ガセリ菌とは
●基本情報
ガセリ菌は、正式名称をラクトバチルス・ガセリという乳酸菌の一種で、酸素の有無にかかわらず育つ通性嫌気性菌です。
人間の腸内に多く存在し、ビフィズス菌と並び悪玉菌を抑え、腸内環境を整える善玉菌の代表です。ガセリ菌を含有した乳製品がプロバイオティクス[※1]食品として販売されています。
ガセリ菌の中でも、「ラクトバチルス・ガセリSBT2055」という菌株[※2]が様々な働きを持つと言われており、研究がすすめられています。
ラクトバチルス・ガセリSBT2055は今多くの方に注目されている乳酸菌です。乳酸菌は、腸内環境を整えて腸の健康を保ってくれるとして有名です。今も継続的に乳酸菌に対する研究が行われていて、現在でもたくさんの乳酸菌が発見されています。中でもラクトバチルス・ガセリSBT2055は、日本人の腸内から検出されることが非常に多い善玉菌で、腸にしっかり定着する時間が長いということで知られています。
[※1:プロバイオティクスとは、体にとって有益なビフィズス菌やラブレ菌などの乳酸菌を摂取することをいいます。プロバイオティクスの作用は、腸内環境の改善や免疫力の向上、アレルギーの抑制など多岐にわたります。]
[※2:菌株とは、細菌の最小単位を指します。微生物の単一種が一定量まとまって生育している状態です。]
ガセリ菌の効果
●腸内環境を整える効果
乳酸菌は腸内の環境を整える効果があるとされています。
腸内には乳酸菌などの善玉菌と悪玉菌が存在していますが、悪玉菌は酸に弱い性質を持つため乳酸菌がつくり出す乳酸によって死んでしまいます。
腸内で悪玉菌が増殖すると、毒素が悪玉菌によってつくられます。
その毒素は腸に直接的にダメージを与えるため、便秘や下痢、また大腸ガンなどの病気の原因にもなるといわれています。腸は善玉菌が優位にいる場合、酸性を保っていますが、食生活やストレスなどの影響によって悪玉菌が優勢になるとアルカリ性になります。
乳酸菌は、腸内で乳酸をつくり出し酸性に保つ働きがあるため、腸内環境を整える効果があります。
しかし、乳酸菌は食品で摂取しても胃酸や胆汁酸により死滅してしまうといわれていました。
近年は様々な乳酸菌が発見されており、その中には強く、大腸まで届く種類も確認されています。しかし大腸に届くというだけで、長くとどまることはできませんでした。
ラクトバチルス・ガセリSBT2055は腸に長い時間定着することができ、しっかり働くことができます。
行なわれた研究では、最大約90日間もの間、ラクトバチルス・ガセリSBT2055が腸内に定着していたことが証明されています。
このことより、ラクトバチルス・ガセリSBT2055を摂取することは腸内環境を良くするといえます。【1】【3】
●免疫力を高める効果
ガセリ菌を経口投与したマウスと、ガセリ菌を投与しなかったマウスにインフルエンザウイルスを感染させました。その結果、ガセリ菌を投与したマウスでは、投与しなかったマウスに比べてNK細胞などの免疫細胞が強化され、ウイルスが感染した後の生存率が有意に高くなりました。
さらに、インフルエンザウイルス感染で起こった肺の過剰な炎症状態が軽減化され、マウスの感染後致死率が低下する可能性があることが分かりました。
これらの結果から、ガセリ菌は経口摂取後に、腸管から離れた組織である肺の免疫機能を調節することで、インフルエンザウイルスに対する生体防御機能を高めることが予想されるといえます。
●ダイエット効果
ガセリ菌のダイエット効果は、臨床実験によりダイエット効果が証明されています。
肥満傾向の33歳から36歳の男女に1日200gの乳酸菌EPS配合のヨーグルトを食べてもらいました。12週間ヨーグルトを摂取した結果、ウエストが-1.9%、体重が-1.4%、皮下脂肪が-3.3%、内臓脂肪は面積にして-4.5%という効果がありました。
この結果により、ガセリ菌を摂取することにより、ダイエット効果が期待できると考えられます。【2】
ガセリ菌は食事やサプリメントで摂取できます
ガセリ菌を含む食品
○ヨーグルト
こんな方におすすめ
○腸内環境を整えたい方
○免疫力を向上させたい方
○肥満を防ぎたい方
ガセリ菌の研究情報
【1】ガセリ菌SP株を7日間摂取後、90日が経過しても半数の人の糞便からガセリ菌SP株の生菌が検出されました。ガセリ菌はヒト腸管内で安定し、腸内環境保護に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11298228
【2】肥満傾向にある人がガセリ菌SP株を12週間摂取した結果、内臓脂肪量が有意に減少し、皮下脂肪面積、体重、BMI、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径も減少したことがわかりました。ガセリ菌には、内臓脂肪低減効果ならびに生活習慣病予防効果が期待されています。
http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200902238067057498
【3】10名の萎縮型胃炎患者23名を対象に、ガセリ菌(ADH株)を摂取させたところ、糞便中の細菌酵素活性は減少したことが分かりました。ガセリ菌は腸管の代謝を良くする働きがあることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7840074
【4】ヘリコバクターピロリ菌感染者229名を対象に、ラベプラゾール、アモキシリン、クラリスロマイシンの3種薬剤に加えて、ガセリ菌入りのヨーグルトを1日あたり112g の量で4週間飲用した結果、ピロリ菌の根絶率が高かったことから、ガセリ菌はピロリ菌駆除および胃潰瘍予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22098133
参考文献
・Fujiwara S, Seto Y, Kimura A, Hashiba H. (2001) “Establishment of orally-administered Lactobacillus gasseri SBT2055SR in the gastrointestinal tract of humans and its influence on intestinal microflora and metabolism.” J Appl Microbiol. 2001 Mar;90(3):343-52.
・小川哲弘、門岡幸男、生山健、岡野雅子、赤井義仁、佐藤匡央、今泉勝己、土田隆 (2009) “Lactobacillus gasseri SBT2055(ガセリ菌SP株)含有発酵乳の摂取による内臓脂肪低減効果のヒト臨床試験による検証” 日本乳酸菌学会誌 Vol.20, No.2, Page67 (2009.06.30)
・Pedrosa MC, Golner BB, Goldin BR, Barakat S, Dallal GE, Russell RM. (1995) “Survival of yogurt-containing organisms and Lactobacillus gasseri (ADH) and their effect on bacterial enzyme activity in the gastrointestinal tract of healthy and hypochlorhydric elderly subjects.” Am J Clin Nutr. 1995 Feb;61(2):353-9.