ラクトフェリン

lactoferrin

ラクトフェリンとは、鉄と結合する性質を持つ糖たんぱく質で、母乳や哺乳動物の乳に多く含まれています。
ラクトフェリンは、鉄と結び付くことで細菌の増殖を抑え、免疫機能を高めます。また、腸内に入ると悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やす働きがあるため、腸内の環境を整える効果もあります。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

ラクトフェリンとは?

●基本情報
ラクトフェリンとは、鉄と結合する性質を持つ糖たんぱく質で、母乳をはじめとする哺乳動物の乳に含まれる成分です。強い抗菌力、殺菌力を持つため、細菌やウイルスの増殖を抑制します。また、鉄の吸収を促進することから、貧血の予防や改善にも効果的です。
ラクトフェリンは、鉄と結び付きやすい性質を持つことから、赤みがかった色をしており、発見当初は「赤いたんぱく質」と呼ばれていました。
人間では唾液、涙液、血液などにもラクトフェリンが含まれており、粘膜を細菌などから守る働きをしています。ラクトフェリンは、出産後3日間に出る初乳に最も多く含まれています。これは、まだ免疫力を持たない乳児を細菌から守るためと考えられています。
生まれたばかりの赤ちゃんは、細菌やウイルスに対して無防備で、はじめにおなかに現れる菌は、大腸菌[※1]やブドウ球菌[※2]などの悪玉菌であるといわれています。
生後2日目以降、赤ちゃんの腸内には善玉菌であるビフィズス菌などが出現し、やがて約90%を善玉菌が占めるようになります。このように善玉菌が全くいない状態の赤ちゃんの腸内を悪玉菌から守っているのは、ラクトフェリンの働きによるものといわれています。そのために、ラクトフェリンは母乳に多く含まれているのです。ラクトフェリンには、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きや、鉄と結び付く性質により、鉄を栄養分として生存する細菌の増殖を抑制する働きがあるため、腸内環境を整える効果があります。

●ラクトフェリンの歴史
ラクトフェリンは、1939年にデンマークの化学者であるゼーレンセン博士によって、牛乳から発見されました。その後、1961年にフランスの学者によってラクトフェリンと名付けられました。ラクト(lacto)は乳、フェリン(ferrin)は鉄という意味を持ち、鉄と結合する性質を持つことが発見されたことからラクトフェリンという名前がつけられました。

ラクトフェリンは熱に弱い性質を持つため、市販されている牛乳やチーズにはほとんど含まれておらず、大量生産が困難とされていました。しかし、1980年代になり、ラクトフェリンの大量生産が可能となり、これをきっかけにラクトフェリンの研究が飛躍的に進み、有効的な生理活性が明らかとなったのです。
現在では、ラクトフェリンは身近な存在としてサプリメントや人工乳に活用されています。

●ラクトフェリンの性質と働き
ラクトフェリンは熱に弱く、酸や酵素に分解されやすい性質を持っています。そのため、牛乳などの乳製品はそのほとんどが加熱処理されているためラクトフェリンはほとんど含まれていません。
また、鉄と結合する性質を持つため、食品中の鉄分を体内にうまく吸収させる働きがあります。そのため、貧血の予防や改善に効果的です。

[※1:大腸菌とは、人間や動物の腸内に存在し、増えすぎることで下痢などの症状を引き起こす細菌のことです。]
[※2:ブドウ球菌とは、人間や動物の腸内に存在する細菌です。食中毒の原因としても知られています。]

ラクトフェリンの効果

●免疫力を高める効果
ラクトフェリンには、NK(ナチュラルキラー)細胞という免疫細胞を活性化させる働きがあります。
NK細胞とは、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を見つけ出し、攻撃することで体を守る働きをしています。NK細胞の活性が低いと病気になりやすいということがわかっています。
動物実験の結果では、ラットにラクトフェリンを投与したことによって、NK細胞の数が増えたり、NK細胞の活性が強くなることが確かめられており、ラクトフェリンは免疫機能の向上に役立つことが明らかとなっています。
また、ラクトフェリンはアレルギーなどの免疫過剰反応[※3]がある場合、免疫の亢進を抑制する働きも持ち合わせています。【5】【6】【7】

●免疫力を高める効果
ラクトフェリンには、NK(ナチュラルキラー)細胞という免疫細胞を活性化させる働きがあります。
NK細胞とは、ガン細胞やウイルスに感染した細胞を見つけ出し、攻撃することで体を守る働きをしています。NK細胞の活性が低いと病気になりやすいということがわかっています。
動物実験の結果では、ラットにラクトフェリンを投与したことによって、NK細胞の数が増えたり、NK細胞の活性が強くなることが確かめられており、ラクトフェリンは免疫機能の向上に役立つことが明らかとなっています。
また、ラクトフェリンはアレルギーなどの免疫過剰反応[※3]がある場合、免疫の亢進を抑制する働きも持ち合わせています。【5】【6】【7】

●腸内環境を整える効果
ラクトフェリンには、腸内の善玉菌を増やすプレバイオティクスとしての働きがあります。
プレバイオティクスとは、善玉菌のエサとなることで、腸内の善玉菌の数を増やす働きを持つ成分のことで、食物繊維やオリゴ糖もその一種です。
人間の腸内には、約100種類、100兆個以上の細菌がすんでおり、ビフィズス菌などの善玉菌と、ウェルシュ菌[※4]などの悪玉菌が絶えず勢力範囲を争っています。乳児では、腸内の善玉菌が90%を占めていますが、年齢とともにその数は減少します。善玉菌が減り、悪玉菌が増えると便秘や下痢などの原因となります。
ラクトフェリンは、腸内で善玉菌を増やす役割があるため、腸内の環境を整える働きがあります。

●貧血を予防する効果
ほとんどの貧血症状は、鉄の不足によって起こります。ラクトフェリンは、鉄と結び付く性質を持ち、鉄と一緒に摂ることで、吸収のあまり良くない鉄の吸収率を上げる働きがあります。
このことから、ラクトフェリンは貧血の予防に効果的な成分だといえます。

●胃の健康を保つ効果
ラクトフェリンは、ヘリコバクター・ピロリ菌に対して、強い抗菌作用を発揮することが明らかとなっています。
ヘリコバクター・ピロリ菌とは、胃の中に棲みついて、胃潰瘍や胃ガンの原因になる細菌です。特に日本人の50歳以上の約7割、国民全体の約5割が感染しているといわれています。
ボランティアを対象に2ヵ月間ラクトフェリンを飲ませた結果、約30%のヒトでピロリ菌の数が10分の1まで減少したという研究があります。
このことから、ラクトフェリンはヘリコバクター・ピロリ菌の数を減少させ、胃潰瘍や胃ガンに対しても効果的な成分であると考えられています。【1】

●ドライアイを改善する効果
涙の中には、高い濃度のラクトフェリンが含まれ、研究の結果からラクトフェリンはドライアイに効果的な成分であることがわかっています。
シェーグレン症候群[※5]で重症のドライアイ患者4人に、ラクトフェリンのサプリメントを2~6ヵ月間摂取させたところ、眼球を潤す涙の量が増え、目の乾きが減少したという結果が出ており、ラクトフェリンのドライアイに対する効果が明らかとなっています。

●老化を防ぐ効果
活性酸素とは、体内に摂り入れた酸素が活性化することで発生します。本来、体内のガン細胞や細菌を攻撃し、殺す役割を持っていますが、過剰に発生することで体内の脂質を酸化させたり、正常な細胞を傷つけたりすることで老化の促進などにつながってしまいます。
ラクトフェリンは活性酸素の過剰発生を抑制する効果があるため、老化の予防などにも効果的だと考えられています。【7】

●骨粗しょう症を予防する効果
ラクトフェリンには、骨粗しょう症を予防する効果があるといわれています。
骨粗しょう症とは、カルシウム不足や、女性ホルモンの減少により骨中のカルシウムが溶け出し、骨がスカスカになってしまう病気です。
女性ホルモンは、骨芽細胞という骨をつくる細胞と、破骨細胞という骨を壊す細胞のバランスを保つ役割を持っています。閉経などにより女性ホルモンの分泌量が減ることで、骨の生成と破壊のバランスが崩れてしまうため、骨の破壊が進み、骨粗しょう症になってしまいます。閉経後の女性に骨粗しょう症が多いのは、女性ホルモンの乱れによるものです。
ラクトフェリンは、破骨細胞の働きを抑制し、骨芽細胞やコラーゲンの生成量を増やす効果があるため、骨粗しょう症に効果的な成分です。【8】【9】

●内臓脂肪を減少させる効果
ラクトフェリンは内臓脂肪を減少させる効果が期待できます。
内臓脂肪とは、腸管の周りに存在する脂肪です。22歳から60歳の成人男女26名を対象に、1日300mgのラクトフェリンを8週間摂取させる臨床試験を実施した結果、内臓脂肪の量が減ったという報告があります。
ラクトフェリンは胃や小腸で分解されることが知られていますが、内臓脂肪を減少させるためには、胃で分解されず小腸まで届く脂溶性のラクトフェリンを摂取する必要性があります。【3】【4】

●ストレスをやわらげる効果
ラクトフェリンにはストレスをやわらげる効果があるといわれています。
ある研究では、マウスの赤ちゃんにラクトフェリンを投与し、母マウスから引きはなした結果、ストレスが減少したことがわかっています。このことからも、ラクトフェリンはストレスの緩和に有効的である可能性が示唆されています。

[※3:免疫過剰反応とは、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまう反応のことです。]
[※4:ウェルシュ菌とは、人間や動物の腸管、土壌、水中など広く自然界に分布している、酸素を嫌う細菌のことです。ウェルシュ菌が増えることで、腸内の環境が悪くなり、便秘や下痢が起こります。]
[※5:シェーグレン症候群とは、自己免疫疾患の一種で、目や口、鼻、皮膚など全身の様々な分泌腺が冒され、乾燥する病気のことです。]

食事やサプリメントで摂取できます

ラクトフェリンを含む食品

○加熱処理をしていない牛乳などの乳製品
○母乳

こんな方におすすめ

○免疫力を向上させたい方
○腸内環境を整えたい方
○胃の健康を保ちたい方
○貧血でお悩みの方
○骨粗しょう症を予防したい方
○肥満を防ぎたい方
○ストレスをやわらげたい方

ラクトフェリンの研究情報

【1】ピロリ菌感染患者150名において、治療薬とともにラクトフェリンを1日400mg を摂取させたところ、ピロリ菌の除菌率が向上していたことより、ラクトフェリンにはピロリ菌の除菌に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12702979

【2】女性長距離走者16名において、ラクトフェリンを1日1.8g と鉄 6mg を8週間摂取させたところ、運動後の血中乳酸量増加の抑制が見られました。この結果より、ラクトフェリンには運動疲労抑制効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18391460

【3】ラクトフェリン1000mg 溶液をラットの胃に投与した結果、腸管膜脂肪組織の脂肪細胞への脂肪蓄積が抑制されました。この結果より、ラクトフェリンは内臓脂肪蓄積予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20854698

【4】肥満日本人男女22名において、腸溶性ラクトフェリン300mg を8週間摂取させたところ、血中のコレステロールには影響は無かったが、総脂肪領域、皮下脂肪面積、BMI が改善されていました。この結果より、ラクトフェリンは内蔵脂肪蓄積予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20691130

【5】小児呼吸器感染症患者にラクトフェリンとクルクミンを摂取させたところ、感染症患者が減少しており、免疫細胞のT細胞が活性化していました。このことより、ラクトフェリンには免疫活性化作用があることが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19589293

【6】新生児において、ラクトフェリンを1日100mg (153名)、ラクトフェリンと乳酸菌を1日100mg (151名) 摂取させたところ、細菌感染症による敗血症のリスクを軽減することが確認されました。これらの結果より、ラクトフェリンに抗菌作用があることが確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19809023

【7】健常男性8人において、ラクトフェリンを1日100 mg を7日間、続いて、200 mg を7日間摂取させたところ、免疫細胞であるT細胞が活性され、血中抗酸化力も向上することが分かりました。これらの結果より、ラクトフェリンは免疫力と抗酸化力を高めるはたらきがあることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083463

【8】閉経後女性38名にラクトフェリンを摂取させたところ、骨粗鬆症の指標である骨吸収が抑制され、骨形成マーカーのオステオカルシンが増加していました。これらの結果より、ラクトフェリンは骨粗鬆症予防に役立つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19172341

【9】ラクトフェリンは骨形成細胞 (骨芽細胞) を活性化し、骨吸収細胞(破骨細胞形成) を阻害するはたらきがわかり、ラクトフェリンは骨粗鬆症予防に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20232111

もっと見る 閉じる

参考文献

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・島崎敬一 若さと健康の素ラクトフェリン 知って得する豆知識 共同通信医療情報センター

・Di Mario F, Aragona G, Bò ND, Ingegnoli A, Cavestro GM, Moussa AM, Iori V, Leandro G, Pilotto A, Franzè A. 2003 “Use of lactoferrin for Helicobacter pylori eradication. Preliminary results.” J Clin Gastroenterol. 2003 May-Jun;36(5):396-8.

・Koikawa N, Nagaoka I, Yamaguchi M, Hamano H, Yamauchi K, Sawaki K. 2008 “Preventive effect of lactoferrin intake on anemia in female long distance runners.” Biosci Biotechnol Biochem. 2008 Apr;72(4):931-5.

・Ono T, Morishita S, Fujisaki C, Ohdera M, Murakoshi M, Iida N, Kato H, Miyashita K, Iigo M, Yoshida T, Sugiyama K, Nishino H. 2011 “Effects of pepsin and trypsin on the anti-adipogenic action of lactoferrin against pre-adipocytes derived from rat mesenteric fat.” Br J Nutr. 2011 Jan;105(2):200-11.

・Ono T, Murakoshi M, Suzuki N, Iida N, Ohdera M, Iigo M, Yoshida T, Sugiyama K, Nishino H. 2010 “Potent anti-obesity effect of enteric-coated lactoferrin: decrease in visceral fat accumulation in Japanese men and women with abdominal obesity after 8-week administration of enteric-coated lactoferrin tablets.” Br J Nutr. 2010 Dec;104(11):1688-95.

・Zuccotti GV, Trabattoni D, Morelli M, Borgonovo S, Schneider L, Clerici M. 2009 “Immune modulation by lactoferrin and curcumin in children with recurrent respiratory infections.” J Biol Regul Homeost Agents. 2009 Apr-Jun;23(2):119-23.

・Manzoni P, Rinaldi M, Cattani S, Pugni L, Romeo MG, Messner H, Stolfi I, Decembrino L, Laforgia N, Vagnarelli F, Memo L, Bordignon L, Saia OS, Maule M, Gallo E, Mostert M, Magnani C, Quercia M, Bollani L, Pedicino R, Renzullo L, Betta P, Mosca F, Ferrari F, Magaldi R, Stronati M, Farina D; Italian Task Force for the Study and Prevention of Neonatal Fungal Infections, Italian Society of Neonatology. 2009 “Bovine lactoferrin supplementation for prevention of late-onset sepsis in very low-birth-weight neonates: a randomized trial.” JAMA. 2009 Oct 7;302(13):1421-8.

・Mulder AM, Connellan PA, Oliver CJ, Morris CA, Stevenson LM. 2008 “Bovine lactoferrin supplementation supports immune and antioxidant status in healthy human males.” Nutr Res. 2008 Sep;28(9):583-9.

・Bharadwaj S, Naidu AG, Betageri GV, Prasadarao NV, Naidu AS. 2009 “Milk ribonuclease-enriched lactoferrin induces positive effects on bone turnover markers in postmenopausal women.” Osteoporos Int. 2009 Sep;20(9):1603-11.

・Cornish J, Naot D. 2010 “Lactoferrin as an effector molecule in the skeleton.” Biometals. 2010 Jun;23(3):425-30.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ