亜麻リグナン

flax lignin

亜麻リグナンとは、亜麻の種子に含まれるポリフェノールの一種です。
大豆などに含まれるイソフラボンと同様に女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをするため、更年期障害など女性特有の症状に効果的です。また、骨粗しょう症を予防する効果やコレステロールを下げる効果も持ちます。

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亜麻リグナンとは

●基本情報
亜麻リグナンとは、亜麻の種子に含まれるポリフェノールの一種です。
亜麻とは、中央アジア原産のアマ科アマ属の一年草[※1]で、春から夏の間に小さな青紫色から白色の花を咲かせます。亜麻種子から抽出された油は亜麻仁油として有名です。
ポリフェノールとは、植物の苦味、渋味、色素の成分となっている化合物の総称で、自然界に5000種類以上存在しているといわれている成分です。ポリフェノールの強力な抗酸化力を持っています。
また、リグナンとは植物の種子や皮、茎に多く含まれるポリフェノールの一種で、亜麻のほか、ゴマなどにも含まれています。ゴマに含まれるリグナンの一種にセサミンがあり、亜麻に含まれるリグナンの一種にセコイソラリシレジノールジグルコサイド(SDG)があります。リグナンは生理物質[※2]で、体内では女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをするため、更年期障害など女性特有の症状に効果的です。

●亜麻リグナンの歴史
亜麻リグナンを含む亜麻は紀元前3000~2000年頃には古代エジプトで栽培され、ミイラを包む布地に利用されていました。トルコなどでは何世紀にも渡り亜麻種子から抽出した亜麻仁油を料理などに使用してきました。
中性から近世にかけて亜麻の栽培は欧州全般に広まり、17世紀にはアメリカ大陸へ、また日本にも薬用としての亜麻仁油を得る目的で紹介されました。
このように古くから様々な用途で利用されてきた亜麻ですが、亜麻リグナンの発見は今から数十年前です。最近では亜麻リグナンの女性特有の更年期障害などの症状に対する有効性が明らかとなっています。

[※1:一年草とは、種をまいてから一年以内に発芽・生長・開花・結実・枯死する草のことです。]
[※2:生理物質とは、人間の生理作用に作用を与える物質のことです。]

亜麻リグナンの効果

●更年期障害の症状を改善する効果
亜麻リグナンには、更年期障害を予防・改善する効果があります。
更年期障害とは、めまいやほてりなどの症状が起こる症候群で、その症状がひどくなると私生活にも問題が生じます。この原因は閉経前後の女性ホルモンの分泌量の低下によりホルモンバランスが崩れてしまうことにあります。
女性ホルモンは、感情をコントロールしたり、コラーゲンや骨の生成を助けたりと様々な働きを持ちます。この女性ホルモンの分泌量は閉経によって減少してしまうため、更年期障害の症状は閉経後に起こるのが一般的です。
亜麻リグナンは女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをするため、更年期障害の予防や改善に効果的です。【1】【3】【4】

●骨粗しょう症を予防する効果
亜麻リグナンには、骨粗しょう症を予防する効果があります。
骨粗しょう症とは、骨の中がスカスカになってしまう病気で、少しの衝撃で骨折してしまうため、現在高齢者の寝たきりの原因となっている病気です。
骨は骨芽細胞と破骨細胞によって新陳代謝が行われています。骨芽細胞とは骨を作る細胞で、破骨細胞とは骨を破壊する細胞のことです。これらの細胞のバランスが保たれていることにより、骨は強度を保ち新陳代謝を繰り返し行うことができます。
骨芽細胞と破骨細胞のバランスを保つために女性ホルモンは働きます。女性ホルモンが減少してしまうと、このバランスが保てなくなり、破骨細胞の働きが促進してしまい、骨の中のカルシウムが体外へ溶けだして骨がスカスカになってしまうのです。研究では、更年期障害を起こしているマウスにおいて、亜麻リグナンを与えることで骨粗しょう症が予防されたと報告されています
亜麻リグナンは女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きを持つため、骨粗しょう症を予防する効果があるといえます。【1】【3】【4】

●コレステロール値を下げる効果
亜麻リグナンには、コレステロール値を下げる効果があります。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、血管内で血管壁を柔軟に保ったり、悪玉(LDL)コレステロールの分解と排泄を促したり、善玉(HDL)コレステロールの合成を促したりと様々な働きを持ちます。エストロゲンのこのような働きによって、血管は健康に保たれています。
女性は閉経後にエストロゲンの分泌が低下することにより、悪玉(LDL)コレステロール値が高くなる傾向にあります。更年期障害を起こしているマウスに亜麻種子を与えることで、悪玉(LDL)コレステロール値を下げて、善玉(HDL)コレステロール値を改善したとの報告があります。そのため、エストロゲンと似た働きをする亜麻リグナンを摂取することによって、コレステロール値を下げる効果が期待できます。
また、コレステロール値が体内で高まると動脈硬化[※3]などの生活習慣病や、動脈硬化が原因の心疾患や脳疾患につながる危険性が高まります。亜麻リグナンはコレステロール値を下げる効果があることから、ひいては生活習慣病予防にも効果的であるといえます。【2】

●肥満を予防する効果
亜麻リグナンとして知られる、セコイソラリシレジノールジグルコサイド(SDG)が豊富な食事を摂ることで内臓脂肪量の減少や、血液中の中性脂肪の低下がみられたとの研究報告があります。【2】

[※3:動脈硬化とは、動脈にコレステロールや脂質がたまって弾力性や柔軟性がなくなった状態のことです。血液がうまく流れなくなることで心臓や血管などの様々な病気の原因となります。]

食品やサプリメントで摂取できます

亜麻リグナンを多く含む食品

○亜麻種子

こんな方におすすめ

○更年期障害を予防・改善したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○肥満を予防したい方

亜麻リグナンの研究情報

【1】哺乳類114種に対するリグナンの研究によると、リグナンは生合成、生物学的活性、健康効果、代謝などに深く関係することが分かりました。特に、骨粗しょう症などのエストロゲン依存性の疾病に対しても予防的に働きかける可能性が考えられ、リグナンは骨粗鬆症予防など多くの機能性が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12270198

【2】高コレステロール血症は、HDLコレステロールの低下や活性酸素による動脈硬化症を悪化させます。亜麻リグナン(リグナン複合体)の40mg/kg の量で摂取することで、酸化ストレス、血中総コレステロール、LDLコレステロールの増加、HDLコレステロールの低下が抑制されたことから、亜麻リグナンは高脂血症予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15777541

【3】リグナンのような植物性エストロゲンは、細胞膜や核のレセプターと結合し、エストロゲン作用および抗エストロゲン作用を示します。特に乳がんのような腫瘍に対して、抗増殖作用や新生血管抑制作用などを示すことから、亜麻リグナンはエストロゲン調節作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12270216

【4】リグナンはエストロゲン受容体に結合し、内因性エストロゲン結合をブロックし、抗エストロゲン作用を示します。反面、更年期にはエストロゲンの血中濃度が低くなるため、リグナンは弱いエストロゲン作用として働くことから、亜麻リグナンはエストロゲン調節作用を持つと考えられています。

【5】ヒトを対象に、亜麻リグナンを1日あたり500mgの量で8週間摂取させたところ、心血管疾患の発症リスクが抑制されたことから、亜麻リグナンは心血管保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20003621

【6】リグナンなどの植物性エストロゲンは、デング熱からインフルエンザ、AIDSウイルスなどに対して抗ウイルス作用を有することから、亜麻リグナンは感染症予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17182070

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参考文献

・Raffaelli B, Hoikkala A, Leppälä E, Wähälä K. (2002) “Enterolignans.” J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2002 Sep 25;777(1-2):233-48.

・Prasad K. (2005) “Hypocholesterolemic and antiatherosclerotic effect of flax lignan complex isolated from flaxseed.” Atherosclerosis. 2005 Apr;179(2):269-75.

・Martin JH, Crotty S, Warren P, Nelson PN. (2006) “Does an apple a day keep the doctor away because a phytoestrogen a day keeps the virus at bay? A review of the anti-viral properties of phytoestrogens.” Phytochemistry. 2007 Feb;68(3):266-74.

・遠藤 大二、奥井 登代、小澤 修二、大和 修、昆 泰寛、有川 二郎、林 正信 (2002) “四塩化炭素誘導性肝薄書に対するリグナン含有亜麻仁油抽出物の防護効果” The journal of veterinary medical science 64(9), 761-765, s・iv-s・v, 2002-09-25

・Adolphe JL, Whiting SJ, Juurlink BH, Thorpe LU, Alcorn J. (2010) “Health effects with consumption of the flax lignan secoisolariciresinol diglucoside.” Br J Nutr. 2010 Apr;103(7):929-38.

・Andrea M . Hutchins  and Joanne L . Slavinb (2003) “Chapter 6. Effects of Flaxseed on Sex Hormone Metabolism” AOCS Publishing 2003

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