なた豆

sword been
刀豆(トウズ、タチマメ)  帯刀(タテワキ)

古くから漢方で使用されているなた豆には、特有の成分であるカナバニンやコンカナバリンAが含まれています。昔は膿を取ってくれる「膿とり豆」と呼ばれ主に生薬として利用されていましたが、最近では腎機能や歯周病、血流の改善などに効果があるとして、サプリメントやお茶などに加工され幅広く利用されるようになりました。

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なた豆とは

●基本情報
なた豆はマメ科の一年草です。
漢字では「鉈豆」または「刀豆」と書きます。刀豆(トウズ、タチマメ)、帯刀(タテワキ)と呼ばれることもあります。長さ30~50㎝のなた豆のさやが「なた」のような形をしていることが名前の由来です。1つのさやから8粒程の豆が採れます。

夏に白またはピンク色の花を咲かせ、7~9月に収穫されます。

●なた豆の品種
なた豆には大きく3つの品種があり、品種により花や豆の色が異なります。

・白なた豆
白なた豆は大きいさやを持ち、暑さに強いことが特徴です。草丈が2m以上になるものもあります。白い花を咲かせ、白い豆が収穫できます。

・赤なた豆
赤なた豆はピンクの花を咲かせ、赤い豆が収穫できます。

・タチナタマメ
タチナタマメは半つる性の植物で、1m程の高さにまで成長する、乾燥に強い品種です。白なた豆や赤なた豆と比べて茎が立つことから、タチナタマメと呼ばれるようになりました。花の色は紫とピンクの中間色で、白い豆が収穫できます。食用としては利用できません。
「ジャックと豆の木」のモデルになった植物で、英語では「ジャックビーンズ」と呼ばれています。

●なた豆の歴史
なた豆は中国で古くから漢方薬として重宝されてきました。漢方について書かれた歴史的な書籍「本草網目」の中ではなた豆の効能として「腎を益し、元を補う」と記載されています。漢方で「腎」とは、生命エネルギーの源である「気」を蓄えておく臓器のことを指します。なた豆はこの「腎」の機能を高めて、病気に負けない免疫力をもたらす生薬とされています。
なた豆は江戸時代に中国から日本に伝えられたといわれています。
日本では、なた豆は縁起の良い食べ物として考えられており、旅の出発前に食べたり、なた豆を持って旅に出たりしていたようです。

●なた豆の原産地・生産地
なた豆の原産国は熱帯アジアや熱帯アフリカなどです。
なた豆が日本に伝えられた当初から薩摩(現在の鹿児島県)で栽培が盛んに行われており、今でも鹿児島県産のなた豆は有名です。他には鳥取県や兵庫県などで生産されています。

●なた豆の利用法
豆は煮豆や白あんなどにして食べられます。最も代表的で手軽な利用法はなた豆茶です。なた豆のさやと豆を細かくし、うすなどでひいてお茶にします。その他ではサプリメントなどに加工されます。
なた豆を食べる際には、下ごしらえが重要となります。なた豆には毒素が含まれている品種もあるため、調理する際にはなた豆の品種を確認してからにしましょう。主に食用とされている品種は白なた豆です。食べられないなた豆は日差しよけのカーテンとして栽培されています。
また、害虫予防として他の植物のまわりに植えることもあります。
豆ができる前の若いさやは、炒めものや味噌漬、胡麻和えや天ぷらなどで食べることができます。さやの代表的な加工食品は福神漬けです。

●なた豆に含まれる栄養素
なた豆には、ウレアーゼやカナバニン、コンカナバリンAなどの成分が含まれています。コンカナバリンAは熱に強いため、加熱が必要ななた豆茶などの加工品からも摂取することができます。
これらの成分により、むくみや腎臓病、歯周病や歯槽膿漏といった症状が改善されます。

なた豆の効果

なた豆には、酵素の一種であるウレアーゼやカナバニン、コンカナバリンAなどの成分が豊富に含まれており、以下のような健康に対する働きが期待できます。

●腎機能を高める効果
腎臓は、体内の老廃物をろ過し、血液や体液を健康に保つ重要な役割を担っています。
​近年、腎機能が健康な人間の60%以下に低下する病気である慢性腎臓病の患者数が増加しています。進行すると透析などの治療が必要となる病気です。
なた豆に豊富に含まれているウレアーゼはもともと体内に存在する酵素で、尿素[※1]をアンモニアと二酸化炭素に分解する働きがあります。ウレアーゼが正常に働くことで人間は有毒な物質を体外に排出できます。また、なた豆に含まれるコンカナバリンAは腎臓のろ過機能の回復に役立つといわれており、なた豆は腎機能の回復に効果的といえます。

●むくみを予防・改善する効果
むくみは浮腫とも呼ばれ、水分の流れが滞ることにより手足や顔に水分がたまる症状です。筋肉量の少ない女性や腎臓のろ過機能がうまく働いていない方に起こりやすい症状です。
なた豆は亜鉛、鉄、マグネシウムなどのミネラル類や良質のたんぱく質を含んでおり、血行や水分の代謝を促進する働きがあります。
なた豆は腎機能を高めるはたらきを持つほか、尿量を増加させることで、余分な水分を排出し、むくみを解消する効果があるといわれています。【2】

●血行を促進する効果
なた豆に含まれるカナバニンには、血液・体液の流れを促進する効果があります。
また、なた豆には食物繊維が豊富に含まれているため、コレステロールを抑制し、動脈硬化や高血圧を予防する効果があります。

●蓄膿症を改善する効果
蓄膿症とは、体の空洞に膿が溜まる症状をいいます。
なた豆にはアミノ酸の一種であるカナバニンが含まれており、膿を排出したり炎症を抑える働きがあります。なた豆が昔から「膿取り豆」と呼ばれている理由は、この働きが知られていたためです。【4】

●歯周病(歯槽膿漏)を改善する効果
歯周病は、歯垢にすみついた歯周病菌によって起こる感染症です。歯の表面に残った歯周病菌は、毒素を出し、歯肉に炎症を起こしたり骨を溶かします。
なた豆に含まれるカナバニンには、炎症を抑える作用があります。なた豆を継続的に摂取すると、歯ぐきの腫れや出血などの炎症が短い期間で改善する傾向があります。
さらに、なた豆特有の成分であるコンカナバリンAには、免疫力を高める働きがあります。なた豆の摂取により口腔内の善玉菌がバランスよく維持されるためであると考えられています。最近では、なた豆を配合した歯磨き粉も販売されており、なた豆が歯周病予防に効果的であることが有名になってきています。【4】

●口臭を予防する効果
最も多い口臭の原因は歯周病です。なた豆を定期的に摂取することにより、口腔内の善玉菌のバランスが良くなり歯周病を改善する効果があるため、口臭予防にもなた豆が有効であるといえます。

●糖尿病の進行を抑制する効果
歯周病と糖尿病には深い関係があるといわれています。
歯周病によってインスリン[※2]の働きを妨げる物質が発生したり炎症がおこるため、インスリンの効果が十分に発揮できない状態になり糖尿病が悪化します。
糖尿病の患者が歯周病になると、インスリンによる血糖のコントロールがうまくできなくなり、治療に用いるインスリンの量を増やす必要が出てきます。
糖尿病をお持ちの方は歯周病にかからないために、なた豆茶やなた豆の歯磨き粉を積極的に利用するのが望ましいとされています。

●痔を改善する効果
痔は肛門近くの静脈が圧迫され、血液の流れが悪くなることによって起こる病気です。
日本人の約7割が痔の予備軍だといわれています。
なた豆には炎症を抑え、膿を排出する働きを持つカナバニンが豊富に含まれているため、痔を改善する効果が期待できます。
お茶などで摂取する方法に加え、なた豆を煎じた汁を直接患部につける方法が最も効果的といわれています。なた豆茶をたっぷり浸したガーゼを患部にあてます。これを数回繰り返します。膿をともなう痔ろうやいぼ痔、脱肛などにも効果が期待できます。

●アレルギー症状を緩和する効果
花粉症をはじめとするアレルギー疾患は、免疫の過剰な反応によって起こります。
なた豆に含まれる成分の一つであるコンカナバリンAには、免疫力を高める働きがあるため、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を緩和する効果があります。

●便秘を解消する効果
なた豆に含まれる食物繊維は、便秘の解消などに効果があります。また、なた豆には酵素の一種であるアミラーゼが含まれているため、消化を助けお腹の調子を整える働きがあります。

●ダイエット効果
なた豆にはサポニンが豊富に含まれています。
食事から摂取した脂肪は、すい臓から分泌される脂肪消化酵素によって分解された後、吸収されます。体内にあるエネルギーが多すぎる場合、脂肪として蓄えられます。サポニンには、脂肪の吸収を遅らせる働きがあるため、高脂肪食の摂取により引き起こされる体重増加を抑えることが報告されています。
サポニンには吸収された糖質が脂肪へ合成されることを抑制する作用があります。
さらに、なた豆には食物繊維が含まれているため脂肪の吸収を抑制する働きがあります。

[※1:尿素とは、哺乳類の尿に含まれる窒素化合物の一種です。]
[※2:インスリンとは、血糖値をコントロールする作用を持ったホルモンです。]

なた豆はこんな方におすすめ

○血流を改善したい方
○腎臓の健康を保ちたい方
○手足のむくみでお悩みの方
○蓄膿症の方
○歯周病(歯槽膿漏)を予防・改善したい方
○口臭が気になる方
○糖尿病の方
○痔でお悩みの方
○アレルギー症状を緩和したい方
○肥満を防ぎたい方

なた豆の研究情報

【1】なた豆の有効成分4-O-メチルガリウム酸は、ウシ血管内皮細胞(BAECs)の管腔形成を抑制しました。また、活性酸素による血管内脾成長因子(VEGF)の発現を抑制することから、なた豆が血管新生抑制作用を持つことが示唆されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15823580

【2】なた豆には利尿効果があり、尿量増加に伴う血圧低下作用を持つことから、なた豆が高血圧予防効果や、むくみ改善効果を持つと考えられています。
https://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200902232088771222

【3】ラットに、なた豆を9週間摂取させたところ、抗酸化酵素SODおよびカタラーゼ活性が上昇しており、チオバルビツール酸(酸化ストレスマーカーの一つ)が低下していたことから、なた豆が酸化ストレスの低減につながることと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20803424

【4】なた豆には、抗炎症作用や抗菌作用を持つ成分カナバルミンが含まれており、なた豆は蓄膿症や歯周病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7126214

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参考文献

・Jeon KS, Na HJ, Kim YM, Kwon HJ. (2005) “Antiangiogenic activity of 4-O-methylgallic acid from Canavalia gladiata, a dietary legume.” Biochem Biophys Res Commun. 2005 May 20;330(4):1268-74.

・小山伸洋、野口孝則 (2006) “ナタ豆摂取による高血圧発症予防効果” 栄養学雑誌 2006年 巻64 号:5  Supplement 頁:492

・Byun JS, Han YS, Lee SS. (2010) “The effects of yellow soybean, black soybean, and sword bean on lipid levels and oxidative stress in ovariectomized rats.” Int J Vitam Nutr Res. 2010 Apr;80(2):97-106.

・Fujihara S, Nakashima T, Kurogochi Y. (1982) “Occurrence of a new polyamine, canavalmine, in the sword bean Canavalia gladiata.” Biochem Biophys Res Commun. 1982 Jul 16;107(1):403-10.

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