カムカム

CAMUCAMU
Myrciaria dubia

アマゾン地域特有の厳しい環境の中で育つカムカムは、地球上に存在する植物の中で最も多くのビタミンCを含むといわれる赤い果実です。クエン酸やビタミンB群、ミネラルなどを豊富に含み、病気や老化の予防、美肌効果、疲労回復などの様々な効果が期待されています。

カムカムとは?

●基本情報
カムカムとは、フトモモ科キブドウ属に属する常緑低木植物[※1]です。成木になるまで約8年かかり、樹高は平均2~3m、中には5m程度まで成長するものもあります。さくらんぼのような直径2~3cmの赤い果実と大きな葉が特徴です。果実の表面は熟すにつれて緑色から赤色に変化し、果肉はピンク色をしています。

カムカムはペルーのアマゾン川上流域を原産地とし、標高200m程の熱帯湿地帯に自生しています。この地域の強烈な日照や1日に10℃以上ある寒暖の差、年間を通しての平均気温が25℃であることなどがカムカムの生育に適しているとされています。また、雨季の増水により、栄養成分に富んだ土壌が蓄積されるため、栄養価の高いカムカムが育つといわれています。

●カムカムの名前の由来
完熟したカムカムの果実がアマゾン川に落下し、この実を群って食べる魚たちからいつも「キャムキャム」や「ヒャムヒャム」という音が聞こえてきていたため、いつの間にか「カムカム」と呼ばれるようになったといわれています。

●カムカムの歴史
野生のカムカムは古くからアマゾン川上流域の先住民に食されてきました。
カムカムの栽培は、1990年頃にアマゾン川流域で始められました。
当時、世界的に問題となっていたコカイン[※2]の原料となるコカ栽培の代わりに、ペルー政府によってカムカムの栽培が推奨されたことがきっかけでした。
最近では、カムカムの栽培がアマゾン川流域で問題となっている森林伐採による地球温暖化や砂漠化の歯止めになるのではないかと、世界の自然保護団体などから注目されています。
日本では2004年の浜名湖花博[※3]で初めてカムカムの木が一般に公開されました。
以前はカムカムの果実の加工品を除き、生の果実や木、種子などのペルー国外への持ち出しが禁止されていましたが、アマゾン川流域で広くカムカムが栽培されるようになってからは、カムカムの種子や苗木の輸出が解禁され日本でも手に入るようになりました。

●カムカムの食べ方
カムカムは非常に酸っぱいため、あまり生では食べられません。
ペルーやブラジルでは、ジュースやジャム、キャンディー、サラダのドレッシングなど日常食として食べられています。アメリカではジュースやジャム、アイスクリームの他、サプリメントとしても流通しています。カムカムは大変デリケートな果実で収穫後すぐに傷んでしまうため、日本では生の果実があまり流通していません。

●カムカムの収穫の時期
カムカムはアマゾン地域が雨季になる12月から5月にかけて収穫されます。それ以外の時期にも1年を通して収穫可能ですが、この時期に収穫されるカムカムが、最も多くのビタミンCを含んでいます。

●カムカムの特徴
カムカムは現在知られている植物の中で最も多くのビタミンCを含んでいる植物です。カムカムの果実100g中に2800mgものビタミンCが含まれています。そのビタミンCの量はレモンの約56倍、アセロラの約1.7倍、いちごキウイフルーツの約40倍にも匹敵します。
カムカムに非常に多く含まれているビタミンCは、強い抗酸化作用を持っています。
抗酸化作用とは、紫外線や喫煙、ストレスなど生活の様々な場面で発生する活性酸素[※4]を除去し、体が酸化することを防ぐ働きのことです。
例えば、クギを放置し空気中にさらしておくとクギがサビついてしまいます。これが酸化です。人間の体内で酸化が起こると、病気や老化、肌トラブルが引き起こされます。カムカムに含まれるビタミンCが体内で強い抗酸化作用を発揮して酸化から体を守ることで、病気や老化、肌トラブルの予防につながります。
他にも、カムカムはエネルギーをつくり出すために必要不可欠なビタミンB₁ビタミンB₂ナイアシンや疲労回復や老化予防に効果があるクエン酸、体を構成するために欠かせないミネラルであるカルシウム、リンなども豊富に含んでいます。クエン酸は、体内でミネラルを包み込み吸収されやすくする働きもあります。

[※1:常緑低木植物とは、幹や枝に一年中葉がついていて、成長しても樹高が約3m以下の植物のことです。]
[※2:コカインとは、コカの葉から取れる覚醒作用を持つ麻薬の一種のことです。コカインは薬物依存症の原因となり、依存症になると幻覚等の精神障害が現れたり、身体的異常が現れたりします。]
[※3:浜名湖花博(はまなこはなはく)とは、2004年に静岡県の浜名湖周辺にて開催された、しずおか国際園芸博覧会「パシフィックフローラ2004」と「第21回全国都市緑化しずおかフェア」のことです。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]

カムカムの効果

カムカムには、抗酸化力の強いビタミンCをはじめ、クエン酸、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ナイアシンなどの様々な栄養素が含まれており、これらの成分には以下のような効果が期待できます。

●感染症を予防・改善する効果
カムカムにはビタミンCが豊富に含まれています。
ビタミンCは、血液中の白血球、特に好中球[※5]に多量に含まれており、体外から侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退する役割を担っています。ビタミンCは白血球の働きを高め、ビタミンC自体も細菌やウイルスに対抗する力を持っているため、ビタミンCを積極的に摂取することで免疫力が高まり、風邪などの感染症を予防し、病気の回復を早める効果があります。

●ストレスへの抵抗力を強化する効果
カムカムに豊富に含まれるビタミンCには、ドーパミンやアドレナリンなどの神経伝達物質[※6]やストレスを和らげる働きをする副腎皮質ホルモン[※7]の合成をサポートする働きがあります。そのため、ビタミンCを摂取することで、神経伝達物質や副腎皮質ホルモンがスムーズに合成されるので、ストレスに対する抵抗力を高めたり、イライラを和らげる効果が期待できます。

●美肌・美白効果
カムカムに豊富に含まれるビタミンCには、シミやそばかすを予防し、ハリのある若々しい肌を保つ効果があります。
日光に当たり続けると、紫外線が原因となってつくられるチロシンと呼ばれるメラニン色素が生成されます。このメラニン色素が皮膚に沈着することでシミやそばかすが発生します。
ビタミンCには、チロシンの働きを抑制しメラニン色素の沈着を防ぐ働きがあるため、シミ・そばかすの予防に効果的です。ビタミンCにはメラニン色素を素早く分解する働きもあるため、日焼けをした肌をできるだけ早くもとの状態に戻す美白効果も期待できます。
また、カムカムには抗炎症作用を持つことが報告されていることから、紫外線による炎症の予防に役立つことも期待されています。
カムカムにはビタミンB₁やビタミンB₂、ナイアシンも含まれており、細胞の新陳代謝[※8]を促進し、肌や爪、髪の毛の健康を維持する働きがあります。【2】【4】

●丈夫な体をつくる効果
カムカムに豊富に含まれるビタミンCは、丈夫な血管や筋肉、骨、肌などをつくるコラーゲンの合成に必要不可欠な成分です。
コラーゲンとは、体の組織や細胞をしっかりと結びつける接着剤のような働きをするたんぱく質のことです。
ビタミンCがコラーゲンの合成をサポートすることで骨を丈夫にしたり、血管から出血しやすくなる壊血病[※9]などを予防する働きがあります。

●コレステロール値を下げる効果
カムカムに豊富に含まれるビタミンCやビタミンB₂、ナイアシンには、血液中のコレステロールを減らす働きがあります。
コレステロールは、体内で胆汁酸に変えられて体外へ排泄されます。ビタミンCは、コレステロールが胆汁酸に変えられる際に必要とされる成分であるため、ビタミンCを十分に摂取することでコレステロールから胆汁酸への変換が促され、コレステロール値を低下させることに効果的です。

●疲労回復効果
カムカムには、クエン酸が豊富に含まれます。
激しい運動やストレス、不規則な生活によって細胞が酸欠状態になると、体内に疲労物質である乳酸が溜まります。クエン酸には乳酸を分解しエネルギーに変える働きがあるため、疲労の蓄積を抑え、疲労を回復させる効果があります。
また、カムカムに含まれるビタミンB₁は、糖の代謝に関わりエネルギーを効率よく生産し、神経や筋肉へエネルギーを運ぶ働きがあるため、疲労回復に効果があります。

[※5:好中球とは、体内に存在する白血球の40%~60%を占める白血球の一種です。急性的な炎症に対して中心となって血液中の細菌やウイルスと闘います。]
[※6:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※7:副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質から分泌されるホルモンのことです。代表的なホルモンに、コルチゾールやアルドステロンがあります。]
[※8:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]
[※9:壊血病とは、ビタミンCの不足によって体内の各器官に出血性の障害が生じる疾患のことです。]

カムカムは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○風邪をひきやすい方
○ストレスをやわらげたい方
○シミ、そばかすが気になる方
○肌荒れでお悩みの方
○コレステロール値が気になる方
○丈夫な体をつくりたい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○疲れやすい方

カムカムの研究情報

【1】マウスの血液細胞にカムカム果汁を投与したところ、血液細胞の遺伝子が保護されました。カムカムにはビタミンCが豊富に含まれており、果汁100ml 中に含まれるビタミンC量は52.5mg と多く、ビタミンCの高い抗酸化力によるものと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22542553

【2】足にむくみのあるマウスに、カムカム種子抽出物を投与したところ、炎症関連物質である一酸化窒素が減少し、むくみが改善されました。このはたらきはカムカム種子に含まれるトリテルペノイドの一種、ベツリン酸が関係していることがわかりました。カムカム種子は抗炎症作用をもつことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21512298

【3】薬物性肝障害ラットに、カムカムを含む凍結乾燥果汁を7日間摂取させたところ、肝臓障害が抑制されました。カムカムの果汁に含まれるマレイン酸モノメチルという成分が関与していることが示唆されました。カムカムが肝臓保護作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20208347

【4】男性喫煙者20名を対象に、カムカム飲料(ビタミンC 1050mg 相当)を7日間摂取させたところ、酸化ストレスの指標となる尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシンおよび活性酸素量、炎症関連物質であるC反応性タンパク、IL-6およびIL-8濃度の量が減少しました。この結果より、カムカムが抗酸化作用、抗炎症作用を持つことが示唆されました。
またこの効果はビタミンC のみ摂取した場合には確認できなかったことから、カムカムにはビタミンCの他にも多くの機能性成分が含まれていることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18922386

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参考文献

・da Silva FC, Arruda A, Ledel A, Dauth C, Romão NF, Viana RN, de Barros Falcão Ferraz A, Picada JN, Pereira P. 2012 “Antigenotoxic effect of acute, subacute and chronic treatments with Amazonian camu-camu (Myrciaria dubia) juice on mice blood cells.” Food Chem Toxicol. 2012 Jul;50(7): 2275-81.

・Yazawa K, Suga K, Honma A, Shirosaki M, Koyama T. 2011 “Anti-inflammatory effects of seeds of the tropical fruit camu-camu (Myrciaria dubia).” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2011;57(1): 104-7.

・Akachi T, Shiina Y, Kawaguchi T, Kawagishi H, Morita T, Sugiyama K. 2010 “1-methylmalate from camu-camu (Myrciaria dubia) suppressed D-galactosamine-induced liver injury in rats.” Biosci Biotechnol Biochem. 2010;74(3): 573-8.

・Inoue T, Komoda H, Uchida T, Node K. 2008 “Tropical fruit camu-camu (Myrciaria dubia) has anti-oxidative and anti-inflammatory properties.” J Cardiol. 2008 Oct;52(2): 127-32.

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