ヨーグルト

Yogurt

乳を乳酸菌や酵母で発酵させ 、クリーム状や液状にした発酵食品。水牛や山羊、羊、馬、ラクダなどの乳を原材料とし 、日本では多くが牛乳から作られています。ヨーグルト に は、良質なたんぱく質・脂質・カルシウム・ビタミンA・B ₁ ・B ₂ が含まれています。また、古くから乳の保存法として取り入れられてきました。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きがあるため、便秘改善・美肌効果に役立つといわれています。

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ヨーグルトとは

●基本情報
ヨーグルトは牛乳などの乳に乳酸菌や酵母などを入れて発酵させた栄養価の高い発酵食品です。「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」では、はっ酵乳と呼ばれ、成分規格は無脂乳固形分 8.0%以上、乳酸菌または酵母数 1000万ml以上と定められています。
日本で市販されているものには 、ラクトバチルス・ブルガリクス L actobacillus bulgaricus を用いたものが多く、砂糖、香料の他に寒天・ゼラチンなどを加えて固めたものが一般的です 。
ロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフ が ヨーグルトに含まれる乳酸菌が腸内細菌を増やし長寿に有用であるという説を唱え、 世界的に広まりました。
ヨーグルトは、良質なたんぱく 質・脂質・カルシウム・ビタミン A ・ B ₁ ・ B ₂ をバランスよく豊富に含み 、 たんぱく 質・脂質・カルシウムは、乳酸菌の働きによって、牛乳よりも消化・吸収されやすくなっています。また、ヨーグルトに含まれる乳酸菌には、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える働きがあります。

ヨーグルトは紀元前5000年頃、 東地中海からバルカン半島 ・ 中央アジアで、 人類の家畜として 飼っていた羊の乳がいつの間にか酸味のあるさわやかな飲み物に変わ っていたことから、 古代人たちはこれを乳の保存法として取り入れ て以来今日まで私達との長いつき合いが始まったのです。

●ヨーグルトの歴史
日本でも大昔にはヨーグルトに似た物を食べていたのですが、奈良時代には、酪、蘇、醍醐という乳製品が貴族に珍重されていました。その中で「酪」というのがヨーグルトのようなものと推定されています。その後、乳を利用した食文化は発展しませんでしたが、明治時代に乳牛が輸入され牛乳の販売が始まり、売れ残った牛乳の処理として、牛乳を発酵させた「凝乳」が売り出されました。これが日本で最初のヨーグルトです。大正時代になり、「ヨーグルト」という名称も使われるようになりましたが、当時は一部の人々だけに珍重されるか、病人食としても利用される程度でした。
ヨーグルトが本格的に生産され始めたのは第二次世界大戦後になってからです。現在では特定保健用食品マークのついたものや、機能性を追求したものなど種類も増え、いろいろなヨーグルトが楽しめるようになりました。

●ヨーグルトの種類
① プレーンヨーグルト
砂糖などを加えず、乳を乳酸菌で発酵させただけのシンプルなヨーグルト。

② ハードヨーグルト
乳を発酵させ寒天やゼラチンなどで固めた固形のヨーグルト。
砂糖や果汁、香料などを加えたものが一般的です。

③ ソフトヨーグルト
プレーンヨーグルトを撹拌 (かくはん してなめらかにし、 砂糖や果汁を加えデザート感覚で楽しむヨーグルト。フルーツヨーグルトは一般的にこのタイプです。

④ ドリンクヨーグルト
ヨーグルトを攪拌(かくはん)して液状にしたドリンクタイプのヨーグルト。
砂糖や果汁、香料などを加え飲みやすくしたものが主流です。

⑤ フローズンヨーグルト
ヨーグルトをアイスクリームのようにフリージングしたもの。凍結していますが乳酸菌は生きていて、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定されている生菌数を下回ることはありません。 アイスクリームより低カロリーなものが多く、さっぱりとした味です。

⑥ パウダーヨーグルト
乾燥させ粉末化したヨーグルト。水で希釈して飲料として、またはそのまま使い調理に用いる、原料がヨーグルトだけで出来たタイプと、増粘剤などを添加し牛乳に加え短時間で通常のヨーグルト状に固めることを目的としたタイプがあります。

●ヨーグルトの保存方法
10℃以下の冷蔵庫で保存するとよいでしょう。ヨーグルトの乳酸菌は生きているので、保存温度の低いほうが発酵の進みが遅く、製造時の新鮮な味を保つことが出来ます。 温度が高いと乳酸菌の活動が活発になって酸度が高くなり、味が酸っぱくなるとともに水分が分離する原因になります。
また、ヨーグルトに振動を加えると水分が出て分離しやすくなるので、冷蔵庫で保存するときは、しっかり蓋を閉め冷蔵庫のドア部分には入れず振動を避けて保存しましょう。

●ヨーグルトに含まれる栄養成分
たんぱく質
人間の臓器や筋肉、皮膚、髪などの組織を構成しており、人間の体の基礎をつくる重要な栄養素 です 。ヨーグルトに含まれるたんぱく質の一部は、乳酸発酵によりペプチド(分解されたたんぱく質)まで分解されているため、消化吸収されやすくなっています。

脂質
ヨーグルトに含まれる栄養素の中で、たんぱく質の次に多いのが脂質。
三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)の中で最もエネルギーが高く、体を動かすパワーの源です。 体温 の 維持 、 細胞や血液、ホルモンの材料となり、不足すると発育や皮膚の健康に影響が出てしまいます。

カルシウム
カルシウムは牛乳と同じく豊富に含まれ、しかも乳酸と結びついて乳酸カルシウムとなり、吸収されやすくなっています。これは、ヨーグルトが発酵する過程で牛乳の中に含まれるたんぱく質が分解され乳酸となり、カルシウムが結びつくことで消化吸収が促されるためです。カルシウムが骨や歯に吸収される際に必要となるリンが、理想とされる割合で牛乳には含まれているため、ヨーグルトなどの乳製品でカルシウムを取るのは効率的です。どの年代でも不足しがちな栄養素であり、骨粗しょう症の予防やストレス・イライラを抑える働きがあります。

糖質(炭水化物)
糖質は体の主なエネルギー源で、消化吸収されて血液に乗って全身をめぐり細胞のエネルギーとなります。ヨーグルトには、「乳糖」と呼ばれる脳や神経のエネルギー源にもなる糖質が含まれています。乳糖は、砂糖と違って甘さはなく、エネルギー源としてだけでなくカルシウムや鉄分の吸収を助ける整腸作用があります。

ビタミン
ヨーグルトにはさまざまなビタミンも含まれています。
代表的なものがビタミンAビタミンB₂です。

●ヨーグルトに使われる主な乳酸菌
ビフィズス菌
人間の腸内にすみつくことができる代表的な善玉菌で、腸内の環境を整えることで知られています。また、免疫力を 高め 、ビタミンB群やビタミンKを合成して、貧血 の予防、 肌荒れを防止するのにも役立ちます。

ガセリ菌
乳酸菌の中でも、ガセリ菌は食品で摂取しても腸まで届き、腸内に長くとどまることができるといわれています。 現在では様々な研究がされ注目を集めています。

○ブルガリクス菌
腸内に住みつくことはできませんが、乳酸を作り出し腸内の環境を整えます。
ヨーグルトを作る際には欠かせない菌です。

アシドフィルス菌
人間の体内にもともと存在する乳酸菌の一種。熱や酸にも強いため、直接腸に働きかけることができ、腸内環境を整えたり、免疫力を高めたり、口臭改善や胃潰瘍予防に役立ちます。

○サーモフィルス菌
ヨーグルトを作るときに必要な乳酸菌。 現在、国際規格では、ヨーグルトの種となる菌はブルガリクス菌とサーモフィルス菌と決められています。また、ヨーグルトを滑らかにし、水分が分離するのを防ぎます。

<ヨーグルトの豆知識>
ヨーグルトの表面に浮いてくる上澄みの液体は、乳清(ホエー)といって、乳酸菌の発酵が進むことや、振動をうけることで分離されたもの。 この乳清には、水溶性のビタミンやたんぱく質、ミネラルが豊富なため、捨ててしまわずヨーグルトと一緒にいただきたいものです。

ヨーグルトの効果

◎腸内環境を整える
ヨーグルトには、善玉菌の乳酸菌やビフィズス菌が含まれています。これらは腸内で悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える働きがあります。悪玉菌が増えると腸内環境が悪くなり、便秘や免疫力の低下を招き風邪をひきやすくなったり、リンパ球が減るため病気が治りにくくなったります。 ヨーグルトに含まれている乳酸菌は、大腸の運動を活発にし排便を促す作用があります。また、ヨーグルトの酸味は、食欲を増進させ、胃液の分泌を促し、消化吸収を助けます。乳酸菌が含まれているため免疫力を高めたり、血圧降下、血清コレステロール低下などの働きがあることが、明らかになっています。「おなかの調子を整える食品」などの効果が認められ、特定保健用食品マークを表示したヨーグルト、事業者の責任で科学的根拠に基づいて健康の維持増進が期待できる旨を表示した機能性食品のヨーグルトもあります。

◎免疫力を高める
免疫細胞の約7割は腸内にあるといわれています。ヨーグルトに含まれる乳酸菌などによって腸内環境が整えば腸内にいる免疫細胞が活性化し、免疫力が高まります。【1】

◎アレルギー(花粉症)の症状緩和
体の免疫反応が花粉に対して過剰に作用すると、アレルギー症状が引き起こされます。花粉症の症状を抑えるには、正常な免疫反応を保つこと。体の免疫をつかさどる免疫細胞は腸に存在しているといわれており、腸内環境を整えることで花粉症の症状が緩和されやすくなります。【3】

◎生活習慣病の予防
生活習慣病予防としても、乳酸菌は腸内の悪玉菌を減らし動脈硬化や高血圧を改善する効果があります。さらに、ヨーグルトの上澄みである乳清(ホエー)には血糖値を下げる働きがあり糖尿病の予防効果が、カルシウムには骨粗しょう症の予防効果もあります。特に、ヨーグルトに含まれるカルシウムは、体に吸収されやすい乳酸カルシウムという種類です。日本人はカルシウムが不足気味なので、ヨーグルトを利用すると効率的に摂取しやすくなるでしょう。

◎美肌効果
ヨーグルトに含まれる乳酸菌には、老廃物を排出するデトックス効果があります。乳酸菌は、新陳代謝を活発にするビタミンAやビタミンB₂をたくさん含んでいるためです。
乳酸菌が減ると、肌荒れやニキビができやくすなり肌トラブルが増えてしまいます。

◎便通改善
運動や水分不足、ストレスなどによって腸内の善玉菌は減少します。これによって腸内環境が悪化し便秘になりやすくなります。しかし、ヨーグルトには善玉菌を増やす乳酸菌が含まれているため、善玉菌が増えると悪玉菌が減少し腸内環境が整えられ腸内環境の働きを正常に戻すことで便秘の予防になります。

◎ダイエット効果
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし、老廃物のスムーズな排出を促す働きがあります。便秘が続くと太りやすくなるので、ヨーグルトは美容やダイエットにも効果的な食べ物なのです。

ヨーグルトはこんな方におすすめ

○胃腸の調子が悪い方
○風邪をひきやすい方
○花粉症でお困りの方
○肌荒れが気になる方
○ダイエット中の方
○疲れを感じている方

ヨーグルトの研究情報

【1】bulgaricus OLL1073R1株は、免疫調節効果のある細胞外多糖類を産生し、この株で発酵させたヨーグルトの摂取は、脾細胞からのインターフェロンγ(IFNγ)の産生を誘導することによりナチュラルキラー細胞の活性を高め、マウスのインフルエンザウイルス感染の重症度を改善しました。ヨーグルトはまた、健康な高齢者の風邪をひくリスクを減らし、健康な人の季節性インフルエンザワクチン接種後の抗体の産生を増加させました。これらのデータは、このヨーグルトの摂取が自然免疫と獲得免疫の両方を増強したことを示しています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/130006707993

【2】春期に鼻・眼症状を認め花粉症と診断された症例53例を選び、無作為に被験食(L55乳酸菌含有ヨーグルト)摂取群26例と、対照食(L55乳酸菌非含有ヨーグルト)摂取群27例の2郡に振り分け Double blind試験を行い、ヨーグルト摂取開始10週間後に、症状スコア(くしゃみ発作)が対照食群に比較して有意に低下していたことがわかりました。
https://doi.org/10.15036/arerugi.56.311_4

参考文献

免疫調節作用に着目したヨーグルトの開発と生理効果の応用展開 平成29年度日本栄養・食糧学会技術賞受賞Development of Yogurt with Immunomodulatory Effects and Its Application to Other Physiological Effects:(JSNFS Award for Achievement in Technological Research (2017) )

MS210スギ花粉症に対するL55乳酸菌含有ヨーグルトの臨床効果アレルギー性鼻炎,第19回日本アレルギー学会春季臨床大会

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