ステビアとは
●基本情報
キク科に属するハーブの一種であるステビアは、和名ではアマハステビアと呼ばれます。高さは50~100㎝ほどで、茎には微細な白毛が密生し、根元は若干木質化した丈夫な植物です。夏から秋にかけて白い花が咲きます。年に数回刈取りができる多年草で、葉や茎が甘味料として使われています。ステビアから抽出された甘味料は、既存添加物(天然添加物)[※1]に分類されます。ステビオサイドとレバウディオサイドが甘みの主成分です。葉に、砂糖の200~300倍もの甘みを持つステビオサイドという成分が含まれています。その成分を抽出・生成したものは白色の粉末となります。ステビオサイドはノンカロリーで非常に甘みの強い成分です。しかも、人体へ悪影響がありません。甘みは比較的砂糖に近く、ほかの糖質甘味料と併用することでより自然な甘みを感じることができるため、多くの場合他の甘味料と併用して用いられます。
ステビアは、生のままでも乾燥させても砂糖の代わりに利用できます。生の葉を噛むと、さわやかな甘みを感じることができます。飲み物や料理の甘みづけとして使用でき、低カロリーで強い甘みをつけられるので、糖尿病などで糖分の摂取を制限する必要のある人や、ダイエット中の人におすすめです。使用する際はごく少量を使うだけでしっかりと甘みを感じられます。また、乾燥した葉を軽く煮出すことで、シロップとして使うことも可能です。
現在、ステビアは低カロリー食品や炭酸飲料、菓子、漬物などに使用されています。また、ステビアの茎を主原料とし、発酵させた後数年間熟成させた健康飲料や化粧品もあります。最近まで、副作用として避妊や不妊症になるともいわれていましたが、現在の研究からそういった副作用・危険性はないことが報告されています。平成8年度の旧厚生省による安全性に関する調査で、発がん性や催奇形性[※2]に対する安全性が報告されていますし、濃縮液や粉末から得られるエキスにガンや肝臓病(C型肝炎)、糖尿病の予防の効果が期待できるとして、研究がすすめられています。欧米化や不規則な食生活が問題となっている日本でも、ステビアの活用が増えており、現在日本は世界最大ステビア消費国のひとつとなっています。
●ステビアの歴史
ステビアは、16世紀から、パラグアイの先住民であるグアラニー族がマテ茶の甘味料として利用してきた植物です。「聖なる草」として崇められ、甘味料としてだけでなく薬草として、大切に使われてきました。その後、20世紀に入ると他の南米の国やアジアでも使用されるようになり、低カロリーの植物性甘味料として注目を浴びてきました。1970年に国際糖尿学会で紹介され、日本にも導入されました。
●ステビアの生産地
ステビアの原産地は南米パラグアイです。水はけのよい土で、たくさんの日を浴びて育ちます。寒さに弱いため、特に冷涼地では秋に株元を覆うか鉢上げをして、冬場は室内などの暖かい場所で育てる必要があります。秋には茎や葉は枯れてしまいますが、根茎に冬芽がたくさん出るため、きちんと育てることで冬を越すことができます。
●ステビアに含まれる成分と性質
主成分はステビオサイドやレバウディオサイドなどのステビオール配糖体です。低カロリーでありながら、砂糖の200~300倍の甘みを持つことから、ダイエット中の方や糖尿病の方に注目されており。料理や飲み物に甘みを加えながら、糖分の摂取を抑えることができます。2006年には千葉大学の報告で、糖尿病を改善するためのインスリンの抵抗性を改善する働きがあると報告されています。さらに、成分中に含まれるヒスタミンに強力な解毒作用があることや、ステビアの茎を熟水抽出したものに緑茶の5倍以上の抗酸化力があることもわかっています。
[※1:既存添加物とは、厚生労働省の食品安全委員会が科学検査に基づき安全性を認めている添加物のことです。選ばれた添加物も定期的に見直しが行われています。]
[※2:催奇形性とは、妊娠中の女性が摂取した時に、遺伝子や染色体に作用し、胎児に障害をきたす危険性のことです。]
ステビアの効果
●ダイエット効果
ステビアは少量で砂糖の200~300倍の甘みを感じられ、またステビア自体にカロリーがないため、食事や飲み物に使用することでカロリーを抑えることができます。ダイエット中の方や摂取カロリーを抑えたい方は砂糖をステビアに変更することが望ましいです。
●糖尿病の進行を抑制する効果
ステビアを料理や飲み物に使うことで、糖分の摂取を抑えることができます。また、ステビアに含まれる成分にインスリンの抵抗性を改善する働きがあることがわかっているため、日常的にステビアを摂ることで、糖尿病の予防と進行抑制が期待できます。【1】【2】【3】【4】
ステビアはこんな方におすすめ
○糖尿病を予防したい方
○肥満を防ぎたい方
○スリムな体型を目指したい方
○ダイエット中の方
ステビアの研究情報
【1】ステビアの機能性成分ステビオールとステビオサイドは、すい臓のβ細胞に直接働きかけること(β細胞のcAMPおよびATP感受性カリウムイオンチャネルを活性化する)によって、インスリン分泌を促進する可能性があることが分かりました。ステビオールとステビオサイドを含むステビアは、Ⅱ型糖尿病の予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10690946
【2】ラットに、ステビアの機能性成分ステビオサイドを500mg/kg の量で投与したところ、2時間後、経口糖負荷試験(OGTT)を行ったところ、血糖値上昇が42%減少し、また、グルコース-インシュリンインデックスは45%減少しました。ステビオサイドをステビアは、インスリン感受性を高め、骨格筋におけるグルコース輸送を改善し、糖尿病予防に役立つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14681850
【3】ステビアの機能性成分ステビオサイド(1mM)はハムスター腸管においてグルコース吸収を43% 阻害したことから、ステビアは糖尿病予防効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7616317
【4】II型糖尿病患者に、ステビアの機能性成分ステビオサイドを摂取させると、食後血糖値が18%低下し、インスリンインデックス値は約40%低下したことから、ステビアは糖尿病予防効果を持つと考えられています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14681845
【5】高血圧患者を対象に、ステビアの機能性成分ステビオサイドを1日あたり1,500 mg の量で2年間摂取したところ、収縮期血圧ならびに拡張期血圧に改善が見られたことから、ステビアに高血圧改善効果が期待されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14693305
【6】ステビアの水溶性発酵抽出液は、食中毒の原因菌である大腸菌O-157、H7などの病原性大腸菌に対し、in vitro で殺菌作用が見られたことから、ステビアは抗菌作用を持つと考えられています
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9492187
参考文献
・本多京子 食の医学館 小学館
・松浦寿喜 図解入門 よくわかる 最新食品添加物の基本と仕組み 秀和システム
・育てる 味わう 楽しむ ハーブスパイス館 小学館
・谷村顕雄 監修 改訂新版=よくわかる 暮らしのなかの食品添加物 日本食品添加物協会
・清水俊雄 機能性食品素材便覧 特定保健用食品からサプリメント・健康食品まで 薬事日報社
・Jeppesen PB, Gregersen S, Poulsen CR, Hermansen K. (2000) “Stevioside acts directly on pancreatic beta cells to secrete insulin: actions independent of cyclic adenosine monophosphate and adenosine triphosphate-sensitive K+-channel activity.” Metabolism. 2000 Feb;49(2):208-14.
・Lailerd N, Saengsirisuwan V, Sloniger JA, Toskulkao C, Henriksen EJ. (2004) “Effects of stevioside on glucose transport activity in insulin-sensitive and insulin-resistant rat skeletal muscle.” Metabolism. 2004 Jan;53(1):101-7.
・Toskulkao C, Sutheerawatananon M, Wanichanon C, Saitongdee P, Suttajit M. (1995) “Effects of stevioside and steviol on intestinal glucose absorption in hamsters.” J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1995 Feb;41(1):105-13.
・Gregersen S, Jeppesen PB, Holst JJ, Hermansen K. (2004) “Antihyperglycemic effects of stevioside in type 2 diabetic subjects.” Metabolism. 2004 Jan;53(1):73-6.
・Hsieh MH, Chan P, Sue YM, Liu JC, Liang TH, Huang TY, Tomlinson B, Chow MS, Kao PF, Chen YJ. (2003) “Efficacy and tolerability of oral stevioside in patients with mild essential hypertension: a two-year, randomized, placebo-controlled study.” Clin Ther. 2003 Nov;25(11):2797-808.
・Tomita T, Sato N, Arai T, Shiraishi H, Sato M, Takeuchi M, Kamio Y. (1997) “Bactericidal activity of a fermented hot-water extract from Stevia rebaudiana Bertoni towards enterohemorrhagic Escherichia coli O157:H7 and other food-borne pathogenic bacteria.” Microbiol Immunol. 1997;41(12):1005-9.