杜仲茶(とちゅうちゃ)

eucommia leaf tea
chinese gutta percha

杜仲茶は中国の四川省原産の樹木の葉を煎じて飲まれる健康茶です。古くから高貴な薬として珍重されてきた歴史を持ちます。高血圧予防やメタボリックシンドローム予防など、様々な効果が期待され飲まれています。

杜仲茶とは

●基本情報
杜仲茶とは、中国西南部からベトナムにかけて育つ杜仲の木の葉を煎じてお茶にしたものです。杜仲は、古代中国人が健康維持に欠かせない生薬として使用されていました。一科一属一種の世界でも珍しい樹木で、20年~30年で直立した巨木になり、樹皮は漢方薬の原料として、若葉をお茶として用いています。中国では、漢方薬の中でも最も高貴なものとされてきました。杜仲が日本に渡来したのは、奈良時代から平安時代とされています。樹木が日本に導入されたのは20世紀になってからです。杜仲の葉を手で割くと、断面から粘液質の白い糸を引くことが特徴です。杜仲茶には現代人に不足しがちなミネラルの鉄、亜鉛、カリウム、カルシウム、マグネシウムやビタミンCなどを含むため、珍重されてきました。
血圧を下げる効果が示唆されており、特定保健用食品(トクホ)[※1]にも応用されています。
プーアール茶に似た特有の香りと風味がありますが、渋みがなくさっぱりしていて飲みやすいお茶です。

●杜仲茶の歴史
杜仲茶は中国4000年もの歴史の中で長い間珍重され続けています。
中国、明時代に杜仲という人がある薬木の葉を煎じて飲んだところ病気が治ったという伝説から、この木は杜仲と名づけられました。古代中国の「神農本草経」[※2]という薬学書には、当時収録されていた365種類の生薬の中でも杜仲は「毎日服用すれば長生きでき、副作用の心配もない」という上薬の区分に分類されました
日本では918年に書かれた「本草和名」にも杜仲という名前が出ており、貴族の間で不老長寿のための高貴薬とされていたようです。中国の伝統医学では杜仲の樹皮を生薬として用いますが、樹皮の産出量には限りがあるため、中国では古くから杜仲の若葉を煎じたものが健康のために飲まれていました。
また、「樹木和名考」という記録書には、杜仲を明治中期に林業試験場で栽培したという記録がありますが、本格的な栽培が長野県で始まったのは、昭和50年代頃からです。

●杜仲茶に含まれる成分と性質
杜仲の葉をちぎるとグッタペルカといわれるネバネバしている液体が出ます。グッタペルカは活性酸素[※3]を除去し、血液をサラサラにします。杜仲茶に含まれる杜仲葉配糖体[※4]は血圧やコレステロール値を下げる働きがあります。他にもイリドイドは認知症予防に効果を発揮します。

[※1:特定保健用食品(トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]
[※2:神農本草経(しんのうほんぞうきょう)とは、中国最古の薬物学書です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるといわれています。]
[※4:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]

杜仲茶の効果

●高血圧を予防する効果
杜仲は、中国で薬として扱われ高血圧症、動脈硬化症の患者に投与されていました。
化学的につくられた薬と違い、胃腸障害やアレルギーなどの副作用に悩まされることなく、効き目が穏やかで、体に優しいといわれています。有効成分であるゲニポシド酸は副交感神経に作用し平滑筋を弛緩させ血流抵抗を低下させることで、血圧を降下する働きがあります。さらに高血圧症からくる、目まい、腰痛、しびれ、血栓などにも良いとされるので、現代社会に多い、肉や脂の多い食習慣の方に良いとされています。【1】【4】

●メタボリックシンドロームを予防する効果
杜仲茶にはメタボリックシンドロームを予防してくれる効果が期待されています。杜仲に含まれるゲニポシド酸は、動物実験においても血中脂質や内臓脂肪蓄積を抑制したり、インシュリン抵抗性を改善したり効果が期待できることがわかっています。ラットを用いた実験で、高脂肪、高コレステロール食を食べさせたラットに杜仲茶を与えて育てると、杜仲茶を与えなかったラットと比べて腹腔脂肪が約35%減少し、総コレステロール値が約20%、中性脂肪値は約70%も下がったという結果が得られています。
また、内臓脂肪の減少や体重増加の抑制に働きかけるアディポネクチンを増加させることも確認できており、これらが複合的にメタボリックシンドロームを予防することが期待されます。【1】【2】【3】【4】

●むくみを予防・改善する効果
杜仲に含まれる有効成分ピロレジノール・ジグルコサイドには、体内の不要な水分や塩分を排出させる働きがあります。心臓や肝臓などの負担を軽減し、むくみをとり、血行障害にも働きかけます。

●記憶力や学習能力を高める効果
杜仲茶に含まれるイリドイドは記憶力の低下を防いだり、認知症を予防する効果があります。
イリドイドとは植物がつくるテルペンの一種です。

杜仲茶はこんな方におすすめ

○血圧が高い方
○生活習慣病を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○肥満を防ぎたい方
○手足のむくみでお悩みの方
○記憶力が気になる方

杜仲茶の研究情報

【1】杜仲葉エキスはアセチルコリンレセプターに作用し、血圧降下作用を示すことから、杜仲茶は高血圧予防効果を持つと期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110008732369

【2】杜仲茶の葉に含まれるケルセチンが、αグルコシダーゼの活性を抑制したことから、杜仲茶は糖尿病予防固化を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9028049

【3】高脂肪食摂取ラットに杜仲葉抽出液を摂取すると、血液ならびに肝臓中のVLDL、LDLコレステロール、トリセルグリセリドが低下したことから、杜仲茶は生活習慣病予防効果が期待されています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110002791142

【4】正常高値血圧者及び軽症高血圧者85名 (平均年齢51.3歳) (試験群41名) を対象とした二重盲検並行群間試験において、杜仲葉配糖体1.0 g以上含む飲料を1日50 mL、12週間摂取させたところ、8~12週後の収縮期血圧と、10~12週後の拡張期血圧が低下したことから、杜仲茶は高血圧予防効果が期待されています。

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参考文献

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・大森正司 ワイド版 日本茶紅茶中国茶健康茶 日本文芸社

・藤田紘一郎 知識ゼロからの健康茶入門 幻冬舎

・田川 智恵、中澤 慶久、田頭 栄治郎、上田 太郎、山口 康代、大原 豊実、鬼塚 重則、西部 三省 (2005) “杜仲葉エキスの血圧降下に関する研究(第2報)” 生薬學雜誌 59(3), 117-120, 2005-06-20

・Watanabe J, Kawabata J, Kurihara H, Niki R. (1997) “Isolation and identification of alpha-glucosidase inhibitors from tochu-cha (Eucommia ulmoides).” Biosci Biotechnol Biochem. 1997 Jan;61(1):177-8.

・仲佐 輝子、山口 真由美、沖中 靖、目鳥 幸一、高橋 周七 (1995) “高脂肪高コレステロール食投与ラットの血漿および肝臓中の脂質に及ぼす杜仲葉抽出液の影響” 日本農藝化學會誌 69(11), 1491-1498, 1995-11-01

・Health Sciences.2004;20(2):166-76

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