甜茶(てんちゃ)

sweet tea
甜葉懸鉤子 てんようけんこうし chinese blackberry tea  tenryocha  tien tea

甜茶とは中国原産の甘味のあるお茶のことで、中でも甜葉懸鉤子(てんようけんこうし)という種類のものに抗アレルギー効果があるとされ近年研究が重ねられています。ヒトでの臨床試験も進んでおり、花粉症やぜんそくの予防、ハウスダストや季節の変わり目の健康維持のための素材として注目されています。

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甜茶(てんちゃ)とは

●基本情報
甜茶とは、中国南西部を原産とするバラ科の植物、テンヨウケンコウシの葉からつくられるお茶のことです。本来、甜茶とは「舌」に「甘い」の字があらわすように甘味のあるお茶の総称ですが、近年の研究により、甜茶の中でも甜葉懸鉤子にはアレルギー抑制作用があるということがわかっています。
甜茶のもととなる甜葉懸鉤子は、バラ科キイチゴ属の植物で、中国南西部の標高500~1200mの山岳地帯に自生する高さ2~3mの灌木[※1]です。古来より中国では、めでたい時に飲むお茶として愛飲されていました。中国では春節[※2]に、「幸せな一年でありますように」との願いを込めて飲む習慣があります。
中国の桂林では、別名「開胃茶」とも呼ばれ、食欲増進、解熱などに効果・効能があるといわれてきました。紅茶を薄めたようなさっぱりした飲み口で甘みがあるため飲みやすいお茶です。また、ノンカフェインであるため、小さな子どもが飲んでも安心とされています。

●甜茶の歴史
甜茶は原産地である中国南部では約5000年も前から健康茶として飲まれているという歴史があります。貴重なお茶として、以前は国外への持ち出しが禁止されていたほどです。
日本へは高甘味度の低カロリー飲料として紹介されましたが、近年、甜茶の抗アレルギー効果が研究によって明らかになり、健康食品やサプリメントとして日本でも広まってきました。

●甜茶に含まれる成分と効果
甜茶の葉には甜茶ポリフェノールをはじめ、甘味成分のルブソシド、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などといったミネラル類が豊富に含まれています。甜茶の有効成分である甜茶ポリフェノールは、アレルギーの原因物質であるヒスタミン[※3]を抑える効果があり、花粉症やぜんそくなどの症状の緩和や改善に効果があるとされています。また、ルブソシドは砂糖の75倍にもなる甘味成分で、肥満予防に効果的といわれています。また、甘味や旨味に関わるアミノ酸系窒素化合物であるベタインも含んでおり、肝機能を強化しコレステロール値を下げると考えられています。

●甜茶の摂取量
甜茶は古くから日常的に飲用されており食経験も長いため安全性は高いとされています。花粉症などのアレルギー対策には、抽出エキスとして1日120mg以上が目安とされています。1日に400mgまで摂取量を増やすとさらに効果的とされています。

[※1:灌木とは、植物学の用語で、成長しても樹高が約3mまでの木のことです。]
​[※2:春節とは、旧暦の正月のことです。中国や台湾では盛大に祝われています。]
​[※3:ヒスタミンとは、アレルギー反応や炎症の原因となる化合物のことです。体内の細胞で合成され、外部からの刺激により放出されます。これにより、炎症やアレルギーという症状が現れます。]

甜茶(てんちゃ)の効果

●アレルギーを抑制する効果
甜茶のポリフェノールにはアレルギーの原因となるヒスタミンの放出を抑制し、くしゃみや鼻水に代表されるアレルギー症状を抑えるという研究がなされています。
アレルギーとは、体内の免疫機能の過剰反応のことです。体にとって異物である花粉やほこりなどのアレルゲンが体内に入り刺激となると、体内では特定のアレルゲンに対応したIgEと呼ばれる抗体がつくられます。IgEは免疫反応の中心である肥満細胞にくっつき、次にアレルゲンが体内に入ってきたときに備えます。再びアレルゲンが体内に入ってくると脂肪細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質が分泌され、くしゃみや鼻水、かゆみといったアレルギー反応を起こすのです。
有効成分である甜茶ポリフェノールは、正式にはGOD(Galloyl-Oxygen-Diphenyl)型エラジタンニンと呼ばれる種類のものです。このポリフェノールが、体内の炎症反応に関係するシクロオキシゲナーゼという酵素の活性を阻害し、アレルギーの原因となるヒスタミンの脂肪細胞からの過剰分泌を抑えることで、アレルギー症状の予防や緩和効果があるとされています。
甜茶を使ってのアレルギーに対する試験はヒトの臨床試験も多く行われています。スギ花粉症患者に対して、花粉が飛散し始める約1ヵ月前から甜茶エキスと青ジソエキスを含むカプセルを2ヵ月間摂取させとところ、50%以上のヒトでくしゃみや鼻づまりなどの自覚症状が改善するという結果が得られました。
さらに他の試験では、花粉症の患者を症状が出る前から甜茶飲料を飲ませたグループと症状が出てきてから甜茶飲料を飲ませたグループに分けて経過を比較しました。すると、症状が出る前から甜茶を飲んでいたグループでのみ、アレルギーの薬を飲まなくとも症状を抑えることができたとの報告があります。
甜茶には、アレルギー症状が出る前の予防としての効果・効能が期待されます。【1】【3】

<豆知識>アレルギーの予防方法
花粉症をはじめとするアレルギー症状を予防するには、できる限り身の回りからアレルゲンを遠ざけるということが求められます。花粉症の方が外に出るときは、マスクやメガネをつけて体内にアレルゲンを取り込まないように注意し、洗濯物や洋服についた花粉などのアレルゲンは家の中に持ち込まないよう、よく払ってから家に入ることなどが有効です。

●肥満を予防する効果
甜茶に含まれる甘味成分であるルブソシドは、砂糖の75倍もの甘さを持ちます。そのため、甘さが欲しい時に砂糖を使った食品の代わりに摂取することで、肥満や便秘などの糖の摂りすぎによる症状の予防効果が期待できます。また、α-アミラーゼやリパーゼなどといった消化酵素の働きを阻害するという作用についても報告されています。【2】

●歯周病を予防する効果
甜茶は歯周病の原因菌が歯に付着するのを防ぐため、歯周病や口臭を予防する効果があるといわれています。また、虫歯の原因菌となるミュータンス菌は口腔内に残った砂糖しか栄養とできないため、甘味があり糖分を含まない甜茶は虫歯の予防にも効果が期待されています。

甜茶(てんちゃ)はこんな方におすすめ

○アレルギー症状を予防したい方
○肥満を防ぎたい方
○肝臓の健康を保ちたい方
○虫歯を予防したい方
○口臭が気になる方

甜茶(てんちゃ)の研究情報

【1】アレルギー疾患マウスに甜茶を投与したところ、ヒスタミンの放出や炎症による耳の肥大が軽減したことから、甜茶は抗アレルギー作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18826149

【2】肥満ラットに甜茶を0.22g/kg の量で9週間摂取させたところ、血糖値ならびに体重増加が改善され、3T3-L1線維芽細胞に対する弱毒化作用が見られたことから、甜茶は糖尿病予防、肥満予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21138267

【3】ラット腹腔細胞を用いて、甜茶を含む市販茶を投与したところ、ロイコトリエンB4の放出が緩和されたことから、甜茶は抗アレルギー作用ならびに抗炎症作用を持つと考えられています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/55/3/55_3_87/_pdf

参考文献

・五明紀春 食材健康大事典 時事通信社

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・原山 建郎 著 久郷 晴彦監修 最新・最強のサプリメント大事典 昭文社

・吉川敏一 炭田康史 最新版 医療従事者のためのサプリメント・機能性食品事典 講談社

・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社

・大森正司 ワイド版 日本茶紅茶中国茶健康茶 日本文芸社

・藤田紘一郎 知識ゼロからの健康茶入門 幻冬舎

​・Fang YG, Lu HW, Feng JH, Bao L, Kurihara H. 2008 “Anti-allergic effects of Rubus suavissimus extract.”Zhong Yao Cai. 2008 May;31(5):710-4.

・Koh GY, McCutcheon K, Zhang F, Liu D, Cartwright CA, Martin R, Yang P, Liu Z. 2011 ” Improvement of obesity phenotype by Chinese sweet leaf tea (Rubus suavissimus) components in high-fat diet-induced obese rats.” J Agric Food Chem. 2011 Jan 12;59(1):98-104.

・高杉 美佳子, 喜多川 知子, 加藤 雅子, 前田 典子, 永田 紀子, 丹羽 絢子, 島田 和子2008 “各種市販茶のロイコトリエンB4放出抑制作用とラジカル消去活性およびポリフェノール含量との関係”日本食品科学工学会誌, Vol. 55 (2008) No. 3 P 87-94

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