ボリジ

Borago officinalis Borage
ルリジサ ルリチシャ  ビーブレッド  マドンナ・ブルー  瑠璃苣

ボリジは、ムラサキ科に属するハーブの一種で、モロッコなどの地中海沿岸が原産です。高さは30~60cmになり、葉や茎は細かい白い毛で覆われています。また、古代ギリシャ・ローマ時代には薬として使用されていました。他にも食用、染料にされるなど活用の幅が広いハーブです。

ボリジとは

●基本情報
ボリジとは、ムラサキ科の1年草[※1]のハーブで、楕円形の葉や茎が白い繊毛で覆われているのが特徴です。地中海沿岸やモロッコ原産のボリジは高さが30~60cmまで成長する植物で、春から夏にかけて星形の青い花を咲かせます。葉や花は食用として利用される他、花の青色はマドンナブルーといわれ染料としても利用されるなど幅広く活用されています。また、古代ギリシャ・ローマ時代には薬効があることが知られており、お酒の盃に入れられていました。

●ボリジの歴史
ボリジは古代ローマ時代から多くの人に親しまれ、飲み物を飲む際に盃に入れる習慣があり、この頃からボリジには薬としての効果があることが知られていました。古代ギリシャ時代の医者ディオスコリデスは「心を明るくし、うち沈んだ精神を高揚するためにボリジを用いるべきである」と、ボリジを摂ることを推奨していました。 紀元前8世紀にホメロスによって書かれた「オデュッセイア」に記載されている「この葉や花を酒に浸して飲めば、あらゆる悩み悲しみを忘れた」という文章中の草は、ボリジを指すとも言われています。
飲み物にボリジを入れる習慣は、ヨーロッパで長く続き、特に勇気を奮い立たせるために戦いの時、ボリジ入りの盃がよく用いられたとされます。また、葉と花に解熱作用があることから暑い時の飲み物に強壮と清涼感を加えるためにも用いられました。
ボリジの名前は属名のボラコからきています。ボラゴはラテン語で勇気をもたらすという意味のコラゴやケルト語の勇者という意味のバラクが訛ったものといわれています。またボリジには沈んだ気分を高揚させ勇気をもたらす働きに起因するとされます。

●ボリジの利用
ボリジの花は軽い甘みと酸味があり、サラダやデザートの飾りやハーブティーに浮かせたり、砂糖漬けにして利用されます。花を白ワインに浮べると花の色が青からピンクに変化するので、その様子を楽しむこともできます。ボリジの葉はきゅうりのような味がするといわれ、主に若葉がサラダとして利用されます。大きくなると舌触りが悪くなるため湯でてから利用します。
また、ボリジの種子から圧搾される油はボラージオイルとして化粧品にも利用されます。

●ボリジに含まれる成分
ボリジの葉には、 サポニン タンニンカリウム カルシウムなどが含まれており、解熱作用、抗リウマチ、湿疹の緩和などが期待できます。種子から得られるボラージオイルには必須脂肪酸[※2]のひとつであるγリノレン酸が含まれています。γリノレン酸はアトピー性皮膚炎お治療や月経前症候群(PMS)[※3]の緩和にも用いられます。また、ボリジには副腎皮質[※4]を刺激してアドレナリン[※5]の分泌を促し、気分を高揚させる働きがあることから、うつの症状を緩和させる効果が期待できます。

●ボリジを使用する際の注意点
ボリジにはピロリジンアルカロイド[※6]といわれる肝毒性のある成分が含まれます。そのため、摂り過ぎには注意が必要です。

[※1:1年草とは、種をまいてから一年以内に発芽・生長・開花・結実・枯死する草のことです。]
[※2:必須脂肪酸とは、体内で他の脂肪酸から合成できないために食品から摂取する必要がある脂肪酸のことをいいます。]
[※3:月経前症候群(PMS)とは、月経の約1、2週間前から発生し、月経開始とともに消失する一連の身体的、または精神的症状の総称です。]
[※4:副腎皮質とは、腎臓の上に位置する臓器である副腎の周辺部分のことです。副腎皮質からはアドレナリンなどの様々なホルモンが分泌され、生命を維持するために欠かせない臓器です。]
[※5:アドレナリンとは、副腎髄質から分泌され、血糖を上昇させるホルモンです。]
[※6:アルカロイドとは、窒素原子を含み、塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称です。]

ボリジの効果

●風邪の症状を緩和する効果
ボリジにはカルシウムやカリウムが豊富に含まれることから、風邪の症状を緩和する効果があります。ボリジには解熱作用、抗炎症作用【2】、発汗作用があるためハーブティーとして飲用することで熱を伴う風邪の初期症状に対し効果を発揮します。また、ボリジに含まれる粘液は喉の痛みを緩和する働きがある他、インフルエンザなどの感染症の予防にも有効です。

●アルツハイマー病を予防する効果
アルツハイマー病とは脳の神経細胞が少なくなり、脳が萎縮する病気のことです。記憶障害、失見当識、視空間失認などの症状が現れます。
研究結果によれば、モデルラットにボリジの抽出物を摂取させることで、アミロイドβが引き起こすアルツハイマー病に対して予防効果があるとされています。【1】

●肌荒れを改善する効果
ボリジには肌荒れなどの湿疹を改善する効果があるといわれています。これはボリジの種子に含まれるγリノレン酸に、湿疹やアトピー性皮膚炎を抑える効果があるためです。γリノレン酸は、イギリスやフランスでは医療品としてアトピー性皮膚炎の治療に用いられます。γリノレン酸を多く含むものとして月見草油が挙げられますが、ボリジの種子から得られるボラージオイルには月見草油の約2倍のγリノレン酸が含まれます。

●月経前症候群(PMS)の症状を緩和する効果
ボリジの種子にはγリノレン酸が豊富に含まれることから月経前症候群(PMS)の症状を改善する効果があるといわれています。近年の研究で、月経前の胸の張りやイライラなどの月経前症候群を訴える女性の多くは、γリノレン酸の血中濃度が低いことがわかりました。また、体内のγリノレン酸量が少ないとホルモンバランスが保ちにくいとも言われています。

こんな方におすすめ

○ストレスをやわらげたい方
○心を落ち着かせたい方
○イライラしやすい方
○リフレッシュしたい方
○うつ状態の方
○咳や痰でお悩みの方
○乾燥肌・肌荒れでお悩みの方
○あせもや湿疹を予防したい方
○月経によるお悩みがある方

ボリジの研究情報

【1】アルツハイマーは神経の機能が障害される病気です。本研究ではモデルラットにボリジの抽出物を摂取させる(100mg/kg)ことで、アルツハイマーの原因とされるアミロイドβより海馬歯状回を保護する効果が示唆されました。このことからアルツハイマーの予防が期待されます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25060965

【2】西洋式の食生活において脂肪は密接な関係があります。今回、複数の食事条件で脂肪酸を長期間摂取した場合の運動に対する影響について調べたところ、ボリジや魚の油において、炎症を抑え、骨の健康を改善することが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21664309

【3】ボリジには腸の病気に対する治療効果があるとされ伝統医薬品として使われています。今回筆者らは、ボリジ抽出物のアメーバ活性を調べたところ、アメーバ感染を起こす菌類に対して、その阻害活性が認められました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21476887

参考文献

・ディカルハーブ 安全性ハンドブック マイケル・マクガフィン 東京堂出版

・アンドリュー・シェヴァリエ 世界薬用植物百科事典 誠文堂新光社

・小学館 新版 食材図典 生鮮食材篇

・Zargooshnia S, Shahidi S, Ghahremanitamadon F, Nikkhah A, Mehdizadeh M, Soleimani Asl S. (2014) “The protective effect of Borago Officinalis extract on amyloid β (25-35)-induced long term potentiation disruption in the dentate gyrus of male rats.” Metab Brain Dis. 2014 Jul 25.

・Wauquier F, Barquissau V, Léotoing L, Davicco MJ, Lebecque P, Mercier S, Philippe C, Miot-Noirault E, Chardigny JM, Morio B, Wittrant Y, Coxam V. (2012) “Borage and fish oils lifelong supplementation decreases inflammation and improves bone health in a murine model of senile osteoporosis.” Bone. 2012 Feb;50(2):553-61.

・Leos-Rivas C, Verde-Star MJ, Torres LO, Oranday-Cardenas A, Rivas-Morales C, Barron-Gonzalez MP, Morales-Vallarta MR, Cruz-Vega DE. (2011) “In vitro amoebicidal activity of borage (Borago officinalis) extract on Entamoeba histolytica.” J Med Food. 2011 Jul-Aug;14(7-8):866-9.

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