カバ/カヴァ

kava
カバカバ カワ カワカワ kava pepper
Piper methysticum Forst.

カバはポリネシアの島々に自生するコショウ科の植物です。根の絞り汁を古来より南太平洋諸島の先住民がアルコールの代わりに飲用していました。飲用すると不安を和らげるなどの効果があるといわれていますが、健康への安全性の問題から日本ではサプリメントや食品として販売することはできません。現時点で、日本で医薬品として承認許可された製品はなく、監視取締の対象となっています。

カバとは?

●基本情報
カバとはポリネシアの島々に自生するコショウ科の熱帯植物です。高さ3~7mの低木で太い根茎と多肉質の茎をしており、黄緑色の花をつけます。葉は緑のハート形をしています。カバはコショウ科の植物の中でフラボン[※1]やカルコン[※2]が単離[※3]された唯一の植物だといわれています。

●カバの歴史
カバの根のしぼり汁は、南太平洋諸島の先住民の儀式や社交の場でアルコールの代わりに使われていました。このしぼり汁はカバの根を練りつぶして水やココナッツミルクを加えてつくったものです。飲むと口の中が麻痺し、徐々に気分が良くなり平穏状態になります。18世紀後半にジェームス・クックという探検家がカバを世界に紹介したことからその活性について研究が始まりました。19世紀後半になると、薬理学者のルイス・レビンによってカバの成分と薬理についての研究が発表されました。その後、カバの飲料は中枢神経をリラックスさせるという働きから欧米で普及し、不安や不眠の緩和に利用されてきました。

●カバに含まれる成分と性質
カバには有効成分のカバラクトンが含まれています。カバラクトンは催眠、筋肉の緊張を緩める働きなどがあります。他にもメチスチシン、ヤンゴニンなどのカバピロンを含んでいます。

●カバを摂取する際の注意点
2001年にカバの乱用による肝臓への障害が報告されてからヨーロッパ、アメリカ、日本で食品やサプリメントとしての販売禁止もしくは未認可とされており、医薬品成分として扱われています。また、内因性うつ病患者、妊婦、授乳婦は禁忌とされています。
日本では、全草が「専ら医薬品成分として使用される成分本質(原材料)」に区分され、健康食品として販売することはできません。現時点で、日本で医薬品として承認許可された製品はなく、監視取締の対象となっています。

[※1:フラボンとは、フラボノイドに属する植物色素のことです。]
[※2:カルコンとは、ポリフェノール・フラボノイドに分類される栄養成分のことです。]
[※3:単離とは、様々なものが混合している状態から、特定の要素のみを取り出すことです。]

カバの効果

●精神を安定させる効果
カバには精神を安定させる効果があります。カバに含まれるカバラクトンが不安を低下させると考えられています。しかし効果が見られるまでには最大で8週間の投与が必要となります。不安や緊張を訴える58名の患者を対象とした臨床試験ではカバ抽出物を投与した後4週間までに不安感が消失したという報告がされています。また、筋肉の緊張も和らげるので、肩こりや緊張性の腹痛、胃痛、ストレスが原因の腸の痛み、胃の痙攣、生理痛にも効果的です。【1】【3】

●更年期障害の症状を改善する効果
カバには更年期障害[※4]による不安を訴える女性に対しても効果が期待できます。
更年期障害とは閉経後の女性に見られる自律神経失調症[※5]の一種です。閉経後、卵巣の機能低下によりホルモンバランスが乱れるためイライラや精神的な不安を感じたり、感情の起伏が激しくなるといった症状が見られます。更年期障害は薬だけでなく毎日の食事や運動から予防することができます。更年期に起こりがちなイライラや不安などの精神的な症状をやわらげるには、たんぱく質ビタミンミネラルのそろったバランスのとれた食事が効果的です。また、女性ホルモン様の作用を持つイソフラボンの摂取も有効です。これらの成分には、神経伝達や免疫機能を強化する働きがあります。また、更年期は、基礎代謝が減少し、運動不足も重なり太りやすくなります。適度な運動をすることでリフレッシュ効果も得られます。

●ストレスをやわらげる効果
カバに含まれるカバラクトンにはストレスをやわらげる効果もあります。
人はストレスを受けるとそれを防御しようと自律神経系や内分泌系、免疫系によってコントロールされながら体内環境を一定に保とうとする力が働きます。ところが、ストレス状態が続くとストレスに抵抗する力が弱まり、正常に保てなくなり、体調不良などを起こしてしまいます。ストレスの多い生活では食生活が不規則になり、十分な休息をとれないといった状況になりがちです。一日三食栄養バランスのよい食事をとり、適度な睡眠をとるように心がけましょう。【2】

[※4:更年期障害とは、40歳代から60歳代の女性に起こりやすい症状です。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、動悸、ほてり、イライラなどの症状が現れます。]
[※5:自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経の2つから成り立つ自律神経のバランスが崩れた場合に起こる頭痛や冷え症、疲労感などの症状の総称です。]

カバの研究情報

【1】カバエキスを使った3つの二重盲検無作為割付比較試験をメタ解析した結果、4週間から25週間のカバエキス (100 mg×3回/日) 摂取は不安評価尺度を有意に低下させ、プラセボと比べ不安の対症療法に有効であることが報告されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10653213

【2】カバの茎から抽出した桂皮酸、ピノストロビン等5種類の化合物によってストレス等が原因で誘発されるシクロオキシゲナーゼの活性を抑制することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11829631

【3】101名の不安神経症の外来患者 (ドイツ) に25週間カバエキスを投与したところ、投与後8週目までに症状の改善効果が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9065962

参考文献

・石原茂正 編 機能性ハーブの生理活性 株式会社常磐植物化学研究所

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏
健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・北川勲 吉川雅之 食品薬品ハンドブック

・中村丁次 栄養の基本がわかる図解辞典 成美堂出版

・井上正子 栄養学と食のきほん事典 西東社

・独立行政法人国立栄養研究所 “「健康食品」の安全性・有効性情報 「健康食品」の素材情報データベース”

・Pittler MH, Ernst E. (2000) “Efficacy of kava extract for treating anxiety: systematic review and meta-analysis” J Clin Psychopharmacol. 2000 Feb;20(1):84-9.

・Wu D, Nair MG, DeWitt DL. (2002) “Novel compounds from Piper methysticum Forst (Kava Kava) roots and their effect on cyclooxygenase enzyme.” J Agric Food Chem. 2002 Feb 13;50(4):701-5.

・Volz HP, Kieser M. (1997) “Kava-kava extract WS 1490 versus placebo in anxiety disorders–a randomized placebo-controlled 25-week outpatient trial.” Pharmacopsychiatry. 1997 Jan;30(1):1-5.

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