テアニン

Theanine

テアニンとはお茶のうま味・甘味に関与する成分で、玉露や抹茶等に多く含まれ、興奮を鎮めて緊張を和らげる働きと、心身をリラックスさせる効果を持っています。テアニンが脳内に入ることで、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンの濃度を変化させるため、血圧降下作用や脳神経細胞保護作用に加え、記憶力や集中力を高める効果があります。

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テアニンとは

●基本情報
テアニンとは、お茶に含まれるアミノ酸の一種で、爽やかなうま味と甘味を引き出す役割を担っている成分です。うま味成分として知られるグルタミン酸と似た化学構造をしており、数ある植物の中でもお茶やツバキ、サザンカなど一部の植物にのみに存在する物質です。
テアニンは、お茶の木の根の部分でつくられ、やがて葉に移動します。その葉が日光を浴びることによってテアニンはお茶の渋み成分であるポリフェノールの一種のカテキンへと変化します。したがって、お茶の種類や採取時期によってテアニンの含有量に差が出てきます。テアニンは緑茶ウーロン茶、紅茶などすべてのお茶に含まれていますが、日光を遮りながら日陰で育てられる玉露やかぶせ茶、碾茶(てんちゃ)の場合は、カテキンへの生成が抑えられるため、茶葉中にテアニンを豊富に含んだままの状態となります。これにより、テアニンは二番茶よりも一番茶、一番茶の中でも特に新芽に含まれる量が多くなるため、新茶や玉露はうま味の多い味わいとなります。また、成熟した芽では極端にテアニンが少なくなるため、番茶はあっさりした味わいになります。

テアニンは通常、乾燥茶葉中に約1~2%含まれています。特に高級なお茶には多く含まれており、抹茶には番茶の12倍のテアニンが含まれています。テアニンは、1950年に玉露から分離精製されて、化学的構造が決定されました。アミノ酸の一種といっても、たんぱく質を構成している20種類のアミノ酸とは異なり、やや特殊な構造を有しています。この成分は、お茶の学名が「Thea sinensis」であることから、「テアニン(Theanine)」と命名されたといわれています。

<豆知識①>お茶を飲むと穏やかな気持ちになる理由
お茶のうま味成分であるテアニンは、お茶を美味しくするばかりではなく、心の興奮を鎮めて緊張を和らげ、心身をリラックスさせる働きを持っています。
お茶を飲んだ際にひと息ついたような安らぎを感じることがありますが、これはテアニンによる癒し効果であるといわれています。
テアニンを摂取すると約40~50分でリラックスの脳波であるα波[※1]が出現します。このほかにもテアニンを使用した様々な実験が行われており、脳の興奮を抑えて神経を沈静化させ、精神的なストレスを抑制する効果が確認されています。テアニンによる癒し効果は、科学的にも認められています。

<豆知識②>お茶に含まれるテアニンとカフェイン
お茶を1杯飲むと約10~30mgのカフェインを摂取することとなります。たくさんのカフェインを摂取すると、強い興奮作用を示すと考えられますが、実際にはそれほど強く興奮することはありません。これは、テアニンにカフェインによる興奮作用を抑制する鎮静作用があるためと考えられています。

[※1:α波(アルファ波)とは、リラックス時に多く発生する脳波です。]

テアニンの効果

●リラックス効果​
日常生活で多くのストレスを受けることによって、精神的・身体的に緊張状態が続くと、体にも様々な障害が発生してきます。このような生活の中で、テアニンを摂取するとα波が出現します。α波の出現頻度を調べることで、テアニンのリラクセーション効果を検証した実験によると、50mgのテアニンを服用した約40~50分経過後にα波が増加していたという結果が出ています。また、不安傾向が低い人であれば、約50mgの摂取でα波が出現することがあります。テアニンの濃度が高いほどα波が強く現れることから、リラックス効果はテアニンの量に比例すると考えられています。【1】【2】【7】

●冷え性を改善する効果
テアニンを摂取してα波が増えた結果、筋肉が弛緩して血管が拡張したことにより、血行が良くなることがわかっています。テアニンは末梢血管の血行障害である冷え性改善にも効果が期待できます。

●睡眠を促す効果
テアニンは、脳の興奮を抑えて神経を沈静化する効果があるため、快適な睡眠が得られるという効果があります。テアニンを就寝前に摂取することで、寝つきを良くして中途覚醒をなくし、睡眠から覚醒への移行を円滑に進行させてくれると考えられます。また、脳の抑制系神経を活性化して興奮系神経を鎮めることで、寝つきを良くして睡眠の質を高めてくれます。
若い健康な男性を対象に、就寝1時間前にテアニン200mgを6日間摂取させたところ、寝つきが良くなり、途中覚醒が減少したため、熟睡できることが分かりました。テアニンにより睡眠効率が改善され、睡眠中の疲労回復がスムーズに進行し、起床時の爽快感を得ることができました。【6】

●集中力を高める効果
試験やスポーツ競技などで必要以上に緊張し、実力を発揮できない場合があります。テアニンを摂取することによって、こうした緊張の中でもリラックスして集中力が増し、良い結果を出せる効果があることがわかっています。
ラットを使った基礎研究では、テアニンを投与すると記憶力や学習能力が高まると示されています。これは、テアニンが脳血液関門を通過して脳内に入り込み、神経伝達物質[※2]のドーパミン[※3]やセロトニン[※4]の濃度を変化させるためと推測されています。【7】

●月経前症候群、更年期障害を改善する効果
テアニンは、女性の体の悩みを改善する働きがあります。女性の約8割が何らかの悩みを持っているといわれる月経前症候群の症状にも働きかけ緩和します。
月経前特有のイライラ、憂鬱、集中力の低下、疲れやすい、むくみといった症状を改善します。同様に更年期障害によるほてり、動悸、イライラ、不安感といった症状も軽減してくれます。
月経前症候群の自覚症状のある24歳~49歳の女性を対象とした試験では、1日200mgのテアニンを排卵日から月経開始日までの約2週間投与したところ、月経前症候群症状の改善がみられたという結果が出ています。

●高血圧を予防する効果
テアニンには高血圧を予防する効果が期待されています。ラットを使った研究では、テアニンには、過剰なグルタミン酸の働きを抑える作用があり、虚血[※5]による脳神経細胞の障害を軽減し、神経細胞を保護することがわかっています。このことから、テアニンを積極的に摂取することは、高血圧の予防と改善作用につながることが期待できます。その他、カフェインによる刺激作用を阻害する効果が報告されています。【3】

[※2:神経伝達物質とは、神経細胞の興奮や抑制を他の神経細胞に伝達する物質のことです。]
[※3:ドーパミンとは、中枢神経に存在する神経伝達物質の一種です。運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わっています。]
[※4:セロトニンとは、精神を落ち着かせる働きのある神経伝達物質のことです。]
[※5:虚血とは、組織に対して栄養などを送る血液の供給、血流が途絶えることに起因する、局所的な貧血状態を指します。乏血とも呼ばれ、全身性の貧血と区別して用いられます。]

テアニンは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ
○ストレスをやわらげたい方
○冷え性の方
○不眠でお悩みの方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○月経前症候群や更年期障害でお悩みの方
○高血圧を予防したい方

テアニンの研究情報

【1】L-テアニンは、脳のグルタミン酸受容体へのL -グルタミン酸の結合を阻害する働きをもつ緑茶原料茶に含まれるアミノ酸です。暗算法で急性ストレスをかけ、L‐テアニンの潜在的影響を検討しました。L‐テアニン摂取が極度のストレスに対する心拍数および唾液中免疫グロブリンaの減少をもたらしたことを試験成績は示しました。これは、交感神経神経活性化の減衰に起因したと考えられます。これらのことからL‐テアニンは皮質ニューロンの抗ストレス作用を有する可能性があることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16930802

【2】テアニンはα波の変調をもたらすかどうかを判断しました。脳波を測定した結果、テアニン摂取により、α波の増幅が認められました。このことにより、テアニンの摂取は、精神的な活動を活発にする可能性が考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17272967

【3】テアニンおよびカフェイン摂取した際の自覚、行動および血圧について検討しました。無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験で、健康な成人参加者(48名)が250mgカフェイン、200mgテアニンを摂取しました。テアニンはカフェインが血圧に及ぼす作用と拮抗しました。このことから、テアニンは血圧の上昇を下げるのに役立つ可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17891480

【4】L-テアニンおよびカテキンを含んでいるカプセルを伴った摂取はγδT細胞機能を強化し、インフルエンザ症状の発生率を減少させることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18254876

【5】マウス四塩化炭素誘発肝障害に関するL-テアニンの効果を調べました。L-テアニン(50, 100または200 mg/kg)を経口投与により、四塩化炭素誘発肝障害マウスに与えました。L-テアニンは、用量依存的にマウスの肝臓の組織、ALTおよびASTおよびビリルビン値の増加を抑制しました。このことから、L-テアニンは、急性肝障害を保護する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22583898

【6】注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断される男児98人に対し、400 mg/日(1日2回)L-テアニンを飲用させ、睡眠に関するアンケートをとりました。L-テアニン毎日400 mgがADHDと診断される子の睡眠の質の複数の側面を改善することにおいて有効である可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22214254

【7】健常被験者における認知および気分に対して50 mgカフェイン(+100 mg L-テアニンまたはテアニン無しで)摂取がどのように作用するかについて調べました。単語認識、迅速な視覚情報処理、臨界融合頻度、注目および気分に対する効果について27名の参加者を対象に調べました。L-テアニンおよびカフェインの組み合わせは、注意機能およびパフォーマンス精度の両方が向上し、記憶課題に対する気を散らす感受性を低下させました。L-テアニンおよびカフェインが過酷な職務に対するパフォーマンスを改善することに有益であることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18681988

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・吉川敏一 炭田康史 最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社

・Kimura K, Ozeki M, Juneja LR, Ohira H. (2006) “L-Theanine reduces psychological and physiological stress responses.” Biol Psychol. 2007 Jan;74(1):39-45. Epub 2006 Aug 22.

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