L-カルニチン

L-carnitine

L-カルニチンは、エネルギーをつくり出し、体内に溜まりやすい脂肪の燃焼を助けてくれるアミノ酸の一種です。
主に肉類に含まれている成分で、L-カルニチンが体内に豊富にあると、余分な脂肪が燃焼され、太りにくい体をつくることができます。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

基本情報

●基本情報
L-カルニチンは、アミノ酸の一種です。
体内では、必須アミノ酸のリジンメチオニンを材料に、肝臓で合成されます。
体内でたんぱく質の形をとらない、遊離アミノ酸のひとつがL-カルニチンです。

●L-カルニンチンの歴史
L-カルニチンは、1905年、ロシアの研究者によって発見されました。
筋肉中の成分として発見されたため、肉という意味を表すラテン語「carnis(カルニス)」に基づいて「L-カルニチン」と命名されました。
その名のとおり、L-カルニチンは哺乳類の筋肉中に多く含まれています。
人の場合では、成人一人あたり約20gのL-カルニチンが含まれています。骨格筋を中心に、肝臓・腎臓・心臓・脳などに分布しており、エネルギーを生み出す原動力となっています。

●L-カルニチンの心臓に対する働き
L-カルニチンは「脂肪燃焼」という働きから、ダイエット食品の素材として知られています。しかし、L-カルニチンが注目されはじめたのは、心臓に対する働きが明らかになったことがきっかけでした。
心臓の働きが弱り、息切れや動悸がする人にL-カルニチンを摂取させたところ、症状がやわらいだという研究結果を受け、L-カルニチンは各国で心臓病の治療薬として認められるようになりました。
そして、L-カルニチンの心臓に対する働きへの研究が進められるようになり、その中で心臓の筋肉が動くときに必要なエネルギーをつくる際、L-カルニチンが関わっていることが明らかになりました。

●L-カルニチンとスポーツの関係
研究を続ける中で、L-カルニチンは、心臓以外の筋肉が動くためのエネルギーをつくる上でも必要な成分だと仮定され、1980年のモスクワオリンピックで証明されました。 L-カルニチンのサプリメントを摂取したイタリアのチームが、見事に好成績を上げたのです。
この出来事をきっかけに、L-カルニチンがスポーツ選手向けの成分として注目を集めることとなりました。
1990年代に入ると、スポーツ選手の他に、肥満者の運動をサポートする成分としてL-カルニチンが広まり始めました。
そして日本では、医薬品として扱われていたL-カルニチンが2003年に食品として認可され、テレビや雑誌で取り上げられるようになり、徐々に認知度を上げています。

●L-カルニチンの目安量と摂取量
L-カルニチンは、成人1人あたり1日に10㎎程度を体内でつくり出すことができると考えられています。
しかし、L-カルニチンの1日の摂取目安量は最大1000mgとされており、また、一般に年をとるにつれてL-カルニチンの合成能力が衰え、体内のL-カルニチンの量が減少するため食品やサプリメントから補うことが必要となります。

日本人の1日のL-カルニチン平均摂取量は75㎎程度とされていますが、その量は個人によって差が生じます。
国や生活習慣によってL-カルニチンの摂取量には違いがあります。
たとえば、肉を食べる習慣が少ないインドの人々は、1日摂取量が30㎎程度であるのに対し、L-カルニチンを豊富に含む羊の肉をよく食べるオセアニア(オーストラリアやニュージーランド)やモンゴルの人々は、1日300~400㎎ものL-カルニチンを摂取しているといわれています。

●L-カルニチンの不足の問題点
L-カルニチンは、脂肪を燃焼するミトコンドリア[※1]へと脂肪を運び、エネルギーを生み出す上で欠かせない成分です。そのため、不足するとエネルギーが効率良くつくられず、体のだるさや息切れ、疲労感などの症状が現れます。

中高年の人の場合、L-カルニチンは、年齢とともに体内でつくられる量が減少します。体内量が最も多くなるのは20歳代で、その後徐々に減っていき、60歳になると20歳の頃の約60%にまで減ってしまうといわれています。
また、年を取ると若い頃と比べて食事量が減り、和食中心の食事に変わることで、L-カルニチンが多く含まれる肉類を食べる機会も減ってしまいます。このような食生活の変化も、L-カルニチンの摂取量が減ってしまう要因となります。

またダイエット中の人の場合は、どうしても食生活が偏りがちになってしまいます。すると、L-カルニチンやL-カルニチンの材料となるリジンやメチオニンを十分に補うことが難しくなります。
ダイエットのために極端な食事制限をしていると、L-カルニチンの量が不足する可能性があります。

さらに運動量の多いスポーツ選手や趣味でスポーツをする人、仕事で体を動かすことが多い人はより多くのエネルギーを必要とします。その分、L-カルニチンの消費量も多くなるので、不足しがちになります。
以上のような人は、意識してL-カルニチンを摂取することが重要となります。

[※1:ミトコンドリアとは、細胞内の構造のひとつで、生命活動に必要なエネルギーをつくり出す役目を担っています。]

L-カルニチンの効果

●脂肪を燃焼しやすくする効果
L-カルニチンは、脂肪を燃焼するミトコンドリアへと脂肪を運ぶ役割を果たしています。
これにより、脂肪をエネルギーとして利用することができます。
L-カルニチンを十分に補給することによって、体に溜まっている脂肪をエネルギーとして効率良く燃焼することができ、脂肪が付きにくい、つまり太りにくい体をつくることができます。
逆に、L-カルニチンが不足してしまうと、燃焼されずに残った脂肪が蓄積されて、肥満につながる可能性があります。

肥満は外見の変化だけではなく、生活習慣病の引き金にもなります。
余分な脂肪が増えることで、血液中に流れ出たコレステロールや中性脂肪といった脂質が血管を細く・固くしてしまう動脈硬化を引き起こす可能性があります。
動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、高血圧につながります。
また、動脈硬化で細くなった血管には、血栓ができやすくなります。その結果、心筋梗塞[※2]や脳梗塞[※3]などの生活習慣病の発生を招いてしまいます。
これらの病気は命に関わるために、肥満の予防は必要不可欠といえます。
さらに、脂質が内臓に溜まる「内臓脂肪型肥満」も生活習慣病の発生につながるといわれています。おなか周りなどの脂肪が気になる人はもちろんですが、一見肥満には見えない体型でも、実は内臓に脂肪が溜まっている「隠れ肥満」のケースにも当てはまります。
また、肥満者の多くがL-カルニチンをつくる力が低いといわれています。
このような方は、積極的なL-カルニチンの摂取が求められます。【2】【3】【4】

<豆知識>肥満予防の鍵・基礎代謝の向上
このような肥満を防ぐ上で重要となるポイントが、基礎代謝を上げることです。
基礎代謝とは、心臓を動かす・呼吸をするといった生命活動を行うために、最小限必要となるエネルギーのことです。つまり、運動をしていない時にも消費されるエネルギーと言い換えることができます。
基礎代謝が高まると、無理なく健康的に脂肪を燃焼させることができるのです。
さらに、L-カルニチンを補給し、適度な運動を取り入れるとより効率良く脂肪を燃焼させることができます。運動をすると筋肉が増え、基礎代謝を高めることにつながり、肥満予防に効果的です。

●疲労感をやわらげる効果
L-カルニチンを摂取することで、疲労感やだるさをやわらげることができます。
一時的な疲れであれば、体を休めることによって回復することができますが、日常的・慢性的に疲れを感じている人は、L-カルニチンが不足している可能性が考えられます。
エネルギーを生み出す原動力となるL-カルニチンを補うことによって、疲れを回復することにつながります。
【5】【7】【8】

[※2:心筋梗塞とは、心臓を養っている動脈に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]
[※3:脳梗塞とは、脳の血管に血栓ができることによって血管が詰まり、発生する病気です。]

食事やサプリメントから摂取できます

L-カルニチンを含む食品

羊肉、牛肉などの肉類(赤身肉)

こんな方におすすめ

○スリムな体型を目指したい方
○運動をする機会があまりない方
○ついつい食べ過ぎてしまう方
○生活習慣病を予防したい方
○疲労を回復したい方

L-カルニチンの研究情報

【1】6週齢のマウスと6カ月のマウスの筋肉中のL-カルニチン量を比較し、同様にヒトの筋肉中のL-カルニチン量を年齢別に比較したところ、L-カルニチンの合成能力は年齢とともに減少することがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17460185

【2】肥満成人40名(女性30名、男性10名)で食事制限を実施している患者に、食事制限とともにL-カルニチン及びビタミンを8週間摂取させると、L-カルニチン及びビタミンを摂取した患者では、体重が8%減少しており、L-カルニチンに食事制限時における体重減少効果が期待されました。
https://psycnet.apa.org/record/1992-28491-001

【3】肥満者100名(27歳~64歳)で食事制限を実施している患者に、食事制限(1日1200kcal)とともに、L-カルニチン1日3g を4週間摂取させると、体重減少ならびにBMI減少効果があったことから、L-カルニチンに食事制限時における体重減少効果が確認されました。

【4】肥満者12名に、L-カルニチン1日3g を10日間摂取させたところ、呼気中の食事由来二酸化炭素量が6時間後では1.6倍、12時間後では1.3倍に増加したことから、L-カルニチンに脂質燃焼効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15281008

【5】高齢者42名に、L-カルニチンを1日4g、30日間摂取させたところ、総コレステロール、HDL・LDLコレステロール、トリグリセリド値でで改善が認められ、筋肉疲労感及び精神疲労感でも改善が認められ、L-カルニチンの疲労改善効果が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12875611

【6】高脂血症肥満患者22名において、ポリフェノールおよびL-カルニチンを12週間摂取させたところ、血漿の遊離脂肪酸やトリグリセリドの減少が認められました。またヒト白血球細胞のひとつ単核球において、抗酸化酵素関連物質PPARαが活性化されたことから、L-カルニチンに脂肪酸化と血中脂肪酸やトリグリセリドの低下効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21540583

【7】14人の健常成人に30分間のサイクリング運動行ってもらい、その間L-カルニチン 2g を24週間にわたり摂取したところ、筋肉中のピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性が38%高まり、筋肉中カルニチンは16%上昇し、乳酸の量は44%低下したことから、L-カルニチンが運動疲労を軽減する効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21224234

【8】血液透析患者12名の運動時に、L-カルニチン を体重あたり 20mg、8週間摂取させたところ、疲労を感じる時間が22%、運動による乳酸の蓄積が37% 抑制され、また心拍数上昇も抑制されたことから、L-カルニチンは腎臓病患者の運動疲労を軽減する効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20216464

【9】健康妊婦26名では妊娠12週より血中カルニチン濃度が減少しますが、妊娠13週よりL-カルニチンを1日500 mg 摂取させたところ、L-カルニチン濃度の減少が抑制されました。また、妊娠中のL-カルニチン濃度の減少には鉄が関わっていることもわかりました。この結果より、妊娠中のL-カルニチンの減少に対して、L-カルニチン摂取の効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19491916

もっと見る 閉じる

参考文献

・体脂肪を燃やし、運動能力を高めるL-カルニチン / 田島眞 ハート出版

・疲労科学におけるL-カルニチン / 王堂哲 ロンザジャパン株式会社微生物工学受託事業部

・Keller U, van der Wal C, Seliger G, Scheler C, Ropke F, Eder K. 2009 “Carnitine status of pregnant women: effect of carnitine supplementation and correlation between iron status and plasma carnitine concentration.” Eur J Clin Nutr. 2009 Sep;63(9):1098-105.

・Costell M, O’Connor JE, Grisolía S. 1989 “Age-dependent decrease of carnitine content in muscle of mice and humans.” Biochem Biophys Res Commun. 1989 Jun 30;161(3):1135-43.

・Kaats, Gilbert R.; Wise, John A.; Blum, Kenneth; Morin, Robert J. 1992 “The short-term therapeutic efficacy of treating obesity with a plan of improved nutrition and moderate caloric restriction.” Current Therapeutic Research, Vol 51(2), Feb 1992, 261-274.

・Lurtz R. Fischer R. 1998 “Carnitine as supporting agent in weight loss in adiposity.” Medical Journal for natural Therapy, 39, 1(1998) pg 12-15.

・Wutzke KD, Lorenz H. 2004 “The effect of l-carnitine on fat oxidation, protein turnover, and body composition in slightly overweight subjects.” Metabolism. 2004 Aug;53(8):1002-6.

・Pistone G, Marino A, Leotta C, Dell’Arte S, Finocchiaro G, Malaguarnera M. 2003 “Levocarnitine administration in elderly subjects with rapid muscle fatigue: effect on body composition, lipid profile and fatigue.” Drugs Aging. 2003;20(10):761-7.

・Radler U, Stangl H, Lechner S, Lienbacher G, Krepp R, Zeller E, Brachinger M, Eller-Berndl D, Fischer A, Anzur C, Schoerg G, Mascher D, Laschan C, Anderwald C, Lohninger A. 2011 “A combination of (ω-3) polyunsaturated fatty acids, polyphenols and L-carnitine reduces the plasma lipid levels and increases the expression of genes involved in fatty acid oxidation in human peripheral blood mononuclear cells and HepG2 cells. ” Ann Nutr Metab. 2011;58(2):133-40.

・Wall BT, Stephens FB, Constantin-Teodosiu D, Marimuthu K, Macdonald IA, Greenhaff PL. 2011 “Chronic oral ingestion of L-carnitine and carbohydrate increases muscle carnitine content and alters muscle fuel metabolism during exercise in humans.” J Physiol. 2011 Feb 15;589(Pt 4):963-73.

・Fatouros IG, Douroudos I, Panagoutsos S, Pasadakis P, Nikolaidis MG, Chatzinikolaou A, Sovatzidis A, Michailidis Y, Jamurtas AZ, Mandalidis D, Taxildaris K, Vargemezis V. 2010 “Effects of L-carnitine on oxidative stress responses in patients with renal disease.” Med Sci Sports Exerc. 2010 Oct;42(10):1809-18.

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ