キャベツとは?
●基本情報
キャベツはアブラナ科アブラナ属に属しています。
原産地はヨーロッパです。ヨーロッパ西部や南部の海岸地帯原産の植物から生まれました。祖先となった植物は、ブロッコリーやケールなどと同一のものであるといわれています。
●キャベツの名前の由来
「キャベツ」の名前は、英名の“cabbage”からきています。さらにその語源は、フランス語の“caboche(頭でっかち)”、ラテン語の“caput(頭)”です。
また別名の“甘藍(かんらん)”は中国語名から名づけられており、日本では昭和20年頃まで一般的にこう呼ばれていました。和名の“玉菜(たまな)”はキャベツの丸い形状から名づけられました。
●キャベツの歴史
世界最古の野菜のひとつであるキャベツは、紀元前6世紀頃、地中海に侵入したケトル人によって栽培が開始されました。当初は、現在のような丸い形ではなく、ケールのように結球していない形のものでした。これをケトル人がヨーロッパに広めていく中で、現在のような丸い形になったといわれています。13世紀には、イギリスで丸い形のキャベツが記録に残されています。
16世紀にはカナダ、17世紀にはアメリカに伝わりました。中国へは陸路を通じて17世紀頃に伝わったといわれています。日本へは、18世紀初頭の江戸時代にオランダ人によって長崎に伝えられました。その当時は、オランダ人が持ち込んだことから“オランダ菜”と呼ばれていました。主に観賞用の葉ぼたんとして栽培されていました。
食用のためのキャベツの栽培が本格的に始まったのは幕末以降です。最初は外国人居留地向けとして栽培されていましたが、明治初期に丸い形のキャベツが日本に持ち込まれ、東京や北海道で栽培が始められました。第二次世界大戦後は食糧の増産と食の欧米化が広まり、生産量が急激に増加すると同時に、消費量も急速に伸びました。現在では日本独自の栽培品種を中心に主要野菜としての地位を築いています。
●キャベツの品種
キャベツは種子をまく時期によって、春キャベツ、秋キャベツ、冬キャベツの3つの品種に分けられます。
春キャベツは、秋から冬に種子をまき、初春から初夏に収穫されます。“春玉”と呼ばれているキャベツはこの品種です。葉の巻きがゆるく、内側まで緑色をしています。葉がやわらかいので、生食に向いています。
春キャベツは、外側の葉は巻きがゆるく、中心の葉は詰まっているものが新鮮であるとされています。葉がやわらかく甘みがあることが特徴です。
秋キャベツは、春から初夏に種子をまき、夏から秋に収穫されます。“高原キャベツ”とも呼ばれています。
冬キャベツは、夏に種子をまき冬に収穫されます。一般的に出回っている“寒玉”と呼ばれるキャベツはこの品種に入ります。葉の巻きが固く、寒さに強いといわれています。熱を加えると甘みが増し、煮崩れしにくいのでロールキャベツやポトフなどに向いています。
冬キャベツは、外側の葉が濃い緑色で、葉がしっかりと詰まっているものが良いとされています。また、厚みがあり重量感のあるものが良品です。
キャベツには他にも、紫キャベツ、芽キャベツ、プチヴェールなどの品種があります。
紫キャベツは、葉の色の紫色が特徴的なキャベツです。この紫色はアントシアニンという色素で、酸にふれると鮮やかに発色するため紫キャベツはピクルスにも使われています。また、生で食べるとパリパリとした食感が楽しめるため、サラダにも適しています。
芽キャベツは、サイズが2~3cmほどの結球する品種で、ビタミンCが豊富です。煮込み料理や、シチューに適しています。
プチヴェールは、丸く結球しないタイプのキャベツです。芽キャベツとケールの交配種で、栄養価が高く、甘くて食べやすいといわれています。
●キャベツの生産地
日本での主な生産地は、千葉県、神奈川県、愛知県、群馬県です。しかし、季節によって主要産地は変わります。
春キャベツは、千葉県、神奈川県、茨城県で主に生産されており、旬は3~5月です。
秋キャベツは、群馬県、北海道、長野県で主に生産されており、旬は6~11月です。
冬キャベツは、愛知県、千葉県、神奈川県で主に生産されており、旬は11~3月です。
芽キャベツは中国や台湾、ニュージーランドから輸入されているものがほとんどです。
●キャベツの調理方法
キャベツにはあくの成分がほとんどないため、下茹では不要です。
キャベツには、ビタミンCやビタミンUなどの栄養が含まれていますがこれらは熱に弱く、水に溶けやすいという性質をもっているため、調理方法によっては簡単に失われてしまいます。
キャベツからこれらの栄養素をしっかり摂るには、生食が望ましいです。また、キャベツに熱を加えてやわらかくし、かさを減らすことで食べる量を増やすことも、結果的に栄養素を十分に体に取り入れることにつながります。
また、煮込み料理やスープにキャベツを入れて汁ごと残さずに食べることで、汁に溶けだした栄養素まで無駄なく摂取することができます。
●キャベツの保存方法
キャベツは芯の部分から傷み始めるため、芯の部分をくり抜き、その穴に水を含ませた脱脂綿またはペーパータオルなどを詰め保存します。空気にふれたまま保存しておくとカビができやすいので、袋に入れ空気を抜き、冷蔵庫の野菜室で保存します。
また、切ったキャベツを保存する場合は、ラップで包むなどして空気にふれないよう工夫をします。
●キャベツに含まれる成分と性質
キャベツには、食物繊維をはじめ、ビタミンC、カリウム、カルシウムなどのミネラル類が豊富に含まれています。またキャベツ特有の成分として、ビタミンUが挙げられます。ビタミンUは、キャベツから発見されたため別名“キャベジン”とも呼ばれている成分です。
キャベツの特徴は豊富なビタミンCで、葉を生で2~3枚食べることで、1日に必要なビタミンC量の50%以上が満たされるといわれています。特にキャベツの外側の緑色の葉や、普段捨ててしまいがちな芯の近くには、特にビタミンCが多く含まれています。
<豆知識>キャベツとシュークリームの関係
フランス語ではキャベツは“chou(シュ)”といわれています。洋菓子のひとつである、シュークリームの“シュ”は、キャベツを意味しています。丸く絞り出して焼いたシュークリームの生地は、キャベツの丸い形に見立てられているのです。
キャベツには、食物繊維をはじめ、ビタミンUやビタミンCなどの栄養素が含まれており、以下のような健康に対する働きが期待できます。
キャベツの効果
●免疫力を高める効果
キャベツに含まれるビタミンCには、免疫力を高める作用があります。免疫力とは、細菌やウイルスなどから身を守る能力のことです。ビタミンCは、体内に入ってきた細菌やウイルスなどを攻撃する白血球の働きを助けるとともに、自らも細菌やウイルスと闘い体内への侵入を防ぎます。
また、ビタミンCはコラーゲンの生成に不可欠な栄養素です。コラーゲンが生成されることで、皮膚や骨、血管が丈夫になり、病気に対する抵抗力が高まります。
●ストレスをやわらげる効果
ストレスは、不安や緊張といった精神的なストレスはもちろん、紫外線やタバコ、疲労、睡眠不足などを原因としてもおこります。ヒトはストレスを感じると体内でビタミンCを大量に消費します。体内のビタミンCが不足すると、ストレスに弱くなり、心身の不調にもつながります。
ビタミンCを摂取し、体内のビタミンC不足を解消することでストレスが軽減されます。
●肌荒れを予防する効果
美肌ビタミンと呼ばれているビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない成分です。コラーゲンは、肌のハリを保つ働きを担っています。さらに、ビタミンCにはシミの原因となるメラニン色素の生成を防ぐ働きもあります。
●便秘を解消する効果
キャベツには食物繊維が多く含まれています。食物繊維は、ヒトの体で消化できない栄養素です。そのため、腸に入ってきた食べ物を排出するためのぜん動運動を促し、便を体外に排出します。
●動脈硬化を予防する効果
食物繊維には、余分なコレステロールを吸着し、体外に排出させる働きがあります。
血液をコレステロールでドロドロにすることなく、動脈硬化による脳梗塞などの病気を予防します。【1】
●胃腸の粘膜を健康に保つ効果
キャベツは、胃の働きや胃の粘膜を正常に保つビタミンUを豊富に含んでいます。
ビタミンUは、胃酸[※1]の分泌を抑えることで、胃腸の粘膜を健康に保つ働きがあります。そのため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を予防・改善することが期待されています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは、自らの胃液によって胃腸の粘膜を溶かし、傷つけてしまう病気です。はじめは胃や十二指腸の粘膜がただれてしまう程度ですが、進行すると胃や腸に穴があいてしまうこともあります。
ビタミンUは、胃腸の粘膜を修復するためにたんぱく質の合成を活発にし、傷ついた粘膜を治す働きなどがあります。そのため、胃腸粘膜の新陳代謝[※2]を活発にすることが期待されています。
さらに、胃酸の分泌を抑えることで、胃腸粘膜の負担を軽減することができ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防・改善へとつながります。ビタミンUは市販されている胃腸薬にも含まれていることが多い成分です。【3】【4】
[※1:胃酸とは、胃液に含まれる強い酸性の消化液のことです。]
[※2:新陳代謝とは、古い細胞や傷ついた細胞が、新しい細胞へ生まれ変わることを指します。]
キャベツはこんな方におすすめ
○免疫力を向上させたい方
○ストレスをやわらげたい方
○肌荒れでお悩みの方
○便秘でお悩みの方
○生活習慣病を予防したい方
○胃腸の健康を保ちたい方
キャベツの研究情報
【1】これまでの研究により、植物の化合物は酵素を活性化させ、内因性の抗酸化力を向上させる可能性があることがわかっています。そのような成分を含む食品に芽キャベツやケール、ニンジン、タマネギなどがあります。緑黄色野菜を摂取することで、抗酸化酵素を活性化し、動脈硬化の原因であるLDLコレステロールの酸化を抑えることが、心血管保護に有効であると考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15650563
【2】キャベツなどのアブラナ属植物は発がん物質の劣化や減少させる酵素を活性化し、さらに活性酸素からDNAを守る働きのある成分を含みます。キャベツなどのアブラナ属植物を1日に218 g摂取させたところ、F2-イソプロスタン濃度が低下したことから、キャベツがガンのリスクや酸化ストレスを減少させる可能性があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16704986
【3】消化性潰瘍患者に、濃縮キャベツジュースを22日間摂取させたところ、潰瘍に改善が見られたことから、キャベツが抗潰瘍作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13276831
【4】消化器官潰瘍患者13名にキャベツジュース(ビタミンU含有)を摂取させたところ、十二指腸潰瘍および胃潰瘍の完治日数が短縮しました。ビタミンUを含むキャベツが抗潰瘍作用を持つことが示唆されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1643665/
参考文献
・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社
・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社
・佐藤秀美 イキイキ!食材図鑑 日本文芸社
・Fowke JH, Morrow JD, Motley S, Bostick RM, Ness RM. (2006) “Brassica vegetable consumption reduces urinary F2-isoprostane levels independent of micronutrient intake.” Carcinogenesis. 2006 Oct;27(10): Epub 2006 May 15.
・CHENEY G, WAXLER SH, MILLER IJ. (1956) “Vitamin U therapy of peptic ulcer; experience at San Quentin Prison.” Calif Med. 1956 Jan;84(1): 39-42.
・CHENEY G. (1949) “Rapid healing of peptic ulcers in patients receiving fresh cabbage juice.” Calif Med. 1949 Jan;70(1): 10-5.
・西崎統 鈴木園子 専門医がやさしく教える食品成分表 PHP研究所
・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店
・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版
・本多京子 食の医学館 小学館
・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社
・池上保子 おいしく食べて健康に効く目で見る食材便利ノート 永岡書店