ケール

kale

ケールは、β-カロテンやルテイン、ビタミンC、カルシウム、食物繊維などの栄養素を豊富に含むことから「緑黄色野菜の王様」と呼ばれている野菜です。またケールには自然な睡眠を導いてくれる成分であるメラトニンも含まれます。
日本では一般的に青汁などに使用されている、栄養価が高い野菜です。

ケールとは?

●基本情報
ケールとは、アブラナ科アブラナ属に属し、キャベツブロッコリーの原種とされている植物です。別名「葉キャベツ」とも呼ばれています。和名では、「羽衣甘藍(はごろもかんらん)」「緑葉甘藍(りょくようかんらん)」といいます。
原産地は南ヨーロッパの地中海沿岸です。
ケールはキャベツの原型とされていますが、キャベツと違い丸く結球せずに成長します。

●ケールの品種
ケールには、ツリーケール、ボアコールズ、スコッチ、シープ、マローステムなどの品種があります。
木立性の大葉種であるツリーケールは、1枚の葉から約180mlの青汁[※1]が絞れることから、青汁用として栽培されています。

●ケールの歴史
ケールはキャベツやブロッコリーの原種で、紀元前からあったといわれています。約2,000年前にはギリシャ・ローマ地方でケールの栽培が始まっていたようです。
ケールト人が最初に栽培したことから「ケール」と呼ばれるようになりました。

ケールが初めて日本に伝えられたのは、18世紀の江戸時代初期です。
1709年に刊行された書物「大和本草(やまとほんぞう)」にケールと思われる「オランダナ」「サンネンナ」が記載されています。長崎県のオランダ人によって伝えられたことから「オランダナ」と名付けられていたといわれています。
当時は、オランダナを品種改良してつくられた葉ぼたんが観賞用として親しまれ、食用としては利用されていませんでした。
食用としての歴史は、戦後間もなく日本が食糧難に陥ったころにさかのぼります。栄養補給を目的として病院食や給食用に青汁が考案されました。
岡山県倉敷市の遠藤仁郎博士が「健康維持には清浄野菜[※2]を食べるべきだが、食べられる量には限度がある。野菜を青汁にして飲用すれば、栄養をバランス良くたくさん摂れる」と訴えたことが始まりです。
当初はキャベツ、小松菜、水菜、だいこん葉などが青汁の原料として試されましたが、栄養のバランスがよく、周年栽培が可能で収穫量が多いケールが代表的な青汁の原料として定着していきました。

●ケールの種まき時期
ケールは、3月下旬から10月下旬までいつでも種まきができます。ケールの種まき時期を2~3カ月ずつずらすことで1年中収穫することが可能です。

●ケールの食べ方
ケールは、独特の香りと強い苦みを持つ野菜です。
日本では、ケールが野菜として食べられる機会は少なく、「味はともかく体に良い」という理由で青汁などに加工して飲まれています。
ヨーロッパでは加熱すると甘みが出て苦みが抑えられるというケールの特徴を活かし、ロールキャベツやポタージュ、揚げ物などに調理されて食べられています。

●ケールに含まれる成分と性質
ケールは「緑黄色野菜の王様」と呼ばれるほど、栄養価が非常に高いことで知られています。

ケールには、カロテノイド系の色素であるルテインβ-カロテンが豊富に含まれています。特にβ-カロテンは、トマトの5倍も多く含まれています。
β-カロテンは、人間の体内で必要とされる量のみビタミンAに変換されます。

また、ケールには牛乳の2倍ものカルシウムや自然な睡眠を導くホルモンであるメラトニンビタミンEビタミンC食物繊維などの栄養素も豊富に含まれています。

[※1:青汁とは、生の緑葉野菜を絞った汁のことです。]
[※2:清浄野菜とは、農薬を使わずに、ビニールハウスで育てられた野菜のことです。]

ケールの効果

ケールには、ルテインやβ-カロテンをはじめとした様々な栄養素が含まれており、以下のような健康に対する働きが期待できます。

●目の健康に働きかける効果
ケールには目の健康に働きかけるルテインが豊富に含まれています。ルテインは、主に目の網膜の中央にある黄斑部に存在しています。黄斑部とは、カメラで例えるとフィルムの役割を担っている、目の中で光が集まる部分です。
ルテインは、紫外線などのダメージから目を守る働きを持つことから「天然のサングラス」とも呼ばれています。

また、目の網膜にはロドプシンと呼ばれる光を感じるためのたんぱく質があります。ロドプシンが光に反応し、その刺激が脳に伝わることで人間は物を見ることができます。このロドプシンを生成するために必要な栄養素がビタミンAです。
ケールに含まれているβ-カロテンが体内でビタミンAに変わり、ロドプシンの生成を促し夜盲症[※3]や眼精疲労[※4]を予防します。

●皮膚や粘膜を丈夫にする効果
ケールには、皮膚や粘膜を丈夫にする効果が期待できます。
ビタミンCはコラーゲンの生成に必要なビタミンのひとつです。体内のたんぱく質の約30%を占めているコラーゲンは、細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きをしています。コラーゲンが、細胞の結合を強くすることで、皮膚や骨、血管を丈夫に保つ働きがあります。
また、β-カロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されます。ビタミンAには粘膜や皮膚を正常に保つ働きがあります。ビタミンAが不足すると、呼吸器などの粘膜が弱くなり感染症にかかりやすくなったり、皮膚が乾燥したり、爪がもろくなります。

●老化を防ぐ効果
ケールには、老化を防止する抗酸化作用を持つビタミンが豊富に含まれています。β-カロテンから変換されたビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは、抗酸化作用の高い栄養素として「ビタミンACE(エース)」と呼ばれています。紫外線やストレス、たばこなどが原因で発生する活性酸素[※5]による、過酸化脂質[※6]の発生を抑制し、老化や病気を防ぎます。ビタミンACEには活性酸素によって傷ついた細胞の回復を早める働きもあります。

●睡眠を促す効果
睡眠は脳と体の疲れをとるために欠かせない生理現象です。
睡眠障害は疲労の回復を妨げ、精神を不安定にし、体の不調を引き起こします。
眠れない原因のひとつに、「体内時計」が挙げられます。体内時計とは、日が昇ると体が活発に働き、日が落ちると眠くなるという体のリズムのことです。人間の体内時計は約24時間周期で、日が昇ると体が活動モードに入り、日が落ちると安静モードになるというものです。体内時計を正しく機能させるためには、体のリズムを整えることが大切です。
ケールには、快適な睡眠に導くホルモンであるメラトニンが含まれています。夜間に多く分泌されるメラトニンによって睡眠が促され体のリズムが整えられます。メラトニンが含まれているケールは、不眠症の改善にも効果が期待されています。【5】

●ストレスをやわらげる効果
ケールには、ビタミンCが含まれるため、ストレスをやわらげる効果が期待できます。ストレスには不安や緊張、騒音、タバコ、睡眠不足など様々な原因があります。人間はストレスにさらされると体内で大量のビタミンCを消費します。ビタミンCが不足すると、ストレスに弱くなり、体や心の不調を引き起こしてしまいます。
また、ケールには精神安定剤としての働きを担うカルシウムも豊富に含まれているため、神経のいらだちを抑え、精神を安定させる働きがあります。

●免疫力を高める効果
ケールに含まれるリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(ルビスコ)という成分が、免疫機能成分の生産を促進し、免疫力を高める効果があることが報告されています。
また、ケールに含まれているビタミンCには、免疫力を高める効果があります。免疫力とは、外から身を守るための防衛能力のことです。免疫力が低下すると、細菌やウイルスなどが体内に入り込み、風邪などの感染症にかかりやすくなります。免疫力を高めるには、体内で細菌やウイルスと闘う白血球の働きを強くすることが必要です。ビタミンCが白血球の働きを強くし、自らも細菌やウイルスと闘うことで、免疫力が高まる効果が期待されます。
また、β-カロテンやビタミンCは皮膚や粘膜を丈夫にし、病原菌が体内に侵入することを防ぎます。【2】

●美肌効果
ビタミンEには、末梢血管を広げ血行を良くする働きがあります。全身の血行が良くなることで細胞の生まれ変わりである新陳代謝が活発になります。私たちの体は、約60兆個もの細胞でできており、常に新陳代謝が行われています。ビタミンEが豊富に含まれているケールを摂ることで新陳代謝が活発になり、肌の生まれ変わりが促進され美肌効果が期待できます。

●歯と骨を丈夫にする効果
人間の体の1.5~2.0%がカルシウムです。カルシウムの約99.0%は骨や歯に存在しています。そのためカルシウムが不足すると、骨や歯がもろくなってしまいます。
ケールには、カルシウムが豊富に含まれている為、歯と骨を丈夫にする効果があります。

●生活習慣病を予防する効果
ケールは、血糖値を改善し糖尿病を予防する働きや、HDLコレステロールを増加させ、高コレステロール血症を改善し、動脈硬化を予防する働きが報告されています。【1】【3】【4】

●便秘を解消する効果
ケールには、便通を整える働きをする食物繊維が豊富に含まれています。
便秘とは、便が排出されにくく1週間近く便が出ない状態のことを指し、食欲不振や腹痛、頭痛などの症状が現れる場合もあります。
食物繊維は、腸のぜん動運動[※7]を促し、便秘を改善する効果が期待できます。

[※4:夜盲症とは、光に対して目の反応が衰え暗い所で物が見えにくくなる症状のことです。鳥目とも呼ばれます。ビタミンAの欠乏症としても知られています。]
[※5:眼精疲労とは、ものを見ているだけで目の疲れや痛みを感じ、視界がかすむ、頭痛や肩こり、イライラを併発する状態のことです。]
[※6:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増したことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]
[※7:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※8:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動のことです。]

ケールは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○目の健康を維持したい方
○風邪をひきやすい方
○不眠でお悩みの方
○ストレスをやわらげたい方
○美肌を目指したい方
○疲れやすい方
○生活習慣病を予防したい方
○便秘でお悩みの方

ケールの研究情報

【1】高コレステロール血症男性患者32名を対象に、ケール飲料1日150ml を12週間摂取したところ、HDLコレステロール値およびHDL/LDL比の上昇が見られ、動脈効果指数、BMIおよびウエストのサイズが減少しました。また抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼ活性、血清セレン濃度が上昇したことから、ケールが血清脂質および抗酸化力を介した、高脂血症ならびに心疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18548846

【2】ヒト培養細胞(HB4C5細胞)及びヒト末梢血リンパ球に、ケール抽出物を添加すると、免疫を司る成分免疫グロブリンの生産が促進されることがわかりました。このはたらきには、リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(ルビスコ) という成分が関係しており、ケールに免疫力向上効果があることが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21228486

【3】ケールをはじめとする蒸気で料理した野菜は、胆汁の再吸収を阻害することで、コレステロールの吸収を阻害することがわかりました。ケールなどの野菜が、高コレステロール血症予防効果や動脈硬化予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19083431

【4】Ⅱ型糖尿病マウスに、ケール抽出物を21日間投与すると、血糖値は低下し、インスリン感受性を増加させるアディポネクチンが増加しました。マウス前駆脂肪細胞では、脂肪細胞分化誘導作用、脂肪細胞への糖取り込み、アディポネクチン分泌量の全てが増大したことから、ケールは脂肪前駆細胞にはたらきかけ、インスリン感受性を改善することで、糖尿病予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14692726

【5】ケールには体内周期リズム調節に関わる物質であるメラトニンが含まれおり、不眠症改善に役立つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/10002628932

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参考文献

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 主婦の友社

・本多京子 食の医学館 小学館

・吉川敏一 辻智子 医療従事者のための機能性食品(サプリメント)ガイド―完全版 講談社

・則岡孝子監修 栄養成分の事典 新星出版社

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・蔵敏則 著 食材図典 小学館

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・NPO日本サプリメント協会 サプリメント健康バイブル 小学館

・内田正宏 芦沢正和 花図鑑野菜 星雲社

・菅原 龍幸 井上 四郎 原色食品図鑑 [単行本]  建帛社

・Kim SY, Yoon S, Kwon SM, Park KS, Lee-Kim YC. 2008 “Kale juice improves coronary artery disease risk factors in hypercholesterolemic men.” Biomed Environ Sci. 2008 Apr;21(2): 91-7.

・Nishi K, Kondo A, Okamoto T, Nakano H, Daifuku M, Nishimoto S, Ochi K, Takaoka T, Sugahara T. 2011 “Immunostimulatory in vitro and in vivo effects of a water-soluble extract from kale.” Biosci Biotechnol Biochem. 2011;75(1): 40-6.

・Kahlon TS, Chiu MC, Chapman MH. 2008 “Steam cooking significantly improves in vitro bile acid binding of collard greens, kale, mustard greens, broccoli, green bell pepper, and cabbage.” Nutr Res. 2008 Jun;28(6): 351-7.

・Yoshida M. Nakashima A. Nishida S. Yoshimura Y. Iwase Y. Kurokawa M. Fujioka T. 2007 “Brassica oleracea var. acephala (kale) CHCl_3 fraction induces adipocyte differentiation and reduces plasma glucose concentration in animal models of type 2 diabetes.” Medical and pharmaceutical society for WAKAN-YAKU 2007 24(6): 187-192.

・Hattori A. Wada M. Miyauchi D. Sugimoto T. 1987 “Diel changes of melatonin and effects of ultraviolet treatment on melatonin concentrations in the kale.” Proceedings of the Japan Society for Comparative Endocrinology 11, 47, 1996-08

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