ユキノシタ

strawberry geranium
虎耳草 ゆきのした
Saxifraga stolonifera

白と赤紫色の花びらをもつユキノシタは、その美しさから観賞用として人気のある植物です。
ユキノシタは、別名ミミダレグサと呼ばれるほど耳の薬として知られており、中耳炎に効果があります。
また近年では、ユキノシタの美白作用から化粧品にも配合されています。

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ユキノシタとは?

●基本情報
ユキノシタは中国、日本では本州以南などに分布しているユキノシタ科の多年草[※1]です。日陰を好んで育ち、湿った場所や岩場に生育しています。ユキノシタは、5月から7月頃に、2枚の白く大きな花弁と3枚の赤紫色の斑点のある小さな花弁をもつ花を咲かせます。葉の裏面は紫色を帯びており、特に若葉で鮮やかな紫色をしています。ユキノシタの花は、その美しさから「花が雪のようにみえる」ともいわれており、観賞用としても人気があります。そのため庭先などでよく栽培されています。また葉は食用として、テンプラや茹でて利用されています。
ユキノシタの名は、「冬の雪の下でも枯れない」または、「花を雪に例え、その下に緑がある」ことから名づけられました。また学名のsaxifragaceaeには、石「saxun」を砕く「fragera」という意味があります。さらに葉が虎の耳の形に似ているため、ユキノシタは中国では虎耳草とよばれています。ユキノシタは古くから民間薬として親しまれており、やけどや発熱などに利用されてきました。
江戸時代には、煮売屋(今の居酒屋)の店先に、アワビの貝殻に盛ったユキノシタが看板のかわりとして吊り下がっていました。この光景は、アワビの貝殻から垂れ下がった紅色の側枝が煮こぼれているようにみえることから、「雪の下蚫の貝を煮こぼれへ」と詠った古い川柳があります。また「雪の下くぐって帰るいい機嫌」と詠われた川柳もあります。

●ユキノシタに含まれる成分と性質
ユキノシタは、硝酸カリウム、塩化カリウム、アルブチン、ベルゲニンなどを含んでいます。
硝酸カリウム、塩化カリウムは、利尿作用があります。またアルブチンには、メラニンの合成抑制作用があり、ポリフェノールの一種であるベルゲニンには、抗酸化作用があります。このようにユキノシタは、その作用の多さから日本でも民間療法に利用され、中耳炎や風邪の症状緩和、やけどなど幅広く利用されています。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]

ユキノシタの効果

●中耳炎を改善する効果
ユキノシタには、抗菌作用を示す成分が含まれているため、中耳炎にも効果があります。
ユキノシタは耳の薬として有名で、地方によってはミミダレグサとも呼ばれています。明治時代の書物には急性の中耳炎の時には、生のユキノシタのついた汁を耳にたらすという方法が記載されており、臨床試験でも中耳炎に対する効果が示されています。中耳炎は、細菌やウイルスの感染により、中耳が炎症を起こした状態のことをいいます。よって膿が出る中耳炎には水洗いしたフレッシュハーブをもみ、出てきた汁を清潔なコットンにつけて耳腔につめると効果的です。また吹き出物にはフレッシュハーブをもみ、アルミ箔などに包んで火にかけて柔らかくしたものを、直接患部につけて膿を出して使用します。

●美白効果
ユキノシタには、美白効果があります。
メラニン生成は、皮膚の基底層にあるメラノサイト[※2]が、紫外線やホルモンの影響により、皮膚を守ろうとする防御機能が活性化することで起こります。通常メラニンはターンオーバー[※3]により肌表面に押し出され、垢となって排出されますが、メラニンの過剰生成や、ターンオーバーが正常に行われないと、排出されずに皮膚内部に蓄積します。これがシミとなるのです。ユキノシタには、メラニンの合成を阻害するアルブチンという成分が含まれています。また近年ユキノシタの全草エキスに紫外線がもたらす活性酸素[※4]によるDNA障害の修復を促進する効果が報告され、アンチエイジングや美白効果を目的とした化粧品に配合されるようになりました。【3】

●むくみを予防・改善する効果
ユキノシタには、むくみを予防・改善する効果があります。
むくみとは細胞内に余分な水分がたまってしまった状態のことです。栄養素や酸素と一緒に細胞に運ばれた水分が、静脈やリンパ液の中にスムーズに回収されなかったために起こります。むくみを防ぐには、体内のナトリウムカリウムによる水分調節をスムーズにすることが重要です。ユキノシタには利尿作用のある硝酸カリウム、塩化カリウムを含むことから、乾燥した葉をハーブティーにして飲むと効果的です。【4】

●炎症を抑制する効果
ユキノシタは、炎症を抑制する効果があります。ユキノシタの煎出液はユキノシタに含まれるタンニンのせいで少し苦みと辛みがあります。このためやけどの時には湿布として利用されます。また痔にもよく、煎出液を清潔なコットンにつけて患部を優しく拭いて用いられます。

●風邪の症状を緩和する効果
ユキノシタは、解熱作用や抗炎症作用があるためがあるため、風邪で熱が出ているときや扁桃腺がはれているときは煎じた液を飲みます。このことからユキノシタは風邪の症状を緩和する効果があります。

[※2:メラノサイトとは、皮膚を構成する主要な細胞のひとつです。メラニンを生成する機能を持っています。]
[※3:ターンオーバーとは、肌が生まれ変わる周期のことです。ターンオーバーは20歳頃までは28日前後で生まれ変わるといわれていますが、ターンオーバーは年齢とともに遅れていき、40歳を過ぎると40日以上かかるようになります。年齢とともに肌の透明感やハリが失われる原因のひとつです。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。ストレス、紫外線、喫煙などの要因によって体内で過剰に発生した場合、脂質たんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

ユキノシタは食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○中耳炎を改善したい方
○シミ、そばかすが気になる方
○手足のむくみでお悩みの方
○火傷や傷のダメージを抑えたい方
○泌尿器系の病気を予防したい方
○風邪をひきやすい方

ユキノシタの研究情報

【1】ユキノシタを分析し、その含有成分について胃がん細胞(BGC823細胞)を用いて評価したところ、ケルセチンが最もDNAのフラグメーション化を引き起こし、細胞の生存を抑制しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17997321

【2】ユキノシタからケルセチンやピロガリン酸、ヒドロキシフェノール等、10成分のファイトケミカルを特定しました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20939183

【3】太陽に長時間さらされることにより、肝斑や高色素性の疾患にかかることがあります。メラノーマ細胞であるB16細胞を用いての研究で、アルブチンがメラニン産生を抑制し、ロシナーゼの活性を抑制していることがわかりました。さらにモルモットおよびヒトで、皮膚の組織へアルブチンを添加することによっても色素沈着を防ぐことがわかりました。このことから、アルブチンは皮膚の肝斑や色素沈着を防ぐ働きがあると考えられます。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19387580

【4】ネフローゼ症候群患者における尿中のカリウム濃度と浮腫(むくみ)の発症に関係性があると考えられます。腎臓では体液の濃度が調節されており、カリウムは水分調節機能を持っています。このことから、腎臓機能不全によるカリウム濃度の異常とむくみの関係性が示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21422677

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参考文献

・佐々木薫監修 最新版 アロマテラピー図鑑 主婦の友社

・鈴木洋 漢方のくすりの事典 医歯薬出版

・則岡孝子 栄養成分の事典 新星出版社

・岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科 植物生態研究室 http://had0.big.ous.ac.jp/index.html

・歴史公文書探究サイト ぶん蔵
http://bunzo.jp/

・資生堂 シミ予防研究所 http://www.shiseido.co.jp/haku/laboratory/evolution.html

・Chen Z, Liu YM, Yang S, Song BA, Xu GF, Bhadury PS, Jin LH, Hu DY, Liu F, Xue W, Zhou X. (2008) “Studies on the chemical constituents and anticancer activity of Saxifraga stolonifera (L) Meeb.” Bioorg Med Chem. 2008 Feb 1;16(3):1337-44. Epub 2007 Nov 7.

・Feng WS, Li Z, Zheng XK, Li YJ, Su FY, Zhang YL. (2010) “Chemical constituents of Saxifraga stolonifera (L.) Meeb.” Yao Xue Xue Bao. 2010 Jun;45(6):742-6.

・Lim YJ, Lee EH, Kang TH, Ha SK, Oh MS, Kim SM, Yoon TJ, Kang C, Park JH, Kim SY. (2009) “Inhibitory effects of arbutin on melanin biosynthesis of alpha-melanocyte stimulating hormone-induced hyperpigmentation in cultured brownish guinea pig skin tissues.” Arch Pharm Res. 2009 Mar;32(3):367-73. doi: 10.1007/s12272-009-1309-8. Epub 2009 Apr 23.

・Matsumoto H, Miyaoka Y, Okada T, Nagaoka Y, Wada T, Gondo A, Esaki S, Hayashi A, Nakao T. (2011) “Ratio of urinary potassium to urinary sodium and the potassium and edema status in nephrotic syndrome.” Intern Med. 2011;50(6):551-5. Epub 2011 Mar 15.

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