トマト

tomato  solanum lycopersicum  love apple

緑黄色野菜の代表的存在であるトマトは、血液をサラサラにするリコピンや、体内の脂肪を減少させる働きがあると注目を集めている13-oxo-ODAなど、様々な働きを持つ成分が豊富に含まれています。
ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」といわれる程、栄養価の高い食べ物として知られています。

LINEスタンププレゼント!お友達登録はこちら。配信期間2025/01/23

トマトとは

●基本情報
トマトはナス科の野菜で、日本では唐柿(とうし)、赤茄子(あかなす)、蕃茄(ばんか)、小金瓜(こがねうり)などの別名があります。
トマトの栽培に適した温度は10〜25℃程度といわれており、最低気温が5〜10℃を下回ると障害を受けるため、日本では冬に枯れてしまいます。熱帯地方などでは寒さによる枯死の心配がなく長年に渡って生育し続け、延々と開花と結実を続けることができます。生育し続けるとその全長は8〜10mにも達します。
トマトという呼び名はメキシコ先住民の言葉で「膨らむ果実」を意味する「トマトゥル」からきています。本来トマトゥルとはホオズキのことを指し、トマトがホオズキの形に似ていたため同じ名前で呼ばれていたといわれています。

●トマトの歴史
トマトはペルーのアンデス高地が原産の野菜です。中央アメリカで作物化され、16世紀末にスペイン人によってヨーロッパへ伝えられました。当時はじゃがいもと同様、観賞用植物として育てられていました。日本へは17世紀の初頭、オランダ人によって伝えられたとされています。当時は観賞用の植物であり、唐なすびや唐がきなどの名で呼ばれていたとの記録が残っています。
明治時代初期(1868年)に欧米から食用として赤なすという名で導入されましたが、当時の品種はトマト独特のきついにおいを持つ小型品種でした。そのトマトの匂いに日本人が慣れることに時間がかかり、野菜として普及し始めたのは19世紀末頃でした。20世紀に入り、アメリカから導入された桃色大果品種が広く受け入れられたため、トマトの栽培が日本各地で広まりトマトの需要は急激に増加していきました。
現在では、トマトは生食以外にもジュースやソース、ケチャップなどに加工され幅広く食べられています。
また、栽培の工夫によって糖度[※1]を高めたフルーツトマトも人気です。フルーツトマトとは、特定の品種を指すのではなく、糖度が8以上あるフルーツ感覚で食べられるトマトの総称です。

<豆知識1>トマトは野菜?それとも果物?
1793年、アメリカでは野菜の輸入に関税がかけられていました。トマトの輸入業者は関税がかからないように「トマトは果物だから税金はかからない」と主張し、農務省の役人は「トマトは野菜だ」と反論しました。
この論争では両者は一歩も譲らず、1893年に最高裁判所の判決を仰ぐことになってしまいました。最終的に「トマトは野菜」という判決が下り、判決文には「食事中に出されても、デザートにはならない」と書かれています。
判決ではトマトは野菜であるとされましたが、当時からトマトにクリームと砂糖をかけてデザートのようにして食べる地域もあるそうです。韓国や中国、日本の一部の地域でも砂糖をまぶした輪切りのトマトが食べられており、地域によってトマトが野菜であるか果物であるかの認識が異なっています。

●トマトの品種
現在、世界では8,000種類を超えるトマトの品種があるとされています。
トマトは大きさによって3種類に分類されます。

・丸玉系
丸い形が特徴のトマトです。果皮の色によって桃色系、赤色系に大別されます。
日本では保存性に優れた桃太郎をはじめ、中果以上の生食用の品種のほとんどが桃色系で占められています。
桃色系は酸味やトマト臭が少なく、皮が薄く甘みがあるため生食用として広く受け入れられています。また果肉がしっかりしており、つぶすことなく輸送できることも生食用として普及している理由です。
赤色系は濃い赤やオレンジ色を呈する品種で、日本では加工されることが多く、あまり生のまま食されることはありません。海外では、赤色系の品種が主に食べられています。トマトに含まれるカロテノイドの一種リコピンを多く含む品種です。代表的な品種にはサンマルツァーノ、ポロモッソ、ボンジョルノなどがあり、主に海外で栽培されています。

・ファースト系
先端が尖っている特徴的な形をしています。皮が薄く、種周辺のゼリー状部分が少なく甘みの強い果肉が多く詰まっています。ハウス栽培されているトマトの大半はファースト系であり、12月頃から市場に出回り始めます。ファーストトマトという名前で販売されています。最近は品種改良により、尖っていない形のものも出てきました。

・ミニトマト系
1980年以降に市場に多く出回り始めた、果実の直径が2~3cm程の小粒のトマトです。種類が大変多く、形も色も様々で、一見しただけではトマトであると判断できないものもあります。
代表的な品種はチェリートマト、プラムトマト、肥後トマトなどです。

●トマトの生産地
日本では、千葉県、熊本県、茨城県などで多く生産されています。
夏は5~7月頃、冬は12~3月頃に最も多く収獲されますが、近年ではハウス栽培が盛んなため一年中収獲することが可能です。
中国が世界一のトマトの生産量を誇り、全生産量の約4分の1を占めています。続いてアメリカ、トルコと続きます。

●トマトに含まれる成分
トマトは、カロテノイドの一種であるリコピンβ-カロテンを豊富に含んでいることで有名です。トマトは抗酸化力[※2]の強いリコピンを生成することにより、自分の体を活性酸素[※3]から守っています。リコピンはトマトに特に多く含まれる成分です。またトマトのリコピンとβ-カロテンには、その強い抗酸化力から生活習慣病の予防効果があることが証明されています。
トマトの酸味のもととなるクエン酸には食欲を増進させたり、疲労物質である乳酸の代謝を促進する働きが知られており、トマトは夏バテしやすい季節に適した野菜といえます。
また、美肌のために必要なコラーゲンの生成を助けるビタミンCや、余分な塩分を排出し血圧を下げる作用を持つカリウムも豊富に含まれています。
さらに、最近の研究によってトマトに含まれる13-oxo-9,11-octadecadienoic acid(略して13-oxo-ODA)と呼ばれる成分には脂質代謝異常を改善する働きがあることが証明されました。

●トマトの食べ方
トマトにはうまみ成分であるグルタミン酸が含まれています。グルタミン酸はアミノ酸の一種で、肉や魚介に多く含まれるイノシン酸との相性が抜群に良い成分です。トマトが煮込み料理や炒め物によく使われるのは、グルタミン酸の働きにより、肉や魚介のうま味がさらに引き出されるためです。
ホールトマトやケチャップなどに加工される赤味の強い赤色系トマトの方が、生食用の桃色系トマトより多くのまた、リコピンを含んでいます。ホールトマトやケチャップ、トマトジュースなどの加工品を上手に利用することで、効率よくリコピンを摂取できます。
さらに、油と一緒に摂取することで、リコピンやβ-カロテンが体内で吸収されやすくなります。

[※1:糖度とは、一定量の果物や加工食品などの溶液中に含まれる糖分の割合のことです。]
[※2:抗酸化力とは、たんぱく質や脂質、DNAなどが酸素によって酸化されるのを防ぐ力です。]
[※3:活性酸素とは、普通の酸素に比べ、著しく反応性が増すことで強い酸化力を持った酸素のことです。体内で過度に発生すると、脂質やたんぱく質、DNAなどに影響し、老化などの原因になるとされます。]

トマトの効果

トマトには、生活習慣病に効果のあるリコピン、13-oxo-ODA、カリウム、ケルセチンなど様々な働きをもつ成分が豊富に含まれており、以下のような働きが期待できます。

●動脈硬化の予防・改善効果
トマトに含まれるリコピンは強い抗酸化力を持つため、悪玉(LDL)コレステロールの酸化を抑制し、動脈硬化を予防する働きがあります。さらに、トマトの食物繊維にもコレステロール値を低下させる働きがあります。最近の研究によってトマトに含まれる13-oxo-ODAが脂質代謝異常を改善することも判明しました。
リコピンや13-oxo-ODAにより動脈硬化が予防できることに加え、ケルセチンには血管を丈夫にする働きがあり、香り成分であるピラジンには血液をサラサラにして血栓を防ぐ効果があります。トマトに含まれる様々な成分によって動脈硬化を予防・改善できるといわれています。実際にトマトを多く食べる地域の人はそうでない地域の人と比べて、動脈硬化の人が少ないというデータがあります。【2】【5】

●ダイエット効果
トマトは食物繊維を豊富に含むため、満腹感を得やすい食材です。
トマトに含まれるリコピンには、脂肪を蓄積する脂肪細胞の成長を抑制する作用があることが明らかになっています。
最近の研究により、トマトに含まれる13-oxo-ODAが血液中のコレステロールや脂質の異常を抑える働きを持つことが判明したため、トマトが肥満やメタボリックシンドロームに効果的であると期待されるようになりました。13-oxo-ODAは、中性脂肪を減らす効果を持つリノール酸の仲間であり、エネルギー代謝[※4]を亢進させ、脂肪の燃焼を促進することも解っています。
リコピンと13-oxo-ODAが含まれるトマトはダイエット効果が期待できる野菜として注目されています。

●高血圧を予防する効果
食塩に含まれるミネラルであるナトリウムを過剰に摂取すると、血液の中の水分量が増えるため血圧が上がり、高血圧のリスクが高くなると証明されています。野菜に多く含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムを排出する働きがあるため、高血圧を改善したい方や予防したい方にはカリウムの摂取が推奨されています。トマトにはカリウムが豊富に含まれているため、高血圧の予防に効果的です。【4】【5】

●美肌効果
トマトのリコピンがシミに効くといわれるのは、皮膚の表皮部分で発生する活性酸素を抑えて、シミの元であるメラニンの生成を抑制してくれるからです。また、しわも皮膚の真皮部分で発生した活性酸素が原因のひとつであるといわれています。リコピンとビタミンCがコラーゲンの健康維持を助けることで肌のハリが保たれ、しわの予防や改善にも役立ちます。また、ケルセチンには体内のビタミンCの働きを高める作用があります。リコピン、ビタミンC、ケルセチンの3つの成分が含まれるトマトには、美肌効果が期待できます。【8】【9】

●食欲増進・疲労回復効果
トマトの酸味成分であるクエン酸やリンゴ酸には胃の粘膜の炎症を抑え、むかつきを解消する効果があります。
また、疲労の原因物質である乳酸を分解する働きやエネルギーを産生する働きもあり、夏バテや二日酔いの時に効果的です。

●便秘を解消する効果
トマトにはペクチンと呼ばれる食物繊維が含まれており、便秘の解消に効果的です。

[※4:代謝とは、生体内で、物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

こんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○動脈硬化を予防したい方
○肩こりでお悩みの方
○冷え症の方
○スリムな体型を目指したい方
○血圧が高い方
○美肌を目指したい方
○食欲がない方
○便秘でお悩みの方

トマトの研究情報

【1】健康健常人15名を対象に、トマトジュース(トマトリコピンとして15mg含有)150mLを摂取させ、20分間、自転車エルゴメーターで運動させたところ、酸化ストレスマーカー値が減少しました。トマトが、運動疲労改善効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22551119

【2】45歳の健常女性27261名を対象に、トマトベース食品を摂取させたところ、総コレステロール量およびHDLコレステロール/総コレステロールの改善、糖化ヘモグロビンA1cの改善が見られたことから、トマトが高脂血症予防効果と冠動脈疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22223578

【3】トマトの有効成分システインノットタンパク質(TCMP)は、血管新生抑制作用ならびにERKリン酸化抑制作用を持つことから、トマトが糖尿病網膜症などの眼疾患予防効果を持つことが示唆されました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3058160/

【4】Ⅱ型糖尿病患者32名を対象に、トマトを1日当たり200g の量で8週間摂取させたところ、収縮期・拡張期血圧が低下し、アポa1が増加したことから、トマトが高血圧予防効果および心血管予防効果を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21138408

【5】トマトに含まれるカロテノイドの一種であるリコピンは、脂質過酸化予防効果および動脈硬化症予防効果を持つことが知られています。リコピンを1日あたり25mg の量で摂取することで、血中コレステロール、LDLコレステロール値、収縮期・拡張期血圧が低下したことから、トマトが高脂血症予防効果および高血圧予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21163596

【6】慢性膵炎患者、特に心疾患患者ではリコピン濃度が低下していることが報告されています。慢性膵炎患者80名を対象に、トマトペースト(リコピンを約24mg 含有) を1日当たり40g の量で8カ月摂取させたところ、リコピンが増加したことから、トマトが疾病予防効果を持つと期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21119697

【7】最近の研究から、トマトを摂取した被験者からリコピンおよび2,6-シクロリコペン-1,5-ジオルスの2つの酸化代謝物がヒト血清、乳、臓器(肝臓、肺、乳房、肝臓、前立腺、結腸)および皮膚で分離され、確認されました。カロテノイドは、加齢性黄斑変性症、白内障および他の眼疾患を予防します。ヒト血清から主にルテイン、ゼアキサンチン、リコピンが得られ、それらの代謝物もヒト眼球組織内(特に網膜色素上皮、毛様体)で検出されました。トマトなどのカロテノイド豊富な食材に、加齢性黄斑変性症、白内障および他の眼疾患予防するはたらきが期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12424324

【8】健康な女性20名を対象に、トマトペースト(リコピンを16mg 含有) を1日あたり55g の量で12週間塗布したところ、紫外線照射によるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-1) が減少し、プロコラーゲン沈着が増加しました。また、ミトコンドリアDNAの損傷も緩和したことから、トマトが紫外線に対して肌を保護するはたらきを持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20854436

【9】健常人9名を対象に、トマトペースト(リコピンを16mg 含有) を1日当たり40g の量で4週間摂取させたところ、紫外線照射による紅斑が減少したことから、トマトが紫外線に対して肌を保護するはたらきを持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11340098

もっと見る 閉じる

参考文献

・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社

・中村丁次 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・井上正子 新しい栄養学と食のきほん事典 西東社

・Harms-Ringdahl M, Jenssen D, Haghdoost S. (2012) “../ juice intake suppressed serum concentration of 8-oxodG after extensive physical activity.” Nutr J. 2012 May 2;11(1):29. [Epub ahead of print]

・Sesso HD, Wang L, Ridker PM, Buring JE. (2012) “../-based food products are related to clinically modest improvements in selected coronary biomarkers in women.” J Nutr. 2012 Feb;142(2):326-33. Epub 2012 Jan 5.

・C Cavallini, M Trettene, M Degan, P Delva, B Molesini, P Minuz, and T Pandolfini (2011) “Anti-angiogenic effects of two cystine-knot miniproteins from ../ fruit.” Br J Pharmacol. 2011 March; 162(6): 1261–1273.  doi:  10.1111/j.1476-5381.2010.01154.x

・Shidfar F, Froghifar N, Vafa M, Rajab A, Hosseini S, Shidfar S, Gohari M. (2011) “The effects of ../ consumption on serum glucose, apolipoprotein B, apolipoprotein AI, homocysteine and blood pressure in type 2 diabetic patients.” Int J Food Sci Nutr. 2011 May;62(3):289-94. Epub 2010 Dec 8.

・Ried K, Fakler P. (2010) “Protective effect of lycopene on serum cholesterol and blood pressure:Meta-analyses of intervention trials.” Maturitas. 2011 Apr;68(4):299-310. Epub 2010 Dec 15.

・Quilliot D, Forbes A, Dubois F, Gueant JL, Ziegler O. (2011) “Carotenoid deficiency in chronic pancreatitis:the effect of an increase in ../ consumption.” Eur J Clin Nutr. 2011 Feb;65(2):262-8. Epub 2010 Dec 1.

・Rizwan M, Rodriguez-Blanco I, Harbottle A, Birch-Machin MA, Watson RE, Rhodes LE. (2011) “../ paste rich in lycopene protects against cutaneous photodamage in humans in vivo:a randomized controlled trial.” Br J Dermatol. 2011 Jan;164(1):154-62. doi: 10.1111/j.1365-2133.2010.10057.x. Epub 2010 Nov 29.

・Stahl W, Heinrich U, Wiseman S, Eichler O, Sies H, Tronnier H. (2001) “Dietary ../ paste protects against ultraviolet light-induced erythema in humans.” J Nutr. 2001 May;131(5):1449-51.

・本多京子 食の医学館 株式会社小学館

・田中平三、門脇孝、篠塚和正、清水俊雄、山田和彦、石川広己、東洋彰宏 健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて-ナチュラルメディシンデータベース- 株式会社同文書院

・野間佐和子 旬の食材 春‐夏の野菜 講談社

もっと見る 閉じる

ページの先頭へ