タウリン

taurine
2-アミノエタンスルホン酸

タウリンとは含硫(がんりゅう)アミノ酸の一種で、いかやたこ、貝類、魚の血合いなどの主に魚介類に多く含まれている成分です。生体中のほとんどすべての組織に存在しており、動脈硬化や糖尿病、心不全などの生活習慣病に対して効果が高いことで知られています。

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タウリンとは?

●基本情報
タウリンとは含硫(がんりゅう)アミノ酸 [※1]の一種で、人間の体内で合成することができる成分です。
生体中のほとんどすべての組織に存在していますが、植物に含まれる量はわずかで、いかやたこ、貝類、魚の血合いなどの魚介類に多く含まれています。人間では心筋や筋肉、目の網膜、脾臓、脳、肺、骨髄などに存在していますが、体内の全タウリン量の50~80%は筋肉に存在するといわれています。
タウリンは、厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に区分されています。
これは、食品中の成分の薬理作用の研究が進んだ結果、疾病の予防などの効果をうたった健康食品が出現したため、医薬品との区別をつけるために厚生労働省が定めたものです。
そのためタウリンは、抽出物や生成物として食品に添加することができないことになっています。
タウリンは、人間の体内で胆汁の主要な成分である胆汁酸と結合し、消化作用を助けるほか、神経伝達物質としても作用します。

●タウリンの歴史
タウリンは、1827年にドイツの解剖学者・生理学者であるフリードリヒ・ティーデマンと、科学者であるレオポルド・グメリンによって、ウシの胆汁から発見されました。
タウリンという名前は、ラテン語で雄牛を意味するtaurus(タウラス)に由来しています。
その後タウリンは、含硫アミノ酸であるということがわかり、19世紀末には下等動物から高等動物にいたるまで、ほとんどすべての動物に存在していることが明らかになりました。
それ以来、タウリンの研究は数多く行われ、循環系、胆肝系をはじめとする様々な作用を持つことが明らかとなっていきました。
その様々な作用から、第二次世界大戦では日本国海軍がタウリンを多く含む抽出物を、戦意の高揚に利用したともいわれています。
現在タウリンは「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」に区分され、化学合成的に合成されたものを医薬品のタウリン、ウシの胆汁やカキなど魚介類のエキスを使用しているものを食品添加物として扱っています。
医薬品のタウリンは、主に医薬部外品を含むドリンク剤の主成分として使用され、カキなどから抽出したタウリンは強化剤として、育児用粉ミルクなどに添加されています。

●タウリンの欠乏症と過剰症
人間の体内に存在するタウリンは、食事からの摂取と、体内での合成によりまかなわれています。
生体内では、含硫アミノ酸であるメチオニン、システイン[※2]から合成されますが、その合成量は動物の種類によって様々で、人間は少ない量だと考えられています。
また、生の食品中のタウリンは焼くと3割、煮ると5割減るといわれています。また、タウリンは水溶性の成分のため、タウリンを含む食材を煮た場合は水に溶け出してしまうので煮汁ごと摂る必要があります。

タウリンが不足すると、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まります。肝臓の機能低下も考えられ、脂質の消化・吸収がうまくできなくなる危険もあります。また、タウリンは目の網膜にも存在する成分で、網膜を守る働きがあります。そのため不足すると、目の網膜の機能障害が起こる可能性があると考えられています。

タウリンは摂取すると比較的早く代謝[※3]されることから、過剰症の心配はないといわれています。

<豆知識>タウリンは猫にとって重要な栄養素
猫は、体内にタウリンを合成するために必要な酵素を持っていません。猫はタウリンの欠乏によって、拡張型心筋症が生じてしまいます。そのため、キャットフードにはタウリンの含有量を明記したものが多く販売されています。

[※1:含硫アミノ酸とは、硫黄を含んだアミノ酸のことです。]
[※2:システインとは、非必須アミノ酸の一種で、毛髪や皮膚、爪の多く存在し、肌の生まれ変わりを促進します。]
[※3:代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化して入れ替わることです。また、それに伴ってエネルギーが出入りすることを指します。]

タウリンの効果

●肝機能を高める効果
タウリンは、肝臓で胆汁酸の分泌や肝細胞の再生を促進したり、細胞膜を安定化させたりすることがわかっています。
肝臓の主な働きは、代謝、解毒、胆汁の生成の3つとなっており、心臓と同じくらい重要な臓器であることが知られています。
肝臓の中には3000億個以上の肝細胞が存在しています。肝臓には、酸素を供給する肝動脈と、栄養分を運ぶ門脈の太い血管から、1分間に約1.5ℓもの血液が流れ込んでおり、肝細胞ひとつひとつに毛細血管を通して酸素と栄養を運んでいます。
門脈が運ぶ栄養素は、いったん肝臓で貯蔵されます。そして、数百種類もの酵素を使って、体内の様々な場所で使いやすいように変換・再合成され、体内のいたる所へ送り出されます。この化学反応が1万種類以上にもなることから、肝臓は体内の化学工場と呼ばれているのです。これらの働きを、肝臓による「代謝」と呼びます。
また、タウリンは体内に入るアルコールや薬、食品添加物などの化学物質や、体内でつくられたアンモニアなどを分解して無毒化し、尿や便として体外に排出する解毒作用を持ちます。
肝臓が持つ働きのひとつとして、胆汁の生成は生体内において脂肪の分解や脂溶性ビタミンの消化・吸収を助けるなど非常に重要な役割を担っています。
タウリンは、摂取することで肝臓の機能を強化させ、代謝や解毒、胆汁の生成を助ける働きをします。

また、タウリンにはアルコールの代謝を促進する働きがあります。
アルコールは体内に入ると、肝臓内で二日酔いの原因物質であるアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドは、さらに酵素の働きによって再び分解され、体にとって無害な酢酸へと変化します。これらの分解過程は、肝臓に大きな負担をかけてしまいます。
タウリンは、酵素の働きを助ける効果があり、肝臓への負担を軽くします。
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●コレステロール値を下げる効果
タウリンは胆汁の分泌を促進し、コレステロール値を下げる効果があります。
胆汁がつくられる際、胆汁の主要な成分である胆汁酸が必要となります。胆汁酸をつくる際は、コレステロールが必要となります。タウリンは、胆汁酸と結合する性質があるため、タウリンを摂取することで胆汁酸の必要量が増加するため、コレステロール値を下げる効果があるといえます。【7】【8】【9】

●動脈硬化を予防する効果
動脈硬化とは、血中のコレステロールや中性脂肪が増え、血管壁にこびりつくことで血管が詰まったり、硬くなったりして、弾力や柔軟性を失った状態をいいます。動脈硬化になると、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性が高まります。
タウリンは、コレステロールの上昇を抑制する効果があるため、動脈硬化を予防することができると考えられます。【8】

●高血圧を予防する効果
タウリンは、ホメオスタシスという体が持つ機構や体をつくっている細胞を正常な状態に保つ作用があります。
血圧は動脈硬化や、交感神経が刺激を受けることによって心拍の動きを速めたり、腎臓の働きを抑制したりすることで起こります。特にタウリンは、塩分の過剰摂取によって起こる高血圧に効果的だといわれています。
塩分摂取による血圧の上昇は、腎臓の働きによって塩分と水分を取り除き、血液量を減らすことで抑えられています。しかし、塩分の過剰摂取により交感神経が刺激され、過剰に働くことで、こういった腎臓の働きが抑制されてしまい、血圧が上昇します。
タウリンには、動脈硬化を予防する効果だけでなく、交感神経を抑制する作用があるため、高血圧の予防に効果的だと考えられています。

●視機能を改善する効果
タウリンは、目の網膜に存在しています。網膜には多数の光受容体があり、外部からの光刺激を感知することで、その刺激を脳中枢へと伝達しています。この光受容体にタウリンは存在しており、網膜の神経を抑制することで網膜を守る働きがあるといわれています。
また、タウリンには目の新陳代謝を促進し、角膜の修復を助ける働きもあるといわれています。

●むくみを予防・改善する効果
タウリンが不足することによって、筋肉の収縮力が衰えるといわれています。筋肉の収縮が衰えると、足などに溜まった水分を上へと送り返すことができず、むくみが生じます。
タウリンは、筋肉の収縮力を高める効果があるため、むくみにも効果的だといわれています。

●便秘を解消する効果
腸の筋肉の衰えによりぜん動運動[※4]が鈍ってしまうことから、筋肉の収縮力を高めるタウリンは便秘にも効果的であると考えられています。

[※4:ぜん動運動とは、腸に入ってきた食べ物を排泄するために、内容物を移動させる腸の運動です。]

タウリンは食事やサプリメントで摂取できます

タウリンを含む食品

○カキ
○いか
○たこなど魚介類

こんな方におすすめ

○肝臓の健康を保ちたい方
○生活習慣病を予防したい方
○目の疲れが気になる方
○お酒をよく飲む方
○筋肉の衰えが気になる方

タウリンの研究情報

【1】ハムスターに高脂肪・高コレステロール飼料を与え続け、非アルコール性脂肪肝を引き起こさせました。飼料の摂取時、タウリンの入っていない水(コントロール)または0.35-0.7%のタウリンを含んでいる水を飲用させました。タウリンを摂取したハムスターは血清中の脂質を改善しました。また、肝臓のサイズはコントロールと比べ小さく、糞便中のコレステロール、トリアシルグリセロール、胆汁酸は増加していました。さらにタウリンは肝臓の抗酸化能力(GSH、SOD、カタラーゼ)などを高めました。このことから、脂肪肝の予防にタウリンの摂取が有効であることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21126079

【2】32匹のラットを4群<普通の食事(N群)、高脂肪食(HF群)、高脂肪食+れんこん温水抽出物(HFRグループ)、 高脂肪食+れんこん温水抽出物+タウリン(HFRTグループ)>に分け、6週間、ぞれぞれ投与しました。れんこん温水抽出物は400mg/kg/日、タウリンは給水(3% w/v) で投与しました。その結果、HF群と比較して、肝臓の抗酸化酵素の活性は、HF群よりもHRF群及びHFRT群で有意に高いことがわかりました。このことから、タウリンおよびれんこん抽出物が肥満による抗酸化作用・肝保護作用を示すことがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20804615

【3】高コレステロール食により全身性エリテマトーデス(SLE)を引き起こした肝細胞のアポトーシスに対してタウリンの効果を調べました。コントロール群に比べて、タウリン飼料投与群では、カスパーゼ3やp38活性(アポトーシス経路)、TUNEL陽性細胞(死細胞)を減少させました。また、AktやERK1/2(生存経路)の活性は増加しました。このことから、SLEにおけるタウリンの治療の可能性が示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18816057

【4】慢性的なアルコール摂取ラットに対して、タウリンを摂取させました。その結果、タウリン摂取群は脂肪肝をほぼ正常にもどしました。タウリンがアルコール性の脂質過酸化を抑制しました。タウリンによる脂肪肝の抑制は、胆汁の過剰分泌が脂質の除去を促したと考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18816057

【5】脂肪肝を伴った10名の子供にタウリンを摂取ました。その結果、タウリン摂取は、血清ALT濃度および体重を低下させました。このことから、タウリンの摂取は脂肪肝に対する補助療法として有効であることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8915401

【6】タウリン摂取群およびタウリン非摂取群のラットに対しトレッドミル走行をさせました。骨格筋のタウリン濃度は、経口摂取により減少を防ぎ、また、トレッドミルのランニング時間を延長しました。また、トレッドミル走行後のクレアチニン、クレアチン、3-メチルヒスチジン(3-MH)の尿中排泄を測定した結果、タウリン摂取群では有意に減少していました。これらのことから、タウリン投与は、運動誘発による筋疲労を軽減し、身体的持久力を高めると考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19239155

【7】タウリンの摂取は、冠動脈疾患、血圧、血漿コレステロール、および心機能に影響を及ぼすことがわかりました。タウリンの大きな役割は抗酸化として作用することがわかりました。このことから、タウリンは心臓病の予防に貢献している可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21076292

【8】ウズラに対する60日間のタウリン(飲料水の1%)投与は、非HDL‐コレステロールを4,549mg/dlから2,350mg/dlまで減少させ、血清中のトリグリセリドを703 mg/dlから392mg/dlまで減らしました。さらにタウリン摂取群は、オイルレッド‐O染色陽性範囲を74%減少させました。このことから、タウリンによるアテローム性動脈硬化の予防は、主として血清コレステロールおよび中性脂肪値の改善であることが考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19229588

【9】健常者80名に対し、7週間、n-3脂肪酸豊富な魚(1.1gEPA+DHA:36g/日)【n3群】およびn-3脂肪酸豊富な魚+タウリン(425mg/日)【n3+タウリン群】を摂取させました。N3群と比較してn-3+タウリン群は、有意にLDLコレステロールが減少し、またHDL-コレステロールは上昇していました。また、トリアシルグリセロール、トロンボキサンB、TNFαは両群でコントロール群よりも有意に抑制していました。このことから、n-3脂肪酸、特にn-3脂肪酸+タウリンの摂取は、コレステロール、炎症を抑制する働きがあることがわかりました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18242615

【10】タウリン食品が慢性肝炎の患者の肝機能に及ぼす作用を検討しました。肝機能などの指標となるALT及びASTが通常の2-5倍ある慢性肝炎の患者24名に2gタウリン×3回/日を3ヵ月投与し、次の1ヵ月を投与休止しました(投与群)。コントロールとして4ヶ月間プラセボを投与しました(コントロール群)。タウリングループ中のALTおよびAST活性および血液の血漿のコレステロール、トリグリセリドおよびチオバルビツール産生物質のレベルは、減少しました。タウリンが慢性肝炎の患者の肝損傷を改善する可能性が考えられました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17690950

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参考文献

・坪仲勇 からだに効く 栄養成分バイブル 発行:株式会社主婦と生活社

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