メカブ

和布蕪

ワカメの根本部分であるメカブには、ヌルヌル成分であるフコイダンやアルギン酸が海藻類の中でも特に多く含まれています。また、ミネラルやカロテノイドも豊富に含まれており、生活習慣病の予防・改善や免疫力を高める効果があるといわれています。

メカブとは?

●基本情報
メカブとは、長さ2mにも達するワカメの付着器[※1]のすぐ上にある、折れ重なって厚いひだ状になっている部分のことを指します。ワカメの生殖細胞が集まり栄養素が凝縮されている部分で、成実葉(せいじつよう)[※2]や胞子葉[※3]にあたります。
ワカメは海藻なので根はありませんが、メカブはワカメの根元部分と表現されることがよくあります。
メカブはネカブ、ミミ、カブ、メヒビなど様々な呼び名があり、各地方によって独自の加工法・調理方法で食されています。生の状態では茶褐色のメカブですが、90℃以上で5秒程ボイルすると褐色の色素が壊れて瞬時に鮮やかな緑色に変色します。オクラ、納豆などネバネバ素材と組み合わせたり、シンプルに三杯酢で食べたり、汁物の中に入れたりと様々な調理方法で楽しむことができます。

●メカブの歴史
古くからメカブの素干しが食用とされることがありましたが、処理が面倒ということもあり、多くはそのまま捨てられていました。しかし、大宝律令が出来た時代の賦役令(ぶやくりょう)[※4]によると、貢納する海藻の中に「マナカシ(当時のメカブの呼び方)」と記載されているため、8世紀初頭にはすでにワカメの葉状体と同様に食用にされていたものと考えられています。
メカブは、健康に良い海藻として知られており、四方が海に囲まれた日本では海の恵みとして重宝され、古くから民間薬としても使用されていました。
1965年頃から、養殖が盛んになり広く普及していきました。天然のメカブは養殖のものより少々高値で取引されています。
メカブはぬめりが強く歯ごたえがあり、酢のものやメカブとろろとして人気があります。
最近になり、メカブには葉状体よりも多量に健康上有効な成分が含まれていることがわかり、食材として利用されるだけでなく、粉末や錠剤として健康食品の仲間に取り入れようとする傾向が出てきています。

●メカブの生産地
日本での生産地は北海道西部から九州までと幅広く、特に潮の流れが激しい鳴門海峡や三陸外海の南部のものが有名です。
メカブの採集時期は2月~4月前半で、新メカブが商品として販売されるのは4月半ば以降です。

●メカブに含まれる成分
生のメカブはとても歯ごたえが良く、栄養素を豊富に含んでいます。
メカブには豊富なカルシウムをはじめ、貧血の改善・予防に必要なミネラルである鉄や、新陳代謝を活発にし、病気に負けない体を作るために必要なヨウ素(ヨード)、ナイアシンがワカメの葉状体の部分と比較すると非常に多く含まれています。
また、メカブは脂質含有量が非常に多く、全体量の8%にも及びます。
最も多い脂肪酸はパルミチン酸で、次いでオレイン酸です。他にはEPAが4%前後、アラキドン酸が葉状体に比べかなり多く含まれています。
植物ステロールの一種であるフコステロールも、葉状体よりメカブの方が豊富に含まれているといわれています。
メカブの最大の特徴であるヌルヌルした粘液には、フコイダンとアルギン酸が豊富に含まれています。フコイダンは、メカブの表面が傷ついた時などに傷口から細菌が入らないように体を守ったり、干潮の際に水中から出てしまっても乾燥しないように保護をする役割があるとされています。
メカブにはフコキサンチンというカロテノイドの一種も含まれているため、生活習慣病の予防・改善に適した食材とされています。

[※1:付着器とは、海底や岩場にしっかりと海藻を固定するための、植物における根にあたる部分のことです。]
[※2:成実葉とは、ワカメ類の葉の付け根にある胞子がつくられる部分のことです。]
[※3:胞子葉とは、胞子が付きやすいように特別に形態が変化した葉のことです。]
[※4:賦役令とは、税を納めるように命じた令のことです。]

メカブの効果

メカブには、フコイダンやアルギン酸、カルシウム、ヨウ素(ヨード)、食物繊維、フコキサンチンなどが豊富に含まれており、以下のような健康に対する効果が期待できます。

●免疫力を高める効果
ウイルスなどの異物が体内に侵入してきた際には免疫機能が働きます。
まず、体内に入ってきた異物は、白血球[※6] であるマクロファージにより有益なものか有害なものかが判断されます。その後、マクロファージは体内の免疫機能の指揮をとるヘルパーT細胞に、異物が侵入してきたことを伝えます。知らせを受けたヘルパーT細胞は異物を排除するため、ウイルスに感染した細胞を破壊するキラーT細胞や、腫瘍細胞[※7]などを傷害する作用があるNK(ナチュラルキラー)細胞に命令を下します。また、ヘルパーT細胞はリンパ球の一種であるB細胞にも異物が侵入してきたことを伝えます。B細胞は伝えられた情報をもとに、異物を捕まえるための特別なたんぱく質(抗体)をつくります。
この3種類の細胞により、異物を体内に侵入させないための免疫機能が働いています。
メカブに含まれるフコイダンには、NK細胞を活性化させる働きがあることが報告されています。このためメカブを摂取することは、免疫力を高めることにつながると考えられています。
また、メカブには細胞を活発化させ強い体をつくるヨウ素(ヨード)も豊富に含まれています。
アルギン酸には、カドミウム[※8]など人体に影響のある物質と結合し、体外へ排出する働きがあります。カドミウムを過剰に与えたラットは通常死にますが、カドミウムを与えた後にアルギン酸を与えたところ、そのラットが元気になったという実験結果が出ています。
これらの成分により、メカブには免疫力を高めるだけでなく、人体に有害な物質を排出する働きがあることが期待されています。【1】【3】【5】【7】

●髪を健康に保つ効果
メカブに豊富に含まれるネバネバ成分であるフコイダンには、毛母細胞を活性化させる働きがあります。毛母細胞が活性化すると、発毛の新陳代謝が正常に行われ、健康で美しい髪がつくられます。
また、メカブを使用したシャンプーを使うと、太く元気な毛髪が生えるようになるといわれています。アルギン酸は水との相性が良く、非常に高分子であるため瞬時に髪に吸着し、髪全体に薄い皮膜状となって広がります。この働きにより、傷んだ髪表面のキューティクルを補修する効果があるといわれています。

●高血圧を予防する効果
メカブに含まれるフコステロールには、血圧低下作用が確認されています。植物ステロール自体は体内にほとんど吸収されないため、副作用の心配がなく安心です。
メカブに含まれるアルギン酸は、体内のナトリウムと結合しアルギン酸ナトリウムとなり体外へ排出されます。高血圧の原因となるナトリウムを排出するため、血圧を安定させる効果が期待されます。

●コレステロール値を下げる効果
メカブに含まれている食物繊維の一種であるアルギン酸は、人間の消化液では消化されず、腸内細菌によってわずかに分解される程度です。アルギン酸は、一緒に摂取した食物中のコレステロールを包み込み、そのまま体外へ送り出す働きがあります。この働きにより、腸でのコレステロール吸収が妨げられ血中のコレステロール値が下がります。また、フコステロールにもコレステロールの吸収を阻害する働きがあります。

●動脈硬化、糖尿病を予防する効果
メカブには、カロテノイドの一種であるフコキサンチンが含まれています。フコキサンチンには体内の活性酸素[※9]を除去する働きがあり、血液中の脂質の酸化を抑える効果があります。
豊富な栄養素を含んでいるメカブを摂取することにより、動脈硬化や糖尿病の予防・改善が期待できます。

●胃の健康を保つ効果
ピロリ菌が胃壁の弱っているところに付着することで胃潰瘍が発病します。
発展途上国に感染者が多いとされていますが、日本は先進国の中で感染率が非常に高いといわれています。
フコイダンはピロリ菌が胃壁に付着することを阻止し、胃潰瘍や胃炎を予防するだけでなく、できてしまった胃潰瘍を修復する働きもあります。

●成長を促進する効果
メカブに含まれるヨウ素(ヨード)は体内に吸収されると、主にホルモンであるチロキシンやトリヨードチロキシンの材料になります。このホルモンの働きは明確にされていませんが、主にたんぱく質の合成や酵素の作用に関係すると考えられています。メカブに含まれているヨウ素(ヨード)には、基礎代謝を促したり、酸素消費量を増加させたりと細胞の新陳代謝を活発にするため、成長期には発育を促進する働き、成人では基礎代謝を促進し美しい肌に導いたり疲れを解消する働きがあります。
また、メカブにはカルシウムが豊富に含まれているため、骨の形成を助ける働きもあります。

●便秘を解消する効果
食物繊維は腸内の不要なものを吸着し、腸の動きを促進する働きがあるため、便秘の解消に効果的です。
メカブには、食物繊維の他にも体内の有毒な物質を排出してくれる成分も含まれているため、デトックス効果も期待されています。【2】

●体臭や口臭を予防・抑制する効果
体臭の原因は体内のアンモニアなどの成分です。メカブに含まれるフコイダンやアルギン酸はアンモニアを包み込み、体外へと排出してくれる働きがあるといわれています。
また、アルギン酸には唾液の分泌を促進させる効果があり、口臭の原因になる口内細菌の繁殖を抑制します。
これらの働きにより、メカブを食べることによって体臭や口臭が予防、抑制されると考えられています。【4】

[※6:白血球とは、血液に含まれる細胞のひとつです。体内に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する役割があります。]
[※7:腫瘍細胞とは、組織、細胞が生体内の制御に反して過剰に増殖することによってできる細胞組織のことです。]
[※8:カドミウムとは、金属の一種です。魚などに含まれており、体内に蓄積すると骨や腎臓が冒され、イタイイタイ病になることが知られています。]
[※9:活性酸素とは普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

メカブは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○髪や肌、爪を健康に保ちたい方
○血圧が高い方
○動脈硬化、糖尿病を予防したい方
○胃を健康に保ちたい方
○成長期のお子様
○便秘でお悩みの方
○体臭や口臭が気になる方

メカブの研究情報

【1】マウスに、メカブフコイダンを1% 含有している餌を40日間摂取させたところ、免疫細胞のT細胞やNK細胞が活性化されたことから、メカブに免疫力向上作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17054048

【2】メカブに含まれるアルギン酸は腸内細菌による消化が極めて悪いことが特徴です。豚の盲腸細菌を用いた試験では、グルコースなどの糖と比較しても消化がわるいため、食物繊維としての機能が評価されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7562111

【3】マウスにおいて、メカブフコイダンを1日あたり 50mg/kg の量で4日間腹腔内投与したところ、T細胞のはたらきを調節して、炎症関連物質IL-4, 5, 13の産生が抑制され、肺炎が抑制されました。メカブが抗炎症作用、抗アレルギー作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15970637

【4】メカブに含まれる機能性成分フコイダンは、帯状疱疹ウイルスやヒトサイトメガロウィルスに対する抗菌作用を持つことから、メカブに抗菌作用が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7562111

【5】胆のう癌マウスに、メカブフコイダンを投与すると、NK細胞の活性化と免疫物質であるINF-αの産生が増大したことから、メカブに免疫活性化作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19024629

【6】メカブをはじめとする海藻中には機能性成分として植物ステロールが含まれており、その主要な成分はフコステロールです。フコステロールの含量として、乾燥海藻中に662-2320μg/g が含まれており、メカブの機能性成分として有望視されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15103705

【7】マウスの細胞(3T3-L1細胞) において、フコイダンを投与すると、脂肪形成ならびに炎症関連遺伝子の活性化を阻害しました。このはたらきにより、脂肪細胞での脂質蓄積を抑制し、活性酸素が抑制されたことから、メカブに抗肥満作用と抗炎症作用が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7562111

【8】メカブに含まれる機能性成分フコガラクタン(Fucogalactan) には、免疫細胞である単球細胞にはたらきか、真菌や細菌に対する抗菌作用を持つことが確認されており、メカブに抗菌作用が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19024629

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参考文献

・Maruyama H, Tamauchi H, Iizuka M, Nakano T. 2006 “The role of NK cells in antitumor activity of dietary fucoidan from Undaria pinnatifida sporophylls (Mekabu).” Planta Med. 2006 Dec;72(15):1415-7.

・Togari N, Ogawa N, Sakata T. 1995 “Poor fermentability of “mekabu” (sporophyll of Undaria pinnatifida) alginic acid in batch culture using pig cecal bacteria.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1995 Apr;41(2):179-85.

・Maruyama H, Tamauchi H, Hashimoto M, Nakano T. 2005 “Suppression of Th2 immune responses by mekabu fucoidan from Undaria pinnatifida sporophylls.” Int Arch Allergy Immunol. 2005 Aug;137(4):289-94.

・Lee JB, Hayashi K, Hashimoto M, Nakano T, Hayashi T. 2004 “Novel antiviral fucoidan from sporophyll of Undaria pinnatifida (Mekabu).” Chem Pharm Bull (Tokyo). 2004 Sep;52(9):1091-4.

・Maruyama H, Tamauchi H, Hashimoto M, Nakano T. 2003 “Antitumor activity and immune response of Mekabu fucoidan extracted from Sporophyll of Undaria pinnatifida.” In Vivo. 2003 May-Jun;17(3):245-9.

・Sanchez-Machado DI, Lopez-Hernandez J, Paseiro-Losada P, Lopez-Cervantes J. 2004 “An HPLC method for the quantification of sterols in edible seaweeds.” Biomed Chromatogr. 2004 Apr;18(3):183-90.

・Kim KJ, Lee BY. 2012 “Fucoidan from the sporophyll of Undaria pinnatifida suppresses adipocyte differentiation by inhibition of inflammation-related cytokines in 3T3-L1 cells.” Nutr Res. 2012 Jun;32(6):439-47.

・Li Y, Nishiura H, Tokita K, Kouike Y, Taniguchi C, Iwahara M, Nishino N, Hama Y, Asakawa M, Yamamoto T. 2008 “Elastin peptide receptor-directed monocyte chemotactic polysaccharides derived from seaweed sporophyll and from infectious fungus.” Microb Pathog. 2008 Nov-Dec;45(5-6):423-34.

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