さやいんげんとは
●基本情報
成熟前のいんげん豆をさやごと収穫したものをさやいんげんと呼びます。さやいんげんは、マメ科の野菜です。マメ科の植物は熱帯から寒帯まで地球上の多様な環境によく適応します。中でもつくりやすいいんげんは家庭菜園に適した豆野菜です。
●さやいんげんの歴史
さやいんげんは中央アメリカからメキシコが原産です。品種分化は南アメリカにおいてなされたといわれています。ヨーロッパに伝わってからいんげん豆の若いさやの食用が始まりました。
日本には江戸時代に明(中国)から招かれた隠元禅師によって伝えられ、「いんげん豆」という名前は隠元禅師の名前にちなんでいるといわれています。
明治時代には政府が欧米からさやいんげんを導入し、現在全国で栽培されているものはその当時のものが元になっています。
●さやいんげんの収穫時期
生長が早く、暖かい地域では収穫が1年に3度あることから別名「サンドマメ」とも呼ばれています。6月~9月が旬の時期です。
●さやいんげんができるまで
さやいんげんは、マメ科の野菜を3年~4年つくっていない日当たりのよい場所で育てます。よく耕した畑に幅70㎝ほどの畝(うね)[※1]をつくり、中央に溝を掘って元肥[※2]を入れて埋め戻し、その両側に種をまきます。株間は35㎝ほどです。つるいんげんは、つるが長く伸びるため長い支柱が必要です。草丈が15㎝くらいになったら、合掌式の支柱をたて花が咲いたら追肥を開始します。つるは2㎝ほどまで伸びさやの長さは開花してから1~2週間で10㎝まで伸びます。さやが少しふくらんできたら収穫時期となります。
●さやいんげんの種類
さやいんげんの中でもよく出回る種類は「どじょういんげん」とやや小ぶりで丸みを帯びた「丸さやいんげん」です。昔はかたい筋がありましたが近年は品種改良が進んで筋がないものがほとんどです。つるの有無やさやのかたちで種類が分けられます。さやは丸さやと平さやの2種類があります。
・どじょういんげん
ケンタッキーワンダーや尺五寸とも呼ばれます。つるがあり、丸さやの代表的な品種です。やわらかく独特の香りで味が良いといわれています。
・モロッコいんげん
幅が広く、扁平な形が特徴の平ざや種です。花豆の若ざやで良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラルを含み、やわらかく味も良いのが特徴です。
・平ざやいんげんは、さやが扁平で筋が少なく、甘みが強いので味が濃厚。曲がりが少なく、まっすぐなので切りやすいのが特徴です。
[※1:畝とは、作物を植えつけたり種をまいたりするため、畑の土を幾筋も平行に盛り上げた所のことです。]
[※2:元肥とは、種まきや苗植えの前に、耕地に施しておく肥料のことをいいます。]
さやいんげんの効果
さやいんげんには抗酸化作用を持つβカロテンやビタミンCをはじめ、エネルギー代謝を助けるビタミンB群、食物繊維が豊富に含まれています。部位別に見るとさやにはたんぱく質やアスパラギン酸、必須アミノ酸、豆の部分にはたんぱく質やでんぷん、糖分などが含まれています。さやと豆を一緒に摂ることでこれらの栄養をまるごととることができ、疲労回復や夏バテ防止、便秘解消など様々な効果が期待されます。
●免疫力を高める効果
活性酸素を消去するβカロテンが豊富で、さやいんげんをごまで和えるとさらに抗酸化作用がアップします。ビタミン損失を防ぐために茹で時間は短めにすることがポイントです。さらにこのβカロテンは免疫力を高め、風邪やガン予防にも効果が期待されます。【1】
●疲労回復の効果
さやいんげんに含まれるアスパラギン酸による代謝作用によって疲労回復やスタミナ増強が期待できます。さらに糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関わるビタミンB群がバランス良く含まれています。また免疫を増強して活性化するレクチンは免疫力を高める作用を持ち、ガン細胞や病原菌に働きかけます。
●新陳代謝を活発にする効果
さやいんげんに含まれるリジンは、必須アミノ酸のひとつです。体内で合成できない成分で、たんぱく質の吸収を助け、ブドウ糖の代謝を促して血管を丈夫にしたり、肌を整えたりといった新陳代謝を高める働きも期待されます。
<豆知識①>さやいんげんの選ぶポイントと保存方法
さやいんげんを選ぶ時のポイントは、緑色が濃いもの、しっとりしたつやのあるもの、豆が大き過ぎないもの、ハリがあり、さやの先までピンとしている細めのものです。保存するときは向きをそろえてラップでくるみ、冷蔵庫の野菜室に3日~4日、またはかために茹でてから冷凍庫で保存します。時間がたつと香りや甘みが失われるので、早めに使いきり、一度に食べ切れないときは新鮮なうちに保存しましょう。
<豆知識②>さやいんげんの食べ方
和え物、揚げ物、煮物、汁物、サラダ、炒め物に適しています。筋がある場合は、調理をするときに両先端を折り、そこから筋をスッと引っ張って取り除きます。長時間茹でると柔らかくなるので歯ごたえを残したいなら加熱時間を短めにしましょう。ゆでて薄味の調味料につけておくとおひたしとしてそのまま食べられます。油といっしょに摂るとカロテンが体内で吸収されやすくなるので、ごまやピーナッツ、クルミなどで和えると効果的です。便秘の予防にはヒジキや納豆、ヨーグルトと食べ合わせることをおすすめします。
さやいんげんはこんな方におすすめ
○疲労を回復したい方
○新陳代謝を活発にしたい方
さやいんげんの研究情報
【1】さやいんげんには抗酸化成分やペプチドやたんぱく質が含まれていることから、さやいんげんは高い抗酸化作用を持ち、健康機能が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17584169
【2】ヘルペスウイルス感染モルモットに、さやいんげんに多く含まれるL-リジンを摂取させたところ、皮膚の帯状疱疹が緩和されたことから、さやいんげんに多く含まれるL-リジンは抗ヘルペスウイルス作用を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2542441
参考文献
・食材図典 小学館
・荻野善之 野菜まるごと大図鑑 株式会社主婦の友社
・則岡孝子 栄養成分と食べ物 河出書房
・吉田企世子 松田早苗 あたらしい栄養学 高橋書店
・Karaś M. 2007 “Anti-free-radical properties of the peptide fractions isolated from string bean by immobilized metal ion affinity chromatography.” Protein Pept Lett. 2007;14(5):447-54.
・Ayala E, Krikorian D.(1989) “Effect of L-lysine monohydrochloride on cutaneous herpes simplex virus in the guinea pig.” J Med Virol. 1989 May;28(1):16-20.