カシス

black currant
cassis

カシスはビタミンやミネラル、アントシアニンなどが豊富に含まれた栄養価の高い果実です。
果実以外の種子や乾燥葉も食用として利用されています。
カシス特有のアントシアニンは、末梢血管の血流を良くする働きがあり、目のピント調節や眼精疲労、クマの改善に効果的です。

カシスとは

●基本情報
カシスはベリー類のひとつで、ブルーベリーサンタベリーによく似た小さく丸い果実を実らせます。カシスとはユキノシタ科スグリ属に分類され、ツツジ科スノキ属であるブルーベリーとは種類は全く異なる植物です。
カシスは高さ約2mの落葉の低木で、直径1cmほどの赤黒い果実を実らせます。
カシス(Cassis)とは、フランス語であり、日本語では黒房すぐり(黒すぐり)、英語ではブラックカラント(Black Currant)と呼ばれています。

●カシスの歴史
カシスは古くからヨーロッパの山奥に生息していたとされています。
カシスが食用に利用できることを初めて紹介したのは、ルネッサンス時代[※1]の植物学者ガスパール・ポアンという人物です。
それから少しずつ、カシスは知られるようになり、18世紀の半ばにはフランスのワイン畑の一画などで薬用として栽培されるようになったとされています。
さわやかな酸味と香りが特徴的なカシスは、今では日本でリキュールやデザートに、欧米ではジャムやジュース、リキュールとして親しまれており、カシス種子や乾燥葉も食用として利用されています。

●カシスの生産地
カシスは、主にニュージーランドや北欧、カナダなどの比較的寒冷な地域で生産されており、日本国内では主に青森県で生産されています。特に有名な生産地であるニュージーランドは、夜は冬並みに冷え込むのに対して、昼は真夏のような暑さになります。その激しい寒暖差と強い日差しによる紫外線量の多さが、カシスの生息や栽培に最適な条件となり、栄養たっぷりのカシスが育つのです。

●カシスに含まれる成分と性質
カシスはアントシアニンと呼ばれる青紫色の天然色素をその実に多く含んでいます。
カシスは、ブルーベリーやビルベリーにはない2種類のアントシアニンを含んでいます。
この2種類は、その構造からデルフィニジン-3-ルチノシドと、シアニジン-3-ルチノシドという名前がつけられています。
カシスのアントシアニンの特徴は、摂取してから体内に吸収され、体に作用するまでにかかる時間が非常に短いことです。
​カシスのアントシアニンは、末梢血管の血流を改善する働きがあり、吸収後は眼球まで届き、その効果を発揮します。

カシスには他にも、オレンジの約3倍のビタミンCや、オレンジと同程度のビタミンAβ-カロテンを含んでいます。
さらに、若返りのビタミンとも呼ばれているビタミンEは、オレンジやいちごの約4倍も含まれているのです。
これらのビタミンは抗酸化作用[※2]を持つため、カシスは活性酸素[※3]を除去する能力も秘めた健康果実であるといえます。

[※1:ルネッサンス時代とは、14世紀~16世紀の、芸術や思想に関する革新運動が起こった時代のことです。]
[※2:抗酸化作用とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ作用です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。紫外線やストレスなどにより体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

カシスの効果

●目のピント調節機能を維持する効果
カシスのアントシアニンには、末梢血管の血流を活発にする働きがあり、人間がものを見るときに必要なピント調節機能の維持に効果があるといわれています。
人間の目に備わっているピント調節の機能は、遠くのものや近くのものを見る際に必要となる機能で、眼球の中にある毛様体筋という筋肉が担っています。
毛様体筋とは、眼球の毛様体の中に存在し、水晶体の厚みを変える役割を担っている筋肉です。近くを見るときは毛様体筋が緊張することで水晶体を厚くし、遠くのものを見るときは毛様体筋が弛緩することで水晶体を薄くすることで焦点を合わせています。
しかし、パソコンやスマホ、読書などで近くのものを長時間見続けていると、毛様体筋の緊張状態が続き、肩こりのように筋肉がこり固まった状態になります。
それによって上手くピント調節ができなくなると、一時的な近視状態となってしまうことがあります。
カシスのアントシアニンが持つ、末梢血管の血流を良くする作用には、長時間の凝視でこり固まった毛様体筋の血流を良くし、こりをほぐす働きがあります。
カシスのアントシアニンによるピント調節に対する効果を調べるために、弱度の近視のヒト21人を対象に研究を行っています。
この実験では、カシスのアントシアニンを摂取したグループと摂取していないグループそれぞれにパソコン作業を2時間行わせ、その後のピント調節機能を調べました。
すると、カシスのアントシアニンを摂取したグループにおいて、ピント調節機能が維持されたという結果が示されました。
カシスのアントシアニンは毛様体筋の一時的なこり状態を改善することで、ピント調節機能の維持や改善に有効であると考えられています。【4】

●疲れ目を軽減する効果
カシスは、疲れ目の軽減にも効果があるといわれています。
疲れ目とは、毛様体筋をはじめ、目の周りの筋肉がこり、疲労が溜まった状態のことをいいます。
カシスの疲れ目に対する作用を調べた実験では、カシスのアントシアニンを摂取した被験者において、疲れ目の自覚症状が軽減された結果が発表されています。

●緑内障の進行を抑制する効果
カシスの持つ末梢血管の血流を促進させる働きは、緑内障の進行を抑制する効果につながっています。
緑内障とは、様々な原因によって眼圧[※4]が上昇し、視神経を圧迫してその働きを衰えさせる病気です。
症状が進行すると、視野欠損や視力低下が起こり、失明にいたる場合もあります。
障害を負った視神経は回復することができないため、緑内障は早期発見、早期治療が大切です。
カシスに含まれるアントシアニンには、視神経の血流を増加させ、眼圧を低下させる効果があることが明らかとなっています。
眼圧を低下させることは、緑内障の進行を抑えるために最も有効な手段であるといわれており、カシスのアントシアニンを摂取することが、緑内障の進行抑制に効果的であると考えられています。【2】

●目の下のクマを解消する効果
カシスのアントシアニンによる血流改善の効果は、ピント調節機能の維持だけではなく、クマの改善にも良い影響を及ぼします。
クマは、疲労やストレス、睡眠不足などに起因して、目の周りの血流が悪くなることにより酸素が不足し、血液が赤色から暗赤色へと変色することで起こります。
血液の色には、血中に存在するヘモグロビン[※5]という物質が関与しており、ヘモグロビンは、酸素と結合している時には赤色、酸素が離れると暗赤色になります。
つまり、目の周りの血行が悪くなり血液中の酸素が欠乏した状態になると、ヘモグロビンは暗赤色へと変色するため、血液の色そのものが悪くなってしまうのです。
目の下の皮膚は厚さ0.6mmとたいへん薄く、その厚さは卵の薄皮程度だといわれています。
そのため、特に目の下の皮膚に張り巡らされている毛細血管に流れる血液の色が、皮膚を通して透けて見えるのです。
したがって、カシスのアントシアニンは末梢血管の血流を改善し、血液の色を良好にすることでクマの解消をサポートします。【10】

<豆知識>目元のクマの種類について
目の下のクマは、主に「青グマ」、「黒グマ」、「茶クマ」の3つの種類に大別できます。
「青グマ」は、血流の悪化によって起こり、カシスのアントシアニンによる効果が現れやすいクマです。
色白の人や皮膚の薄い人は特に目立ちやすく、冷え性の人に多いといわれている種類のクマです。
​青グマの改善には、血流の改善、禁煙、適度な運動、目の周りの骨に沿ってツボ押しを行うことが効果的です。

「黒グマ」は、肌のむくみやたるみによって目の下に影ができてしまい、黒く見えてしまうクマです。
​鏡を持ち、顔を天井に向けてクマが薄くなっていれば、黒グマであると考えられます。
​黒グマは目元の皮膚のたるみが原因であるため、化粧でも隠しにくいため、コラーゲンを積極的に補ったり、顔のむくみを解消することで改善が期待できます。

「茶グマ」は、目の周りの皮膚の色素沈着や、シミがつながってクマのように見える症状を指します。目をよくこする癖をもつ人や、目元に湿疹ができていた人に多く見られます。茶グマは寝不足などによって濃くなるということはありませんが、目の周りをこすったり、間違った目元のマッサージを行うことは色素沈着の原因にもなるため注意が必要です。

●インフルエンザを予防する効果
カシスに含まれる豊富な栄養素は、インフルエンザの予防に効果的であるといわれています。
カシスに含まれているビタミンAやビタミンB2などには、のどや鼻における粘膜の働きを高める作用があります。
またビタミンCやビタミンB6、亜鉛などは、免疫機能の増強や上皮・粘膜を精製するコラーゲンの生合成に関与する栄養素です。
アントシアニンやビタミンC、ビタミンEなどは抗酸化作用を持つため、活性酸素を除去することができます。
さらに、カシスに含まれている様々な栄養素による作用は、インフルエンザウイルスが細胞に侵入することを防ぐ働きをするため、インフルエンザに有効であるとされています。【8】

●運動による疲労を改善する効果
カシスの持つ血流を改善する働きは、全身の筋肉にも作用すると考えられています。
ヒトを対象にした実験で、被験者に30分間の運動負荷を与え、運動の開始時と終了時に120mgのニュージーランド産カシスエキスを摂取させたものです。
その結果、ニュージーランド産カシスには、「筋肉疲労の軽減」「筋肉損傷の軽減」「筋肉の損傷の回復」「運動後の感染症予防」等の効果があることが確認されました。【5】

[※4:眼圧とは、眼球の大きさ・形を一定に維持するために必要な眼球内の圧力のことです。]
[※5:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。]

こんな方におすすめ

○ピントが合いにくい方
○集中してものを見る機会が多い方
○目の疲れが気になる方
○目のクマが気になる方
○運動時の疲労を回復したい方

カシスの研究情報

【1】カエル網膜の光を感じる細胞桿体外節(ROS)に、カシス中の4種のアントシアニンを投与したところ、シアニジン-3-グルコシドとシアニジン-3-ルチノシドはロドプシンの再合成を促進することが確認され、またロドプシン再合成の中間体の生成にはシアニジン-3-ルチノシドが重要な役割を果たすことが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12769524

【2】開放隅角緑内障患者38名に、カシス抽出物(アントシアニン50mg 相当)を2年間にわたり摂取させたところ、眼圧には直接影響は与えませんでしたが、緑内障による視野欠損を抑制し、また目の周りの血流量も改善したことから、カシスに緑内障予防効果があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22377796

【3】カシスのアントシアニンである、シアニジン-3-ルチノシドとデルフィニジン-3-ルチノシドをラット及びヒト8名が摂取すると、ラットでは血中でのアントシアニン濃度は摂取後0.5-2.0時間、ヒトでは血中でのアントシアニン濃度は摂取後1.25-1.75時間に血中濃度が最大となり、カシスのアントシアニンの摂取後の体の中でのめぐりが確認され、摂取後早い時間に血中に移行することが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11312894

【4】健常成人21名を対象に、カシス抽出物(アントシアニン50mg 相当) を摂取させたところ、暗闇に目がなれる暗順応において調節が認められました。また、長時間のパソコン作業によるピント調節機能の低下が緩和されました。
このことから、カシスのアントシアニンには暗順応の調節機能と長時間のパソコン作業によるピント調節機能維持効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11134978

【5】運動の際にカシスの抽出物を摂取していると、血清中の疲労物質の増加を抑制し、ヒトの白血球の細胞の炎症関連物質であるTNF-α、IL-6、NF-κBの上昇を抑制しました。
このことから、カシスには運動時の疲労物質の蓄積を抑えまた、炎症を抑えることで、スポーツに役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19403859

【6】カシスのアントシアニンの種類を分析したところ、主要なアントシアニンとして4種類が確認されました。カシスのアントシアニン組成としてシアニジン-3-グルコシド(7.0%)、デルフィニジン-3-グルコシド(15.8%)、シアニジン-3-ルチノシド(37.8%)、デルフィニジン-3-ルチノシド(38.9%)となり、ルチノシドを持つアントシアニンが主であることがわかりました。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jsfa.1511/full

【7】カシスをウサギやラットに経口投与及び腹腔内投与したのち、目におけるアントシアニンの濃度を調査したところ、ラットでは目全体と目各組織中のアントシアニンは血中のそれよりも高く検出され、ウサギでは房水、角膜、強膜、脈絡膜、毛様体、虹彩および網膜でアントシアニンが確認され、一部水晶体や硝子体で確認されました。
アントシアニンが血液網膜関門や血液房水関門を通過し、目に到達することが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16635490

【8】カシス果実抽出物(50度のタンクで抽出した上澄み)を用いて、インフルエンザウィルスの阻害作用を確認しました。
インフルエンザウィルスA型では、感染の後、カシス抽出物 10, 100μg/mL の投与で6時間後にはウィルスの成長が阻害されました。
この結果よりカシスにはインフルエンザ予防効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12601672

【9】ヒト肺胞上皮細胞において、カシスのプロアントシアニジンが、炎症関連物質CCL26を活性化し、アトピー性喘息に関連のある白血球細胞、好酸球の活性化を抑制しました。カシスには抗炎症作用や喘息予防効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20229526

【10】健常成人女性33名にカシスのポリフェノールを摂取させたところ、カシス摂取群では摂取15分後から血流量の増加がみられました。
また目のまわりの肌の明るさや赤みを評価するエリスマインデックスが上昇し、くすみを評価するメラニンインデックスが減少したことから、目の周りのクマ改善に役立つ効果が示唆されました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/4/5/4_5_492/_article/-char/ja/

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参考文献

・Knox YM, Suzutani T, Yosida I, Azuma M. 2003 “Anti-influenza virus activity of crude extract of Ribes nigrum L.” Phytother Res. 2003 Feb;17(2):120-2.

・Hurst SM, McGhie TK, Cooney JM, Jensen DJ, Gould EM, Lyall KA, Hurst RD. 2010 “Blackcurrant proanthocyanidins augment IFN-gamma-induced suppression of IL-4 stimulated CCL26 secretion in alveolar epithelial cells.” Mol Nutr Food Res. 2010 Jul;54 Suppl 2:S159-70.

・松本 均, 伊藤 恭子, 米倉 久美子、市橋 正光 2005 “カシスポリフェノール経口摂取のくまに対する改善効果” 皮膚の科学 2005 vol.4(5):492-497

・Matsumoto H, Nakamura Y, Tachibanaki S, Kawamura S, Hirayama M.  2003 “Stimulatory effect of cyanidin 3-glycosides on the regeneration of rhodopsin.” J Agric Food Chem. 2003 Jun 4;51(12):3560-3.

・Ohguro H, Ohguro I, Katai M, Tanaka S. 2012 “Two-year randomized, placebo-controlled study of black currant anthocyanins on visual field in glaucoma.” Ophthalmologica. 2012;228:26-35.

・Matsumoto H, Inaba H, Kishi M, Tominaga S, Hirayama M, Tsuda T. 2001 “Orally administered delphinidin 3-rutinoside and cyanidin 3-rutinoside are directly absorbed in rats and humans and appear in the blood as the intact forms.” J Agric Food Chem. 2001 Mar;49(3):1546-51.

・Nakaishi H, Matsumoto H, Tominaga S, Hirayama M. 2000 “Effects of black current anthocyanoside intake on dark adaptation and VDT work-induced transient refractive alteration in healthy humans.” Altern Med Rev. 2000 Dec;5(6):553-62.

・Lyall KA, Hurst SM, Cooney J, Jensen D, Lo K, Hurst RD, Stevenson LM. 2009 “Short-term blackcurrant extract consumption modulates exercise-induced oxidative stress and lipopolysaccharide-stimulated inflammatory responses.” Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2009 Jul;297(1):R70-81.

・Marja P Kähkönen, Johanna Heinämäki, Velimatti Ollilainen, Marina Heinonen 2003 “Berry anthocyanins: isolation, identification and antioxidant activities” J  Sci Food Agric 2003 83(14):1403–1411

・Matsumoto H, Nakamura Y, Iida H, Ito K, Ohguro H. 2006 “Comparative assessment of distribution of blackcurrant anthocyanins in rabbit and rat ocular tissues.” Exp Eye Res. 2006 Aug;83(2):348-56.

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