MSM(メチルスルフォニルメタン)

methylsulfonylmethane
メチルスルフォニルメタン ジメチルスルホン

MSMは、天然のイオウ化合物で、痛みや炎症を鎮め、体を温める働きがあります。あらゆる生き物に存在し、人間の関節にある軟骨、筋肉、皮膚、髪、爪などにも含まれています。MSMには痛みや炎症を抑える、優れた鎮痛作用、抗炎症作用があると知られています。

MSMとは

●基本情報
MSMとは、正式名称をメチルスルフォニルメタンといい、骨や皮膚、そして細胞組織に必要なコラーゲンを健康に保つ働きがあり、健康的な体の組織をつくることに欠かせない成分です。関節痛や筋肉痛をやわらげたり、炎症を抑える効果が期待されています。
MSMはあらゆる生き物に存在し、様々な食材に含まれるイオウ成分を含んだ物質です。イオウは人間の体内のたんぱく質に含まれるミネラルで、皮膚、髪、爪の形成に働きかけます。また、糖質や脂質の代謝をサポートする役割もあります。MSMは質量の約34%がイオウ元素で構成された成分です。
MSMは人間をはじめとする動物の副腎、母乳、尿にも含まれ、システインやメチオニンなどアミノ酸の構成要素であるイオウの供給源となります。そのため、アミノ酸の構成要素として、体の組織である軟骨、骨、腱をつくる大切な成分です。
MSMは健康に欠かせないもので、新鮮な果物、野菜、牛乳、穀物などに含まれていますが、その量は非常に少量のため、サプリメント等で補うことが大切です。

●MSMの歴史
MSMは、1980年代頃から数々の研究が行われてきました。特に、炎症を抑える作用、鎮痛作用については、特に早くから取り組まれています。現在では、MSMが持つ作用には、幅広い効果が報告されており、関節炎、腱炎、筋肉のけいれん、腰痛、関節リウマチ、アレルギー症状、インスリン抵抗性[※1]の改善、炭水化物の代謝改善、傷の治癒速度向上、毛髪および爪の強化、コラーゲン合成向上など、今後も様々な症状を改善、予防が期待されています。近年、MSMは間質性膀胱炎に特に効果があると注目されています。

●MSMの働き
MSMは天然に存在しているイオウ化合物です。痛みや炎症を鎮める効果が期待されており、関節炎やリウマチといった関節の痛みを抑えてくれる成分です。
関節炎は原因により感染性関節炎、変形性関節症、関節リウマチを始めとする炎症性関節炎に分類されます。関節疾患の中でも変形性関節症は特に多く、関節や股関節に頻発することで知られています。高齢者に多く発症しますが、関節の軟骨組織と周囲の組織に変性が起こり、疼痛や関節のこわばり、機能障害を生じます。
一方、関節リウマチは免疫系の異常により関節の滑膜[※2]細胞が増殖し、骨や軟骨の破壊を伴った関節炎を起こす自己免疫疾患を指します。病因としては、遺伝要因と環境要因があり、これらが複雑に絡んで炎症反応を誘導していると考えられています。環境要因としてはウイルス、細菌、マイコプラズマ[※3]などの感染があげられます。
また、軟骨のプロテオグリカン[※4]やある種の糖ペプチドにも関節炎の誘導能があることが知られています。種々の研究より、MSMは関節炎の病態を抑制したことを報告しています。

<豆知識①>MSMの構成成分、イオウの効果
通常、ミネラルは生体内で他の元素と結合しない性質を持っていますが、イオウは例外で、たんぱく質の成分であるシステインというアミノ酸に含まれています。そのためイオウは、アミノ酸の構成要素として、大切な体の組織をつくるという役割を担っています。たんぱく質の作用は、幅広く様々ですが、毛髪、爪、皮膚をつくるたんぱく質は非常に丈夫なのが特徴です。イオウはたんぱく質の成分として、皮膚を強くし、髪にツヤを与え、健康的な爪の生成に働きかけます。軟骨や腱、骨などの成分にもイオウは含まれています。肌のトラブルに有効に働きかけるため、医薬品のスキンクリームや軟膏にもイオウが含まれています。
また、イオウはビタミンB群とともに、代謝に働きかけます。食べ物からエネルギーをつくる際には、酵素が必要です。酵素を働かせる役割を担うのが補酵素[※5]です。イオウはビタミンB₁やパントテン酸と結合して補酵素となり、糖質や脂質の代謝に働いています。
さらに、イオウには解毒作用があり、有害ミネラル[※6]が蓄積されるのを防いだり、肝臓の胆汁分泌を助けたりと多くの効果があります。

[※1:インスリン抵抗性とは、インスリン作用に体内の組織が抵抗性を現す状態のことです。インスリン抵抗性が上昇すると、インスリン受容体がしっかりと働かないため細胞でのブドウ糖の吸収がうまくいかず、血糖値が低下しないという現象が起こります。]
[※2:滑膜とは、関節を構成する要素のひとつで関節包に包まれています。]
[※3:マイコプラズマとは、真正細菌の一属で、真核生物細胞内に寄生するウイルスのことです。]
[※4:プロテオグリカンとは、たんぱく質と糖鎖が共有結合した複合糖質の一種です。]
[※5:補酵素とは、消化や代謝で働く酵素を助ける役割をするものです。]
[※6:有害ミネラルとは、人間の体内で使用されないと考えられているミネラルのことです。主に鉛、水銀、ヒ素、アルミニウム、ベリリウムなどがあります。]

MSMの効果

●痛み・炎症を軽減する効果
MSMは、関節の破壊を抑制するといわれています。
また、MSMは関節炎やリウマチの痛みをやわらげる効果があると注目されています。膝の変形性関節症患者50名 (40~76歳) を対象とした試験で、MSMを1日(3 g×2回)12週間にわたって経口摂取させたところ、痛みの指標が改善されたという報告があります。【1】【2】

<豆知識②>関節をいつまでも若々しく保つためのポイント。
MSMは私たちには馴染みの低い成分といえます。食品に含まれるMSMは大変少量であるため、食品からの摂取は難しいです。日常の生活ではサプリメントで補うことが望ましいです。MSMは痛みや炎症を抑える働きを持ちますが、関節痛や筋肉痛などを予防するためには、MSMやグルコサミン、コンドロイチンなどを摂取するとともに、生活に適度な運動を取り入れることが大切です。
関節に痛みを感じる原因のひとつに関節部分の軟骨がすり減ることがあげられます。関節痛の解消に役立つ成分として知られているのは、グルコサミンとコンドロイチンですが、MSMを同時に摂取することも効果が期待されています。そのためMSMは健康食品素材として、単独もしくはグルコサミンやコンドロイチンなどと混合した形で市販されていることが多くあります
また足腰、関節、膝などを温めることも大事なポイントです。サポーターやひざ掛けでひざの保温を心がけることが大切です。お風呂などで半身浴をし、足元をゆっくり温めることも健康の秘訣です。また、しょうがなど体を温める食材を積極的に摂ることも良いといえるでしょう。

●アレルギー症状を緩和する効果
MSMは、花粉症に伴うアレルギー性鼻炎の症状の緩和に有効であるという研究結果が報告されています。50名の患者を対象にMSMを1日2600mg、30日間投与したところ呼吸器系の症状が改善されたという報告があります。また、この時の試験では、MSMはアレルギーを引き起こすヒスタミンやIgEの濃度には影響を与えませんでした。【3】

●間質性膀胱炎を予防する効果
間質性膀胱炎は頻尿や尿意圧迫感などを主な症状とする、膀胱の粘膜に炎症を生じる慢性炎症疾患です。日本ではあまり知られていませんがアメリカは多くの患者を抱えており、そのほとんどが女性であるとされています。
MSMと同様の効果を持つ、DMSOの投与によって間質性膀胱炎の症状の改善は行われたといわれています。

MSMは食事やサプリメントで摂取できます

MSMを含む食品

○果物
○野菜
牛乳
○穀物

こんな方におすすめ

○関節痛を緩和したい方
○アレルギー症状を緩和したい方
○泌尿器系の病気を予防したい方

MSMの研究情報

【1】 軽度から中程度の変形性関節症患者118名を対象に、グルコサミン 500mg とMSM 500mg のいずれか、または両方を12週間摂取させたところ、全ての投与群で疼痛指数、膨潤指数、痛みの視覚アナログ尺度評価、15 m歩行時間、関節可動性指数、Lequesne指標 (痛み、歩行能力、身体機能を評価) の改善が見られ、鎮痛剤の使用が減少したことから、MSMは関節痛予防効果が期待されています。また併用群でより改善が見られたことから、両者の併用効果が確認されました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17516722

【2】膝変形性関節症患者50名を対象に、MSM を1日当たり6g の量で12週間経口摂取させたところ、痛みと身体機能の指標の改善が見られたことから、MSMは関節痛予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16309928

【3】季節性アレルギー性鼻炎患者50名を対象に、MSMを1日当たり2600mg の量で30日間摂取させたところ、血中IgE やヒスタミンに影響を及ぼすことなく、上気道炎の症状ならびに呼吸器疾患症状に改善が見られたことから、MSM に季節性アレルギー性鼻炎予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12006124

参考文献

・蒲原聖可 サプリメント事典 平凡社

・中村丁次監修 最新版からだに効く栄養成分バイブル 主婦と生活社

・中嶋 洋子 著、阿部 芳子、蒲原 聖可監修 完全図解版 食べ物栄養事典 主婦の友社

・日経ヘルス 編 サプリメント大事典 日経BP社

・Usha PR, Naidu MU. 2004 “Randomised, Double-Blind, Parallel, Placebo-Controlled Study of Oral Glucosamine, Methylsulfonylmethane and their Combination in Osteoarthritis.” Clin Drug Investig. 2004;24(6):353-63.

・Kim LS, Axelrod LJ, Howard P, Buratovich N, Waters RF. 2006 “Efficacy of methylsulfonylmethane (MSM) in osteoarthritis pain of the knee: a pilot clinical trial.” Osteoarthritis Cartilage. 2006 Mar;14(3):286-94.

・Barrager E, Veltmann JR Jr, Schauss AG, Schiller RN. 2002 “A multicentered, open-label trial on the safety and efficacy of methylsulfonylmethane in the treatment of seasonal allergic rhinitis.” J Altern Complement Med. 2002 Apr;8(2):167-73.

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