ウスベニアオイ

common mallow
Malva sylvestris

ウスベニアオイは濃い青紫色の花弁が特徴のハーブです。粘液を豊富に含むハーブとして知られ、風邪によるのどの腫れや痛み、胃炎、膀胱炎、尿道炎などの際に粘膜保護のために伝統的に用いられています。また、ハーブティーとして飲む際に色の変化を楽しむことができるという特徴を持っています。

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ウスベニアオイとは

●ウスベニアオイの基本情報
ウスベニアオイは濃い青紫色の5枚の花弁が特徴です。アオイ科の多年草[※1]ハーブで、ヨーロッパを原産とし、5月〜6月の開花時に葉と花が採取され、生の若葉と花は、サラダにミックスして、野菜のように使われることもあります。
ウスベニアオイは高さ約2mにもなる植物で、葉身は長さ6〜8cmで、茎は円柱形で直立し、枝分かれします。英名では、コモンマロウまたはマロウブルーといいます。濃い紫色をしている花の色は、アントシアニンによるものです。
ウスベニアオイが属するマロウの植物には現在1000種もの種類があるといわれており、中でもウスベニアオイは最も薬効が高いとわれています。
ウスベニアオイは粘液を豊富に含むハーブとして知られており、粘液質を豊富に含んでいる根は、風邪によるのどの腫れや痛み、胃炎、膀胱炎、尿道炎などの粘膜保護のために用いられ、また神経を穏やかにする働きがあるとされ、せきや気管支炎などの呼吸器系の症状に働きかけます。他の部位では、花にアントシアニン、葉にはタンニンが含まれています。
そのほか粘液の豊富なウスベニアオイは、湿布剤やローション剤、パック剤として外傷や皮膚炎に用いられています。さらに、タンニンを豊富に含む葉は消炎のために湿布薬として使用されることもあります。

●ウスベニアオイの歴史
ウスベニアオイは、紀元前8世紀頃から食用とされていたと考えられています。16世紀には万能薬を意味するオムニモルビア(omnimorbia)と名付けられました。この名前は、緩やかな瀉下(しゃげ)作用[※2]をもつウスベニアオイが、便通を良くすることで体の病気を取り除くと考えられていたことに基づきます。古代アラビアの医師は、消炎のためにウスベニアオイの葉を用いたといわれています。日本では江戸時代に伝来してきたといわれています。
ウスベニアオイの多様な効能から、スペインでは、「家庭菜園とウスベニアオイ、それだけあれば、家庭用の薬には十分である」ということわざが残されています。
また一般名であるmallowは、「柔らかいもの」または「柔らかにする」を意味するラテン語のmalva(マルバ)に由来します。これは植物自体が持つ粘液に、緩和剤[※3]の効果があるということに由来していると考えられています。

●ウスベニアオイの特徴
ウスベニアオイの特徴には、ハーブティーとして花弁をお湯に浸して飲用する際に、色の変化が起こる点があげられます。これは、ウスベニアオイの花に含まれるアントシアニンの性質によるものです。ウスベニアオイは熱湯を注ぐと、目にも鮮やかな濃い青色となり、時間の経過とともに空気に含まれる酸素と反応して、次第に紫色に変化していきます。
そして、さらにレモン汁を加え、液を酸性化させると瞬時に色がピンク色に変化し、美しい色の変化を楽しむことができます。反対に、重曹を入れることで液をアルカリ性にすると明るめの水色に変化します。
この色の変化の特徴から、ウスベニアオイのハーブティーは「サプライズティー」とも呼ばれています。

●ウスベニアオイの使い方
胃炎や咽頭炎、気管支炎、便秘でお悩みの方は乾燥させた花か葉を5g、もしくは生の花か葉15gに熱湯をカップ1杯注ぎ、10分蒸らしたティーを1日3回飲むと効果的です。
また、のどの痛みのお悩みには、乾燥した花か葉5gを1カップの水で煎じて、冷ました液でうがいをするとよいといわれています。

[※1:多年草とは、茎の一部、地下茎、根などが枯れずに残り、複数年にわたって生存する草のことです。]
[※2:瀉下(しゃげ)作用とは、下剤のような働きのことです。]
[※3:緩和剤とは、苦しみや痛みなどの程度をゆるめ、やわらげる薬剤のことです。]

ウスベニアオイの効果

●視機能を維持する効果
ウスベニアオイの花には青紫色の天然色素アントシアニンが含まれています。アントシアニンはポリフェノールの一種で、紫外線やウイルスなどの外敵から身(実)を守るために植物がつくり出した成分で、視機能を改善する効果があります。
ウスベニアオイに含まれるアントシアニンには、視機能を維持する効果があり、長時間のパソコン作業や読書時などの疲れ目などに有効性が期待されます。

<豆知識>近くの見すぎは近視の始まり
読書やパソコン作業、テレビゲームなどをして、近いところをずっと見た後に遠くを見ると、ピントが合いづらく、視界がぼやけることがあります。この状態は少し目を休ませると治まるため、仮性近視といいます。
仮性近視は目を休めたり、正しい目の使い方をすることで回復することができますが、放置すると、本当の近視になってしまうことがあります。
目を正しく使うことに加え、使いすぎたと感じるときは、ウスベニアオイのハーブティーやブルーベリーの果実など、目の栄養素アントシアニンが豊富な食べ物での目のケアも生活に役立ちます。【1】【2】【3】

●粘膜を保護する効果
ウスベニアオイの根や花には豊富な粘液質が含まれています。粘液質は体内の粘膜を覆い、粘膜を保護し、傷ついた粘膜の修復を促す効果があるといわれています。この効果から、古来より風邪によるのどの腫れや痛み、胃炎、膀胱炎、尿道炎などに粘膜を保護し、修復を促すものとして使用されてきました。【4】【5】
また、湿布剤やローション剤、パック剤として外傷や皮膚炎にも用いられています。

食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○目の疲れが気になる方
○のどの痛みがひどい方
○胃の健康を保ちたい方

ウスベニアオイの研究情報

【1】ビルベリーエキスに豊富に含まれているアントシアニンは、抗酸化作用と血管新生抑制作用を持ち、視機能保護作用を持つことから、アントシアニン豊富なウスベニアオイも同様の視機能保護作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19496063

【2】ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いた試験では、ビルベリーエキスに豊富に含まれているアントシアニンにより、HUVBECの増殖と遊走、網膜血管新生の抑制が確認されたことから、視機能保護作用を持つことから、アントシアニン豊富なウスベニアオイも同様の視機能保護作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18955266

【3】ビルベリーエキスに豊富に含まれているアントシアニンにより、網膜神経節細胞における活性酸素によるダメージの減少と、マウスの神経節細胞障害を減少が確認されたことから、視機能保護作用を持つことから、アントシアニン豊富なウスベニアオイも同様の視機能保護作用を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19415665

【4】ウスベニアオイは、抗炎症作用を有することがわかっており、古くからヨーロッパなどで、治療に使用
されていました。ウスベニアオイは、ラジカル捕捉作用(50% 抑制濃度0.43mg/ml)、脂質過酸化抑制作用(脳細胞酸化ストレス50% 抑制濃度0.09mg/ml)であることから、ウスベニアオイは抗酸化作用を持ち、多くの健康機能を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20233600

【5】バナジウム腎毒性ラットに対し、ウスベニアオイを体重あたり0.2g の濃度で摂取させたところ、腎中の抗酸化酵素の値が改善し、腎臓病の症状(ボウマン嚢の萎縮等)が改善されたことから、ウスベニアオイは抗酸化力により腎臓保護作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21513564

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参考文献

・田部井満男 ハーブスパイス館 小学館

・佐々木薫 ハーブティー事典 池田書店

・林真一郎 メディカルハーブの事典 東京堂出版

・Matsunaga N, Tsuruma K, Shimazawa M, Yokota S, Hara H. (2010) “Inhibitory actions of bilberry anthocyanidins on angiogenesis.” Phytother Res. 2010 Jan;24 Suppl 1:S42-7.

・Matsunaga N, Chikaraishi Y, Shimazawa M, Yokota S, Hara H. (2010) “Vaccinium myrtillus (Bilberry) Extracts Reduce Angiogenesis In Vitro and In Vivo.” Evid Based Complement Alternat Med. 2010 Mar;7(1):47-56. Epub 2007 Oct 27.

・Matsunaga N, Imai S, Inokuchi Y, Shimazawa M, Yokota S, Araki Y, Hara H. (2009) “Bilberry and its main constituents have neuroprotective effects against retinal neuronal damage in vitro and in vivo.” Mol Nutr Food Res. 2009 Jul;53(7):869-77.

・Barros L, Carvalho AM, Ferreira IC. (2010) “Leaves, flowers, immature fruits and leafy flowered stems of Malva sylvestris: a comparative study of the nutraceutical potential and composition.” Food Chem Toxicol. 2010 Jun;48(6):1466-72. Epub 2010 Mar 15.

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