ビタミン類とは
●基本情報
ビタミン類とは、微量で体内の様々な機能を調節する働きを持つため生命活動に必要不可欠な成分です。
次の3つの条件を満たす有機化合物 [※1]のことをいいます。
①人間の体内で合成できない
②必要量はわずかでも、健康維持に必要
③不足すると欠乏症が起こる
ビタミン類は、三大栄養素である炭水化物 (糖質)、たんぱく質、脂質からエネルギーをつくり出す働きを助け、体の調子を整える効果があります。また、基本的に体内でつくり出すことができないため、食事やサプリメントから補う必要があります。
●ビタミン類の名前の由来
ビタミン類という名前は「生命にとって大切なもの」という意味を込めて、ラテン語で生命 (vital)に必要な、アミン化合物 (amine) [※2]という意味で名付けられました。その後、様々なビタミン類が発見され、アミンの構造でない化合物もあることがわかり、英語のつづりでは「e」が取れてvitaminとなりました。
ビタミン類は、発見した順にA、B、C…とアルファベット順に名前がつけられました。
しかし、その後ビタミンBは何種類かに分類されることや、ビタミンFやGがビタミンと呼べない物質であることが明らかになり、現在これらの名前は使われていません。
また、ビタミンKは生理作用を表す意味を持つドイツ語の凝固 (koagulation)の頭文字をとって名付けられました。
このように、ビタミン類の名前の由来には様々な意味が込められています。
また、研究によってそれぞれのビタミンの化学構造が明らかになり、化学名で呼ばれることもあります。
●ビタミン類の種類
ビタミン類には「脂溶性ビタミン」4種類と、「水溶性ビタミン」9種類の全13種類があります。
「脂溶性ビタミン」
水に溶けにくく油に溶けやすいビタミンです。
油を使用した調理をすると吸収率が上がり、効率良く摂取することができます。
また、過剰に摂取すると体内に蓄積され、過剰症が見られる場合があります。
脂溶性ビタミンは以下の4種類に分類されます。
<ビタミンA> レチノール・カロテン
ビタミンAとは、レバーやうなぎ、緑黄色野菜などに多く含まれているビタミンです。
動物性食品に含まれる「レチノール」と、緑黄色野菜に含まれる「カロテン」の2種類に分けられます。
脂溶性のため体内に蓄積し、すぐに使われなかったビタミンAは肝臓で貯蔵しています。
ビタミンAには、目の健康を維持する効果、皮膚や粘膜の健康を保つ効果、動脈硬化を予防する効果、ガンのリスクを軽減する効果などが期待できます。ビタミンAが不足すると、視力が落ち失明する場合がある程、人間にとって重要なビタミンです。
<ビタミンD> カルシフェロール
ビタミンDとは、魚介類やきくらげ、干ししいたけなどに多く含まれているビタミンです。
紫外線によって体内で合成できる唯一のビタミンで「太陽のビタミン」とも呼ばれ、つくられたビタミンDは肝臓に貯められます。
体内で活性型ビタミンDに変換され、カルシウムやリンの吸収に深く関わっています。
骨や歯を丈夫にする効果、血液や筋肉のカルシウム濃度を調節する効果、免疫力を高める効果があり、丈夫な体づくりには必要不可欠なビタミンです。
<ビタミンE> トコフェロール
ビタミンEは植物油や種実類などの食品に含まれる、強い抗酸化作用[※3]を持つビタミンです。
抗酸化作用によって、様々な病気の原因となる活性酸素 [※4]から体を守ります。
ビタミンEは脂溶性のビタミンで体内に蓄積されますが、他の脂溶性ビタミンと比べて過剰症は起こりにくく、積極的に摂取したいビタミンです。
<ビタミンK> フィロキノン・メナキノン
ビタミンKとは、納豆や葉野菜に多く含まれるビタミンです。
血液を凝固させるための物質をつくる時に欠かせない栄養素で、「止血のビタミン」とも呼ばれています。
骨にカルシウムを沈着させる働きもあり、骨粗しょう症を予防する効果があります。
食事から摂取できるほか、腸内細菌でも合成することができ、体に必要な量の半分ほどが体内でつくり出されています。
「水溶性ビタミン」
水に溶けやすいビタミンで、体内で使われなかったビタミンは尿などから排泄されます。
体に貯めておくことができないため、毎日摂取する必要があります。
ビタミンの種類によって、それぞれ性質や働きが異なります。
水溶性ビタミンは以下の9種類に分類されます。
<ビタミンB1> チアミン
ビタミンB1とは世界で最初に発見された、玄米や小麦胚芽、オートミールなど未精製のものや、豚肉に多く含まれるビタミンです。「疲労回復のビタミン」とも呼ばれています。
代謝 [※5]の過程で必要な酵素の働きを助ける補酵素となり、炭水化物 (糖質)の代謝を助けてエネルギーをつくり出します。
そのため、白米を主食にしている日本人にとって重要な栄養素といえます。
また、脳の中枢神経や手足の末梢神経、筋肉の機能を正常に保つ働きがあります。
<ビタミンB2> リボフラビン
ビタミンB2はレバーや納豆に多く含まれるビタミンで、三大栄養素の代謝を促進してエネルギーをつくり出すことに役立ちます。特に、脂質を燃焼させてエネルギー代謝や細胞の新陳代謝を促進し、皮膚や粘膜の機能維持や成長に関わります。
その働きから、「美容のビタミン」「発育のビタミン」ともいわれています。
<ビタミンB6> ピリドキシン
ビタミンB6とは、魚や肉などの動物性食品に豊富に含まれるビタミンです。
たんぱく質の分解・合成を助け、皮膚や粘膜の健康維持に働きます。
アレルギー症状や発作を抑え、免疫機能を維持する効果や、脂質の代謝を促す効果もあります。
また、神経伝達物質の合成にも関わり、精神状態の安定に役立ちます。
ホルモンのバランスを整える働きもあるため、女性の味方となるビタミンです。
食品から摂取する以外に腸内細菌でも微量につくられます。
<ビタミンB12> コバラミン
ビタミンB12は、赤血球を生成する時に働く「造血のビタミン」と呼ばれています。
悪性貧血の予防や神経の働きに必要不可欠な栄養素で、DNA合成の調節や補酵素として様々な代謝に関わっています。
コバルトというミネラルを含むため、「コバラミン」とも呼ばれ、赤い色をしています。
基本的には動物性食品にしか含まれないので、菜食主義者 (ベジタリアン)は意識して摂取する必要があります。体内では肝臓に貯蔵されています。
<ナイアシン>
ナイアシンとは、野菜などの植物性食品や肉・魚などに含まれ、人間の体内に最も多く存在するビタミンです。
糖質や脂質を燃やしてエネルギーをつくり出す時や、二日酔いの原因となるアルコールを分解する時に働きます。
また、皮膚や粘膜の健康維持を助けるほか、脳神経を正常に働かせる効果があります。
ナイアシンが欠乏すると、ペラグラという顔や手足が赤くなりカサカサになる皮膚病が起こります。
<パントテン酸>
パントテン酸は、「広くどこにでもある」という名前の意味の通り、あらゆる食品に含まれるビタミンです。腸内細菌の働きによって体内でも微量に合成することができます。
パントテン酸は、補酵素の構成成分となって様々な代謝に関わり、体内でエネルギーをつくり出したり、ストレスへの抵抗力をつけるために必要不可欠です。
また、動脈硬化の予防も期待できるなど、全身の細胞で健康維持のために働く大切な栄養素です。
<葉酸> プテロイルグルタミン酸
葉酸とは、レバーや葉野菜などに多く含まれるビタミンです。貧血を予防する物質として発見され、細胞の生まれ変わりや、新しい赤血球をつくり出すために欠かせない栄養素です。
特に、細胞増殖が盛んに行われる胎児が健康に育つために必要な成分です。
葉酸が不足すると、貧血を引き起こしたり、妊娠初期の場合、胎児の神経管閉鎖障害の危険性が高まります。そのため、妊娠中の方に特に必要な成分とされています。
<ビオチン>
ビオチンとは、レバーなどの食品に多く含まれるほか、人間の腸内で善玉菌によってつくり出すこともできるビタミンです。
三大栄養素である炭水化物 (糖質)、脂質、たんぱく質の代謝の過程で酵素の働きを助ける補酵素としての役割を担っています。この働きにより、皮膚や髪の毛を健康に保ったり、筋肉痛を和らげたりする効果があります。
また、アトピー性皮膚炎の改善にも役立ちます。
<ビタミンC> アスコルビン酸
ビタミンCは、野菜や果物に多く含まれる抗酸化ビタミンです。皮膚や血管の老化を防ぎ、免疫力を高める働きがあります。
細胞同士を結合するコラーゲンの合成に働いて骨を丈夫にしたり、肌にハリを持たせる効果があります。
その他、シミ予防などの美肌効果や抗ストレス効果をはじめ、多様な生理作用を持ちます。
ビタミンCの欠乏によって起こる壊血病を予防する物質として発見されました。
●ビタミン様物質
人間の体内で合成することができず、食品から摂取することが必要不可欠な必須ビタミンのほかに、ビタミン様物質と呼ばれる栄養素があります。これらはビタミンと似た働きをしますが、体内で合成することができる、欠乏症が起こらない、などの理由でビタミンとは区別されています。
[※1:有機化合物とは、炭素を含んだ化合物の総称です。]
[※2:アミン化合物とは、窒素を含んだ化合物の総称です。]
[※3:抗酸化作用とは、体内で発生した活性酸素を抑制する作用のことです。]
[※4:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素です。体内で過剰に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化の原因になるとされます。]
[※5:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]
ビタミン類の効果
ビタミンの役割は大きく2つに分けられます。
ビタミンが不足することによって起こる欠乏症状を防ぐ役割と、健康な体を維持し生活習慣病を予防する役割です。
種類によって性質や働きが異なりますが、それぞれ代謝を助け、体の調子を整える働きをしています。
<ビタミンA>
●視機能を改善する効果
ビタミンAは、夜間の視力の維持に効果がある栄養素です。
目の網膜 [※6]には光の明暗を感じる「ロドプシン」という物質が存在し、薄暗い場所でも目が慣れて見えるようになります。
ビタミンAはロドプシンの主成分として欠かせない成分です。
ビタミンAは色を見る力にも関わっており、目の網膜に光の受容体が多く存在し、昼間はカラーで、暗い所ではわずかな光でも見分けることができる仕組みになっています。
このように、ビタミンAは目の働きに大きく関わっています。【1】
<ビタミンD>
●骨や歯を丈夫にする効果
ビタミンDはカルシウムの吸収に必要なたんぱく質の合成を促し、小腸でのカルシウムとリンの吸収を高め、血液中のカルシウム濃度を高めます。さらに血液中のカルシウムが骨や歯に沈着するのを助け、成長促進や丈夫な骨や歯の形成、維持に働きます。
このため、ビタミンDが不足すると、カルシウムをしっかりと摂取していても体内への吸収が不十分となります。
その上、血液中のビタミンDが不足すると、骨からカルシウムを溶かし出す役割のホルモン [※7]の分泌が盛んになります。
この状態が長く続くと、骨量が減って骨粗しょう症になってしまいます。【2】
<ビタミンE>
●老化を防ぐ効果
ビタミンEは、細胞膜に多く存在し、細胞膜を構成するリン脂質のひとつである不飽和脂肪酸の酸化を防いでいます。不飽和脂肪酸が活性酸素によって酸化されると、過酸化脂質 [※8]となります。過酸化脂質が増えると細胞が破壊されDNAが傷つけられるため、異常な細胞を形成したり細胞死を早めてしまいます。
ビタミンE自体は非常に酸化されやすく、体内で活性酸素とすばやく結びついて除去することで、ほかの成分の酸化を防ぎます。
この働きによりビタミンEは細胞膜で活性酸素を除去し、過酸化脂質の生成を抑えて体を守っているのです。
このように強い高酸化力を持つビタミンEには、血管や肌・細胞などの老化を防ぐ効果があり「若返りのビタミン」とも呼ばれます。
その他、心疾患や脳梗塞などの生活習慣病の予防、血行改善・美肌効果、性ホルモンのバランスを整える効果も期待できます。
<ビタミンK>
●血液を凝固させ止血する効果
ビタミンKは、 血液凝固作用で働く血液凝固因子をつくる時に必要な成分で、血液の凝固に必要不可欠なビタミンです。
出血した時に血が止まるのは、体内に血液を凝固させる血液凝固作用という働きがあるためです。
一方で、ビタミンKは血液が凝固するのを抑制する働きもしています。
ビタミンKは必要に応じてバランス良く血液凝固をしたり、凝固を抑制する役割を担っています。
<ビタミンB1>
●疲労回復効果
ビタミンB1は、炭水化物 (糖質)の代謝過程で必要な酵素の働きを助ける補酵素となって働きます。
炭水化物 (糖質)は体内で消化されてブドウ糖に分解され、エネルギー物質の材料となります。
ビタミンB1からつくられる補酵素は、ブドウ糖から段階を経てエネルギーに変わる時に必要なため、ビタミンB1がないとエネルギーを十分につくり出すことができません。
その上、ブドウ糖をエネルギーに変える途中でつくられる、ピルビン酸や乳酸という疲労物質が体内に溜まり疲れやすくなります。そして、エネルギーが足りなくなるためエネルギーを必要とする臓器で障害が起こります。
また、ビタミンB1からつくられる補酵素は、たんぱく質やアルコールを分解してエネルギーに変える時にも関わっています。
<ビタミンB2、ビタミンB6>
●成長を促進する効果
三大栄養素である炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質は、体内で消化・分解され、吸収されてエネルギーに変えられます。
ビタミンB2は、特に脂質の代謝において、エネルギーをつくり出す時に必要な補酵素として非常に重要な働きをしています。
ビタミンB2は、小腸で吸収され、血液によって肝臓・心臓・腎臓などに運ばれた後、たんぱく質と結びついた形のFMN (フラビンモノヌクレオチド)・FAD (フラビンアデニンジヌクレオチド)に変換されます。
そして、水素を受け取ってFMNH2とFADH2になることにより補酵素として働きます。
エネルギーを消費する程、この補酵素が使われるため、ビタミンB2の必要量も多くなります。
ビタミンB2が不足すると、脂質の代謝がうまくいかず肌荒れや髪のトラブルが起こります。
ビタミンB6はたんぱく質の代謝に欠かせない栄養素です。
肉や魚、卵などのたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され、吸収されたのち、人間の体に必要なたんぱく質に再合成されます。
ビタミンB6をしっかりと摂ることで、たんぱく質の代謝がうまく進むため、丈夫で健康な皮膚や粘膜、髪、歯、爪をつくることができ、成長を促進します。
また、アミノ酸からエネルギーをつくり出す過程でもビタミンB6が働きます。
<ビタミンB12>
●貧血を予防する効果
ビタミンB12は、細胞が分裂する時に必要不可欠な補酵素で、葉酸と協力して血液中の赤血球をつくるための細胞分裂を助ける働きをしています。赤血球は約4ヵ月で寿命が尽きるため、骨髄で常に新しい赤血球がつくられているのです。
また、ビタミンB12は、赤血球と結合し酸素を運ぶ役割をしているヘモグロビンの合成を助ける効果もあります。
ビタミンB12が不足し赤血球をつくるための細胞分裂や増殖がうまくいかなくなると、巨赤芽球性貧血という貧血が起こります。
巨赤芽球性貧血は、赤血球のもととなる赤芽球 [※9]が異常に巨大化して (巨赤芽球)赤血球まで成熟できずに死んでしまい正常な赤血球が減ることによって起こるため、ビタミンB12を摂取することが貧血の予防に役立ちます。
<ナイアシン>
●粘膜や皮膚を健康に保つ効果
ナイアシンは、食品から摂取した糖質や脂質を燃やしてエネルギーに変える時に必要な物質です。
体がエネルギーを生み出す働きの60~70%にナイアシンが関わっています。
ナイアシンは他の物質と結びついて、三大栄養素からエネルギーをつくるために必要な酵素を助ける補酵素として働きます。
このナイアシンからつくられる補酵素を必要とする体内の酵素は400種類以上もあり、人間の体で働く酵素の約2割を占めています。
こうしてナイアシンは、エネルギーをつくり出すことを促し、そのエネルギーを使うことで細胞や内臓が活動したり、体温を保ったり、体を動かすことができます。
そのほか、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化力を持つビタミンが作用するときにも関わります。【3】
<パントテン酸>
●エネルギーを生成する効果
パントテン酸は、三大栄養素である炭水化物 (糖質)、たんぱく質、脂質の代謝を助け、エネルギーの生成をサポートします。
パントテン酸は、ビタミンB1とともに糖の代謝の中心的な役割を担ったり、ビタミンB2とともに脂質代謝に関わります。体内でコエンザイムAという補酵素の構成成分となり、エネルギー代謝の過程で働く100種以上の酵素の働きを助けています。
また、パントテン酸は脂肪酸と結合し、代謝に関わるアセチルCoAをつくったり、脂肪酸の合成と分解に関わるアシルCoA をつくる働きがあります。【4】
<葉酸>
●妊娠中の方など女性の健康を保つ効果
葉酸は、細胞の遺伝情報が詰まったDNAを合成する時に必要な酵素の働きを助ける補酵素として働きます。
DNAが正常に合成されると、細胞はその遺伝情報をコピーしながら分裂して増え、新陳代謝や十分な成長を果たすことができます。
細胞増殖が盛んな胎児が発育する妊娠中や、乳児を育てる授乳中には必要不可欠です。
特に、妊娠初期に葉酸を十分に摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害という先天異常のリスクを軽減する効果があります。
<ビオチン>
●血糖値を下げる効果
ビオチンは、補酵素として糖の代謝に関わっています。
炭水化物 (糖質)を分解してできるブドウ糖を燃やし、エネルギーをつくり出す過程では、必ず燃えカスとして疲労物質である乳酸が発生します。そこで体内では、乳酸を肝臓に運び、乳酸から再びブドウ糖をつくり出してリサイクルしています。
この働きを「糖新生」といい、ビオチンは糖新生の過程で働く酵素を助ける補酵素として、糖の代謝を助けています。
また、ブドウ糖は体内で乳酸からだけでなく、アミノ酸や脂肪酸 [※10]からもつくられており、ビオチンはこの過程でも補酵素として働いています。
ビオチンは糖の代謝に関わり血糖値を調節することから、高血糖を改善する作用も報告されています。
<ビタミンC>
●粘膜や皮膚を健康に保つ効果
ビタミンCは、体を構成する重要なたんぱく質のひとつ、コラーゲンを合成する時に必要な補酵素として働きます。
コラーゲンは体をつくるたんぱく質のうちの3分の1を占め、細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きをしています。
ビタミンCを十分に摂取してコラーゲンの合成を助けることで、細胞同士の結合を強くし、血管や筋肉、皮膚、骨などを丈夫に保つ働きがあります。また、しわを防いだり、傷ややけどの治りを良くする効果もあります。
コラーゲンが細胞同士をしっかり固めることは、風邪などのウイルスを体内に侵入させにくくすることにも役立ちます。
[※6:網膜とは、眼球の内側を覆う膜のことで、目で見たものの色や光を判別する働きを持つ部分です。]
[※7:ホルモンとは、体内で合成され、微量で体の様々な機能を調節する物質のことです。]
[※8:過酸化脂質とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質が活性酸素によって酸化されたものの総称です。]
[※9:赤芽球とは、骨髄の中に存在する血液細胞のことです。赤芽球が細胞分裂を繰り返すことによって赤血球となります。]
[※10:脂肪酸とは、炭素、水素、酸素から成る油脂や蝋(ろう)、脂質などの構成成分です。脂肪酸とグリセリンが結び付いて脂質が構成されます。]
ビタミン類は食事やサプリメントで摂取できます
ビタミン類を多く含む食材
○緑黄色野菜
○果物
○豚肉
○納豆
こんな方におすすめ
○偏食気味の方
○体調を整えたい方
○骨や歯を丈夫にしたい方
○生活習慣病を予防したい方
○疲れやすい方
○髪や爪、肌の健康を保ちたい方
○貧血になりやすい方
ビタミン類の研究情報
【1】眼疾患の予防及・治療において抗酸化物質および微量元素が注目されています。白内障による酸化ストレスと同様に多様な微量栄養素および抗酸化との関係や白内障の予防、他の眼障害としての食事介入を見直しました。近年の研究から、βカロテン、ルテイン、ゼアキサンチンの摂取は、白内障および黄斑変性症に有効であることがわかっています。また、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEおよび亜鉛のサプリメントは、進行性の加齢黄斑変性を予防する可能性があることがわかっています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20829640
【2】高齢女性120名を対象に、カルシウムを1日1,200mg とビタミンDを1日1,000 IUの量で5年間摂取させたところ、加齢に伴う、骨量減少、骨形成の指標となるアルカリホスファターゼの増加、骨吸収マーカーの指標の尿中PDP/Cr値の増加が抑制されました。ビタミンD が骨粗鬆症の予防に役立つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18089701
【3】高脂血症患者を対象に、ナイアシンの摂取量とコレステロールとの相関性を調査したところ、ナイアシンを摂取することにより、総コレステロールやLDLコレステロール及びトリグリセリドが減少し、HDLコレステロールが増加することが分かりました。ナイアシンは、リポたんぱく質など脂質代謝関連物質にも影響を与えることで、高脂血症予防効果を持つことが示唆されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8853585
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19621759
参考文献
・食の医学館 本多京子 監修 小学館
・機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 清水俊雄 薬事日報社
・基礎栄養学 改訂第2版 奥恒行 南江堂
・最新版 からだに効く栄養成分バイブル 中村丁次監修 主婦と生活社
・栄養素の通になる 第2版 上西一弘 女子栄養大学出版部
・栄養成分の事典 則岡孝子監修 新星出版社
・最新・最強のサプリメント大事典 原山建朗 昭文社
・栄養の教科書 中嶋洋子 新星出版社
・新しい栄養学と食のきほん事典 井上正子 西東社
・安全においしく食べるためのあたらしい栄養学 吉田企世子 高橋書店
・よくわかる栄養学の基本としくみ 中嶋豊 秀和システム
・公益社団法人ビタミン・バイオファクター協会 HP
・Agte V, Tarwadi K. (2010) “The importance of nutrition in the prevention of ocular disease with special reference to cataract.” Ophthalmic Res. 2010;44(3):166-72.
・Zhu K, Devine A, Dick IM, Wilson SG, Prince RL. 2008 “Effects of calcium and vitamin D supplementation on hip bone mineral density and calcium-related analytes in elderly ambulatory Australian women: a five-year randomized controlled trial.” J Clin Endocrinol Metab. 2008 Mar;93(3):743-9.
・Crouse JR 3rd. 1996 “New developments in the use of niacin for treatment of hyperlipidemia: new considerations in the use of an old drug.” Coron Artery Dis. 1996 Apr;7(4):321-6.
・Moĭseenok AG, Gurinovich VA, Omel’ianchik SN, Slyshenkov VS. “[Coenzyme A biosynthesis as universal mechanism of conjugation of exogenous and multiple pantothenic acid functions].” Ukr Biokhim Zh. 2004 Jul-Aug;76(4): 68-81.