グルコサミン

Glucosamine

グルコサミンとは、軟骨を生成する基礎となり、膝などの関節部分の細胞の新陳代謝に重要な役割を果たす成分です。
コンドロイチンと併用されることも多く、日本や欧米では数多くの臨床試験によって、関節炎や関節症の痛みを軽減・改善させるということが報告されています。

グルコサミンとは

● 基本情報
グルコサミンとは、軟骨の構成成分であるムコ多糖類[※1]の一種で、糖にアミン[※2]が結びついた成分です。
グリコサミノグリカンと総称される分子の主要成分であり、体内の各組織の柔軟性や弾力性に寄与しています。
元々体内で生成され、軟骨、爪、靭帯、心臓弁などに存在していますが、年齢を重ねることで減少することがわかっています。
定期的に摂取することで、変形性関節症や膝などの関節炎の予防と改善に効果があります。
現在ではサプリメントなどにも配合されており、分子の中に塩酸基がある「グルコサミン塩酸塩」と、硫酸基がある「グルコサミン硫酸塩」が使われています。日本では、グルコサミン塩酸塩が、欧米ではグルコサミン硫酸塩が主流です。

●グルコサミンの歴史
グルコサミンは、ヨーロッパでは広く関節炎の治療薬として用いられてきました。
その中で1960年代に、ドイツとイタリアで関節炎の治療に効果が期待できることが確認されたと報告されています。
その後も、マウスやニワトリを使った実験研究が行われ、1980年代には人間の変形性関節症への有効性について本格的に臨床試験が実施されるようになりました。
1990年代に入ってからはアメリカでペットや競走馬などへの関節炎治療として使われるようになりました。

●軟骨に働きかけるグルコサミン
関節の軟骨は軟骨細胞[※3]と、その間を埋める細胞の結合組織で構成されており、軟骨は60~80%が水分で占められています。その他、繊維状たんぱく質コラーゲン、ムコ多糖類のヒアルロン酸コンドロイチン、グルコサミンが主成分です。
この中の軟骨細胞は関節軟骨の各成分のいわば製造工場のような役割を果たしており、同時に古くなった成分を分解して関節軟骨内のバランスを保つように働いています。
グルコサミンを摂取すると、吸収され関節の軟骨成分として利用されることが分かっています。

●グルコサミンの役割
グルコサミンはカニやエビなどの甲殻類の外皮に含まれているキチンを加水分解[※4]して得られる成分です。
山芋のネバネバ成分にもグルコサミンは含まれています。糖質とアミンが結びついた天然のアミノ糖の一種です。
グルコサミンは、生体内で骨と骨の接合部分にあたる軟骨(結合組織)の生成を促す働きがあり、軟骨、爪、靭帯、腱、皮膚、心臓弁などに広く存在しています。軟骨を形成している成分として関節の機能を向上させ、痛みの緩和に効果を発揮します。

人間は加齢により、体内でのグルコサミンの生成能力が衰えてきます。
​そのため、軟骨は関節にかかる体重や重力の衝撃をやわらげる役割も果たせなくなります。
​そうなると、骨と骨の接合部分にある軟骨が、少しずつ減り始めます。​
​軟骨がすり減ると、骨と骨が直接すれ合うことで、骨が変形したり、違和感・だるさ・痛みを感じたりするようになるのです。​
​これが、中高年に多い膝などが痛くなる関節痛や、膝がガタガタするといった症状です。
​グルコサミンは関節と関節との間のクッションのような役割を担う軟骨の構成成分のひとつです。
​グルコサミンを補給することによって軟骨の摩擦が抑えられ、変形関節症の痛みや腫れを軽減し、傷ついた軟骨を修復し再生を促すという効果があります。​また、軟骨の分解を防いだり炎症を抑える作用もあります。
​スポーツ選手や日常的に運動をする人などは、体の特定の部位に負担がかかり、同じ部分の軟骨がすり減りやすくなります。
​そのため、軟骨は加齢だけでなくスポーツによってもすり減ってしまいますが、グルコサミンは年齢に関係なく、軟骨のすり減りに働きかけます。
​しかし、グルコサミンが多く含まれる食品はあまりないため、食べ物からだけでは十分な量を摂取することが困難です。
​そのため、グルコサミンはサプリメントで補うことが推奨されています。
​​また、単独で摂取するよりもコンドロイチンと一緒に摂取した方が、さらなる相乗効果が期待できます。

<豆知識>グルコサミンと適度な運動
膝痛や関節痛を防ぐためには、グルコサミンの摂取とともに、適度な運動も必要です。
​年齢に関係なく、ウォーキングやストレッチなどを日々の生活に取り入れることが重要です。
​適度な運動を行うことによって、膝がパキパキ・ガクガクするといった症状を緩和させ、関節を若々しく保つことができます。

[※1:ムコ多糖類とは、細胞と細胞をつなぐ物質のことです。皮膚や関節、内臓などに存在します。]
[※2:アミンとは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置き換えた物質のことです。分子内にNH2を持ちます。]
[※3:軟骨細胞とは、軟骨に存在している細胞のことです。軟骨の構成成分をつくる細胞です。]
[※4:加水分解とは、反応物における水の反応によって、分解物を得ることです。]

グルコサミンの効果

人間の体には、140以上もの関節があるといわれ、関節の周囲は関節包[※5]という膜で覆われています。
その内側にはさらに滑膜[※6]という膜があり、中は関節液[※7]で満ちています。
軟骨も滑膜の内部に位置し、周囲を関節液に囲まれています。関節液と軟骨の関係は、水の中に入れたスポンジと似ています。
スポンジである軟骨がすり減ったり、変質してもろくなったりすると、関節液を含んでクッションの役割を果たすことができなくなり、結果として関節痛や変形性関節症が起こります。グルコサミンは、このすり減ったり、成分バランスが崩れて変性してしまったりしている軟骨を修復し、変形関節症などを改善する効果があります。

● 関節の痛みやだるさを改善する効果
グルコサミンは、軟骨の摩擦を抑制し、関節痛や変形関節症の痛みや腫れを改善し、傷ついた軟骨を修復し再生を促すという効果があります。また、歩行の際の膝の痛みやだるさも緩和し、スムーズに歩けるよう関節の動きをサポートします。
グルコサミンは、軟骨に働きかけ、関節部分の細胞の新陳代謝を活発にし、軟骨のクッションに当たる部分を修復するので様々な部位の炎症性関節炎や痛みを改善する効果があります。【1】【2】【5】【6】【7】

●軟骨の強度や柔軟性を向上させる効果
軟骨はスムーズな動きを保ち、衝撃から守ってくれます。
しかし、スポーツ中は同じ動きを繰り返すため、特定の部位にいつもより大きな負荷がかかり、すり減りやすくなります。
​そのため、スポーツをしている方は日頃から積極的にグルコサミンを補給し、軟骨を強化する必要があります。
グルコサミンは、スポーツをする際の素早い動きや、運動中のパフォーマンスを応援する成分でもあるのです。

●グルコサミンのその他の効果
また、細胞の炎症を抑える作用や血中の血小板の凝集を抑える効果があります。【3】【4】

[※5:関節包とは、滑膜の続きで、緊張または弛緩することができ、関節体の軟骨に覆われた面の近くに固着しています。]
[※6:滑膜(かつまく)とは、関節を構成する要素のひとつで関節包に包まれています。]
[※7:関節液とは、関節を包む関節液膜から分泌する粘液のことです。無色または淡黄色で、関節の動きをなめらかにします。]

食事やサプリメントで摂取できます

グルコサミンを含む食品

山芋
○ふかひれ
○おくら
○干しエビ

こんな方におすすめ

○膝痛、関節炎、関節痛、変形関節症の方
○関節の動きをなめらかにしたい方
○スポーツを楽しみたい方

グルコサミンの研究情報

【1】グルコサミンを含む栄養補助食品の変形性膝関節症治療の可能性を検討したある研究では、膝変形関節症を持つ40名の日本人被験者を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われました。
1日あたりグルコサミン1200 mg、コンドロイチン60 mgおよびケルセチン配糖体もしくはプラセボ(偽薬)を16週間与えました。
結果として、日本整形外科学会基準に基づく有効性が示され、II型コラーゲン合成/分解のバランスの改善傾向を示しました。
グルコサミン、コンドロイチン、ケルセチン誘導体の組み合わせは変形性膝関節症を軽減させるということが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21969261

【2】膝関節および腰の変形関節症におけるグルコサミンおよびコンドロイチンの有益性について、無作為二重盲検の試験を行った文献15件を調査することで検討されました。
結果から、治療効果がグルコサミンは中程度、コンドロイチンは大程度あるということが認められました。
​また、疼痛および機能の間には比較的相関関係がありました。
このことは、グルコサミンとコンドロイチンに一定の有効性を示し、膝関節および腰の変形関節症に効果がある可能性を示します。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10732937

【3】24名の健常者を対象に2週間1500 mgのグルコサミンおよびセラドリンを与え、血液検査をしたところ、グルコサミンおよびセラドリンは、アスピリン様作用による血小板凝集を阻害する可能性が示唆されました。
この結果から、グルコサミンおよびセラドリンの持つ抗血小板効果によって、血栓障害を改善することが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20218092

【4】グルコサミンの抗血栓作用を調査するために、ADPに刺激された血小板の機能に対する効果を調べました。結果として、グルコサミンを与えたものは血小板凝集、血小板からの顆粒成分(ATPおよび血小板第4因子)の細胞外放出およびトロンボキサンA2の産生、ADP受容体の結合、細胞内のリン酸化およびカルシウム代謝を抑制しました。これらのことから、グルコサミンに血小板凝集抑制効果があり、血栓障害に対する改善効果を持つ可能性が示されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15654516

【5】関節炎の発生に関係するとされている誘導性酸化窒素合成酵素による酸化窒素の過剰生産に対し、グルコサミンが影響するかどうかを確かめた研究があります。リポポリサッカライドに誘発される炎症をもっているラットを対象に血液検査と尿検査を行い、試験前後の変化を見たところ、グルコサミンを与えた場合、酸化窒素の合成、誘導性酸化窒素合成酵素およびその酵素タンパクの抑制が確認されました。このことから、グルコサミンには、関節炎のような慢性炎症性疾患を治療する可能性があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11112445

【6】正常およびインターロイキン-1αの影響を受けたウマ軟骨外植片に、濃度を変えてグルコサミンおよびコンドロイチンを投与しました。結果として、グルコサミンおよびコンドロイチンは総グルコサミノグリカンの放出を減少させ、軟骨代謝に影響を与えました。このことから、グルコサミンとコンドロイチンは軟骨のグルコサミノグリカンの劣化を防止することが示唆されました。さらに、単独での摂取に比べ、組み合わせることでウマの変形性関節症の治療または予防に効果的である可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15892231

【7】ウサギにグルコサミンおよびコンドロイチンを与え、さらに自己の軟骨細胞の移植を施した場合の影響を調べました。結果、自己軟骨細胞移植、グルコサミンおよびコンドロイチン投与の組み合わせは、損傷した軟骨組織の治療する可能性を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21409755

もっと見る 閉じる

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・田中平三 健康食品のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 同文書院
・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・Kanzaki N, Saito K, Maeda A, Kitagawa Y, Kiso Y, Watanabe K, Tomonaga A, Nagaoka I, Yamaguchi H. 2012 “Effect of a dietary supplement containing glucosamine hydrochloride, chondroitin sulfate and quercetin glycosides on symptomatic knee osteoarthritis: a randomized, double-blind, placebo-controlled study.” J Sci Food Agric. 2012 Mar 15;92(4): 862-9.

・McAlindon TE, LaValley MP, Gulin JP, Felson DT. 2000 “Glucosamine and chondroitin for treatment of osteoarthritis: a systematic quality assessment and meta-analysis.” JAMA. 2000 Mar 15;283(11): 1469-75.

・Lin PC, Jones SO, McGlasson DL. 2010 “Effects of glucosamine and Celadrin on platelet function.” Clin Lab Sci. 2010 Winter;23(1): 32-6.

・Hua J, Suguro S, Iwabuchi K, Tsutsumi-Ishii Y, Sakamoto K, Nagaoka I. 2004 “Glucosamine, a naturally occurring amino monosaccharide, suppresses the ADP-mediated platelet activation in humans.” Inflamm Res. 2004 Dec;53(12): 680-8.

・Meininger CJ, Kelly KA, Li H, Haynes TE, Wu G. 2000 “Glucosamine inhibits inducible nitric oxide synthesis.” Biochem Biophys Res Commun. 2000 Dec 9;279(1): 234-9.

・Dechant JE, Baxter GM, Frisbie DD, Trotter GW, McIlwraith CW. 2005 “Effects of glucosamine hydrochloride and chondroitin sulphate, alone and in combination, on normal and interleukin-1 conditioned equine articular cartilage explant metabolism.” Equine Vet J. 2005 May;37(3):227-31.

・Kamarul T, Ab-Rahim S, Tumin M, Selvaratnam L, Ahmad TS. 2011 “A preliminary study of the effects of glucosamine sulphate and chondroitin sulphate on surgically treated and untreated focal cartilage damage.” Eur Cell Mater. 2011 Mar 15;21:259-71

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ