ひよこ豆とは
●基本情報
ひよこ豆は、マメ科ヒヨコマメ属の一種であり、ゴツゴツとしたいびつな形状をしている豆です。
へその部分に突起を持つことがひよこ豆の特徴であり、豆の皮の色は肌色、濃い褐色、緑色、豆の内部の色は肌色、黄色、花の色は白色、薄紫色をしています。
ひよこの頭のような形をしていることからひよこ豆と呼ばれています。英語では「Chickpea」、中国語では「鶏児豆」や「鷲嘴豆」であり、豆の突起を鳥のくちばしに見立てて命名されたといわれています。
ただし、英語名である「Chickpea」は、ひよこ豆を表すラテン語「Cicer」を語源とするフランス語の「Chiche」が導入されたのち、「Chick」になまって変化したため、ひよこ豆の形がヒヨコに似ているという特徴は後付けされたものだといわれています。
また、学名である「arietinum」には、「角のある」「雄羊のような」という意味があり豆の形が羊の頭に似ていることから命名されたという由来があります。
スペイン語では「Garbanzo」と呼ばれ、日本のひよこ豆の主な輸入先がメキシコであるためこの呼び名が広く知られています。
また、「エジプト豆」という別名は、ひよこ豆だけではなくそら豆、ふじ豆、えんどう豆など、他の種類の豆を意味することもあります。
ひよこ豆は、硬めの食感やナッツのような香りが特徴であり、ヨーロッパやアフリカの地中海沿岸諸国では、主に大粒種である「カブリ」が食されており、サラダやスープ、シチューなどの料理に利用されています。
トルコやエジプトをはじめとする中東諸国では、ひよこ豆をペースト状に加工した「フムス」や、ゆでたひよこ豆を潰し、丸めて油で揚げた「ファラフェル」など、その地特有の調理法が見られます。
インドをはじめとする南西アジア諸国では、小粒種のひよこ豆である「デジ」が多く利用されています。
生産されているひよこ豆の大部分が、皮をむき、半割り加工された「ダール」として流通しています。
ダールは、茹でてそのまま食されるほか、潰して香辛料で味付けをするといった調理法も見られます。その他、ひよこ豆と野菜を煮込み、香辛料を加えた「サンバール」というスープや、ひよこ豆を米と一緒に炊き、塩や香辛料で味付けをした「キクリ」など、様々な料理に利用されています。
また、ひよこ豆を粉状にした「ベサン」は、「パコラ」という揚げ物料理の衣や菓子類にも用いられるほか、小麦粉と混ぜてパンの生地にも利用されています。未熟のさや、豆、もやしなどが野菜として利用されることもあります。
●ひよこ豆の歴史
ひよこ豆の原産地は西アジアだと考えられています。トルコやヨルダンなどでは、紀元約5000年前の遺跡からひよこ豆が発見されています。
また、エジプトでは、紀元前約1100~1600前のパピルス[※1]にひよこ豆についての記述が見られます。
インドでは、紀元前800年以上前からひよこ豆が存在していたという説と、紀元前100~400年前にひよこ豆が伝わったという2つの説があります。
●ひよこ豆の産地
ひよこ豆は、地中海の沿岸部や中東部、北米などで広く栽培されている「カブリ」と、インドや南西アジアを中心に分布している「デジ」の2種類があります。
「カブリ」は、アフガニスタンからインドに輸入したひよこ豆の種類であり、その名前はアフガニスタンの首都である「カブール」に由来しています。種子の直径は約10~13mmです。
「デジ」は、ヒンディー語で「その土地の」という意味を持つ言葉に由来し、種子の直径は7~10mmと、カブリより少し小ぶりなひよこ豆の種類です。外来種であるカブリと、在来種であるデジと区別されています。
ひよこ豆は、日本国内での生産はほとんど行われていません。国内で流通しているひよこ豆のほとんどが大粒の品種であり、主な輸入先はメキシコ、アメリカ、カナダです。
現在、最もひよこ豆の栽培・消費が多い国はインドであり、世界のひよこ豆の総生産量のうち約70%にあたる500~600万tをインドが占めているともいわれています。
ひよこ豆は日本ではあまりなじみのない豆でしたが、近年輸入量も増加しており、缶詰をはじめとする加工品も見られるようになり、カレーやスープ、サラダの食材として利用されています。
●ひよこ豆に含まれる成分と性質
ひよこ豆には、食物繊維やビタミンB群、ミネラル類が豊富に含まれています。
食物繊維の働きは、消化・吸収されずに腸まで移動し、便のかさを増やして腸を内側から刺激しすることです。そのため腸のぜん動運動[※2]を活発にさせることができます。また、食物繊維は腸内で水分を吸収しながら同時に体内の有害物質も吸着して排泄してくれる働きがあります。
ミネラルは体の組織をつくる原料ともいえる栄養素です。新しい細胞をつくる酵素や、体内の代謝[※3]時に働き酵素がうまく働けるように調整する働きを持っているほか、骨や歯、血液をつくる原料にもなります。丈夫な体作りに欠かせない栄養素です。
[※1:パピルスとは、古代エジプト時代にカミガヤツリという植物の茎の繊維でつくられた紙の一種です。書写材料として、紀元前2000年頃から紀元後数世紀に使用されました。]
[※2:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]
[※3:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
ひよこ豆の効果
●便秘を解消する効果
ひよこ豆に含まれる食物繊維は、腸のぜん動運動を活発化させることにより、便秘を解消する効果があります。また、余分な栄養やコレステロールを吸着して排泄してくれるので、糖尿病や動脈硬化などの予防にもつながります。
●むくみを予防・改善する効果
ひよこ豆には、ミネラルの一種であり、体内の水分の流れを調節するカリウムが含まれているため、むくみの予防効果が期待できます。
●丈夫な骨をつくる効果
ひよこ豆には、骨を丈夫にしたり、筋肉をスムーズに動かすために欠かせないカルシウムやマグネシウムが含まれています。【1】
●成長を促進する効果
ひよこ豆に含まれる亜鉛には、細胞の生まれ変わりを助ける働きがあります。 このような働きを持つ亜鉛は、体の成長や皮膚の炎症、傷の回復を助ける効果が期待されています。
ひよこ豆はこんな方におすすめ
○腸内環境を整えたい方
○便秘でお悩みの方
○むくみが気になる方
○骨を強くしたい方
○成長期のお子様
ひよこ豆の研究情報
【1】卵巣摘出ラットを対象に、ひよこ豆抽出物を1日あたり150mg の量で5週間摂取させたところ、更年期障害による骨量減少などの骨粗しょう症が緩和されたことから、ひよこ豆は更年期障害、それに伴う骨粗しょう症予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23334239
【2】ひよこ豆とレンティルの食事との摂取することにより、食後の血糖値の上昇が抑制されたことから、ひよこ豆は糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21957874
参考文献
・蔵敏則 著 食材図典 小学館
・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社
・Ma HR, Wang J, Qi HX, Gao YH, Pang LJ, Yang Y, Wang ZH, Duan MJ, Chen H, Cao X, Aisa HA. (2013) “Assessment of the estrogenic activities of chickpea (Cicer arietinum L) sprout isoflavone extract in ovariectomized rats.” Acta Pharmacol Sin. 2013 Mar;34(3):380-6.
・Mollard RC, Wong CL, Luhovyy BL, Anderson GH. (2011) “First and second meal effects of pulses on blood glucose, appetite, and food intake at a later meal.” Appl Physiol Nutr Metab. 2011 Oct;36(5):634-42.