椿油

camellia oil

椿油は、椿の種から絞り出された天然の植物性油です。脂肪酸の一種であるオレイン酸の働きで、髪や肌の潤いを保ち、紫外線やダニなどの刺激から守ることで、健康的な美しさに導きます。また、食事で椿油を使えば、コレステロール値の抑制などにも効果を期待できます。

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椿油とは

●基本情報
椿油とは、ツバキ科ツバキ属の植物である椿の種子から採れる植物性油の総称です。椿は日本人にとって身近な植物で、昔から花を観賞用に、茶や茎を食用にするなど、幅広く利用されてきました。そんな椿油は1000年も昔の平安時代から、黒髪のお手入れに愛用され、ほかにも天然のヘアケアオイル、スキンケアオイル、食用油としても重宝されてきました。
世界中に6000種類以上、日本だけでも2000種類もの椿があり、日本に代表される種類としてはヤブツバキが有名です。10月~翌年の5月にかけて全国で花を咲かせ、その後、緑色の大きな実をつけます。熟してぱっくり割れた実から種を取り出し、椿油は搾取されます。かすかに黄色みを帯びた色をしており、絞っただけの状態では独特のにおいがあるため、加熱や加圧、濾過などの方法で、使用しやすい形に整えられています。
椿油の主な成分は、オレイン酸という脂肪酸です。椿油は約85%がオレイン酸で、その割合は健康効果が高いといわれているオリーブ油よりも豊富です。オレイン酸は不乾性であるため、空気に触れても酸化しにくい性質をしています。そのため、椿油を食事で体内に取り込むことで、血液中の善玉(HDL)コレステロールは減らすことなく、悪玉(LDL)コレステロールのみを減らしてくれます。コレステロール値を正常に保つ効果が期待できるため、1990年代から注目を浴びています。また、私たちの皮脂の約40%をオレイン酸が占めているため、同じオレイン酸を豊富に含む椿油はそれだけ髪や肌になじみやすく、浸透度も高いと言われています。椿油を肌に使用することで、皮脂不足による水分の蒸発を防ぎ、潤いを保つ効果があります。潤いのある肌は外部からのダメージを予防してくれるため、肌の保護機能を高めてくれます。また、椿油の搾りかすには、配糖体[※1]の一種であるサポニンが豊富に含まれています。サポニンは水に溶けると泡を発生させる性質があるため、天然の界面活性剤としてシャンプーや洗剤としても利用することができます。

●椿油の歴史
日本人は1000年も昔の平安時代から、食用や薬用、髪や肌のお手入れ、灯りの燃料、鉄製品のさび止め、木製品のひび割れ止めなど、様々な用途で椿油を使ってきました。椿は18世紀頃に宣教師カメリによってヨーロッパに持ち帰られたことに由来して、外国語でカメリアと呼ばれるようになりました。「続日本紀」には、奈良時代に遣唐使が日本からの献上品としてヤブツバキをたびたび持って行ったと記されています。
椿油は、鎌倉時代には精進料理の揚げ油として、江戸時代には高級天ぷら油として使われていました。食通としても有名だった将軍徳川家康も、椿油で揚げた天ぷらを食べていたといわれています。

●椿油の生産地
日本を代表する椿であるヤブツバキは、北海道を除いた日本全土に分布しています。北は青森県の夏泊半島、南は沖縄の西表島で栽培されています。特に有名な産地は長崎県で、長崎県の五島列島の山々には、天然のヤブツバキが多く自生しています。そのため、椿の花は長崎県の県花にもなっています。

●椿油の働き
椿油は、ほかの植物油と比較して、オレイン酸の含有量が最も多いことが特徴です。また、リノール酸[※2]などの多価不飽和脂肪酸が少なく、ビタミンEも含まれているため非常に酸化しにくい油といえます。オレイン酸の働きで、髪や肌の潤いを保つ保湿効果や、紫外線を吸収する紫外線防止効果が期待できます。乾燥から肌を守ることで、アレルギーなどの発生抑制にも効果的です。髪に使えば、キューティクルを保護し、潤いを保ったまとまりのよい髪にするだけでなく、地肌の健康を維持する効果があります。また、肌の保湿では、年齢とともに減少してしまうセラミドの働きを助け、皮脂層の保湿を保ち、肌に弾力を与えてくれます。
また、椿油に含まれるサポニンは殺菌効果を持ち、カビやダニといった外敵から髪や肌を守ってくれます。殺菌効果だけでなく、水や油に溶けると発泡する性質のあるサポニンは、昔から洗髪や石鹸としても重宝されています。

[※1:配糖体とは、糖と様々な種類の成分が結合した有機化合物のことです。生物界に広く分布し、植物色素であるアントシアニンやフラボン類などがあげられます。]
[※2:リノール酸とは、人間の体内で合成できない不飽和脂肪酸の一種です。大豆油やコーン油などの植物性の油に多く含まれます。]

椿油の効果

●髪の健康を守る効果
椿油には高いヘアケア効果が期待できます。髪の毛につけることで、ドライヤーの熱や紫外線などの刺激から髪を守り、枝毛やパサつきを抑えます。また、必要な水分をキープし、髪表面のキューティクルをなめらかに整えることで、潤いとハリのある美しい髪に導きます。頭皮に使えば、毛穴に詰まった汚れなどを取り除き、頭皮の新陳代謝を促します。栄養の行き届いた健康な頭皮になることで、毛母細胞[※3]を活性化させ、抜け毛や白髪を防ぐ効果が期待できます。また、ふけやかゆみの予防にも効果的です。

●美肌効果
椿油に含まれるオレイン酸は、私たちの皮脂にも含まれている成分です。そのため、肌になじみやすく、潤い保持にも効果的です。肌に潤いを与えることで、皮膚の乾燥を防ぐことはもちろん、外部の刺激から肌を守ってくれます。また、クレンジングオイルとして使用すれば、毛穴に詰まった皮脂コレステロールを溶かし、清潔な肌に保ってくれます。植物性油で安全性も高いことから、マッサージオイルやベビーオイルとしての使用にも適しています。【2】

●コレステロール値を下げる効果
椿油のオレイン酸には、血中コレステロールを下げる働きがあります。善玉(HDL)コレステロールの量は減らさず、悪玉(LDL)コレステロールだけを減らしてくれるため、食生活などが乱れがちな方におすすめです。また、胃にやさしく、腸の滑りをよくしてくれるため、排便を促す効果も期待できます。【1】

[※3:毛母細胞とは、毛乳頭周辺の組織細胞です。毛乳頭から栄養素や酸素を受け取り、細胞分裂を繰り返すことで髪の毛を生成しています。]

椿油は食事やサプリメントで摂取できます

こんな方におすすめ

○肌のハリや弾力を保ちたい方
○髪の潤いを保ちたい方
○コレステロール値が気になる方

椿油の研究情報

【1】無作為クロスオーバー試験の結果、オレイン酸を豊富に含んだ5週間にわたる食用油の摂取によって、血中の総コレステロールおよびLDLコレステロール値が減少することが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2333839

【2】椿油は、抗シワ作用があることが研究されており、そのメカニズムは、MMP-1の抑制作用およびⅠ型コラーゲンの産生を促す作用によることが分かりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17386986

参考文献

・Wardlaw GM, Snook JT. (1990) “Effect of diets high in butter, corn oil, or high-oleic acid sunflower oil on serum lipids and apolipoproteins in men.” Am J Clin Nutr. 1990 May;51(5):815-21.

・Jung E, Lee J, Baek J, Jung K, Lee J, Huh S, Kim S, Koh J, Park D. (2007) “Effect of Camellia japonica oil on human type I procollagen production and skin barrier function.” J Ethnopharmacol. 2007 May 30;112(1):127-31. Epub 2007 Feb 15.

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