[※3]のサイクルが長くなり、様々な肌の老化現象が引き起こされます。
肌の老化現象の1つとして、肌の潤い不足が挙げられます。
肌の水分を保つ成分や、皮脂の分泌量が少なくなるために、肌に潤いがなくなり、乾燥しやすくなります。
また、新陳代謝が衰えると、古い角質が肌の表面に蓄積されたままになるため肌荒れが起こりやすくなったり、紫外線から肌を守るメラニン色素が皮膚の中に残りやすくなってしまい、日焼けによるシミやソバカスが出来やすくなります。
核酸を補い、細胞の新陳代謝を活発にさせることによって、肌の老化を防ぐことができます。

●疲労回復効果
核酸が分解されることによってできる尿酸には、体内で発生した活性酸素[※4]を抑制する抗酸化力を高める働きがあります。
活性酸素は紫外線やストレス、喫煙、食品添加物、残留農薬などによって発生し、核酸の1つであるDNAを傷つけてしまいます。活性酸素により細胞が傷つけられると、疲労や倦怠感の原因となります。
特に現代人の生活環境は活性酸素が発生しやすいといわれているため、核酸を補うことによって、疲れにくく若々しい体を保つことができます。
また、核酸の構成成分であるアデノシンとヌクレオシドには、血流を改善させ、細胞を活性化することで新陳代謝を活発にさせる働きがあるため、冷え性や肩こりを改善する効果もあります。【1】

●免疫力を高める効果
乳幼児に核酸を含む食事を摂取させると免疫物質(IgA, IgM)が増加することが報告され、また術後の感染症の予防に役立つことが報告されており、核酸に免疫力を高める効果が期待されています。【3】【4】【6】

●髪を健康に保つ効果
老化現象のひとつである白髪や抜け毛は、頭皮の栄養状態と大きな関わりがあります。
髪が伸びる仕組みは、頭皮の内側に潜っている毛根にある毛母細胞が分裂を繰り返すことによるものです。核酸は、毛母細胞の活動を支配しているため、核酸が不足することによって、白髪や抜け毛といった毛髪の老化が引き起こされてしまいます。
核酸が細胞の生まれ変わりを促進することによって、健康な髪を保ちつことができます。【5】

●脳の機能を改善する効果
脳に必要な栄養素である核酸(RNA)を十分補うことで、脳の細胞の減少を抑え、脳の老化を防ぐことができます。
実際に、核酸(RNA)が多く含まれるビール酵母を高齢者に与えたところ、記憶力が増した、認知症[※5]が回復したという結果も報告されています。つまり、核酸(RNA)を補給することによって、脳が活動するためのエネルギーが増え、頭がよく働くということです。【7】【8】

●貧血を予防する効果
核酸が血液の成分をつくり出すことによって、貧血を予防する効果があるといわれています。
血液は、骨髄にある幹細胞[※6]でつくられており、赤血球や白血球、リンパ球、血小板などの様々な血液成分が絶えず生み出されています。つまり、骨髄は細胞の生まれ変わりが活発に行われている場所といえます。
貧血の原因には、鉄不足によるものと、血液の成分不足によるものがあります。後者の場合は、血液の成分をつくり出すために必要な核酸を積極的に補い、新陳代謝を活発にさせることによって、貧血を予防する効果が期待できます。

●肥満を予防する効果
肥満を防ぐためには、新陳代謝を活発にさせて、脂肪の燃焼を促すことが重要となります。積極的に運動をしてエネルギーを消費することも大切ですが、もう1つ注目すべきなのが「基礎代謝」です。
基礎代謝とは、生命活動を維持するために、運動をしていなくても、自然に消費するエネルギーのことです。
この基礎代謝を活発にさせるためには、原料となる核酸が必要となります。
核酸が新陳代謝を活発にすることによって、基礎代謝を高め、肥満を予防する効果を発揮します。

[※3:ターンオーバーとは、肌が生まれ変わる周期のことです。ターンオーバーは20歳頃までは28日前後で生まれ変わるといわれていますが、ターンオーバーは年齢とともに遅れていき、40歳を過ぎると40日以上かかるようになります。年齢とともに肌の透明感やハリが失われる原因のひとつです。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※5:認知症とは、アルツハイマー病とも呼ばれ、物忘れが激しくなる・理解力や判断力が低下する・以前熱中していたことに興味を示さなくなるといった症状が挙げられます。]
[※6:幹細胞とは、細胞のもとになる細胞のことです。自分自身が増える複製能力と、ほかの細胞になる能力を備えています。]

核酸は食事やサプリメントで摂取できます

核酸を多く含む食品

○サケの白子
○フグの白子
○ちりめんじゃこ
○ビール酵母
○いりこ
○のり
○はまぐり
カキ

こんな方におすすめ

○美肌を目指したい方
○白髪・脱毛を予防したい方
○疲れやすい方
○免疫力を向上させたい方
○貧血でお悩みの方
○肥満を防ぎたい方

核酸研究情報

【1】ミトコンドリアは呼吸や生体内の酸化還元反応にかかっています。特にミトコンドリアのDNAが減少すると、呼吸機能にかかわる成分ピリミジンやNAD の合成量が減少し、加齢につながると考えられています。そのため、DNAがアンチエイジングに役立つと考えられており、DNAを摂取することの重要性が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17460185

【2】高齢者では、運動することで筋肉中のDNAとタンパク質の合成が活発になることが顕著でした。DNAの合成には適度な運動が必要と考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21613572

【3】上部消化管疾患により手術を受けた患者に、早期術後栄養として、アルギニン、ω-3 不飽和脂肪酸と核酸を摂取させたところ、体内での免疫機能を司る、免疫グロブリンや白血球B細胞が早期に回復しました。このことから、術後の早期栄養として核酸の摂取の有用性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7536138

【4】早産児において、生後3カ月間に栄養素として核酸を摂らせたところ、免疫機能を持つ免疫グロブリンである IgA 及び IgMの増加がみられた。早産児の免疫機能を向上させるために、出生後早期の栄養補給として核酸の効果が確認されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10475592

【5】髪の発育に関係のある毛母細胞にDNAとポリエチルイミンを投与すると、細胞寿命調節酵素テロメラーゼに働きかけ、毛母細胞の寿命延長効果が確認されました。DNAとポリエチルイミンにより活性化したテロメラーゼの影響を受けた毛母細胞は、15日後には成長段階に入り、頭髪の成長が確認されました。高齢ラットにDNAとポリエチルイミンを摂取させたところ、毛根組織の成長が促進されたことから、DNAに毛髪育成促進効果が期待されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21593794

【6】上部消化管悪性腫瘍のため手術を行った患者77名に、アルギニン・RNA・ω-3 を摂取させると、感染症や創傷などの合併症の発症率が低下し、あわせて早く回復し退院できました。RNAを含む食事が、手術のケアに役立つことが示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1377838

【7】食事制限をしたマウスの脳内では、3つのRNA(mmu-miR-181a-1*, mmu-miR-30e and mmu-miR-34a) が活性化されることでがん化や細胞死に関連のある物質Bcl を抑制し、脳神経細胞へのダメージが抑制されます。このことから、脳神経の維持には食事制限とそれにともなう3種のRNAの関係が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21415464

【8】高脂肪食を摂取したマウスの脳内では、エネルギー産生関連タンパク質及びRNA(Arl8B) のはたらきが低下していました。このRNAは神経細胞の成長と伸長に関与していることから、RNAが脳の機能性に関係があることが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16861820

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参考文献

・森重福美 核酸の効用 ヘルス研究所

・松永政司、宇住晃治 DNA核酸の栄養学 ヘルス研究所

・山口武津雄 核酸食で老化を防止する-今新しくわかった若返り法- ヘルス研究所

・松永政司、宇住晃治 難病克服・若さを保つ核酸 ふるさと文庫

・森重福美 核酸の効用 ヘルス研究所

・松永政司、宇住晃治 DNA核酸の栄養学 ヘルス研究所

・山口武津雄 核酸食で老化を防止する-今新しくわかった若返り法- ヘルス研究所

・Olgun A, Akman S. 2007 “Mitochondrial DNA-deficient models and aging.” Ann N Y Acad Sci. 2007 Apr;1100:241-5.

・Robinson MM, Turner SM, Hellerstein MK, Hamilton KL, Miller BF. 2011 “Long-term synthesis rates of skeletal muscle DNA and protein are higher during aerobic training in older humans than in sedentary young subjects but are not altered by protein supplementation.” FASEB J. 2011 Sep;25(9):3240-9.

・Daly JM, Lieberman MD, Goldfine J, Shou J, Weintraub F, Rosato EF, Lavin P. 1992 “Enteral nutrition with supplemental arginine, RNA, and omega-3 fatty acids in patients after operation: immunologic, metabolic, and clinical outcome.” Surgery. 1992 Jul;112(1):56-67.

・Kemen M, Senkal M, Homann HH, Mumme A, Dauphin AK, Baier J, Windeler J, Neumann H, Zumtobel V. 1995 “Early postoperative enteral nutrition with arginine-omega-3 fatty acids and ribonucleic acid-supplemented diet versus placebo in cancer patients: an immunologic evaluation of Impact.” Crit Care Med. 1995 Apr;23(4):652-9.

・Navarro J, Maldonado J, Narbona E, Ruiz-Bravo A, García Salmerón JL, Molina JA, Gil A. 1999 “Influence of dietary nucleotides on plasma immunoglobulin levels and lymphocyte subsets of preterm infants.” Biofactors. 1999;10(1):67-76.

・Jan HM, Wei MF, Peng CL, Lin SJ, Lai PS, Shieh MJ. 2012 “The use of polyethylenimine-DNA to topically deliver hTERT to promote hair growth.” Gene Ther. 2012 Jan;19(1):86-93.

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・Khanna A, Muthusamy S, Liang R, Sarojini H, Wang E. 2011 “Gain of survival signaling by down-regulation of three key miRNAs in brain of calorie-restricted mice.” Aging (Albany NY). 2011 Mar;3(3):223-36.

・Haraguchi T, Yanaka N, Nogusa Y, Sumiyoshi N, Eguchi Y, Kato N. 2006 “Expression of ADP-ribosylation factor-like protein 8B mRNA in the brain is down-regulated in mice fed a high-fat diet.” Biosci Biotechnol Biochem. 2006 Jul;70(7):1798-802.

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