クマザサ

Sasa veitchii (Carr.) Rehd.

クマザサは古くから薬草として利用され、様々な薬効が期待されています。特に傷ややけどの民間治療として有名です。他にも、胃腸病、糖尿病、高血圧、ぜんそく、風邪など、古くから万病に効くとして用いられてきました。葉緑素やビタミンを含むため、抗菌作用や免疫力向上の効果があるといわれています。

クマザサとは?

●基本情報
クマザサとは、イネ科ササ属の植物です。栽培されたり、山間部に野生で生息しているササの一種で、草丈は40cm~1mほどです。京都府が原産地だといわれていますが、南は鹿児島県の屋久島から北は北海道の原野まで日本全国に広く自生しています。変異が多く、類似種にコクマザサ、ミヤコザサがあります。

●クマザサの歴史
名前の由来は、葉の縁に白い隈取り[※1]が現れることからつけられたといわれています。日本では、クマザサは古くから人々の生活の様々なシーンに取り入れられ、とても身近な存在として親しまれてきました。クマザサは民間治療薬として、病気や怪我の治療には欠かせない薬草でした。胃腸病、高血圧、ぜんそく、風邪の時にクマザサの煎じ薬を飲んでいたといわれています。日常的には、やけどや切り傷、湿疹にあせも、虫さされ、口臭や体臭を消すことにまで、暮らしに深く浸透していました。
さらに、クマザサは生活の中で広く活用されていました。その昔、クマザサの葉には防腐作用や殺菌効果が高いとされ、山仕事や旅の途中で食べるおにぎりや餅を包むのに重宝されてきました。笹団子、笹あめ、笹寿司、笹酒、チマキなど、クマザサを使った食べ物は、昔からたくさんあります。現代の科学的な研究調査がなされるずっと以前から、昔の人はクマザサの葉に含まれた葉緑素による防腐効果や抗菌効果を認識し、生活に活用していました。
また中国では、クマザサの名前が中国最古の薬物書に漢方薬として登場しているほど、古くから健康を支えていました。

●クマザサに含まれる成分と性質
クマザサは、葉緑素や多糖類[※2]のバンフォリン[※3]、各種ビタミンミネラル類、安息香酸[※4]、カルシウム、リグニン[※5]などが含まれています。特にビタミンは、ビタミンCビタミンKビタミンB₁ビタミンB₂などが豊富に含まれており、体のバランスを正常に保つ役割を果たします。クマザサに含まれる葉緑素には、脱臭効果や抗菌作用があります。また、人間の血液に含まれるヘモグロビン[※6]をサポートし、貧血予防、高血圧予防の効果も期待できます。
バンフォリンという多糖類にも防腐効果があります。安息香酸は、殺菌・解毒作用に効果があるとされ、食品や化粧品の防腐剤として、清涼飲料水、ヘアローション、ヘアトニック、香油などに使用されています。
このように、昔から万能薬として親しまれてきたクマザサの効能は大変幅広いというのが特徴です。

<豆知識>10年に1度花を咲かせるクマザサ
ササの葉は冬場、雪に埋もれていても葉の緑を保つ驚異的な生命力があります。クマザサの葉は、幅が4〜5cmぐらいあり、形は長楕円形で枝先に4片から7片の葉が拳状に広がっています。春の若葉には白い隈取りは無く、葉が越冬する時に葉の縁が枯れて白い隈取りができ、まれに花が咲くことがあります。
クマザサは10年に1度ぐらいの割合で花を咲かせ稲穂のような見事な実を付けます。昔、大凶作に見舞われた農民たちがこのクマザサの実を粉末にし、それを団子にして食することで飢えをしのいだといわれています。

[※1:隈取りとは、歌舞伎で目の周りや頬に施す化粧のことです。]
[※2:多糖類とは、糖質の最小単位である単糖が、多数結合したものです。]
[※3:バンフォリンは、ササ多糖類の一種で免疫力を向上させる効果がある成分のことです。]
[※4:安息香酸とは、香料としてよく用いられる化合物で殺菌・制菌作用があります。]
[※5:リグニンとは、植物の細胞壁を構成する成分のひとつです。]
[※6:ヘモグロビンとは、脊椎動物の赤血球に含まれる物質で、酸素を運搬する働きを持っています。]

クマザサの効果

●胃潰瘍・胃炎などを改善する効果
クマザサに含まれる安息香酸には、殺菌・解毒作用があります。また、胃のピロリ菌や黄色ブドウ球菌などの細菌の発生や増殖を抑制します。 胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃炎などの症状の改善効果が期待できます。【3】

●貧血を予防・改善する効果
クマザサに含まれる葉緑素には、血液中の色素であるヘモグロビンをサポートし、貧血の予防や改善に効果があります。

●動脈硬化を予防する効果
クマザサには解毒効果や消臭作用があり、体内にある余分なものの排出を促す効果があります。
また、クマザサの食物繊維フラボノイドにはコレステロールを吸着する働きがあります。強い抗酸化作用を持ち、DNAを酸化ストレスから守り、免疫力を向上させ病気の発症を予防したり、血中の脂質の状態を正常に保ち、コレステロール値の上昇を抑える効果が知られています。そのため、血栓をつくりにくくし、動脈硬化予防効果もあります。

●血圧の上昇を抑制・安定させる効果
食物繊維であるリグニンや葉緑素がコレステロール値を安定させ、血管を活性化させるため血流が良くなり血圧が下がります。細胞を活性化することにより血圧を安定させ、血圧の上昇をコントロールする効果があります。

●ニキビ・口臭を予防する効果
葉緑素には、体内だけでなく肌表面でも抗菌作用を発揮し、ニキビなどの肌の不調を招くアクネ菌[※7]を抑える効果があります。また口臭予防にも作用します。【2】【3】

[※7:アクネ菌とは、皮膚の毛包内(毛の根っこ部分)に生息する微生物のひとつです。誰でも持っている菌ですが、増殖するとにきびや吹き出物の原因となります。]

クマザサはこんな方におすすめ

○胃腸の健康を保ちたい方
○貧血でお悩みの方
○動脈硬化を予防したい方
○免疫力を向上させたい方
○血圧が高い方
○ニキビを予防したい方
○口臭が気になる方

クマザサの研究情報

【1】クマザサには抗菌作用が知られており、病原体ウィルス(狂犬病ウィルス) に対して1.2%の濃度で狂犬病ウィルスの発育を阻害しました。このことよりクマザサは抗菌作用を有することが示唆されました。これはクマザサに含まれる多糖類の、バンフォリンによるものと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21212504

【2】ヒトの細胞(HRC) に対して、クマザサ抽出物またはクマザサ機能性成分「トリシン」を添加すると、病原菌(ヒトサイトメガロウィルス:HCMV) の発育を抑制し、細胞傷害毒性も抑制される結果が得られました。この結果より、クマザサおよび機能性成分「トリシン」には抗菌作用があることが示唆されました
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19024629

【3】重度の皮膚潰瘍ラットに対して、クマザサ抽出物を投与すると、皮膚細胞の急速な壊死を抑制し、治癒速度が上昇しました。この結果より、クマザサには皮膚に対する保護作用を示すことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18057735

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・貝津好孝 日本の薬草 小学館

・Iwata K, Naito E, Yamashita K, Kakino K, Taharaguchi S, Kimachi Y, Hara M, Takase K. 2010 “Anti pseudorabies virus activity of kumazasa extract.” Biocontrol Sci. 2010 Dec;15(4):123-8.

・Sakai A, Watanabe K, Koketsu M, Akuzawa K, Yamada R, Li Z, Sadanari H, Matsubara K, Muroyama T. 2008 “Anti-human cytomegalovirus activity of constituents from Sasa albo-marginata (Kumazasa in Japan).” Antivir Chem Chemother. 2008;19(3):125-32.

・Hirose K, Onishi H, Sasatsu M, Takeshita K, Kouzuma K, Isowa K, Machida Y. 2007 “In vivo evaluation of Kumazasa extract and chitosan films containing the extract against deep skin ulcer model in rats.” Biol Pharm Bull. 2007 Dec;30(12):2406-11.

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