当帰(とうき)

anjelica sinensis
カラトウキ 大芹(オオゼリ) 乾帰 dong quai  diels  dang gui

当帰とは、古くから生薬やハーブとして利用されてきた植物で、女性特有の症状に対する効果が高いとされています。手足の冷えや、月経の正常化など数多くの症状に働きかけ、婦人科の漢方薬にも幅広く配合されています。様々な種類の成分を含む、天然の強壮剤です。

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当帰(とうき)とは

●基本情報
当帰(トウキ)とはセリ科シシウド属の植物で、ハーブや生薬として使われています。日本産の種類や中国産の種類が知られるほか、アメリカトウキとヨーロッパトウキも存在しています。
日本産の当帰は高さ1mほどまで育つ草木でセリに似た葉を持っています。夏から秋にかけて白い花を傘のような形に咲かせます。ハーブや生薬として利用する部位は、主に茶色で多肉質な根の部分です。セロリに似た強い香りを持っており、イギリスの健康食品店や薬局でも取り扱いがあるくらい人気のある中医学ハーブです。
ドライハーブやチンキ剤[※1]として利用されており、体質や症状に合わせて他のハーブとブレンドして使うことが多いです。

●当帰の歴史
当帰は中国で古くから人気があり、2000年以上も前から女性の最高の強壮剤として評判でした。日本でも、217年の神農本草経[※2]に記載があります。
当帰という名前は、昔、婦人病を患ったために夫に去られた女性が、ある薬草を飲むとすっかり治り、さらに以前より美しくなりました。その噂を聞いた夫が女性のもとへ帰ってきたという出来事にちなみ、この薬草を「当てに帰る」で当帰(トウキ)と呼ぶようになったというストーリーに由来しています。

●当帰に含まれる成分と効果
当帰は高い栄養価を持ち、生命力を蓄えるための貴重な強壮剤として使用されています。
当帰は豊富なビタミンEを含んでいます。ビタミンEはアンチエイジング作用のあるビタミンとして血管や肌・細胞などの老化を防止し、血行を促進するなど生活習慣病の予防に効果があります。他にも、ミネラルの一種セレンを含み、体本来の病気への抵抗力をつける補助となります。また、マグネシウムやビタミンB12、ビタミンEの効果により、神経の落ち着かせるためにも良いとされています。
その他、カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラル類や数多くのビタミンが含まれています。

●当帰の使用方法
当帰をハーブティーに使用する場合は、1~2g程度の当帰にカップ1杯分の水を加え、こしてから飲みます。また、チンキ剤としても利用されます。
生薬としては、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や帰脾湯(キヒトウ)、加味逍遙散(カミショウヤクサン)など、婦人科でよく用いられる生薬のほとんどに含まれています。

●当帰を摂取する際の注意点
当帰は女性にとっての強壮剤としてよく知られるハーブですが、子宮の収縮を促す作用があるため、妊娠中は使用を避ける必要があります。また、糖尿病の方の使用も禁忌とされています。

[※1:チンキ剤とは、ハーブや生薬をアルコールに浸してつくられる製剤のことです。]
[※2:神農本草経(しんのうほんぞうきょう)とは、中国最古の薬物学書です。]

当帰(とうき)の効果

●血流を改善する効果
当帰は温性[※3]の生薬として、造血作用を強くし、血を補う「補血薬」の代表格です。血液循環を促し、心臓の機能を高めて赤血球の細胞生成を刺激します。血行障害にも良いため、貧血や手足の冷えなどにも用いられます。【2】【4】

●女性特有の悩みを改善する効果
当帰はエストロゲン作用を持たないにもかかわらず、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの生成を安定化させます。月経周期の正常化や月経不順や生理痛などの女性の症状に働きかけます。更年期障害や子宮内膜症の症状の緩和にも使われます。
神経を落ち着かせる効果もあるため、月経前症候群(PMS)[※4]による緊張や月経前のうつ症状にも有効とされています。【1】【3】

[※3:温性とは、漢方の考え方のひとつで、食べ物の持っている体を温める作用のことです。]
[※4:月経前症候群(PMS)とは、月経の約1、2週間前から発生し、月経開始とともに消失する一連の身体的、または精神的症状の総称です。]

当変(とうき)はこんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○冷え症の方
○女性特有の病気(更年期、生理不順など)が気になる方

当帰(とうき)の研究情報

【1】更年期女性の不眠症に対して漢方薬の当帰芍薬散を服用させたところ、中途覚醒を減少させ、拡張期血圧を低下させました。その結果患者のQOLを改善しました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007681614

【2】卵白リゾチーム感作マウスの末梢血流量低下を指標としたアッセイ法で牡丹皮、桃仁、当帰および芍薬は、血流量低下を改善したことが分かりました。

【3】月経前に下腹部痛がある、月経痛が前半に認められる、月経時に下痢などの便通異常が認められたなどの月経困難症の患者に当帰建中湯が有効であることが分かりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006839458

【4】中等度の要介護と認定された脳血管障害後遺症患者に対しての当帰芍薬散の投与は、その補血作用により、後遺症による機能的自立度の低下に対して有効であることが分かりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006395184

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参考文献

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・リエコ 大島 バークレー著 英国流メディカルハーブ 説話社

・アースプランツリサーチオーガニゼーション監修 HERB BIBLE 双葉社

・ヴィクトリア・ザック 著 ハーブティーバイブル 東京堂出版

・貝津好孝 日本の薬草 小学館

・寺内 公一、尾林 聡、秋吉 美穂子、大輪 陽子、加藤 清子、松島 英介、久保田 俊郎 (2010) “更年期女性の不眠症状に対する当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸の効果に関する検討” 女性心身医学 15(1), 71, 2010-07-15

・IWAOKA Emiko、OKU Hisae、石黒 京子 (2009) “Development of an in vivo assay method for evaluation of “oketsu” using hen-egg white lysozyme (HEL)-induced blood flow decrease” 和漢医薬学雑誌 26(3), 97-103, 2009-08-31

・黒川 貴代、木村 容子、西條 亜利子、石田 和之、佐藤 弘 (2008) “当帰建中湯が有効であった月経困難症の検討(漢方処方・湯液” 日本東洋醫學雜誌 59(別冊), 199, 2008-05-07

​​・後藤 博三、林 義則、引網 宏彰、嶋田 豊 (2007) “脳血管障害後遺症患者の機能低下に対する当帰芍薬散の効果の検討” 日本東洋醫學雜誌 58(別冊), 194, 2007-05

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