クエン酸

Citric acid

クエン酸とは、酢や柑橘類に含まれる酸味成分の一種です。人間が生きていく上で重要なエネルギーをつくり出すために必要不可欠な成分です。
また、乳酸の生成を抑制し、疲労回復にも効果があるとしてクエン酸を多く含む食品は古くから親しまれています。

クエン酸とは

●基本情報
クエン酸とは、レモンなどの柑橘類に含まれる酸味成分の一種で、古くより疲労回復に良いとして親しまれてきました。漢字では「枸櫞酸」と書きますが、枸櫞とは中国産のレモンの一種を指します。レモンをはじめ柑橘類に多く含まれていることからこの名前がついたといわれています。
クエン酸は、人間を含めた動物に広く分布する有機酸[※1]で、ジュースやゼリーなどの酸味料やpH調整剤[※2]、酸化防止剤などとして利用されています。
クエン酸は人間の体内において、摂取した食べ物をエネルギーに変えるために欠かせない成分です。エネルギーとは、人間が生きていく上で必要不可欠であり、エネルギーをつくり出すことができなければ、生きていくことができません。このエネルギーをつくり出す仕組みをクエン酸回路(TCAサイクル)と呼びます。

クエン酸回路は、細胞内のミトコンドリア[※3]で行われます。三大栄養素である炭水化物(糖質)、脂質たんぱく質の代謝[※4]の要ともいえる代謝経路です。摂取した食べ物の栄養素が体内に吸収され、酵素やビタミンによって分解される過程でエネルギーがつくられる仕組みのことをいいます。クエン酸は、クエン酸回路の中で着火剤のような役割を担っています。

●クエン酸の歴史
クエン酸は1784年にスウェーデンの科学者シェーレによってレモン果汁より発見されましたが、その健康効果は発見されるはるか以前から人々に注目されていたといわれています。
紀元前460~377年の古代ギリシャでは、医者のヒポクラテスがお酢の力に注目し、様々な病気の治療に利用していたという記録が残っています。また、日本で初めて食用のお酢がつくられるようになったのは、4世紀前半頃からだといわれており、7世紀初めの聖徳太子の時代には、自然食品として、お酢をつくる官職が置かれていたほど貴重なものとして扱われていました。
その後、1953年にイギリスの生化学者H.A.クレブス[※5]によってクエン酸回路というエネルギーをつくり出すシステムが発見されました。クレブス博士はこの功績からノーベル医学生理学賞を受賞しています。

●クエン酸の体内での働き
クエン酸は、体内では細胞内のミトコンドリアで行われるクエン酸回路の構成成分で、エネルギーをつくり出すための中心的役割をするほか、疲労物質である乳酸を分解することにより、疲労回復や筋肉痛の軽減に効果的と言われています。
また、その酸味により食欲を増進させる効果もあるとして、夏バテ防止などにも役立っています。その他、ミネラルの吸収を促進、肝臓の機能改善、肝臓病にも良いとされています。
また、クエン酸単体で摂るよりも、エネルギーをつくり出すために必要なビタミンB群と一緒に摂るとより効果的だといわれています。

<豆知識>掃除に使えるクエン酸
クエン酸は、酸性の成分のため、アルカリ性の汚れ落としに最適とされています。食品などに含まれている成分なので、体に害を及ぼすこともなく、安心して掃除道具として使用することができるとして古くから使用されてきました。
主な効用としては、手あかや水あかの汚れを落とす洗浄効果、アンモニア臭などの強烈なアルカリ性を中和することによる消臭効果、衣服の黄ばみ防止などがあります。
こうした効果が期待され、市販されている洗剤などにもクエン酸が配合された商品が多く販売されています。

[※1:有機酸とは、酸の性質を持つ有機化合物の総称です。]
[※2:pH調整剤とは、食品添加物の一つで、食品における酸性やアルカリ性度合いを調整するものです。]
[※3:ミトコンドリアとは、細胞内の構造のひとつで、生命活動に必要なエネルギーを作り出す役目を担っています。]
[※4:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
[※5:H.A.クレブスとは、ドイツ・ヒルデスハイム出身の生化学者であり医師です。1932年には尿素回路を発見しました。]

クエン酸の効果

●エネルギー産生効果
クエン酸は、細胞のミトコンドリア内でクエン酸回路というエネルギー代謝経路の中心として働きます。
エネルギーとは、人間が生きていく上で非常に重要で、必要不可欠なものです。
人間の体は、約60兆個の細胞からできており、そのひとつひとつの細胞で、クエン酸回路を正常に行うために、クエン酸は非常に重要な役割を持つ成分です。
クエン酸は、このクエン酸回路の中で最初に生成される酸であるため、体内で不足することはほとんどありませんが、不規則な食生活などによって、クエン酸回路の働きが鈍くなってしまうことがあります。クエン酸回路の働きが鈍くなると、エネルギーがうまくつくり出せない状態となるため、摂取した糖や脂質、たんぱく質が燃焼されなくなり、いわゆる代謝が悪いという状態になってしまいます。クエン酸を外から摂取することによって、クエン酸回路が活性化され、代謝が向上されることでエネルギーを効率良くつくり出す効果があります。【6】

●ダイエット効果
クエン酸には、三大栄養素の代謝経路であるクエン酸回路を活性化させる働きがあります。
クエン酸を摂取することで、クエン酸回路が活性化し代謝の向上にもつながることから、ダイエットにも効果的といわれています。

●疲労回復効果
クエン酸は、疲労回復にも効果があるといわれています。
疲労が溜まると、普段弱アルカリ性の人間の体は酸性に傾きます。これは、体内のクエン酸回路がうまくまわらなかったことにより、ブドウ糖が分解されたあとの残りカスのようなものである焦性ブドウ糖や乳酸が体内に多く溜まっている状態といえます。
クエン酸回路を活性化させることで、それらの有害物質が減少されると考えられており、疲労回復に効果的だといわれています。【7】

●筋肉痛を防止する効果
筋肉痛の原因は疲労物質である乳酸だといわれています。
体内でエネルギーを生み出す際、ブドウ糖が必要となりますが、このブドウ糖が完全に燃焼されなかった場合、いわば燃えカスのようなものである焦性ブドウ糖ができます。これが筋肉に蓄積されると一部が乳酸に変化してしまいます。これが筋肉痛の原因といわれています。
クエン酸は、クエン酸回路を活性化させ、焦性ブドウ糖を分解するため、乳酸の生成を抑制する効果があります。このことから、運動時にクエン酸を摂取することで筋肉痛を防止する効果があるといえます。

●ミネラルの吸収を促進する効果
現代人に不足しがちなカルシウムなどのミネラルは、単体では吸収されにくいものであるといわれています。
しかし、クエン酸と一緒に摂ることで、クエン酸がミネラルを包み込んで結合し、その吸収を助ける働きがあるため、ミネラルの吸収促進効果があるといわれています。
これをキレート効果と呼んでいます。キレートとはギリシャ語で「カニのはさみ」という意味を持ちます。クエン酸がミネラルをカニのはさみのように包み込むことから、この名前がついたといわれています。
この効果から、ミネラルを摂取するためのサプリメントにはクエン酸が配合されたものが多く販売されています。【2】【3】

●痛風に対する効果
クエン酸は痛風に対して効果的だといわれています。
痛風とは、指先などの末端に尿酸[※6]が蓄積されることによって風が吹いても痛みを感じることからこの名前がつけられました。痛風の原因は、代謝異常による尿酸の蓄積にあります。痛風の原因物質である尿酸は、普段は尿と一緒に体外へ排泄されますが、代謝異常が起こると尿中に溶け込まず体内に残ってしまいます。それによって尿酸値が高まり、末端に痛風の症状が現れるのです。
尿酸は尿が弱酸性であると、尿の中に溶け込みやすくなるため体外へスムーズに排泄されます。クエン酸は、強酸性の尿を弱酸性に変える働きがあることから、痛風に効果的だといわれています。

●食欲を増進させる効果
クエン酸は、その酸味により唾液や胃液の分泌を促し、食欲を増進させる効果があります。

●肝臓病の改善効果
クエン酸には、肝臓の機能を改善し、肝臓病を予防する効果があるといわれています。

[※6:尿酸とは、プリン体という物質で、体内の細胞の老廃物です。通常は代謝の経路で腎臓から尿と共に一定量排泄されます。]

クエン酸は食事やサプリメントで摂取できます

クエン酸を多く含む食品

○酢(黒酢・香酢・もろみ酢)
○柑橘類(レモン・みかんなど)
○梅干し

こんな方におすすめ

○疲れやすい方
○スリムな体型を目指したい方
○スポーツをする方
○痛風の方
○食欲不振の方
○肝臓の健康を保ちたい方

クエン酸の研究情報

【1】クエン酸経口投与による肺高血圧の影響について心電図を活用して調べました。肺高血圧症のブロイラーに45日間クエン酸を投与した結果、非投与群と比較して、45日目でS波の振幅が減少し、また28日目および36日目でT波の減少が認められました。さらにQRS間隔は投与後、28日目、45日目で増加し、RR間隔は45日で延長しました。このことにより、クエン酸の摂取は肺高血圧症が誘発する心臓の悪化を抑制できる可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19584036

【2】42名健常人に対して鉄吸収能を調べました。クエン酸を飲用しなかった時よりもクエン酸を与えた時の方が、鉄の吸収を3.9%から54%までに高めることがわかりました。このことから、特に幼児期における鉄の摂取では、クエン酸を加えることが大切であると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17225920

【3】マグネシウム(Mg)‐アミノ酸キレート、Mg‐クエン酸キレート、酸化マグネシウムの吸収について比較しました。46名の健常人を3群にわけ、それぞれ300mg/日を60日間投与しました。尿および血液を調べた結果、Mg‐クエン酸キレート投与群が最も多くのMgを吸収したことがわかりました。このことから、クエン酸はMgの吸収を高め、高い生体利用率を示すことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14596323

【4】13名(45例)の6mm以上の歯骨陥没に対して、クエン酸治療または非酸処理治療を行いました。その結果、歯骨密度は非酸処置で0.8-0.9mmであり、クエン酸治療では1.2-1.3mmで、クエン酸処理治療の成果が認められました。これらの結果から、クエン酸処理による歯骨の治療について臨床的意義が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6949919

【5】α-ヒドロキシ酸 (クエン酸、リンゴ酸などを含めた物質の総称) は、肌をなめらかに保つ働き、およびニキビに対して有効である可能性が考えられています。

【6】17名男性大学生ランナーに5kmを走る2時間前にクエン酸塩(0.5kg/body mass)またはプラセボを投与しました。プラセボ群に比べ、クエン酸塩投与群は、5km走のタイムがプラセボ群と比べて有意に縮まっていました(クエン酸塩投与群:1153.2秒、プラセボ群:1183.8秒)。このことから0.5kg/body massのクエン酸塩の摂取は、短時間での運動のパフォーマンスを向上させることができると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14665584

【7】8名の被験者に対してクエン酸塩(0.4/kg boddy mass)またはプラセボを経口で摂取させました。両摂取群において、低圧・低酸素の状況下(463mmHg、61.7kPa)および通常の気圧での状況下(740mmHg、98.7kPa)で屈伸運動(等尺運動)を行いました。クエン酸投与群は通常時で筋持久力の増加、血中のpHおよび重炭酸塩の増加が認められました。このことから、通常の状況下では、等尺運動を増加させることが期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8549581

【8】健康な成人男性6名に対し、45分間、自転車エルゴメーターを用いて運動負荷をかけました。運動負荷直後、クエン酸-グルコース投与、レモン果汁‐グルコース投与、またはグルコースのみ(プラセボ群)を投与しました。その後、20分、40分、60分後の血中の乳酸値を測定しました。その結果、クエン酸‐グルコース投与群、レモン果汁‐グルコース投与群はプラセボ群と比較して、運動後60分の時点で血中乳酸値を有意に低下させました。このことから、クエン酸の運動直後の摂取は、筋疲労を和らげる働きがあると考えられました。
http://www.vic-japan.gr.jp/vicJ/no.104/No104.pdf

【9】30~43歳の健康な男女13名にレモン果汁を摂取させ、摂取前、および摂取後の血小板凝集、血流時間を調べました。さらにどの成分(クエン酸、ビタミンC、エリオシトリン)が血流の流動性に作用するかについて調べました(in vitro)。その結果、摂取後、13名中11名の血流時間が短縮しました。また、摂取前、血小板凝集塊があった被験者においても摂取後、改善されました。また、各成分を調べた結果、クエン酸が最も血液流動性の改善作用が強いことがわかりました。
http://www.vic-japan.gr.jp/vicJ/no.104/No104.pdf

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参考文献

・下村吉治 (2001) “(VICニュースレター) クエン酸もしくはレモン果汁摂取による運動後の血中乳酸消去の促進” ビタミン広報センター

・クエン酸と血流改善について (2001) “(VICニュースレター) クエン酸と血流改善について” ビタミン広報センター

・Hassanpour H, Moghaddam AK, Zarei H. (2009) “Effect of citric acid on electrocardiographic parameters of broiler chickens with pulmonary hypertension.” Acta Vet Hung. 2009 Jun;57(2):229-38.

・Zhang H, Onning G, Oste R, Gramatkovski E, Hulthén L. (2007) “Improved iron bioavailability in an oat-based beverage:the combined effect of citric acid addition, dephytinization and iron supplementation.” Eur J Nutr. 2007 Mar;46(2):95-102.

・Walker AF, Marakis G, Christie S, Byng M. (2003) “Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study.” Magnes Res. 2003 Sep;16(3):183-91.

・Renvert S, Egelberg J. (1981) “Healing after treatment of periodontal intraosseous defects.II.Effect of citric acid conditioning of the root surface.” J Clin Periodontol. 1981 Dec;8(6):459-73.

・V Oöpik, I Saaremets, L Medijainen, K Karelson, T Janson, S Timpmann (2003) “Effects of sodium citrate ingestion before exercise on endurance performance in well trained college runners” Br J Sports Med 2003;37:485-489 doi:10.1136/bjsm.37.6.485

・Hausswirth C, Bigard AX, Lepers R, Berthelot M, Guezennec CY. (1995) “Sodium citrate ingestion and muscle performance in acute hypobaric hypoxia.” Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1995;71(4):362-8.

・中村丁次 (2001) “からだに効く栄養成分バイブル” 株式会社 主婦と生活社

・原山建郎、久郷晴彦 (2004) “最新・最強のサプリメント大事典” 株式会社 昭文社

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