桃仁(とうにん)

peach kernel

桃仁は桃の種の核を取り出して、日干ししたものです。生薬として漢方薬に配合されており、血流を改善したり、月経の調子を整えたりする効果があります。女性の不調に効果を発揮します。

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桃仁(とうにん)とは

●基本情報
桃仁はバラ科のモモまたはその変種であるノモモなどの種(仁)で、果実から核果を取り出して外の硬い殻を割り、種子を日干ししたものです。桃仁の成分は、青酸配糖体のアミグダリン、酸素のエムルシン、脂肪油を含んでいます。主に生薬として利用されています。
生薬とは天然の植物・鉱物・動物などの全部または一部を簡単に加工して薬として用いるものを言います。桃仁も生薬のひとつです。一つひとつの生薬にはさまざまな作用を持つ多くの成分が含まれています。
多数の有効成分を含んだ生薬が組み合わさって処方されるものが漢方薬と呼ばれ、中国では昔からの医学を中医学と呼んでおり、治療の柱として薬物療法に漢方薬が用いられています。桃仁が用いられた漢方には桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)が知られており、生理不順や便秘などに用いられています。他にも月経障害や更年期障害に用いられる桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や、更年期障害や便秘に用いられる大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)などがあります。
日本でも桃仁を用いた果実酒が飲まれています。ウイスキーなどの蒸留酒に砂糖と一緒につけておくと香高いまろやかなお酒が出来上がります。果実酒という形でも桃仁を摂取することができます。

●日本における桃仁のはじまり
桃は中国原産で、日本には弥生時代に伝わりました。江戸時代中期の本草書に「あせもは、桃の葉の汁で洗うとよい」などの記載がみられます。
桃の葉にはタンニンなど渋み成分が多く含まれており、収れん作用[※1]・消炎作用・制菌作用があります。
そのため、桃の葉を濃く煎じた液はあせもや湿疹、ただれに塗付しても効果がみられるといわれ、日本でも使用されていました。

●桃仁の過剰摂取
桃仁に含まれるアミグダリンは多量に摂取すると、悪心[※2]・嘔吐・頭痛・目まいなどの症状が表れることがあります。
特別な効果を期待して過剰に摂取すると、思わぬ健康障害を招く恐れがあります。過剰摂取や飲み合わせには十分注意する必要があります。
また、妊娠中の方には禁忌とされています。大量でなければ問題ありませんが、早流産の原因にもなりかねませんので、服用する際は医師への相談が必須です。

<豆知識>桃の歴史
中国では昔からの伝説で西王母という女王が愛した果物として知られています。桃の花や果実が明るく華麗で吉祥の植物と考えられており、実の形が邪気を除くことから、おめでたい席ではよく、桃符と呼ばれる句が贈られます。また誕生日に贈られるもっともポピュラーなプレゼントは桃の形をしたお菓子です。日本でも桃の節句とあるように人々に慕われていますね。

桃仁(とうにん)の効果

●血流を改善する効果
体内の「血」のめぐりをよくする効果が期待されています。血行とともに、体内の水分のめぐりも整えてくれます。うっ血や血行障害などの、血によるこぶや腫れ物も縮小させる作用があり、女性特有の子宮筋腫や卵巣のう腫など、血の塊が原因で起こる病気にも作用します。また、血流を良くしてくれるので、目の下のクマやしみ、しわの改善にも効果を発揮します。【1】【2】

●女性特有の悩みを改善する効果
ホルモンバランスを整える働きがありますので、月経痛や無月経により下腹部が張って痛むときや、月経量が少ないなど、女性の抱える月経の悩みに効果を発揮します。
月経血がすっきりとでない、また血塊がまじる、月経血が紫黒色、月経量が少ないなどの月経時の血液の悩みにも働きます。
●便秘を解消する効果
潤燥の便秘に用いられます。特に外傷後の便秘や寝たきりによる運動不足で腸の活動が減るために起こる便秘に適しています。
油脂分を多く含むため、大腸の潤滑をよくすると考えられます。
また、熱性の疾患や打撲損傷による内出血にともなう便秘で、腹部が膨らんで張っていたり発熱したりするときにも用いられます。便秘解消のために処方される潤腸湯(ジュンチョウトウ)という漢方に配合されています。

●痛みを軽減する効果
急性の虫垂炎や肺膿には桃仁を補助薬として使用することもあります。ストレスや生活習慣などにより血のめぐりが悪くなったことで難聴や耳鳴りが起こる方にも処方されています。また、関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛を改善し、腰や手足の筋肉が激しく痛む人にも処方されます。【3】

桃仁はこんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○月経によるお悩みがある方
○便秘でお悩みの方
○肩こりをやわらげたい方
○関節痛を緩和したい方

桃仁の研究情報

【1】桃仁はお血(血液循環がスムーズでは無い)の状態を改善し、血流量低下が改善されたことから、桃仁は血流改善効果を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110007356327

【2】桃仁、紅花は血小板凝固抑制作用を持つことから、微小血管循環を改善し、腎臓疾患予防に役立つと感がられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8334344

【3】桃仁の水抽出物は、抗浮腫、抗肉芽組織、鎮痛作用があることが知られています。その作用は、インドメタシンのような非ステロイド剤の抗炎症作用とは異なる作用を持つと考えられています。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110003649687

参考文献

・久保道徳 病気と漢方の実際 薬事日報社

・IWAOKA Emiko, OKU Hisae, ISHIGURO Kyoko (2009) “Development of an in vivo assay method for evaluation of “oketsu” using hen-egg white lysozyme (HEL)-induced blood flow decrease” 和漢医薬学雑誌 26(3), 97-103, 2009-08-31

・Liang D, Li DD. (1993) “[Effect of verapamil with renal disease basic-prescription on hemorheology indexes of type II nephrotic syndrome].” Zhongguo Zhong Xi Yi Jie He Za Zhi. 1993 Feb;13(2):86-7, 68.

・ARICHI SHIGERU、KUBO MICHINORI、TANI TADATO、NAKAMURA HIDEO、MOTOYOSHI SATORU、ISHII KATSUMI、IMAZU CHIEKO、SETO YASUHIRO、KADOKAWA TOSHIAKI、NAGAMOTO NORIO、NANBA KENSUKE、 NISHIMURA HARUKI (1985) “Studies on Persicae Semen. II. Pharmacological Activity of Water Soluble Compositions of Persicae Semen” 藥學雜誌 105(9), 886-894, 1985-09-25

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